🇯🇵 ALI PROJECT (アリ・プロジェクト)

スタジオ盤②

黒アリ&大和ソング路線と全盛期

Dilettante

2005年 7thアルバム

 ALI PROJECTは『EROTIC&HERETIC』の後、過去の楽曲をストリングスアレンジしたアルバム『月光嗜好症』と『エトワール』を立て続けにリリース。そのためオリジナルアルバムとしては3年ぶりとなります。本作には、愛国心溢れる日本的な楽曲、通称「大和ソング」(大和ロックとも)路線の皮切りとなる「愛と誠」を収録しています。
 なおアルバムタイトルに付いた「Dilettante」とは芸術愛好家・好事家の意味で、本作以降アリプロのファンは好事家と呼ばれることもあります。

 大和ソング路線の皮切りとなった「愛と誠」で幕開け。演奏自体は和風な感じではなくシンセサイザーを活用したダンサブルな打ち込みソングだし、独特なメロディや極端な抑揚もこれまで通りのアリプロです。歌詞にだけ和風要素が表れていますが、「聖少女領域」っぽい演奏が強烈でゴシックな雰囲気も強いです。メロディアスな良曲です。「人生美味礼讃」はコーラスとハンドクラップが悪魔儀式のような不気味な雰囲気を作ります。宝野アリカの歌はヤケクソ気味で狂気じみていて、演奏と相まって不穏でおぞましい緊張が高まります。続く「肉体の悪魔」は無機質な静寂が支配するデジロック的な楽曲で、不気味な演奏に乗る気だるげな歌は毒気があって色っぽいです。「緋紅的牡丹」はクラシカルで優雅な楽曲ですが、これまでのアリプロとは違ってシンセストリングスで演奏しています。2番が中国語だったり、時折中華っぽいフレーズを聴かせたりします。そしてアルバムタイトルの由来となった「ディレッタントの秘かな愉しみ」。テクノっぽい無機質でダンサブルな演奏に乗せて、アンニュイでメランコリックな歌唱が儚く美しいんです。サビメロはかなりの高音ですが、最高音はアリプロ楽曲の中でもトップクラスではないでしょうか。憂いのあるストリングスも中々魅力的。心地良い気だるさがあって中毒性のある楽曲です。「昭和恋々幻燈館」はストリングスが優雅で少しレトロな雰囲気を演出。そしてキーボードを中心にバロックポップ的な躍動感ある演奏を繰り広げます。昭和と付くものの洋風要素もかなり強いため、勝手に大正浪漫とかハイカラなイメージを思い浮かべています。「密猟区」は分厚いオルガンが高揚感を煽るイントロにイエスを思い浮かべます。でも歌メロが始まるとダーク・ゴシックな黒アリ的打ち込み楽曲へ変わり、スリリングな楽曲を繰り広げます。暗鬱なピアノイントロを経て始まる「北京LOVERS」。サビメロ以外は退廃的な雰囲気でしっとりと聴かせますが、サビメロは焦燥感を煽る大仰な演奏やコーラスワークも用いて、非常に強烈なダークオーラを放ちます。緩急が極端についたスリリングな楽曲です。「鎮魂頌」は歌が重々しい雰囲気を作りますが、時折跳ねるようなピアノにちょっと違和感。重厚でクラシカルな楽曲です。そしてラストの「柔らかな肌」は片倉三起也によるインストゥルメンタル。ピアノやストリングスが穏やかで美しい音色を奏でます。

 大和ソングを収録しているものの、中華要素も混じっていたり、ダークゴシックも含まれたごった煮です。演奏はダンサブルだったりクラシカルだったり、良くも悪くもこれまでのALI PROJECTの延長線上で聴けます。
 なお10曲入りで最終曲がインストゥルメンタルという構成は、この後のオリジナルアルバムにもしばらく引き継がれます。

