🇬🇧 Van Der Graaf Generator (ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーター)
レビュー作品数: 2
スタジオ盤
1970年 3rdアルバム
英国はマンチェスター出身のプログレバンド、ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーター(通称VDGG)。優れた作詞能力から「詩人」とも称されるボーカリスト、ピーター・ハミルを中心に1967年に結成しました。メンバーの入れ替わりが激しく、3rdアルバム時点のラインナップはピーター・ハミル(Vo/ Gt)に加えて、デヴィッド・ジャクソン(Sax/Fl)、ヒュー・バントン(Key)、ガイ・エヴァンス(Dr)。またニック・ポッター(B)もメンバーでしたが、本作で3曲だけ録音して脱退。
アクの強いエキセントリックで個性的なボーカルに、変態的な展開をする楽曲。初期キング・クリムゾンや初期ジェネシスを思わせます(ジェネシスよりこちらが先かな?)。その初期ジェネシスを手掛けたジョン・アンソニーのプロデュース。またキング・クリムゾンのロバート・フリップもゲスト参加しています。
ちなみにバンド名はヴァンデグラフ起電機という静電発電機が由来。
アルバムは8分強の「Killer」で開幕。サックスとヘヴィなオルガンで始まります。ピーター・ハミルの歌が始まると奇怪なボーカルが強烈なインパクトを放ち、そして歌が終わると即興的な演奏バトルが開幕。サックスが強烈ですが、手数の多いドラムも聴きどころです。怪しくも強烈なインパクトを放つ楽曲で、キワモノ好きは一発で好きになること間違いありません。続く「House With No Door」は一転して穏やかな楽曲。ピアノを主体としたメロディ重視の楽曲で、歌声も合わさってビリー・ジョエルみたいに聞こえます。間奏のフルートも和やかな雰囲気を助長します。そして8分強の「The Emperor In His War Room」は2パートから成る組曲。前半パートはフルートとオルガンの裏で縦横無尽に動くニック・ポッターのベースが強烈です。後半パートは、ゲスト参加のロバート・フリップのギターが活躍。全体的に荘厳な雰囲気で、時折サックスを中心に掻き乱すというか緊張感を与えてきます。
レコードB面、アルバム後半は11分の大作「Lost」。2パートから成る組曲です。静と動の緩急が激しく、3連のリズムに乗せてまくし立てるようなボーカル、かと思えばゆったりと静かな演奏に浸れるジャジーなパート。終盤の演奏は激しく、そして悲壮感が漂います。ラストは13分弱の大作「Pioneers Over C」。全体的に静かで、即興的な演奏も見られる楽曲です。時折唐突に激しい演奏が訪れ、特にベースが強烈です。最終盤はヘヴィなサックスが混沌とした雰囲気を作って終わります。
難解な作品で人を選びますが、楽曲は強烈なインパクトを放ちます。次作で気に入った方は手を伸ばしてみると良いでしょう。
1971年 4thアルバム
前作でニック・ポッターが脱退したため、キーボーディストのヒュー・バントンがベースも兼任しています。前作に引き続きジョン・アンソニーのプロデュース。僅か3曲ですが、11分半、10分強、23分のトータル45分という濃密な作品です。非常にヘヴィで、そして先の読めない展開は非常にスリリングです。前作に引き続いてゲストにキング・クリムゾンのロバート・フリップを招き、この3曲のエレキギターを弾いています。
オープニング曲は「Lemmings (Including ‘Cog’)」。イントロから徐々に迫り来るような緊迫感があります。デヴィッド・ジャクソンのヘヴィなサックスとヒュー・バントンのヘヴィなオルガンが強烈ですが、そんな演奏に負けないピーター・ハミルの超個性的なボーカル。また手数の多いガイ・エヴァンスのドラムも、個性強烈なメンバーに埋もれない強い存在感があります。イントロこそ神聖な印象を抱くものの、全体的に混濁とした印象で、1曲の中でも場面転換でガラリと雰囲気を変えてきます。先の展開の全く読めない型破りな構成とスリルがたまりません。続いて「Man-Erg」は、個人的にVDGGで最も好きな楽曲です(そこまで多くは知らないですが…)。美しい鍵盤に乗せて、メロディアスな歌。そしてドラムがドラマチックに盛り上げます。前曲の混沌とした印象からは想像がつかない、ストレートに美しい名曲。…と見せかけてそんなことはありませんでした。3分手前あたりから突如訪れる狂気。ヘヴィなサックスが美しい楽曲を引っ掻き回し、ピーター・ハミルが叫ぶ。楽器は好き勝手に暴走し、非常にスリリングです。ひとしきり暴れた後には荒廃したかのような暗鬱な静けさが訪れます。哀愁を纏ったメロウな演奏から、また序盤の美しいメロディが表れます。でも一度中盤の激しい演奏に意表を突かれているので、この美しい歌を素直には受け取れませんね。そして予想通り(?)、美しい歌を掻き消す激しい演奏をアウトロに終幕。猛毒にまみれたこの楽曲がとても魅力的です。
そしてレコード時代はB面を丸々費やした23分の「A Plague Of Lighthouse Keepers」が続きます。前2曲で立て続けに強烈な個性を持つ楽曲を聴いてきたので、オルガンをバックに静かな演奏で始まる最序盤はやや拍子抜けかも。しかし先の読めない展開は非常にスリリングで、前2曲にも劣らない個性を見せつけます。10のパートから成る組曲で、ころころと場面が変わります。特に16分半あたりからの攻撃的で混沌とした3分間と、その後に訪れる美しいピアノによる救い。そこからラストに向けた壮大な展開が素晴らしいです。
とにかく強烈な個性を持つ3曲。人を選ぶタイプの楽曲ですが、良くも悪くも非常に強いインパクトを与えることは間違いありません。時々無性に聴きたくなる中毒性があります。
関連アーティスト
『天地創造』と『ポーン・ハーツ』でゲスト参加したロバート・フリップが率いるバンド。
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