🇯🇵 UNISON SQUARE GARDEN (ユニゾン・スクエア・ガーデン)

スタジオ盤②

Catcher In The Spy

2014年 5thアルバム

 前作発表後に全国ツアーを行い、またシングル「桜のあと (all quartets lead to the?)」と「harmonized finale」をリリース。その後、斎藤宏介のポリープ摘出手術のため、UNISON SQUARE GARDENは2014年3月から1ヶ月半ほど活動休止になります。斎藤が無事復帰した後、満を持して5thアルバムとなる本作がリリースされました。
 1stから4thにかけて順当にポップ化というかキャッチーなロックへと進化していきましたが、『CIDER ROAD』でキャッチー路線の完成系がみえた反動か、本作はロック色の濃い作品に仕上がりました。初期のような尖った楽曲も多く、とてもスリリングです。
 
 
 3分に満たないオープニング曲「サイレンインザスパイ」がとてもスリリング。暴風のような暴力的なサウンドから、斎藤の「カモン、イエーイ!」を皮切りに鋭利なギターがザクザクと切り込んできます。異様な緊迫感に満ち溢れた演奏は、初期楽曲のように尖っていてかつ陰のある雰囲気を持っています。ポストパンクっぽい楽曲ですね。焦燥感を煽り立てる高速な演奏と、まくし立てるような早口で攻撃的な歌。非常にスリリングでカッコ良い名曲です。間髪入れず続く疾走曲「シューゲイザースピーカー」。ノイジーな轟音に甘いメロディが特徴のシューゲイザーとは少し違うかな。オープニング曲に似たキレッキレの鋭い演奏は少し陰があり、近寄りがたい尖った雰囲気です。ベースもゴリゴリと唸ってメタリックですね。ロック色の強い演奏ですが、田淵智也の書く歌メロはキャッチーなので聴きやすさも持っている。そんな絶妙なバランスが、スリリングな良曲に仕上がっているのかもしれません。そして超名曲「桜のあと (all quartets lead to the?)」。個人的には「オリオンをなぞる」にも匹敵するUNISON SQUARE GARDENのツートップで、世に溢れる様々な桜ソングの中でも一番好きかもしれません。合唱から始まる歌メロはとてもキャッチーだけど、少し切なさも含んでいます。鈴木貴雄のダイナミックなドラムを中心とした勢いのある演奏と、斎藤の早口気味な歌詞で、煽り立てるように一気に駆け抜けます。そして弾けるようなサビがとても爽快だけどメロディアスでもあり、これがたまらなく良いんです。またオルガンの味付けが、この楽曲の持つメランコリックな側面を増幅させます。なお歌詞には「with 喜怒哀楽」というフレーズが含まれていますが、同じく『夜桜四重奏』でタイアップした楽曲「kid, I like quartet」を意識したそうです。ほぼ全ての楽曲を田淵が書くことで統一した世界観を保てるから、他の楽曲と歌詞のどこかで繋がっているという遊びが色々な楽曲で見られます。
 オープニング3曲の持つ緊張感があまりに凄まじいので、必然的に次曲には落差を感じてしまうんですが、ここで「蒙昧termination」というひねた楽曲を持ってきています。ギターやベースがヘヴィでノイジーな重低音を響かせますが、乗っかるメロディはひねくれポップ。連呼される「蒙昧termination (もうまいターミネーション)」のフレーズが強烈に耳に残り、不思議と中毒性があります。続く「君が大人になってしまう前に」でひと息。個性の強い楽曲群の中では少し地味ですが、穏やかな曲調で優しく癒やします。タイトルにインパクトのある「メカトル時空探検隊」はリズミカルで軽快な楽曲。語感の良い歌詞が魅力的なポップ曲で、キャッチーな歌は口ずさみたくなります。「全人類に愛とチョコレートを!」のコーラスも面白いですね。間奏ではギターソロからスリリングなバンド演奏を繰り広げます。
 ここから勢いのある楽曲が連続していて、まずはハードロック曲「流れ星を撃ち落せ」。斎藤のギターリフが楽曲を大きく牽引しますが、激しいリズム隊も中々魅力的。勢いのある演奏に負けず、歌も攻撃的な雰囲気ですね。終盤の「君はマジでヤバイ ヤバイ ヤバイ ヤバイ ヤバイ」も強烈です。笑 そして「何かが変わりそう」はドラムが激しいですね。Aメロは大人しくてベースがリードしますが、ノイジーなギターや手数の多いドラムが激しく盛り上げていきます。早口気味の歌も、勢いのある演奏と合わさって焦燥感を煽るような感覚です。続く「harmonized finale」はアニメ『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』の主題歌。流麗なピアノが印象的ですが、テンポはかなり速いしバンド演奏は激しくてスリリングです。感傷的な気分を誘うメランコリックな歌を、勢いのある演奏で煽りながら盛り上げていきます。感情が込み上げるというか、込み上げさせられるような感じの良曲です。そして、とどめに凄まじい緊張感を放つ「天国と地獄」。オープニング曲のように張り詰めた、カミソリのようにキレッキレの演奏はとてもスリリング。勢いのある演奏は焦燥感を煽り立てます。でも、尖った演奏なのに親しみを覚えるのはキャッチーな歌メロのおかげでしょうね。田淵のメロディセンス、言葉選びの賜物でしょう。ここでスリリングな疾走曲のターンは終わり、キャッチーで親しみのある「instant EGOIST」。張り詰めた緊張を解きほぐし、楽しい気分にさせてくれます。軽快な演奏はリズミカルで心地良く、メロディもポップな印象です。ラスト曲は「黄昏インザスパイ」。開放感のある爽やかな楽曲で、アコギも小気味良いのですが、どこか空虚というか切なさが漂います。
 
