🇯🇵 UI-70 (ユーアイ ナナジュウ)
レビュー作品数: 7
目次
- ページ1
- 同人作品:東方アレンジ①
- ページ2
- 同人作品:東方アレンジ②
- 関連アーティスト
同人作品:東方アレンジ①
2005年 6thアルバム
UI-70は、演奏やプログラミングを手掛ける如日(にょひ; Gt/B/Key/Arr)と、ミキシングやマスタリングを担当するmajinn(Arr)の2人による同人音楽ユニットです。2000年頃から活動を始めてゲーム音楽等のアレンジ作品をリリースし、本作より東方アレンジに本格的にシフトしていきます。なお如日は塚本明伸の商業名義で、プログレバンドShinsekaiのメンバーとして1stアルバムに参加しています。
さて本作ですが、東方妖々夢オンリーのHR/HMインストアレンジで、曲順も楽曲の雰囲気も原作を踏襲しつつ、重厚な楽曲を繰り広げます。聴いていると原作ゲームの世界観が目に浮かぶ、良質なアレンジに仕上がっています。大半が如日によるアレンジですが、M6,7,11はmajinnが編曲しています。ジャケットイラストは同人サークルaltneulandの弘世が担当。東方Projectオンリー同人イベント、博麗神社例大祭2で頒布されました。
僅か1分足らずの「introduction」は「妖々夢 ~ Snow or Cherry Petal」のアレンジ。透明感のある鍵盤は原曲譲りですが、そこに鈍重なギターやドラムが絡んでメタリックに仕上げます。
続く「無何有の郷 ~ Deep Mountain」は地を這うような重厚なリズムギター&ベースと、主旋律をメロディアスになぞるリードギターが良く、ドラムもここぞという時に主張して魅力的です。ヘヴィですがリズミカルな演奏は高揚感を掻き立てます。そして最終盤はテンポアップし次曲へ。
「クリスタライズシルバー」は鈍重なギターから銃弾の嵐のような凶悪なドラムが降り注ぎます。そこから原曲譲りのメロディアスな主旋律をリードギターが奏でて、緊迫しつつもメロディで魅せてくれます。
「天空の花の都」は出だしこそ鈍重ですが、全編を通してメランコリックなリードギターが引き立っています。哀愁があって感傷的な気分を誘いますが、浸り切る前にドラムが倍速になって焦燥感を煽ります。そして終盤に突如リズム隊がいなくなって、リードギターとアコギだけが演奏を行い、ぽっかり空虚に放り出されたような哀愁があります。たまりません。
そこから鈍重なリフとともに「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」へ。メタリックなバンド演奏だけではなく、シンセサイザーも活用して、ひんやりとしつつも色鮮やかなサウンド。原曲譲りのキャッチーかつ哀愁も纏ったメロディラインに加えて、勢い溢れる演奏は惹きつけるものがあります。アコギソロからのオルガン、ギターソロやハモるギターなど聴きどころをいくつも用意した魅力的な楽曲に仕上がっています。
ここまで如日によるアレンジでしたが、ここから2曲はmajinnがアレンジ。ここまでの重厚なヘヴィメタルな趣から変わり、「東方妖々夢 ~ Ancient Temple」は原曲の再現度高めの神秘的で美しいアレンジに仕上がっていて、桜が咲き誇る白玉楼の光景が目に浮かぶようです。ギターではなく、ピアノやシンセなど鍵盤が楽曲をリード。ドラムの質感も如日アレンジの楽曲とは違って、タムタムを活用して躍動感を出しつつも重さは控えめです。とても美しくて、アルバムの流れで聴いているとこの楽曲で込み上げてくるものがあります。本作では特に大好きな楽曲です。
「広有射怪鳥事 ~ Till When?」ではキーボードとギターが高速でユニゾンするパートや、メタリックで渋さのあるサビメロ(?)を交互に繰り広げ、スリリングな仕上がりです。
そして如日による「アルティメットトゥルース」へ。1分強の短さですが、これもまた魅力的なんです。超アグレッシブな冒頭から、突如音を間引いてピアノによる哀愁のメロディを引き立てます。そこからまたどんどんヘヴィさが加速していきますが、感情が高ぶり涙を誘います。