Dilettante
ALI PROJECT
 
Psychedelic Insanity

2007年 8thアルバム

 『Dilettante』リリース後にシングル「聖少女領域」がヒット。アニメタイアップも続き、本作の4ヶ月前にリリースされたベスト盤『薔薇架刑』もスマッシュヒット。(本作の影響ではありませんが)本作の前後数年は特に、アニメファン層を中心にALI PROJECTの名が広く知られる時期だったのではないでしょうか。
 それまでオリジナルアルバムの成績はチャート圏外や100位前後でしたが、アニメタイアップによる知名度アップも後押しになって、本作はオリコンデイリー3位、週間20位へと躍進。この時期に多くの固定ファンを獲得しました。
 本作はこれまでのアリプロ節を軸に据えつつ中東音楽を取り入れて、全体的にエキゾチックな印象に仕上がりました。タイトルに「Psychedelic」とありますが、過去のサイケデリックロックの先人達がインド音楽に影響を受けたのとは少し違って、本作はインドよりも中東っぽいです。

 「青嵐血風録」は大和ソングではありますが、イントロは中東風だし、極端な抑揚を持つ楽曲展開はダークゴシックな感じで和の要素はほとんど感じません。でもアクの強い楽曲はインパクトも強烈で、オープニングに相応しい求心力があります。続く「暗黒サイケデリック」も強烈なインパクトを放つ名曲です。疾走感が強い黒アリ的な楽曲ですが中東風のエキゾチックな風合いも強く、ダンサブルで勢いのあるリズムトラックとエスニックな香りが良い化学反応を起こしています。そして早口でヒステリック気味の宝野アリカの歌も耳に残りますね。「CYBER DEVILS」は無機質なエレクトロニカから、ダークゴシックな楽曲へと大きく変わり果てます。暗鬱でメランコリックなメロディはスリリングですね。歌詞に「聖少女領域」っぽいフレーズが垣間見えます。終盤のドラムが何気にカッコ良い。「胡蝶夢心中」はイントロからオーボエとストリングスが、優雅でアンニュイな世界を作り出します。ストリングス主導のクラシカルな楽曲ですが、民族楽器も合わせて用いられていることで、中東や砂漠などのイメージが浮かびます。「纏われし者ら」はデジタルで無機質・単調なリズムトラックに何重にも重ねた歌唱が合わさり、不気味に精神を追い詰めるような強迫観念にとらわれます。かと思えばゆったりとしたテンポで神秘的に歌ってみせたり。聴いていると病みそうな楽曲です。「欲望」はメランコリックで強い憂いを感じる楽曲です。過剰装飾気味なアリプロにしてはノイズが少なくクリアーで、哀愁たっぷりかつ、諦念を感じる魅力的な歌唱とメロディに浸れます。続いて「暴夜layla幻談」。「アラビア ライラ げんだん」と読みます。シタールのような楽器を用いて中東感たっぷりの怪しげな演奏に魅せられます。宝野の歌は吐息混じりの色っぽい歌唱から、憑依されたようにヒステリック気味になったりと振り幅が広いです。そして「六道輪廻サバイバル」はダークで激しい楽曲で、アルバム終盤を一気に引き締めます。頭サビを終えるとおどろおどろしい雰囲気で、仏教的な歌詞を歌う歌唱もかなり緊迫しています。聴いていると追い詰めるような焦燥感を覚えます。ドラムが中々スリリングで、ストリングスやカラフルなシンセに彩られているものの、意外にカッコ良いバンドサウンドで楽しませてくれます。「若い死者からのレクイエム」はストリングスに聖歌隊のようなコーラスが楽曲を彩ります。レクイエムだからか、美しさの中に強い不気味さを感じます。なんか怖い。そしてラストは「gai desespoir(instrument)」で、恒例のクラシカルなインストゥルメンタルで締めます。元々は片倉三起也のソロアルバムに収録された楽曲ですが、アレンジして再録。

 ALI PROJECTのアルバムでは『EROTIC&HERETIC』に次いでよく聴きました。エキゾチックで統一感があり、完成度の高い良作です。

Psychedelic Insanity
ALI PROJECT
 
禁書

2008年 9thアルバム

 オリコン週間14位を獲得、ベスト盤を除いてオリジナルアルバムとしては最高位を記録しました。私のリアルタイムALI PROJECT体験が確か本作で、「禁書発禁」ツアーでNHKホールまでコンサートに行ったのが思い出深いです。MCでの宝野アリカの地声が低くて驚いた記憶。ただ本作にそこまでハマれず、結局それ以降熱が冷めてしまって、私の中でのアリプロは本作止まりとなってしまいました。