 
 また、初回限定盤には『UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2014 “桜のまえ”at Zepp Tokyo 2014.03.22』と銘打ったライブ盤が付属します。音質が良い上に、演奏も歌も絶好調ですね。
 キレのあるギターリフで始まる「メッセンジャーフロム全世界」。一定のリズムを反復して単調だけど心地良く、そこにキャッチーな歌メロが乗っかり楽しませてくれます。「23:25」ではイントロから会場のコールでノリノリ。田淵のベースがブンブン唸っており、間奏ではカッコ良いベースソロも聴かせますが、張り合うように斎藤のギターソロが続きます。そしてノリの良さを保って疾走曲「kid, I like quartet」へ。勢いがあって早口気味な楽曲ですが、ライブでも難なく再現されています。数多くのライブをこなして場慣れしてるんでしょうね。終盤の早口ラップをコーラスも含めてトチらないのは流石です。「セク×カラ×シソンズール」もキャッチーで、「ハロハロウィーイェー」のコーラスなどノリノリで楽しませてくれます。その後トークをカットしたのか、少し間をおいて「流星のスコール」へ。前曲まで続いたアップテンポ曲と比べ少しだけテンポを落とし、キャッチーだけど少し切ない歌を届けます。全体的にかなり高音域の歌ですが、ギターを弾きながらでもブレない斎藤の歌唱力が凄いですね。続く「ため息 shooting the MOON」は、即興的な演奏を繰り広げた後に聞き慣れたイントロに繋げます。手数が多くて、またバスドラムがズシンと響く鈴木のドラムがスリリングでカッコ良い。また、詰まりに詰まった歌詞をミスらずに早口で歌い切るのも凄いですね。「マスターボリューム」はカミソリのように切れ味抜群のギターで開幕。グルーヴィに唸るメタリックなベース、シンバルを多用したけたたましいドラムなど、全体的に激しい演奏がスリリングです。「きみのもとへ」はリズム隊が特に強調されていて、リズミカルなビートが爽快。キャッチーな歌メロ、そして後半は手拍子も加わり、身体が自然とリズムに乗せられます。そして鈴木による「ドラムソロ~セッション」。ライブならではの醍醐味ですね。鈴木は普段の楽曲でもとても上手い印象ですが、ドラムソロでも手数が多くダイナミックなドラムを聴かせ、とてもスリリングで楽しめます。途中から田淵のベースが加わってマッチョな音を響かせ、斎藤のノイジーなギターが加わって一段落したら唐突に「シャンデリア・ワルツ」。イントロのパワーに気圧されます。歌が始まるとキャッチーなメロディで楽しませてくれます。この後「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」が少し流れるのですが、残念ながらすぐフェードアウト…。アルバムでのお披露目は翌年の『DUGOUT ACCIDENT』までお預けです。そして「ワールドワイド・スーパーガール」。跳ねるようにリズミカルな演奏と語感の良い歌で、ノリが良くてとても楽しい1曲です。終盤に奇声を上げているのは田淵でしょうか?笑 続いて、超速で込み入ったイントロが非常にスリリングな「場違いハミングバード」へ。歌が始まると緊迫感は後退して、キャッチーさが前面に出てきます。メロディも魅力的です。最後に、ツアータイトル「桜のまえ」の元ネタ「桜のあと (all quartets lead to the?)」。コーラスが楽しいキャッチーな歌メロと、煽り立てるように疾走するスリリングな演奏の絶妙なバランスが、抜群の高揚感を生み出します。ノリが良いだけでなくメランコリックな感覚も刺激し、聴き終えた後に溜め息が出るほど心地良い余韻を残します。実に素晴らしいライブ盤でした。
 