僅か45秒の「幽雅に咲かせ、墨染の桜」は、アコギによる小曲。美しいメロディに心休まりますが、そこから激しい「幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life」が始まって本領発揮。このメドレーのような繋ぎ方はヘヴィメタル様式美で、なんとも素晴らしいですね。パワーメタル的なアグレッシブな演奏に圧倒されつつも、リードギターの奏でる原曲を踏襲したメロディアスな旋律はドラマチックで美しいんです。ひとしきり暴れた後、後半に突如トーンを落とし、メロウでじっくり聴かせるパートへ。緩急つけて感情を揺さぶり、最後にまた激しく暴れ回ります。
前曲の激しさから一転、「春風の夢」はアコギやピアノが主体の静かな楽曲で、落ち着いた演奏は哀愁たっぷりです。楽曲単体だと地味なようで、アルバム通して聴くと緩急を大きくつけていて、この美しさにほろりときます。
そして「さくらさくら ~ Japanize Dream…」は大団円といった趣です。勢い溢れるメタリックな演奏をバックに、シンセサイザーがひんやりとした質感で主旋律を奏でます。情報量が多くてどの楽器に耳を傾けるか悩ましいですが、地味にベースが良い仕事をしています。最後にギターソロを奏でて、続けざまに次曲へ。
ラスト曲「妖々夢 ~ Snow or Cherry Petal」はオープニング曲と同じ原曲を持ちますが、こちらはテンポが速くて勢いがあり、全く違った印象です。華やかなシンセがキャッチーなメロディを奏でつつ、バックではバッキバキのベースや速弾きギターなどスリル満点です。楽曲を終えたあと、しばらくの無音を経てスキマ妖怪(隠しトラック)が顔を出すという嬉しいサプライズが待っていますので、是非最後まで聴いてみてください。オルゴールアレンジの「妖々跋扈」をしっとり聴かせた後、オルガンが荘厳な雰囲気を作り出し、そして名曲「ネクロファンタジア」が出現。原曲でもトップクラスの素晴らしいメロディを、カラフルなシンセやピアノを活用してドラマチックに再現します。軽めのドラムも、全体的に重たいアルバムの印象を和らげます。全編を通して東方妖々夢の雰囲気を大切にした、とても素晴らしいアルバムです。
桜の季節が近づくたびに本作を聴き込んで早十数年…。個人的には東方妖々夢オンリーアレンジ最高傑作だと思っています。今まで聴いた東方アレンジ作品の中でもトップ3に入る、思い入れの深い大名盤です。
2005年 ※UI-70/Demetori名義
冬のコミックマーケット69で頒布された本作は、UI-70の如日(Gt/B/Synth)と、同人音楽ユニットDemetoriの徳南(Gt/B/Synth)と九宝寺(Dr/Perc)の3人による共同制作となります。東方花映塚オンリーのプログレ・HR/HMインストアレンジで、打ち込みを使用せずに収録されています。10分を超える大作が2曲も入っているのがプログレしてますね。笑 ジャケットイラスト担当は藤原々々。
まずはUI-70パート「此岸の塚 (Introduction)」で幕を開けます。Introductionの副題が示すように2分足らずの小曲で、自然音のSEが聞こえる静かな空間に瞑想的なピアノを奏でます。
そしてここからしばらくDemetoriパートが続きます。「花映塚 ~ Higan Retour」は7分に渡る大作で、複雑なリズムを繰り広げると、蠢くような鈍重なギターやベースがミニマルなフレーズを反復し、一方でドラムはトリッキーで飽きさせない工夫がなされています。変拍子を用いつつ、緊張の張り詰めるシリアスな演奏に圧倒されます。中盤にドラムのいない不穏な静寂が僅かに訪れますが、その後ドラムが戻ると激しさを増します。ハードでスリリングなプログレです。
続いて「おてんば恋娘の冒険」。原曲の持つコミカルで軽快な雰囲気はそこにはなく、引きずるようなリフが鈍重な雰囲気を醸し出し、これが中々耳に残ります。主旋律を奏でるリードギターと、リズム隊の刻むリズムを意図的にずらした変則的な構成は違和感があり、フックを引っ掛けます。途中バンジョーによるソロやピコピコシンセが出てきたり、終盤には叙情的なギターソロやメロトロンによる感情の煽りなどもあり、鈍重で印象的なリフの合間合間に様々な表情を見せます。