 オープニング曲は大和ソング「神風」。大和ソングでアルバムの幕を開けるのは『Dilettante』からの伝統ですね。楽曲はダンスやオルタナ、ゴシック要素を織り交ぜており、そこに和風の歌詞が乗るごった煮な感じ。キャッチーなサビ以外はメロディも複雑です。続く「黙示録前戯」は重戦車のように爆走する、疾走感溢れるイントロからスリリングなヘヴィメタル曲です。歌が始まるとテンポダウンして妖しげな雰囲気を醸しますが、そんな歌と鈍重な演奏が意外によく合っています。「ヘテロ失楽園」は中東風のメロディとキレのあるダンス要素を組み合わせた、妖しげでトリップ感のあるグルーヴィな楽曲です。民族楽器だったりデジタルなノイズだったり、ストリングスやバンド演奏など情報過多ですね。また、悦に浸るような投げやりなような笑、独特の歌唱も特徴的です。「眠れる豹」は微睡むようなドリーミーな演奏に、アンニュイでメランコリックな歌が乗ります。ゆったり浸っているとギターのヘヴィさも増していきます。メロディラインが魅力的ですが、どこかで聴いたことがあるような…。「血の断章」では優雅なストリングスと無機質なエレクトロニカを組み合わせた定番のアプローチで聴かせます。楽曲展開がトリッキーですね。そしてタイトル曲「禁書」。ノリの良いダンサブルな楽曲で、リズム隊の爽快なビートにニューウェイヴ的なシンセが気持ち良い。ですが宝野の歌は怪しさ満点というギャップ。不思議な中毒性があります。そして「雪華懺悔心中」はイントロから壮大で複雑怪奇なプログレを展開。和風っぽさもあるメロディですが、とにかくトリッキーで癖がかなり強い楽曲です。ドラムが何気に魅力的ですね。「薨」はアンビエント風のひんやりとしたサウンドで、無機質な冷たさもあります。「薨」というのが貴人の死を意味する言葉で、神秘的な歌もどこか畏れを感じます。終盤の間奏はツギハギだらけでジャンク感がありますが…。「小さき者への贖罪の為のソナタ」はストリングス主体のクラシカルな楽曲です。ラストは定番のインスト曲で「Sonata of Ember Glance」。前曲「小さき者への贖罪の為のソナタ」のアレンジで、ボーカルが無いほか、ピアノのみで奏でられます。シンプルでどこか暗鬱です。
 なおボーナストラック扱いで「月夜のピエレット」が続きますが、初出は1997年のシングル『ピアニィ・ピンク』のカップリングです。優雅なストリングスに乗せてふわっと浮遊感のある優しい歌唱で歌います。毒の強い本作においては眩しいくらい爽やかです。

 アクが強くて一癖も二癖もある、実験的で複雑な楽曲が多く並びます。バラエティ豊富ですがいずれもキャッチーさとは程遠く、個人的にはほとんど聴きません。
 私は本作以降の作品は追いかけていないのですが、何かしらのアルバムを毎年リリースし続けており、精力的に活動を続けています。2020年には結成35周年を迎えました。

禁書
ALI PROJECT
 
 

ストリングスアルバム

月光嗜好症

2003年 1stストリングスアルバム

 レビュー時点(2021年5月)までに実に8枚ものストリングスアルバムがリリースされていますが、その最初の1枚目となる本作。外部ミュージシャンを起用した全編弦楽器による演奏で、過去に発表した楽曲のストリングスアレンジに加えていくつかの新曲も収録しています。
 ALI PROJECTのディスコグラフィは中々ややこしいのですが、その理由として多作なことに加えレーベルが統一されていないこと、そしてこのストリングスアルバム群の存在があります。アルバムタイトルだけ見てもそれが新しいオリジナルアルバムなのか、ベスト盤なのかストリングスアルバムなのかがわかりません。笑