 
 トータル的な完成度の高さでは前作に劣るものの、緊張感の瞬間最大風速は本作が抜きん出ていて、異様なまでの凄まじい緊張感があります。このスリルを味わいたくて良く手を伸ばします。
 初回限定盤のみに付属するライブ盤も完成度が高くてオススメできます。

Catcher In The Spy
初回限定盤(2CD)
UNISON SQUARE GARDEN
Catcher In The Spy
通常盤
UNISON SQUARE GARDEN
 
Dr.Izzy

2016年 6thアルバム

 2015年にUNISON SQUARE GARDENは10周年を迎え、初のベストアルバム『DUGOUT ACCIDENT』をリリース。またファンクラブ「UNICITY」も発足しました。この間にメンバー変更もなく、斎藤宏介(Vo/Gt)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)のスリーピースバンドというスタイルは継続中。そして翌年リリースされたフルアルバムが本作です。自信の表れかシングルは1曲のみですが、現時点で彼らの最大ヒット曲である「シュガーソングとビターステップ」を収録しています。この楽曲でUNISON SQUARE GARDENを知った人も多いのではないでしょうか。
 さて本作ですが、前作と比べてもそこまで劣った感じはないものの、他の作品より愛着が少なくてあまり聴かない作品です。何でだろうと考えたものの、個人的な理由により(プライベートの変化や、好きだった他アーティストのロスが同年に重なったり等)、この時期UNISON SQUARE GARDENをあまり聴いていなかったんですよね。…と思ってレビューしようと思ったら「エアリアルエイリアン」をMP3に取り込み漏れていたということに気付く(CDは発売日に買ったのに3年間気付かなかった…マジかぁ)。ずーっとオープニング曲が欠けた未完成な状態で聴いていたから物足りなかったという、とてもお粗末なミスが理由でした。笑
 
 
 前述のとおり個人的には曰く付きの「エアリアルエイリアン」で開幕。変拍子を取り入れた楽曲で、怪しげでスペイシーな浮遊感が漂います。楽曲展開も独特で、リズムチェンジを駆使した変態的なプログレ曲です。終盤、サビでテンポダウンして雄大な広がりを見せますが、最後に急加速。続く「アトラクションがはじまる (they call it “NO.6”)」は切れ味抜群だけど清涼感のあるスリリングな疾走曲。時折入る鈴木のツーバスも強烈ですね。斎藤の歌が始まると一気にキャッチーな印象へと変わります。ポップで、サビは少しメランコリックな感覚を持っています。ちなみに「NO.6」とは6thアルバムだからだそうです。「シュガーソングとビターステップ」は前述のとおり大ヒットしたシングルで、アニメ『血界戦線』のタイアップが付きました。音数の少ない序盤は田淵のゴリゴリとしたベースが強烈。跳ねるようにリズミカルな演奏が心地良く、またギュッと詰まった早口気味な歌詞でキャッチーなメロディを奏でます。全体的にキャッチーな印象でオルガンの味付けも絶妙。ですが間奏だけは結構カオスだったりします。「マイノリティ・リポート (darling, I love you)」は哀愁漂う疾走曲です。憂いのあるギター、ゴリゴリベースに弾けるようなドラム。サビや2番では密度の濃い激しい演奏を展開し、そこに斎藤の歌うメランコリックな歌が切なさを誘います。この歌メロが特に魅力的で、本作の中では際立つ名曲ですね。メロディの良さで言えば正直前曲にも匹敵しますね。続く「オトノバ中間試験」はキャッチーで軽快なロック曲。サビメロはPUFFYの「愛のしるし」を彷彿とさせ、また富士サファリパークのパロディと思われる「ホントにホントにライオンだ」など、遊び心に溢れる田淵のメロディと歌詞にはニヤリとしますね。「息継ぎがてんでないじゃんか 心配ですsee? see? (中略) 呆れるまで斎藤に任せといて」という、早口で歌詞が詰まったこの楽曲に対する自虐ネタのような歌詞も面白いです。続く「マジョリティ・リポート (darling, I love you)」はジャジーなリズムと、ダーティなギターが渋い。序盤の雰囲気だけを比べると「マイノリティ・リポート (darling, I love you)」とタイトル逆じゃないかという気もしますが、サビメロは晴れやかで、それ以降後半は明るく展開します。「BUSTER DICE MISERY」は恐ろしいほど緊迫したイントロから、スカのようにリズミカルでキャッチーなメロディへと移行する疾走曲。間奏は鈴木のテクニカルなドラムなど非常にスリリングな演奏で魅せてくれます。続いてハードロック曲「パンデミックサドンデス」。斎藤のハードでカッコ良いギターで開幕し、ゴリゴリ唸る硬質なベース、手数の多すぎるドラムなど、焦燥感を煽るような激しい演奏が炸裂。とてもスリリングな楽曲です。激しい演奏に呼応するように歌メロもヒステリックな感じですね。一転して「8月、昼中の流れ星と飛行機雲」は穏やかで優しい1曲。繊細なギターが心地良いですね。メロディアスな歌を展開しますが、「2月、白昼の流れ星と飛行機雲」のアンサーソングでしょうか。「フライデイノベルス」も繊細なギターで開幕します…が、間奏にとてもスリリングな演奏を挟んできます。高音域中心の歌メロはキャッチーですね。そして「mix juiceのいうとおり」。洒落たイントロから始まり、序盤は落ち着いた雰囲気。ですがサビに向かってどんどんポップに盛り上がっていきます。キャッチーなメロディが良い感じ。また、終盤の間奏は自由気ままなセッションを展開して、とても楽しそうな空気が伝わってきます。ちなみにキーボードとコーラスで、イズミカワソラがゲスト参加しています。ラストの「Cheap Cheap Endroll」は2分強の短い楽曲。勢いに溢れたパンク曲で、シンバルが炸裂しまくる激しい演奏が強烈ですね。早口での「君がもっと嫌いになっていく もっと嫌いになっていく」の連呼もパンキッシュな印象です。
 
