🇯🇵 はっぴいえんど

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

風街ろまん

1971年 2ndアルバム

 はっぴいえんどは日本のロック黎明期に登場したフォークロックバンドです。細野晴臣(Vo/B/Key)、大瀧詠一(Vo/Gt)、松本隆(Dr)、鈴木茂(Gt/Vo)の4人組。1969年に、前身となるヴァレンタイン・ブルーを結成し、翌1970年にはっぴいえんどに改名、デビューアルバム『はっぴいえんど』をリリース。そして1971年に本作をリリースするに至ります。
 当時はそれほど注目されていなかったそうですが、今では当たり前となった「ロックに日本語歌詞を乗せる」というのを行った最初期のバンドとして後年評価され、本作は日本のロック史上でもトップクラスの重要名盤という扱いを受けています。ただ当時を知る人の中には、はっぴいえんどだけが異様に持ち上げられて日本のロックのルーツとして見なされる風潮に、疑問を投げかける人もいるそうです。

 オープニング曲は「抱きしめたい」。ボーカルは大瀧。細野のベースの存在感が強いですが、松本のドラムも後半スリリングで聴きごたえがあります。アコースティックな雰囲気ですが、間奏ではエレキギターに変わってブルージーな音色を奏でます。「空色のくれよん」は大瀧の歌う牧歌的でポップな楽曲。スティール・ギターがまったりとした空気を演出し、伸びやかなボーカルで癒やします。「風をあつめて」ははっぴいえんどの代表曲で、数多くのアーティストにカバーされています。初めて聴いたのに懐かしい感覚を呼び起こしますが、知らず知らずどこかで聴いているのかもしれませんね。アコギが中心でまったりとしており、裏でうっすら鳴っているオルガンが良い感じです。細野がボーカルを取りますが、歌は起伏に欠け気だるげな印象。ですが意外とこれが耳に残るんです。続く「暗闇坂むささび変化」は軽快でフォーキーなロックンロール。アコギの音色が心地良いほか、歌詞も「ももんがーっ ももんがーっ おー ももんがーっ」と印象に残ります。「はいからはくち」は、40秒ほどのお祭りのような太鼓と英語MCで始まります。そこから突如エレキギターを皮切りにノリノリのロックンロールを展開。古臭くも、ロックンロールに日本語歌詞がよく馴染んで心地良いです。ちなみにタイトルを見て「ハイカラ白痴」だと思いましたが、歌を聴くと「肺から吐く血」と掛けているようです。続けて30秒ほどの「はいから・びゅーちふる」で心地良いコーラスワークを聴かせて前半は終了。
 アルバム後半は「夏なんです」で幕開け。アコースティックで哀愁のあるメロディに、ノスタルジックな歌詞が懐かしい感覚を想起させます。「花いちもんめ」は鈴木がボーカルを取ります。のっぺりして気だるげな歌い方ですが、メロウで心地良いオールドロックなサウンドには合っているかもしれませんね。オルガンの音色も魅力的です。「あしたてんきになあれ」は細野がファルセットで歌います。ファンキーなリズムでR&Bっぽい感じ。続く「颱風 (たいふう)」は松本のドラムと大瀧の歌だけで始まります。ドスの利いた低い声は台風の接近を表しているんでしょうか。途中楽器が増えると、途端にサイケや初期プログレ的な怪しげな雰囲気を醸し、また泥臭さもあります。スリリングでカッコ良い1曲です。「春らんまん」は1st『はっぴいえんど』収録曲「春よ来い」のアンサーソングだそうで、渋くてフォーキーなサウンドに乗せて「春は来やしない」と歌っています。最後に30秒程度の「愛餓を (あいうえを)」。「あいうえを かきくけこ」…と並べただけの歌ですが、語感の良いラスト曲でした。小さい子どもでも歌えますね。

 私が生まれるずっと前の作品ですが、1970年前後の英米ロックと横並びで割と抵抗感無く聴けます。昭和レトロな光景が目に浮かぶ、懐かしくて心地良い楽曲の詰まった名盤です。聴けば聴くほどに味が出てきます。

風街ろまん
はっぴいえんど
 
 

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 細野晴臣(B)が結成したテクノポップグループ。

 
 
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