🇬🇧 The Enid (エニド)
レビュー作品数: 1
スタジオ盤
1977年 2ndアルバム
英国出身のシンフォニック系プログレバンド、エニド。ロバート・ジョン・ゴドフリー(Key)を中心に1973年に結成しました。ゴドフリーと、長期間在籍したデイヴ・ストーレイ(Dr)以外のメンバーは流動的ですが、スティーヴ・スチュワート(Gt/B)、フランシス・リケリッシュ(Gt)らが参加しています。
パンクの嵐が吹き荒れ、プログレ勢には逆風の1976年に1st『夏星の国』でデビューしました。そしてジャケットアートが印象的な本作はロック編成でクラシック風の楽曲を奏でるスタイルを特徴とします。
アルバムは小曲「Prelude」で幕開け。金管楽器風のシンセサイザーがシンフォニックな響きを奏でて、ゆったりとしていますが終盤にはドラマチックな盛り上がりを見せます。続く「Mayday Galliard」はリズミカルで小気味良い楽曲です。楽曲はクラシカルなのですが、オーケストラ風の演奏をシンセで表現しているみたいですね。カラフルなシンフォニーに途中からギターが加わりますが、ロック感は薄いですね。壮大でドラマチックです。「Ondine」はメランコリックな楽曲を展開します。冒頭はフルートやアコギによって優しく穏やかに始まりますが、途中からエレキギターやオーケストラが盛り上げます。終盤は幻想的で幻覚的な印象。そして「Childe Roland」はイントロから緊張感が溢れています。珍しくロック的なアプローチでダイナミズムを表に出し(それでもアクセント程度)、それを壮大なオーケストラで覆っていきます。中盤のピアノパートからヘヴィなバンド演奏へとバトンを渡す場面や、緊張感溢れるラストが特にスリリング。ロック視点で聴くと一番聴きやすいのが本楽曲でしょうか。
アルバム後半、レコードでB面を丸々占める組曲「Fand」。オリジナルは「Fand I」と「Fand II」に分かれてトータル17分半で、1983年の再発時には「1st Movement」と「2nd Movement」でトータル30分の壮大な組曲に再構成されているようですが、本項ではSpotifyで聴けるオリジナル準拠のバージョンをレビューします。冒頭から重厚な雰囲気が立ち込めますが、45秒辺りから暗鬱なアコギを奏で始めるとひんやりとした質感に変わります。リラックスしたり、時折ティンパニで緊張を高めたりしながら4分前後からドラマチックな場面が訪れます。エモーショナルなギターも良い。クラシック色が強いものの、6分以降からしばらくはロックとクラシックを融合した展開で惹きつけます。10分辺りで音数たっぷりの壮大な演奏で圧倒した後、静寂な空間にピアノを鳴らして緩急をつけます。余韻を楽しむかのような穏やかな演奏がしばらく続き、ラスト1分半で眩いシンセを中心に楽曲を盛り上げて大団円。
時折ギターやシンセだとわかる音色でロック要素が垣間見えるものの、全編通してとても壮大なクラシックや映画のサントラのような印象です。
左:オリジナル版に準拠したリマスター盤
右:一部楽曲の差し替え&拡張がなされた1983年版に準拠したリマスター盤
類似アーティストの開拓はこちらからどうぞ。