 
 ここからは初回限定盤にのみ付属する2枚組ライブ盤。「UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2015-2016 “プログラムcontinued”at NHKホール 2016.01.28」と題したライブです。全23曲111分の大ボリュームで、ライブ盤として独立させても良いくらい贅沢なボーナスディスクです。でも楽曲によっては少し粗が目立ち、個人的には前作の初回限定盤に付属するライブ盤の方が好みだったりしますけどね。

 斎藤のアカペラで始まる「さわれない歌」でライブは開幕。そこからヘヴィだけどキャッチーな演奏が加わり、賑やかな雰囲気に。続いて定番のアップテンポ曲「kid, I like quartet」。キレのある演奏と、軽快でキャッチーなメロディが爽快ですね。コーラス含めた早口ラップは相変わらず圧巻です。哀愁漂う疾走曲「コーヒーカップシンドローム」をこなした後は、緊張を急激に高めて「天国と地獄」。演奏は結構荒っぽく、異様な緊迫感を持つ原曲には及ばないものの、ライブでもスリリングな疾走曲を展開します。「きみのもとへ」はリズミカルな演奏と、ポップな歌メロで楽しませてくれます。跳ねるようにキャッチーな感覚です。続く「流星のスコール」は開放的なイントロからワクワクさせてくれます。切ないメロディも魅力的ですね。ですがテンポが若干覚束ない気がします。駆け足気味のアップテンポ曲「オトノバ中間試験」はアルバム発売前なので新曲扱い。キャッチーなメロディに、コーラスも楽しげな雰囲気です。そして「シューゲイザースピーカー」で再びスリリングに。斎藤のギターのキレが少し弱いですが、田淵のメタリックなベースと鈴木のダイナミックなドラムが緊張感を保ちます。このあと、個人的にUNISON SQUARE GARDENの2トップの楽曲が並ぶのが嬉しい。まず鈴木のカウントから始まる「桜のあと (all quartets lead to the?)」。疾走気味の爽快な演奏に乗る、コーラスの入ったキャッチーな歌メロ。サビだとメランコリックな感覚を生み出します。間奏のギターソロも魅力的です。続いて「オリオンをなぞる」。ピアノがないのが残念ですが、代わりにイントロに即興演奏を交えて楽しませます。ワウワウ唸るギターにグルーヴィなベース、手数の多いドラムなど絶好調。スリルを提供してくれた後は聞き慣れたイントロへと続き、抜群にキャッチーな歌メロでワクワクさせてくれます。

