🇮🇸 Sigur Rós (シガー・ロス)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

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2002年 3rdアルバム

 シガー・ロスはアイスランドで結成したポストロックバンドです。ヨンシー・ビルギッソン(Vo/Gt/Key)、ゲオルグ・ホルム(B/Key/Glo)、アウグスト・グンナルソン(Dr)の3人で1994年に結成し、結成当日にヨンシーの妹が生まれて「Sigurrós」と名付けられたことから、バンド名も「Sigur Rós」になったそうです。本作発表時にはアウグストは脱退しており、キャータン・スヴェインソン(Key/Gt)とオーリー・ディラソン(Dr/Key)が加入しています。
 さて本作は『( )』と名付けられた3rdアルバム。そして収録曲8曲全てが「Untitled (=無題)」です。これでは区別もつきませんが、各楽曲には通称がついていますので、そちらで呼ぶことにします。

 起伏の乏しいヒーリング音楽のような癒しを感じる前半。雪の降ったあとのような一面の静けさを感じます。そして、触れると壊れてしまうような儚い美しさを見出すことができます。1曲目「Vaka」では静かなピアノと、キーボードによる演出により、ぼやけてひんやりとした空間の広がりを感じます。ひんやりしているけれども温もりや包容力もあるような、鋭利な音がないぼやけた音像。アルバム全編を通してこの空気感です。歌はアイスランド語と造語を組み合わせたものらしく全然わかりませんが、歌もまるで楽器のように、自己主張することなくふわっと過ぎ去っていきます。似たり寄ったりの音楽が続くのですが、3曲目「Samskeyti」が好みかな。ボーカルレスで、静かなピアノが主体となってキーボードが空間を演出。ひたすら同じメロディを繰り返すミニマルという手法を用いて、静かながら徐々に盛り上がりを見せてくれます。
 後半5曲目「Álafoss」では後半でドラムがバシンバシン鳴り、静けさの中に刺激が表れてアルバムの流れが変わってきました。6曲目「E-Bow」では幽玄な世界にディストーションの効いたギターと感情のこもった歌唱が表れます。7曲目「Dauðalagið」は13分に渡る大作。レディオヘッドの前座として注目を浴びたシガー・ロスですが、感情が表に出てくるとレディオヘッドの楽曲にも似てくるような。幻想的な世界ですが、時々訪れる感情の波。そして終盤には音の洪水と呼ぶべき轟音。8曲目「Popplagið」も12分近い大作です。これも後半から激しさを増し、ドラムが強烈になります。最後はあまりに激しく、美しい世界を自らぶっ壊しています。

 私は12,3年位前、ロックを開拓し始める以前に一度本作にチャレンジしましたが、その当時は全然理解できず、洋楽のハードルをただ高くしただけでした。そしてロックをひと通り巡った後、久しぶりに本作を聴いてみて思うのは「ひたすら待て」。トータル72分。通しで全編しっかりと向き合うには結構退屈ですが、BGMとして流していると前半の静かで美しいサウンドに癒され、そこで飽きずに聴いていると、後半は時々表出するドラマチックな変貌に驚かされます。そしてラストのなんと激しいことか。

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Sigur Rós
 
 
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