🇬🇧 Wire (ワイヤー)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Pink Flag (ピンク・フラッグ)

1977年 1stアルバム

 ポストパンク黎明期に登場したバンド、ワイヤー。1976年に英国ロンドンで、コリン・ニューマン(Vo)、ブルース・ギルバート(Gt)がワイヤーの前身バンド「Overload」を結成。そこにグレアム・ルイス(B)、ロバート・ゴートゥベッド(Dr)(後に本名名義ロバート・グレイに変更)が加わり、ワイヤーが出来上がりました。
 メンバー全員が楽器に触れたことが無く、技術が無いために本作では1分未満の楽曲も多いです。しかし演奏能力の無さを逆手にとって、ミニマルなリフの反復や単純なコード進行、これまでのロックの枠組みに捕らわれない楽曲構成など先進的なアプローチを行いました。「ロックでなければなんでもいい」のキャッチフレーズは彼らのスタンスを表していますね。
 ソフト・マシーンを手掛けたマイク・ソーンによるプロデュース。ピンクの旗が立っているだけのシンプルなジャケットアートは、ブルースとグレアムのアイディアらしいです。21曲も入っているのにトータル35分。最短28秒の、楽曲と呼べないようなものも入っていたりします。パンク曲も多いですが、一部に後の時代を先取りしたアイディアが詰まっています。

 「Reuters」はイントロから轟音ギターが強烈。どこか冷めたボーカルも相まって、冷たく陰鬱な雰囲気と攻撃性を両立しています。1曲目からパンクとは少し違った、ポストパンク時代を予見するかのような真新しいサウンドです。普通にカッコ良いです。続いて僅か28秒のパンク曲「Field Day For The Sundays」、スッカスカなサウンドの「Three Girl Rhumba」と続きますが、この辺は技術力の無さを感じます。「Ex Lion Tamer」は多少まともなパンク曲。「Lowdown」は1曲目のような、ディストーションの効いたノイジーなギターがダークな雰囲気を作ります。ノイジーなサウンドの単調な反復ですが、こういう楽曲がポストパンクを切り開いたのでしょう。続く4曲はいずれも1分前後の疾走感のあるパンク曲。ぶつ切りだったり完成度もそこまで高くありませんが、さらっと聞き流すうちにどんどん進んでいきます。そして表題曲「Pink Flag」。非常にノイジーな轟音ギターが、包み込むかのような浮遊感すら生み出しています。歌はメロディなんてあったものじゃないですが、轟音に負けず叫び散らす歌は強烈なインパクト。後のポストパンクを超えてその先のオルタナティヴロックにすら通じるものがあります。
 ここからアルバム後半。「The Commercial」はノイジーながらもキャッチーなギターとベースが心地良いインストゥルメンタル。続く「Straight Line」も合わせて、それぞれ1分足らず。短い…。「106 Beats That」は歌から始まる楽曲で、キャッチーさがありますが、やはり1分強でスパッと終わってしまいます。短いながら後半のメロディは光るものがあり、このダークさに後のジョイ・ディヴィジョンの登場を予見させます。パンク曲「Mr. Suit」を挟んで、「Strange」は終始ヘヴィなギターが単調なフレーズを繰り返すだけの楽曲です。でも中毒性があって、またSEやエコー処理も相まって幻覚のような世界へ導いてくれます。1分強の「Fragile」を挟んで、ゴリゴリ唸る爆裂ベースが強烈な「Mannequin」。本作中最もキャッチーなメロディを奏でます。43秒のパンク曲「Different To Me」、影のある攻撃的な「Champs」とラストに向けて畳み掛けます。「Feeling Called Love」で少しテンポを落としますが、ラストはノリの良いパンク曲「12 X U」で締めます。

 本作は、個々の楽曲の質は低いのですがその手法は革新的で、後のポストパンクやオルタナティヴロックの基礎やアイディアが詰まった教科書的な作品です。これらアイディアを色んなバンドが受け継いで拡張していった感じがします。実際に後進のバンドに非常に大きな影響を与えており、ワイヤーからの影響を語るバンドは多いです。
 この作品だけを聴いてもそこまで凄いとは思わないのですが、いくつかの後進バンドを聴いてから本作を聴くと、その先進性に衝撃を受けます。

Pink Flag
Wire
 
 
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