 ここからライブ盤の2枚目。メロディアスなベースにリズミカルな演奏が印象的な「チャイルドフッド・スーパーノヴァ」で後半幕開け。キャッチーなメロディも良く、またホイッスルもきちんと再現されています。笑 続く「夕凪、アンサンブル」は一転して、しっとりとしたバラード。穏やかでメロディアスな歌をじっくりと聴かせてくれます。何気に本ライブでは最長の楽曲だったりします。「誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと」はアップテンポ曲。でも他の極端な楽曲に比べると少し大人しめな印象です。でもポップなメロディは流石で魅力的です。そしてキャッチーなイントロからワクワクする「シャンデリア・ワルツ」へ。抜群にキャッチーで、爽やかな雰囲気が素晴らしい名曲…ですが、斎藤の歌は少し高音がきつそうな印象。ただ、終盤の早口パートは吹っ切ったように砕けた感じで楽しませます。「パンデミックサドンデス」で緊張感を一気に高めます。キレッキレのギターを中心に、荒々しくてスリリングな演奏を披露。そのまま鈴木の「ドラムソロ」に突入。今回ライブは全般的にミックスが少し悪く、鈴木のドラムの魅力が少し伝わりづらいのですが、このドラムソロでは相変わらずスリリングなドラムを披露します。手数が多くて、次に何が出てくるんだろうと高揚感を煽ります。ギターとドラムが加わって即興演奏を展開した後、シャウト気味のカウントから繰り出す「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」。冒頭からとてもキャッチーなメロディを展開しますが、歌メロは進むほどにどんどんメランコリックな印象へと変わります。時折入る賑やかなシンセや、終盤のサンバのようなビートで明るさを取り戻しますが、メロディは少し切ない感じ。そしてヒット曲「シュガーソングとビターステップ」。唸るオルガンやバッキバキのベースがカッコ良く、リズミカルな演奏やスリリングな間奏も良いですね。そして何と言ってもキャッチーな歌メロ、これに尽きます。耳に残るポップなメロディが魅力的。続いて狂ったようにハイテンションの「場違いハミングバード」。鈴木の怒鳴るようなカウントから、超速で緊張感Maxのイントロで圧倒。ですが歌に入ると途端にキャッチーな印象へと変わるという、このドラスティックな変化に魅せられます。原曲と比べても駆け足気味で、とにかくスリリングです。そしてラスト曲「プログラムcontinued」。キャッチーで少し切ないアップテンポ曲を持ってきて、爽やかにライブを締め括ります。最後の溜めもライブらしくて良いですね。
 そしてアンコール。開放的な雰囲気だけど切なさを持った「黄昏インザスパイ」。テンポだけは軽快ですが、ファルセット気味の声で歌うメロディアスな歌はしんみりとさせます。続く「箱庭ロック・ショー」はグルーヴ感のある演奏が心地良いですが、メロディには陰があります。最後に「ガリレオのショーケース」。駆け足気味でキレのある演奏が中心ですね。最後の溜めはサイケデリックな浮遊感があります。キャッチーな名曲は本編に持っていったので、アンコールは少しマイナーな印象。
 
 
 「シュガーソングとビターステップ」で勝負をかけにきた感じ。確かに名曲ですが、個人的にはこれより好みなシングルが結構あって、それらの入った別のアルバムを聴くことが多いんですよね…。
 そして初回限定盤のライブ盤は、本編以上にボリューミーで聴きごたえがあります。

Dr.Izzy
初回限定盤(CD+2 LIVE CD)
UNISON SQUARE GARDEN
Dr.Izzy
通常盤
UNISON SQUARE GARDEN
 
MODE MOOD MODE

2018年 7thアルバム

 配信限定も含め4曲のシングルを収録しています。それでいながらシングルは後半に固めて、オープニング3曲にシングルを持ってこない強気な構成です。特にオープニング曲「Own Civilization (nano-mile met)」で強烈なパンチを食らわせてきますが、全体的にはキャッチーで聴きやすいです。個人的には「Invisible Sensation」が突出して好みです。
 
