🇺🇸 Vampire Weekend (ヴァンパイア・ウィークエンド)

レビュー作品数: 4
  

スタジオ盤

Vampire Weekend (吸血鬼大集合!)

2008年 1stアルバム

 ヴァンパイア・ウィークエンドは、エズラ・クーニグ(Vo/Gt)、クリス・バイオ(B)、クリス・トムソン(Dr)、ロスタム・バトマングリ(Key/Gt/Vo)の4人組で、コロンビア大学在学中に知り合って2006年に結成。ニューヨークを拠点に活動するインディーロックバンドです。アフロポップに影響を受けており、トーキング・ヘッズにもなんとなく通じるところもありますが、そのトーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンも彼らを称賛したといいます。

 そんなヴァンパイア・ウィークエンドのデビューアルバムです。邦題は何とかならなかったのか…。バンド名は自主製作映画のタイトルから取ったそうですが、バンド名を冠した本作は、その名前から想像する音とはだいぶかけ離れた、陽気なサウンドが展開されます。ロスタム・バトマングリのプロデュースで、下手に過剰装飾することなく、音数少なくシンプルな仕上がり。あえてインディーっぽく、チープな作りを狙っているような感じもします。

 オープニング曲は「Mansard Roof」。チープなサウンドですが軽快でとてもノリが良く、明るく爽やかな印象です。小気味良いドラムのリズムに、ご機嫌なギター。ゲスト参加のハミルトン・ベリーのチェロが良いアクセントになっています。続く「Oxford Comma」は牧歌的な楽曲で、所々コーラスによって彩られたメロディラインが美しい。この楽曲を目当てに本作を手に取ることが多いです。ドラムの音がとても特徴的で、更にキーボードがほのぼのした空気を創出しています。牧場で撮影されたPVもほのぼのとした感じ(?)を醸し出しています(演奏しているバックで拳銃で撃たれたりしてますが。笑)。続く「A-Punk」は本作中最もノリのよい楽曲。陽気なギターにシンプルなリズム隊によってキャッチー…というかコミカルな雰囲気の疾走曲です。ノリの良さに身体が自然とリズムを刻んでしまいます。「Cape Cod Kwassa Kwassa」ではボーカルのヘロヘロ具合が際立ちます。パーカッションの陽気なリズムに、グルーヴ感全開のベース。妙な中毒性があります。ご機嫌な楽曲を、ストリングスで更に楽しげな雰囲気に仕立てた「M79」。続いてアップテンポの「Campus」は、音階を駆け上るかのようなベースの反復に中毒性があります。シンバルが炸裂するドラムや陽気なギターなど、賑やかなサウンドでとても楽しい1曲です。「Bryn」はトロピカル風味のギターと、3連符を刻むリズム隊が交互に主導権を変えていきます。「One (Blake’s Got A New Face)」はアフロポップ的なパーカッションに、キラキラとした陽気なキーボードが民族音楽的な雰囲気を作ります。そして音を外しているボーカルが、妙にコミカルな感じを出しています。「I Stand Corrected」は穏やかに始まります。メロディアスな歌を歌いながら徐々にテンポアップし、ノリの良い楽曲に変わっていきます。うねるベースがカッコ良い。続いて、マリンバのようなキーボードが陽気に響き渡る「Walcott」はイントロからご機嫌。歌が始まるとサウンドは静かになり、歌が終わるとキーボードがまた陽気に鳴ります。ラスト曲「The Kids Don’t Stand A Chance」はゆったりとした雰囲気。ストリングスも響き渡り、音に包まれるかのよう。最後まで湿っぽくなることはなく、明るくて楽しい雰囲気です。

 カラッとした陽気でポップな楽曲を、チープだけどカラフルなサウンドに乗せて、ヘロヘロなボーカルが歌います。B級っぽいんですが、妙な中毒性がある魅力的な作品で、手に取る回数も多いお気に入りの一つです。収録時間は35分に満たないので、サクッと聴けるのも良いですね。

Vampire Weekend
Vampire Weekend
 

Contra (コントラ)

2010年 2ndアルバム

 前作の路線を更に推し進めたヘンテコポップな陽気な作品『コントラ』。中毒性はそのままに、演奏力が向上してより聴きやすくなりました。本作も、前作同様にマルチプレイヤーのロスタム・バトマングリがプロデューサーも兼任しました。
 前作に引き続き全世界100万枚以上の売上を達成し、ビルボードチャートでは1位を記録しました。CDの売れない時代にインディーでこの枚数はなかなかの偉業だと思います。
 なお、ジャケットはカメラマンのトッド・ブロディが1983年に撮影した写真…とのことだったので、バンドはブロディに許可を取ってジャケットに使用。しかし、ブロディがバンドに提示した使用許諾書のサインは捏造で自分の写真が勝手に使われた、として写真の女性に訴えられるという騒動になりました(後に和解)。そんなひと騒動がありましたが、作品そのものはとても陽気で面白いです。