そして「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」は勢いのあるアレンジですが、メロディアスな主旋律は原曲と比べると拍が足らず、数えてみると6/8拍子で展開されています(リズムチェンジも多用されています)。途中ドリーム・シアターっぽいパートもあり、凄まじく火花を散らしながらスリリングな楽曲を繰り広げます。とてもカッコ良い1曲です。
ここでUI-70による「フラワリングナイト」を挟みます。変拍子を用いて、原曲とは少し異なる速弾きパートを刻んでいます。如日のリードギターは徳南のものよりも派手で、更にシンセストリングスが楽曲を彩ります。打ち込みではなく、手数の多い九宝寺によるドラムのおかげでスリリングな仕上がりで、コラボ効果が良い方向に機能していますね。中盤にラテンっぽいアコギやピアノなどの落ち着いたパートを挟んで、また終盤に向けてテンションを高めていきます。緩急ついた演奏はとてもカッコ良くて魅力的です。
そしてここから3曲は再びDemetoriパート。「ポイズンボディ ~ Forsaken Doll」はザクザクとした鈍重でメタリックなギターが冒頭から緊張を高めます。音を重ねているのかメロディアスな主旋律、そして金物を多用したドラムがスリリング。リズムチェンジを多用した複雑な楽曲構成かつ全体的に重厚で、本作の中では特にテクニック偏重な印象を受ける楽曲です。
終盤に差し掛かる中、Demetoriによる10分超えの大作が「六十年目の東方裁判 ~ Fate of Sixty Years」です。繊細なアコギや落ち着いたフルートのような音色が混じり合って、しっとりと哀愁を生み出します。テンションの張り詰めた本作の中で数少ない落ち着いて聴ける瞬間ですが、平穏も長くは続かず、2分過ぎからメタリックかつスリリングな演奏に切り替わります。チャーチオルガンが荘厳な空気に変えた後の、3分半手前辺りからの叙情的なメロディの不意打ちに思わず泣きそうになります。スラッシュメタル風のアグレッシブで疾走感のある演奏の上で、メランコリックな主旋律を奏でるギターが美しいんです。終盤はメロトロンも用いて感動的に仕上げます。
「花は幻想のままに」はドラムレスで徳南単独のアレンジ。アトモスフェリックな趣で、ぼんやりとして幻想的な空間にアコギを爪弾く音が優しいです。
そしてUI-70にバトンを渡し、如日による10分超えパート「春色小径 ~ Colorful Path」へ。前曲の優しく穏やかな空間を踏みにじるようなヘヴィなサウンドで、緊張が一気に高まります。15/8拍子のメタリックな演奏から、哀愁たっぷりの渋みのある演奏へ切り替えて、そしてまたギュインギュインとギターの唸るメタルパートへ。憂いに満ちたピアノやアコギが主導するパートを挟むなど、緩急富んだ楽曲です。
最後に如日による「彼岸帰航 ~ Riverside View」。キャッチーなメロディを奏でるリードギターがとにかく爽やかで、楽曲としてもストレートで明瞭なハードロックです。複雑な楽曲が多く並ぶ本作を、難解な印象で終わらせずに爽快に締め括ってくれます。
Demetoriにとっては本作が初の東方アレンジ作品となるようですが、とにかく演奏力の高さに圧倒されます。原曲譲りのキャッチーなメロディで魅せる部分ももちろんありますが、東方花映塚アレンジというよりも、高品質なプログレメタルとして楽しめる作品です。
2007年 9thアルバム
冬のコミケであるC73で頒布された本作は、HR/HMは脱してジャズ・フュージョンへと大きく舵を切っています。選曲は東方紅魔郷、妖々夢、永夜抄より。全曲が如日によるアレンジですが、Demetoriの徳南と九宝寺もアレンジに協力しています。ジャケットイラストは同人サークル【向こう側】の観城はるか作。
オープニングを飾るのは「懐かしき東方の血 ~Old World」。ヘヴィメタルの時とは違って、軽めで手数が多めなドラムが特徴的です。アコギやピアノが優しく美しい音色を奏で、バックではリズミカルな演奏を繰り広げます。明るく爽やかな印象ですね。