 
 オープニング曲「Own Civilization (nano-mile met)」ニルヴァーナばりのグランジ曲。静と動の極端な対比が強いインパクトを与えますが、これがカッコ良い。あまりにヘヴィでノイジーな演奏が強烈ですが、攻撃的な演奏とは対照的に斎藤宏介のハイトーンボイスはキャッチーなメロディを歌います。ちなみに「nano-mile met」は「7枚目」とかけているのだそう。続く「Dizzy Trickster」では、イントロから鈴木貴雄のマシンガンのようなドラム連打を中心に、焦燥感を煽るスリリングな演奏を展開します。緊張が張り詰めた疾走曲ですが、でも甘くて優しい声で歌うメロディはポップな印象で親しみやすいですね。激しい演奏とキャッチーな歌メロというギャップの激しい楽曲が、1曲目2曲目と連続しますが、「オーケストラを観にいこう」で雰囲気を変えます。イントロでは開放的なアコギが爽やかな印象。サビではストリングスが加わって、優しいメロディを優雅に引き立てます。UNISON SQUARE GARDENは3曲目に、自信を持っているであろう当たり曲を持ってきますね。「fake town baby」は『血界戦線&BEYOND』のタイアップの付いたシングル曲。切れ味鋭くノイジーで、かつテンポの速い演奏が強い緊張を強いてきます。そして田淵智也の書く歌詞は相変わらず詰め込み過ぎなのか、早口気味な歌がスリリングな演奏とともに焦燥感を煽ります。続く「静謐甘美秋暮抒情」は「せいひつかんびあきぐれじょじょう」と読みます。タイトルのインパクトは強烈ですが、演奏はリズミカルながらも比較的落ち着いた感じ。歌にはどこか哀愁や憂いが漂っています。間奏の泣きのギターもしんみりとさせます。「Silent Libre Mirage」は配信限定シングル。駆け足気味なイントロからノリノリです。リズミカルで跳ねるような歌も心地良い。そして「MIDNIGHT JUNGLE」は「もったいない」の連呼が強烈なインパクト。攻撃的な歌唱ですが歌詞が面白いので惹かれます。演奏はヘヴィでダーティな雰囲気ですが、鈴木の刻むビートが語感の良い歌にピッタリです。続いてファンキーな楽曲「フィクションフリーククライシス」。ファンク色の強いリズミカルな演奏を展開し、これがカッコ良いのですが、サビではファンク色を消してキャッチーでポップな印象へと変わります。2分手前くらいから急にダーティな雰囲気に変わるので緊張が走りますが、またファンキーなリズムからキャッチーなサビメロへと繋ぐという、変化に富んだ楽曲です。「Invisible Sensation」はアニメ『ボールルームへようこそ』の主題歌。初めて聴いたときにビビビッと強烈に衝撃を受け、とてもカッコ良いというのが第一印象でした(オープニングアニメもカッコ良くて相乗効果もあったと思います)。聴き込んでもファーストインプレッションは変わっていません。キャッチーな頭サビ、一度聴いたら忘れられない強烈にカッコ良いイントロ、途中唐突に入るスリリングなラップパート。また「踏み入れたやつから順々にシードを取る冷徹な仕組み」とか、フレーズだけ聞くと残酷な印象も感じる早口気味の歌詞はスリリングですが、よく読むと焚きつけるような応援ソングですね(終盤の「だから、生きてほしい!」とか良い)。とにかく魅力の沢山詰まった名シングルで、UNISON SQUARE GARDENの楽曲の中では5本の指に入る名曲です。「夢が覚めたら (at that river)」は8分の6拍子で、それまでの楽曲と比べれば比較的ゆったりとした印象を与えます。メロディアスな1曲でじっくり浸らせてくれます。そして「10% roll, 10% romance」もアニメ『ボールルームへようこそ』の主題歌。「Invisible Sensation」と比べると明るくポップな印象。斎藤の歌メロは優しいし、ギターもキャッチーなメロディを奏でています。ですが、ゴリゴリとしたベースやバタバタと忙しいドラムは激しいですね。そして最後に「君の瞳に恋してない」。タイトルのインパクトが強烈。笑 ピアノやブラスセクションの入った、リズミカルで賑やかな楽曲です。ポップでとても楽しい雰囲気。聴き終えた後の満足感も素晴らしいです。
 
 
 最初の2曲はヘヴィですが、全体で見ると『CIDER ROAD』に次いでキャッチーな仕上がりです。シングル曲も多く、取っつきやすい作品だと思います。

MODE MOOD MODE
初回限定盤A(CD+Blu-ray)
UNISON SQUARE GARDEN
MODE MOOD MODE
初回限定盤B(CD+DVD)
UNISON SQUARE GARDEN
MODE MOOD MODE
通常盤
UNISON SQUARE GARDEN
 
Patrick Vegee

2020年 8thアルバム

 前作『MODE MOOD MODE』から実に2年8ヶ月ぶりとなるフルアルバムです。シングルといくつかの楽曲を除いて、発売日までトラックリストは明かされず、代わりに発売日前週にYouTubeで毎日1曲ずつ楽曲の一部をお披露目していました。CDの帯に書かれた「食べられないなら、残しなよ。」のキャッチフレーズが示すように、ポップさは控えめでハードかつ変則的な楽曲が多く、ファンを試すかのようです。
 