 オープニング曲「Horchata」からご機嫌なトロピカルサウンドを展開。マリンバのようなキーボードに、アフロポップのリズム感を取り入れたパーカッションが陽気な雰囲気を作ります。続く「White Sky」が出色の出来。初めて聴いたときは、エズラ・クーニグのファルセットに「なんだこれ?」という違和感があったものの、いつの間にかやみつきになっていた中毒性の高い楽曲です。浮遊感のあるキーボードとファルセット、そしてノリの良いリズム隊とバックの「オイ!」コールが楽しい雰囲気を助長します。「Holiday」は前作の「A-Punk」にも通じるノリノリの楽曲。アップテンポで爽快なサウンドに乗せて、エズラの脳天気なボーカルが楽しい。何気にクリス・バイオの縦横無尽に駆け回るベースが良いです。そして「California English」はクリス・トムソンの叩く変則的なドラムが特徴的な1曲。独特のリズムが気持ち良く、疾走感もあります。疾走曲が続きましたが、「Taxi Cab」は穏やかでゆったりとした1曲。囁くような歌をフィーチャーしてサウンドはおとなしいですが、間奏でストリングスのアクセント。「Run」ではアフロポップの影響が強いドラムやキーボードが陽気なサウンドを奏でます。エズラのヘタウマで脳天気な歌もご機嫌。疾走曲「Cousins」は、「White Sky」に負けず劣らず本作の中で強い存在感があります。ドタバタコメディのような楽曲で、緊迫した疾走感の中にコミカルさがあります。キャッチーでとても楽しい1曲です。「Giving Up The Gun」はキラキラしたキーボードやグロッケンが印象的なポップな1曲です。コーラスワークも駆使した歌はメロディがとても良くて、思わず口ずさみたくなります。アフロポップなサウンドでメロディアスな「Diplomat’s Son」を挟んで、ラスト曲「I Think Ur A Contra」。囁くような歌は優しさに溢れています。

 前作同様にアルバム全編を通して底抜けに明るく、とにかくノリが良い。また全10曲でトータル約37分と短めで、手軽に聴けるのも良いです。

Contra
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Modern Vampires Of The City (モダン・ヴァンパイアズ・オブ・ザ・シティ)

2013年 3rdアルバム

 前作まではどこかおふざけ感があるというか、騒がしくて楽しいパーティロックといった印象があったのですが、本作においてはそのサウンドは後退します。ポップセンスは相変わらずで聴きやすいのですが、大人っぽくなったというか、明るさの裏に少しだけ影を見せるようになった印象です。プロデューサーにはアリエル・ロヒトシェイドを迎え、ロスタム・バトマングリとの共同プロデュース。チープな音作りも残しつつ、より洗練された印象になりました。

  オープニング曲「Obvious Bicycle」から前作からの大きな変化を感じます。美しいピアノに乗せて、しっとりと聴かせるエズラ・クーニグのメロディアスな歌をフィーチャー。エズラの表現力の向上を感じます。コーラスによって神聖な雰囲気も漂います。続く「Unbelievers」は前作のようなノリの良い1曲。ポップな仕上がりですが、前作のような底抜けの脳天気ではなくて、どこかほんのり哀愁も漂わせています。「Step」はこれまででは出来なかったであろうしっとりしたサウンド。アフロポップだけではない、幅広い音楽を吸収して昇華した感じです。靄に包まれたようなひんやりとしたサウンドに、哀愁と温もりを合わせ持ったメロディアスな歌メロ。前作までのスタイルでハマった私は最初抵抗がありましたが、聴けば聴くほど魅力的な楽曲に変化しました。「Diane Young」は前作までのファンにも受けるであろう、脳天気バカ騒ぎな楽曲です。音圧が非常に強く、EDMを基調として色々な楽器をごちゃ混ぜにした、カオスで賑やかな1曲です。「Don’t Lie」はクリス・トムソンのパワフルなドラムが強烈。またストリングスはクラシックからの引用でしょうか。キャッチーな楽曲です。「Hannah Hunt」は静かなサウンドから徐々に盛り上がり、日が射すかの暖かさが感じられます。エズラの突如キーを上げて感情たっぷりに歌う終盤も良いですね。「Everlasting Arms」はクリス・バイオのうねるベースがとてもグルーヴィ。楽しげなパーカッションが楽曲を盛り上げます。続いてノリの良い「Finger Back」は音圧が分厚く、圧倒されます。エズラの早口ボーカルが特徴的な疾走曲「Worship You」は、タッタカタッタカと軽快なリズムでとても楽しい。ただ、エコー処理によってどこか神秘的な雰囲気も兼ね備えています。続く「Ya Hey」は後半のハイライト。掛け声でヤハウェを意図しているのでしょうか。後半に向けて徐々に盛り上がる分厚いコーラスによって空間の広がりや幸福感も得られます。ただ、真面目にならないように狙ったおふざけなのか、サビでバックボーカルとして加わるのは、ヘリウムを吸ったかのような声。キテレツ大百科のコロ助みたい…これが妙に印象に残ります。「Hudson」は寒々しい雰囲気で、メロディもダークで暗鬱な楽曲です。そしてラスト曲「Young Lion」は2分足らず。電子ピアノが切なくも美しいメロディを奏で、チープな音色とは裏腹に、とても心に響きます。