「さくらさくら ~Japanize Dream…」はパタパタと忙しないドラムにピアノが積極的に絡んでいきます。そしてジャズギターとキーボードで主導権を取り合いますが、ファンキーなベースソロもあったりして全体的に躍動感に溢れています。原曲のメロディは薄めですが、代わる代わる主導権を奪い合うスリリングな演奏バトルに魅せられます。カッコ良い。
続く「恋色マスタースパーク」は躍動感のあるドラムが下支えし、シンセブラスが華やかに盛り上げ、アコギも軽快です。原曲のメロディアスな旋律を踏襲しつつも、ノリの良さや賑やかな印象の方が勝っていますね。リラックスできるBGMとして聴いていると、終盤にはエレキギターが突如主張してきてハッとさせられます。
「天空の花の都」はピアノやギターがしっとりとした憂いのあるメロディを聴かせるのですが、一方でテンポの速いドラムが焦燥感を煽ります。HR/HM的なハードさはないですが、フュージョン的なスリルに溢れています。エレキギターが主旋律を奏でる中盤だけはHR/HMを奏でるときの如日が垣間見えます。
「幽霊楽団 ~Phantom Ensemble」はピアノやシンセを重ねて晴れやかな印象で始まりますが、アコギに主導権を渡すと叙情的な原曲のメロディが活かされて哀愁が漂います。中盤のHR/HM的なギターソロも泣きまくっていて聴きどころですね。終盤は疾走感に溢れています。
「亡き王女の為のセプテット」は変拍子を用いたややトリッキーなリズムを展開し、癖のあるアレンジに仕立てています。アコーディオンのような音色の鍵盤が前半パートを主導しますが、後半はピアノやジャズギター、アコギなど様々変えてきます。
そして7分に渡る「幽雅に咲かせ、墨染めの桜 ~Border of Life」はカラフルなオルガンから、速弾きピアノと跳ねるようなリズム隊を繰り広げます。途中即興っぽいパートも含みますが、比較的原曲の雰囲気を色濃く残したアレンジで聴きやすいです。ラストのギターがエモーショナルです。
「東方妖怪小町」はピアノソロによる、しっとりと聴かせるタイプの楽曲です。賑やかなリズム隊が不在だからか、全体的に爽やかでリラックスした本作においては切なく哀愁を感じさせる1曲です。
ラストの「エクステンドアッシュ ~蓬莱人」は横ノリでファンク色が強いです。シンセブラスが華やかに彩るものの、メロディは哀愁たっぷり。ギターソロも泣きまくっています。
重くないですがBPMは速く、テクニカルなインストゥルメンタルアレンジを展開。時にスリリングで、時にリラックスして聴ける作品です。
2010年 15thアルバム
如日のお気に入り楽曲でもある東方妖々夢の名曲「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」のインストゥルメンタルアレンジ楽曲だけが詰まった、2枚組18曲入り約85分。楽曲への愛の重さがよく分かる、ある意味狂気じみた企画ですが笑、怖いもの見たさで手にしてしまいました。可愛らしいプリズムリバー三姉妹のジャケットイラストは同人サークル 蓮華座の乾ぬい作。夏のコミケC78で頒布されました。大半が如日によるアレンジですが、majinn、ZEKI、Menthol-Dが一部アレンジを手掛けます。
全楽曲タイトルが原曲と同じ「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」なので、判別のため便宜的に曲順でレビューします。
1枚目は『新規アレンジDisk』と題されています。
M1はグランジやオルタナメタル風のアレンジです。諦めのような哀愁が漂い、スローテンポで穏やかさとヘヴィさを緩急つけた演奏。ヘヴィなパートでは引きずるような重低音を唸らせ、リードギターがメランコリックな主旋律を奏でます。
M2は重低音を轟かせて鈍重なのですが、妙にリズミカルで不思議と躍動感もあります。『ブラックアルバム』以降のメタリカを想起させる作風で、Disc1ではかなり好みな1曲です。
M3は前曲から一転して爽やかな仕上がりですが、こちらはZEKIによるアレンジ。ドラムだけはパワフルでダイナミックですが、シンセサイザーが主導する演奏は清涼感があります。