 
 オープニング曲「Hatch I need」は8枚目とかけているのでしょうか。冒頭から不快なノイズが鳴るヘヴィな楽曲で、田淵智也のベースが跳ねるように強烈なグルーヴを生み出します。攻撃的な歌唱も含めてかなりヘヴィな疾走曲ですが、リズミカルで意外と楽しめます。そして間髪入れず疾走曲「マーメイドスキャンダラス」でドタバタと駆け抜けます。緊迫したスリリングな演奏で、鈴木貴雄の高速ドラムが雨あられのように降り注いで焦燥感を煽る煽る。演奏はアグレッシブで突き放すようですが、でも斎藤宏介の歌うメロディはキャッチーで親近感がある。そんなことろが彼ららしい1曲ですね。「スロウカーヴは打てない (that made me crazy)」はノリの良い演奏がコミカルな雰囲気を作り出しています。でも途中トリッキーなリズムを挟んだり、サビはメロディアスだったり変化に富んでいます。歌メロパートは相変わらず歌詞が詰め込まれているうえに、変拍子も絡んでくるので難易度が高そうです。ラストの歌詞で「つまりレイテンシーを埋めています」と次曲のタイトルを含ませて終えると、すぐさま「Catch up, latency」へ繋ぎます。アニメ『風が強く吹いている』のタイアップの付いたシングルで、晴れやかで爽やかなアップテンポ曲です。斎藤の聴かせる終盤の悠々としたギターソロも爽快。「摂食ビジランテ」は最小限まで削ぎ落とした武骨なビートに斎藤の歌だけで、そして時折グランジ風のノイジーな轟音が表れる、メリハリのある強烈な1曲。サビメロもダークな雰囲気だしキャッチーさとは無縁の攻めた楽曲ですが、歌詞に出てくる「小林くん」だの「浜崎さん」はちょっと笑えます。「夏影テールライト」は前曲とは対照的にキャッチーで清涼感のある1曲。斎藤の甘い歌声に、鈴木の躍動感あるドラムが爽快。「Phantom Joke」はアニメ『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』に起用されたシングルです。騒がしくてダーティな演奏は、途中にリズムチェンジを紛れ込ませて変化に富みつつも、ずっと疾走しっぱなし。そして歌詞がぎっちり詰まった歌はまくし立てるようで、それでいてメロディには哀愁が満ちていて切なさも感じられます。とても密度の濃い4分間です。「世界はファンシー」は、ドタバタしたイントロからダーティかつ切れ味のあるカッティングを繰り広げ、アークティック・モンキーズを想起させます。早口でラップを展開した後、サビはメロディに乗せてマシンガンのように早口でまくし立てます。これも攻めた楽曲ですが、かなりカッコ良いです。「弥生町ロンリープラネット」は削ぎ落としてスッカスカなイントロから穏やかな歌を展開しますが、サビではシンバルが炸裂して騒がしくて、静と動の対比が強烈。優しい歌メロとは乖離した実験的な演奏をバックで展開しています。ラストは「そしてぼくらの春が来る」と結ぶと次曲「春が来てぼくら」へ。ストリングスで華やかなうえに前曲ラストの歌詞とのリンクが感動的です。アニメ『3月のライオン』のOP曲で、メロディアスな歌をストリングスで彩るキャッチーな楽曲です(OPよりED曲向きな雰囲気)。サビが部分的に「シュガーソングとビターステップ」に似てます。「Simple Simple Anecdote」はノリの良いポップ曲で、思わず踊り出したくなるような軽快なリズムビートが楽しいです。テンポは速いものの、取っつきやすい1曲です。そしてラストは「101回目のプロローグ」。101回目の「プロポーズ」ではないところが田淵らしいですね。「君だけでいい 君だけでいいや」や「約束は小さくてもいいから よろしくね はじまりだよ」など、2人の物語が始まる予感。そして勢い溢れる演奏で爽やかに駆け抜けます。

 初回限定盤には「USG 2020 “LIVE (in the) HOUSE”」 + 4 tracks -Patrick Vegee Edition-と題したBlu-ray DiscまたはDVDが付属します。同年7月に行われた生配信ライブの模様に、新たに4曲を撮影。
 
 
 実験的だったり攻めた楽曲が多く、一聴するだけでは取っつきにくくハードルが高いのですが、バラバラのような楽曲は歌詞の部分で次の楽曲とうまく繋いでいたり、細かい仕掛けで楽しませてくれます。疾走曲が多くて、息つく間もないスリリングな作品です。

