パンクロック/ガレージロック入門盤5選
ロンドンパンクの元祖セックス・ピストルズの唯一のオリジナルアルバム『勝手にしやがれ!!』。原点にして、パンク界最強の1枚です。
セックス・ピストルズ、クラッシュ、ダムドはロンドンパンクの御三家と呼ばれていますが、これらのバンドのうち一番聴きやすいのが本作だと思っていますので、これをオススメに挙げました。
ニューヨークパンク、特にラモーンズに衝撃を受けたのがセックス・ピストルズの仕掛け人マルコム・マクラーレン。このマルコムが、自身の経営するブティックに入り浸っていたアマチュアバンドを捕まえてきて、ファッションや言動含めてプロデュースしたのがセックス・ピストルズです。ツンツンに逆立てた髪型に破いたTシャツや安全ピンなどのファッション、シンプルなロックンロールに回帰して攻撃的な演奏をするという、パンクという様式・イメージは彼らによって作られ、広められていきました。
セックス・ピストルズのファッションやライブパフォーマンスは不況に苦しむ英国の若者に大いに支持され、数多くのパンクバンドがデビューするきっかけを作りました。そして肥大化したロック界に風穴を開けたのですが、絶大な人気を誇ったセックス・ピストルズは翌年空中分解して解散、そしてフロントマンのジョニー・ロットンはパブリック・イメージ・リミテッドを結成してロックの伝統を否定した前衛的なサウンドにシフトしていきます。
よく「初期衝動」というフレーズとともに本作が紹介されたりしますが、他のパンクバンドがまさしく勢いだけで荒々しくスッカスカなアルバムをリリースするなか、真っ先に活動を開始したパンクバンドながらもアルバムはじっくり練りに練って、満を持してのリリース。勢いをアルバムにうまく封じ込めたサウンドプロダクションは「初期衝動」なんかではなく、売れるべくして世に出されたコマーシャル性の強い作品です。でも幻滅することなかれ、アルバムの出来は他のパンクバンドの追従を許さない、非常に強烈なインパクトを持っています。攻撃的な作品ではありますが、現代の耳で聴くと普通にキャッチーなロックンロールなんですよね。下手だけどそんなことが気にならない、スカッとする気持ちの良い1枚です。
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グリーン・デイとともに、1990年代にパンクブームを再燃させたバンド、オフスプリング。知名度的にはグリーン・デイの方が上ですが、個人的にはオフスプリングの方が好みなのでこちらを紹介。
本作の前にリリースした『スマッシュ』が1400万枚以上売り上げて、インディーレーベルからリリースされたアルバムでは史上最大の大ヒットを記録。そして世にパンクブームをもたらしました。本作はセールス的には前作には及びませんでしたが、出来は素晴らしく「The Meaning Of Life」や「Mota」、「All I Want」等の名曲を収録しています。とにかく勢いが良く、聴いていてスカッとしますね。
ハードロックやグランジのようなヘヴィさを持つハードコアパンクを、メロディアスにして聴きやすくしたのがメロディック・ハードコア(メロコア)、またはポップパンクと呼ばれます。オフスプリングはこのジャンルの代表格です。本作で聴けるサウンドは、ハードコアパンクの持つ重たいリフと高速な楽曲、それに加えてキャッチーな歌メロが両立していて、ハードな割には聴きやすいです。パンクロックの入門作としてだけでなく、洋楽の入門にも向いているかと思います。
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ラモーンズやパティ・スミス、トーキング・ヘッズといった多くのパンクバンドを輩出したニューヨークパンクの聖地、ライブハウスCBGB(Country, Blue Grass, and Blues)を拠点に活動をしていたバンドのうちの一つがテレヴィジョンでした。
彼らの音楽を聴くまでは、パンクに持っていたイメージは「ヘタクソな歌と演奏で勢い任せの短い楽曲を奏でる」という偏見でしたので、テクニック偏重のプログレやハードロックを好んでいた私には抵抗感があってなかなか手を出せなかったジャンルでした。しかし本作は10分に渡る長尺の楽曲があって、だれることなく聴かせる構成力がある。全編に渡る凄まじい緊張感。パンクに持っていた偏見を見事に打ち消してくれ、他のパンクアルバムを聴くキッカケにもなりました。
実はラモーンズやセックス・ピストルズ等によってパンクの様式が確立するまでは、反体制的な音楽をひっくるめてパンクと呼んでいたんですね。ニューヨークにおいて、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに影響を受けたパティ・スミスやこのテレヴィジョンは、アート的なアプローチで反体制的な音楽を奏でてパンクと呼ばれました。
パンクを期待する方には「?」が浮かぶかもしれませんが、逆にパンクが苦手な方にこそ聴いてほしいパンクの名盤です。
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「パンクのゴッドファーザー」ことイギー・ポップ率いるバンド、ストゥージズ。米国デトロイト発のガレージロックバンドとしてMC5とともに活躍しました。
本作におけるサウンドは過激で、スピーカーがぶっ壊れたんじゃないかと錯覚するくらいの暴力的なサウンド。金切り音を奏でるギターに、咆哮するボーカル。そしてこの荒々しいサウンドに加えて、イギー・ポップのステージパフォーマンスも過激極まりないものだったようで、ナイフで身体を刻んだり、ガラス破片の上を裸で転がり回ったりと奇行を繰り返していました。
上半身裸のイギーの肉体美を捉えたミック・ロックの写真は魅惑的なのですが、そのエピソードやサウンドを知ってしまうと危なげなものに見えてきます。
ストゥージズが後のパンクロックに強烈な影響を与えたであろうことは想像に難くありませんが、1970年代の後発のパンクバンドよりもよっぽど攻撃的で、破壊力があるように思えます。荒々しいサウンドに圧倒されること間違いありません。
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ストロークスとともにガレージロック・リバイバルムーブメントの旗手となった、ホワイト・ストライプス。ホワイト・ストライプスもストロークスも米国のバンドでしたが、本国より先に英国がいち早く目を付け、このガレージロックのスタイルを再興してリバティーンズやアークティック・モンキーズ等のバンドを生み、そのままポストパンク・リバイバルムーブメントへと繋げてロック再興のきっかけとなりました。
ホワイト・ストライプスはメグ・ホワイトとジャック・ホワイトの姉弟によるバンドです(ちなみに姉弟設定で通していますが、実は元夫婦だったことが明らかになっています)。この僅か2人編成で奏でられるサウンドは非常にシンプルですが、少ない音数でこれだけのスリリングな名曲、名盤を生み出せるのだから大したものです。
本作は、シンプルなサウンドに加えて、1963年以降の機材を一切使わないという強いこだわりによって制作されました。ロックンロールに回帰したその楽曲群は、ジャック・ホワイトの声質とギタープレイも相まって、レッド・ツェッペリンにも通じるところがあります。
ストレートなロックのカッコよさを知るのに最適な1枚です。
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パンクロック/ガレージロック開拓のすすめ
パンクロック/ガレージロックのアーティスト一覧はこちらに纏めています。