M4はMenthol-Dがアレンジ。チープな音源で繰り広げられる演奏はスーファミとかレトロゲームを想起させます。懐かしい感じ。
M5もMenthol-Dが手掛けますが、こちらはノリの良いダンスチューンに仕上げています。ピコピコとしたシンセが心地良いですね。
M6は再びメタリックな楽曲に。うねるような、グルーヴの強いヘヴィメタルに仕上げています。ビヨンビヨン重低音を鳴らすシンセが特徴的。
M7はリードギターよりも主張の激しい重低音が強烈に唸り、鈍重な印象が強いです。終盤はリズムチェンジしてヒップホップ的なリズム感(歌はありませんが)。
M8はmajinnによるアレンジ。ストリングスを中心とした優雅な演奏をピアノが引き立てます。後半転調するとメロディの良さが際立ちますね。
M9は10分近い大作です。序盤はダブを用いたのかこもったように響くドラムが特徴的。暗く悲しげなピアノも相まって悲壮感に溢れていますが、重たさの中に美しさも感じられます。そして3分半過ぎてから更にスローダウンして、重苦しさが増す中、ギターがメロディアスな旋律を奏でます。終盤に一瞬静寂が訪れ、溜めてから再び感情を爆発させます。
M10は重厚ですが疾走感のある、パワフルでメタリックな演奏を繰り広げます。リードギターに対してリズム隊が倍速になる符割りで、勢いのある重低音に対して主旋律は若干間延びした印象を受けますが、それもスリリングな演奏にのめり込むと気にならなくなります。
『再録Disk』と題された2枚目は、過去作品からの再録となります。
M1は1分強の楽曲で、アコギやフルートを活用した落ち着いたアレンジに仕上げています。ですが終盤に電子的なサウンドでかき乱すと次曲へ。
M2はヘヴィメタルアレンジです。力強いドラムがメリハリをつけて、メタリックですが程良いキャッチーさも感じられます。ラストは唐突に終わるのでびっくり。
M3はドコドコとバスドラムの超強烈な連打で煽られまくる、BPMの速いメタル曲。2分半ひたすら疾走したあと、極端にスローテンポに落とし、そこから終盤にまた超速で爆走します。とにかく速いので強烈なインパクト。
M4はリズム隊が主導します。リードギターは落ち着いている…というかあっさりしていますが、ドラムはパワフルだし途中から刻まれる重低音はヘヴィです。終盤は原曲から離れてオリジナルな展開に。
M5は名盤『妖蝶乱舞 ~Deadly Dancing Butterfly~』からの再録。パワフルな冒頭から悠々としたギターが抜きん出て、そこからひんやりとしたシンセと主旋律を交互に奏でます。中盤のオルガンからのギターソロ、終盤の速弾きからのメロディアスなハモりなども聴きどころですね。個人的には聴き馴染んだこのアレンジが一番魅力的です。
M6はフュージョンっぽいアレンジです。重たくはないものの手数の多さで主張するドラムをバックに、冒頭はピアノやアコギが優しい音色を奏でますが、エレキギターやシンセ等が代わる代わる主導権を取り合いスリリングな演奏バトルを繰り広げます。
M7はアコギが前面に出たアンプラグド風。でもドラムは結構激しくて、アコギの柔らかな音色と対照的です。爽やかで聴きやすい、心地の良いアレンジです。
M8は、主旋律を奏でるシンセヴァイオリンは原曲の雰囲気を感じさせつつ優雅です。ですがそれとは対照的に重低音がズシンと轟いていて、花を愛でてる横で戦車が蹂躙するかのようなそのギャップに笑ってしまいます。
『新規アレンジDisk』は複数アレンジャーの起用で振り幅を持たせていますが、こちらの如日アレンジ曲は割と似たりよったりな印象。『再録Disk』は全て如日のアレンジですが、こちらは自然な感じにバラエティに富んでいてオススメできます。クオリティは決して低くないですが、原曲が全て同じなので一度聴いたら正直お腹いっぱいですね。笑 「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」が好きで好きでたまらない方は是非本作をどうぞ。
2011年 17thアルバム
博麗神社例大祭8で頒布された本作は、東方永夜抄オンリーのヘヴィメタルインストアレンジに仕上がっています。ジャケットイラストを手掛けるのは八梅。蓬莱山輝夜の可愛らしい絵柄は好みなのですが、ほんわりした絵柄とは裏腹に、UI-70の中でも特にヘヴィで暴力的な楽曲が詰まっています。何も知らずにジャケ買いすると痛い目を見ます笑(竹取飛翔だけはジャケのイメージに近いかも)