Patrick Vegee
初回限定盤A (CD+BD)
UNISON SQUARE GARDEN
Patrick Vegee
初回限定盤B (CD+DVD)
UNISON SQUARE GARDEN
Patrick Vegee
通常盤 (CD)
UNISON SQUARE GARDEN
 
Ninth Peel

2023年 9thアルバム

 前作から2年半ぶりとなるフルアルバムで、前作のツアー中に楽曲を書き溜めていたそうです。楽曲はアニメ『ブルーロック』に起用されました。また久しぶりに『TIGER & BUNNY』シリーズのタイアップを果たしています。アルバムは全40分という比較的コンパクトな構成ですが、勢い溢れる楽曲が多くて密度は濃ゆいです。

 オープニング曲は「スペースシャトル・ララバイ」。頭から斎藤宏介の歌で始まります。鈴木貴雄の激しいドラムが楽曲に勢いをつけ、ロックバンド然としたパワフルで爽快な演奏を展開。それでいて歌メロはキャッチーなので聴きやすいですね。続く「恋する惑星」は本作のリード曲です。ブラスを大胆に導入した華やかな演奏や、黒っぽいコーラスも含めてR&Bっぽく、これまでにないタイプの楽曲で意外性を狙います。終盤には田淵智也のベースソロも聴かせてくれます。でも、ポップな歌はいつものユニゾンで安心。「ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ」は、エッジの鋭いギターにファンキーなベース、力強いビートがスリリングかつ躍動感のある楽曲を繰り広げます。カッコ良い演奏は緊張が張り詰めていますが、サビメロは開放感があります。そして「カオスが極まる」はアニメ『ブルーロック』のOP曲です。イントロから猛烈な演奏の嵐で、歌が始まっても隙間なく次々と襲いかかるノイジーな音の暴力。激しい演奏の手を時折緩めて緩急をつけますが、凄まじいテンションの高さに圧倒されます。「City peel」は一転して、シティポップ的なオシャレな感じになり、ギターも甘くメロウなムードを演出。ゆったりしていて、心地良いグルーヴと斎藤の優しい歌声に包まれます。終盤に唐突にアコギだけになる展開がグッときます。「Nihil Pip Viper (Album mix)」は配信限定シングルで、キャッチーなアップテンポ曲です。イントロで骨太なロックかと思わせつつ、歌が始まるとポップなメロディを展開。途中ミクスチャーっぽさも見せるこの楽曲は、歌の聴きやすさと演奏の激しさを両立しています。続く「Numbness like a ginger」は『ブルーロック』のED曲ですが、シングルカットしなかったアルバム曲です。90年代シティポップを意識したのだそうで、ジャズっぽいノリのオシャレな楽曲ですね。アンニュイな歌が感傷的な気分を誘います。そして「もう君に会えない」は、90年代オルタナ的な演奏に乗せた名バラードです。メロディの良さに加えて、サビでの斎藤の歌唱が切なくて涙を誘います。「アンチ・トレンディ・クラブ」は躍動感があってかつダーティな楽曲で、歌も語感が良くてリズミカルです。田淵のグルーヴ感あるベースがカッコ良く、また時折畳み掛けるような演奏はスリリングです。そして「kaleido proud fiesta」は、「かくしてまたストーリーは始まる」のフレーズとともに、清涼感のある演奏で高揚感を掻き立てます。アニメ『TIGER & BUNNY 2』のOP曲で、第2期を示唆するような歌詞が嬉しいですね。キャッチーなメロディをストリングスが彩りますが、鈴木の叩く高速ドラムが楽曲をスリリングに仕立てます。ラストは「フレーズボトル・バイバイ」。ドラムもベースも激しく鳴らしながらも躍動感たっぷりで、爽快にアルバムを締め括るのでした。

 もうすぐ結成20年目を迎えようとしているのに、衰えるどころかこれまで以上にアグレッシブでエネルギッシュな印象です。勢いがありながらもメロウな楽曲やバラードも交えてアルバムに緩急つけ、高い完成度の良作に仕上がりました。

Ninth Peel
完全生産限定盤 (CD+2BD+ブックレット+トランプ)
UNISON SQUARE GARDEN
Ninth Peel
初回生産限定盤A (CD+BD)
UNISON SQUARE GARDEN
Ninth Peel
初回生産限定盤B (CD+DVD)
UNISON SQUARE GARDEN
Ninth Peel
通常盤 (CD)
UNISON SQUARE GARDEN