🇬🇧 The La’s (ザ・ラーズ)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

The La's (ザ・ラーズ)

1990年 1stアルバム

 イングランドはリヴァプール出身のロックバンド、ラーズ。1983年に結成した彼らは頻繁にメンバーを変えながらも、リー・メイヴァース(Gt/Vo)、ジョン・パワー(B/Vo)の2人を中心に活動しました。
 本作はラーズの唯一作で、躍動感のあるギターポップを展開します。メロディメイカーかつ完璧主義者であるリー・メイヴァースが細部までこだわった結果、アルバムがいつまで経っても完成せず、業を煮やしたレーベル側がプロデューサーとしてスティーヴ・リリーホワイトを起用して完成させた経緯があるそうです。バンド側の意思に反してリリースされたアルバムですが、批評家から大絶賛される作品となりました。

 僅か2分足らずの「Son Of A Gun」で開幕。軽快なアコギにリズミカルなパーカッションが牧歌的な雰囲気で、メイヴァースのしゃがれ気味な声も相まってカントリー風味も若干漂います。「I Can’t Sleep」はガチャガチャとした演奏ながらも音色が気持ち良く、またコーラスを駆使した歌はどことなくビートルズを想起させます。続く「Timeless Melody」は軽快で勢いのあるイントロから引き込まれます。ポップセンスのある歌メロが魅力的で、伸びやかだけど憂いのあるメロディが良く、旧き良きブリティッシュロックといった感じがします。程良くエフェクトをかけて心地良い浮遊感がありますね。「Liberty Ship」は太いベースと軽快なアコギがリズミカルな演奏を繰り広げます。そしてラーズの代表曲「There She Goes」。クリーンなギターが瑞々しく、そこにファルセットを駆使した優しい歌が心地良く響き渡ります。どこか懐かしくも、心が洗われるような美しさ。「Doledrum」はアコースティックでリズミカルな楽曲です。小気味良いアコギに軽快なパーカッション、気持ち良い重低音を刻むベースに揺られながら、コーラスを駆使したポップな歌に浸れます。続いて「Feelin’」。泥臭い音色ながらもギターを小気味良くかき鳴らし、そしてシンプルで明快なドラムもあって躍動感があります。「Way Out」は6/8拍子を刻み、ギターをガチャガチャかき鳴らしつつも心地良い世界へ誘います。そして「I.O.U.」はとてもリズミカルな演奏が特徴的です。泥臭いギターに小気味良いアコギが絡み、躍動感のあるリズム隊も爽快。「Freedom Song」はレトロで怪しげな雰囲気にだみ声で歌い、アルバムにアクセントをつけます。「Failure」は爆音ベースを刻む、荒削りなロックンロール。アルバムの中ではかなりヘヴィな部類ですが、軽快さも内包していて気持ち良さも感じられます。最後に「Looking Glass」。本作唯一の長尺曲で、8分近くあります。アコギがシンプルながら、どこかノスタルジックなメロディを奏で、優しい歌唱も相まって穏やかな気分。そして途中からバンド演奏が楽曲を盛り上げます。反復しながら進行し、最終盤はテンポを上げていきます。

 全体的にリズミカルで、そしてポップセンスに溢れる歌がとても魅力的です。僅か35分という短さもサクッと聴くのに丁度良いですね。
 1991年末にジョン・パワーが脱退したことで、ラーズは自然消滅してしまうものの、2005年と2011年に短期間ながら再結成を果たしています。

The La’s
Deluxe Edition (2CD)
The La’s
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