 脳天気な楽曲一辺倒だったヴァンパイア・ウィークエンドですが、本作では表現力が各段に向上。バラエティ豊かな楽曲で緩急つけて、クオリティの高い作品を作り上げました。ローリング・ストーン誌では2013年の年間ベストアルバム1位を得るなど、批評家たちから大絶賛された作品です。ビルボードチャートでも堂々の1位を獲得しました。

Modern Vampires of the City
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Father Of The Bride (ファーザー・オブ・ザ・ブライド)

2019年 4thアルバム

 2016年には『Mitsubishi Macchiato (ミツビシ・マキアート)』なる仮題が発表され、2018年には既に出来上がっているという情報が出ながらも1年近く待たされた、ヴァンパイア・ウィークエンド待望の最新作。
 2016年にマルチプレイヤーのロスタム・バトマングリが脱退。キーボードやプロデューサー等の重要な役割を果たしてきたロスタムは脱退後にソロ活動を行っていますが、バンドとは友好的な関係を続けているそうです。そして残ったメンバーはエズラ・クーニグ(Vo/Gt)、クリス・バイオ(B)、クリス・トムソン(Dr)の3人体制ですが、ロスタムや何名かの外部ミュージシャンとのコラボを果たして本作を作り上げています。アリエル・レヒトシェイドとエズラの共同プロデュース。

 「Hold You Know」で開幕。アコースティックなサウンドに癒されます。途中ゴスペルのような神々しいコーラスを挟んで、後半はゲストのダニエル・ハイムが歌っています。続く「Harmony Hall」もアコギが折り重なり、優しく癒されるサウンド。途中からグルーヴ感を増し、賑やかでダンサブルな雰囲気に変わります。トロピカルな空気も感じますが、初期2枚のような底抜けの陽気さではなく、少し落ち着いて大人びていますね。2分に満たない「Bambina」はポップな楽曲。サビはアップテンポで明るいですが、時折前作で見せたような憂いを帯び、しっとりとした側面もあります。そして本作のハイライト「This Life」。トロピカルなギターにノリノリのリズム隊。陽気なサウンドにポップなメロディで気分を高揚させてくれます。ヴァンパイア・ウィークエンドにはこういう楽曲を期待しているので嬉しいです。2分に満たない「Big Blue」はまったりとして癒されますが、盛り上がる部分はゴスペル風で結構豪華。「How Long?」はクリスのベースにエズラのボーカルだけのシンプルなスタート。途中から楽器は増えていきますが、割とスカスカな感じ。でもリズミカルで中々心地良い良曲です。少し憂いのあるギターが印象的な「Unbearably White」もスカスカですが、音数の増える中盤はどこか神秘的で緊迫した空気を醸します。「Rich Man」はレトロな雰囲気。音のこもったチープな音質でストリングスが優美なサウンドを奏でます。続いて、再びダニエル・ハイムをフィーチャーした「Married In A Gold Rush」。少しトロピカル風味でリズミカル、でも落ち着いた雰囲気で聴かせます。「My Mistake」はジャジーでメロウな楽曲。ピアノとベースを中心としたサウンドに、哀愁漂う歌が染みる。途中プツッと途絶えた後はアコギで聴かせます。時折入るサックスも渋いですね。続く「Sympathy」はとてもスリリングでカッコ良い楽曲です。スパニッシュな香りの漂うダンスチューンで、しかし非常に緊迫した空気が支配します。少し怖いですね…。そんな前曲とは打って変わって、「Sunflower」はおふざけ感のあるひねたポップセンスで楽しませてくれます。この楽曲と、続く「Flower Moon」でスティーヴ・レイシーとコラボ。この「Flower Moon」は全体的に陽気ですが、低音で低血圧気味な歌にギャップを感じます。「2021」は細野晴臣の楽曲をサンプリングした1曲。囁くような歌でゆったりとしています。「We Belong Together」は村のお祭りのような雰囲気。曲調はゆったりとしていますが、エズラとダニエル・ハイムのデュエット、そして賑やかなサウンドで祝福するかのよう。「Stranger」も賑やかですね。トロピカルな雰囲気のパーカッションやギター、そしてピアノが心地良いサウンドを奏で、サックスが楽曲を盛り上げます。ピアノの美しい「Spring Snow」を挟んで、ラスト曲は「Jerusalem, New York, Berlin」。メロディアスな歌をフィーチャーした楽曲で、シンプルなサウンドに歌が響き渡ります。エコーのかかった音処理は朝靄のようにひんやりとした印象。

 前作のように大人びたサウンドに、少しトロピカルなエッセンスが垣間見えます。初聴きだと「This Life」が突出している印象ですが、所々に良曲があります。全18曲でトータル58分と過去最長のボリュームですが、正直少し長いかなぁという気も。

Father Of The Bride
Vampire Weekend
 
 
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