オープニング曲「永夜抄 ~ Eastern Night」は虫の鳴き声が響く静かな夜のような空間に、蠢くような重低音や炸裂するかのようなドラムが加わってスリルを掻き立てます。ミニマルなフレーズを反復してダークかつヘヴィな楽曲の世界観へと誘いつつ、激しい演奏に埋もれそうになりながらもピアノが旋律を奏でます。
「幻視の夜 ~ Ghostly Eyes」は低いチューニングで這うようなギターを中心に、ヘヴィなのに躍動感溢れる演奏を繰り広げます。1分過ぎからリズムを変えて、リードギターが原曲準拠のダークでメランコリックな主旋律を奏で、リズム隊が激しい演奏で引き立てます。
「蠢々秋月 ~ Mooned Insect」はメタリックで鈍重な演奏にオルガンの音色が魅力的ですが、浸る間もなく超加速してギターに主導権を渡します。激しくてスリリングな演奏にぶっ飛ばされますが、時折戻ってくるオルガンに救われます。
「もう歌しか聞こえない」は絶望の縁に突き落とすかのような暴力的な重低音の嵐を経て、メロディアスなギターが主旋律を奏で始めます。速いし重いし、とにかくアグレッシブで破壊力満点です。
「懐かしき東方の血」では、前曲から一転してこれでもかとスローかつ重たく歪んだギターで幕開け。そして40秒辺りから躍動感のある演奏へと変貌します。ノイジーですが、リズミカルな演奏はノリが良いですね。メロディは哀愁たっぷりで、これがまた魅力的なんです。
「恋色マスタースパーク」はBPMの速い爆速メタル曲で、マシンガンのように降り注ぐ重たい高速ドラムに、ザクザクと凄まじい勢いで刻み続けるリズムギターやベースがとてもスリリング。リードギターが耳馴染みのある原曲踏襲のメロディを高速で奏でて、全体的に速すぎて笑ってしまいます。
そして流れを変える名曲「シンデレラケージ ~ Kagome-Kagome」。ここまでの重たい楽曲を一瞬だけ癒やすアコースティックギター。それも15秒足らずで、鈍重でメタリックなサウンドへと様変わりします。でも所々でピアノやアコギを取り入れて原曲の持つメランコリックで独特なメロディをうまく引き立てていて、メタル一辺倒なアルバムの中に彩りを与えます。
「狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon」は6/8拍子で怪しげなメロディを奏でた後に、リズムチェンジしてヘヴィな楽曲を展開。メタリックですが、アクセントとしてチャーチオルガンを活用していて、ヘヴィでありながらも原曲のような怪しげな魅力を醸し出しています。この楽曲だけ如日とZEKIの共同アレンジです。
1分強の「ヴォヤージュ1969」は優しいアコギによる落ち着いたアレンジで、アルバム全体でも緩衝材的な役割を果たしていますね。
「千年幻想郷 ~ History of the Moon」は1分ほど、極端に静かな演奏で浸らせてくれますが、そこからヘヴィな演奏が目まぐるしく繰り広げられ、そしてエモーショナルなギターが原曲を踏襲したメロディアスな旋律をなぞります。ドラマチックな演出によって、原曲譲りのメロディの良さがよく引き立っています。アグレッシブですが、カラフルなシンセサイザーの味付けもあって華やかな印象。とても魅力的なアレンジに仕上がっています。
そして13分を超える大作「竹取飛翔 ~ Lunatic Princess」。冒頭は原曲を再現したような幻想的な音色で幕を開けますが、そこからはメタリックなバンド演奏が楽曲を引き継ぎ、原曲の雰囲気を残しつつもヘヴィに仕立てます。全体的にスリリングでカッコ良く、何度かガラスが割れるような音を挟んで楽曲展開を変えて緩急つけていますが、同じフレーズの反復もあったりして13分は若干くどいかも。
最後は「月見草」で、無音かと思えばとても小さな音量でピアノ演奏をしています。
私が聴いたUI-70作品と比べても前半は屈指のヘヴィさでとてもアグレッシブ。後半はメロディの良さも活かして、ヘヴィですがキャッチーでもあります。