 アルバムは新録曲「月光ソワレ (instrumental)」で幕開け。以降行われるストリングスコンサートも「月光ソワレ」と銘打たれることになります。落ち着いて少しひんやりとした、クラシカルな楽曲です。続く「紅い睡蓮の午後」はファルセット気味の美しい歌を聴かせます。ストリングスも優雅ですね。「プラトニック」は新録曲。弦をはじくような小気味良い音が静かに響き渡ります。演奏に合わせて歌も優しく囁くような感じです。「ナルシス・ノワール」は哀しげなイントロで幕を開け、宝野アリカの耽美でメランコリックな歌が切ないメロディを紡ぎます。魅力的な1曲ですね。「桜の花は狂い咲き」は不協和音のようなスリリングなイントロから魅せられます。原曲録音からだいぶ経つことから歌い方が変わったか、高音キーに少し違和感があるものの、狂気じみた楽曲はストリングスアレンジでも引き立っています。そして数多くのアレンジが存在する「コッペリアの柩」。ストリングスアレンジでも、ダークで狂気を帯びた雰囲気は表現されています。原曲には及びませんが、本作の聴きどころは本楽曲でしょう。「月のなかの少女 (instrumental)」は「Rose Moon」のアレンジ。メロディアスで美しいストリングスに魅せられます。「星月夜」は「ナルシス・ノワール」に似た雰囲気で、耽美でアンニュイですがサビメロは感傷的で切ない。ゆったりとしてメロウな「共月亭で逢いましょう」を挟んで、ラストを飾るのは新録曲「Feliciter」。美しいストリングスに飾られ、優雅で色気のある声でゆったりと晴れやかなメロディを歌います。

 入手困難な『幻想庭園』から2曲、ストリングスアレンジで収録されていることもあって手に取ってみました。ストリングスで構成されているため当然なんですが、ドラム不在(打ち込み/生演奏問わず)に物足りなさを感じてしまいます。初期アリプロのクラシカルな楽曲が好きな人には刺さると思いますが、個人的には1回聴けばいいというのが感想です。

月光嗜好症
ALI PROJECT
 

 

編集盤

COLLECTION SIMPLE PLUS

2006年

 ベスト盤としては通算3作品目で、ビクターエンタテインメントから発売されたシングルのみを集めたベスト盤となります。アニメタイアップシングルが多いのが特徴です。なおアルバムタイトルはフランス語読みのようで「コレクシオン・サンプル・プリュ」と読みます。

 「Wish」はCLAMP原作の『Wish』のドラマCDに起用されました。毒気のない無垢で可愛らしい歌は眩しいくらい爽やかで、聴いていると気恥ずかしさも感じます。チャーチオルガンで幕を開ける「夢のあとに après un rêve」は、宝野アリカはファルセットを駆使してゆったりと歌います。神秘的な子守唄といった印象の楽曲です。「ピアニィ・ピンク」はアニメ『CLAMP学園探偵団』の主題歌。時代を感じさせるニューウェイヴ/ハードポップ的な華やかなサウンドに乗せて、あざとく可愛く歌います。黒アリ曲からALI PROJECTを知った身としては結構衝撃的ですね。「月夜のピエレット」では一転してクラシカルな雰囲気の楽曲へ。優雅で小気味良い演奏に乗る、優しく澄んだ歌が魅力的です。「Anniversary of Angel」はキュートな歌を浮遊感のある演奏で支えます。そんな甘い楽曲を引き締めるベースが心地良く響きます。「天使に寄す」はゆったりとしていて、ストリングスが優雅な雰囲気。
 そしてここからはダークな楽曲が中心になります。まずは黒アリの皮切りとなった名曲「コッペリアの柩 (Noir Ver.)」。アニメ『ノワール』のOP曲に採用されました。いくつものバージョンが存在する本楽曲ですが、本作で聴けるのはキャッチーな頭サビ展開が特徴で、このバージョンが一番良いと思います。不穏だけどもダンサブルな演奏に怪しげなストリングス、そこに乗る甘美でメランコリックな歌メロがとても魅力的です。「après le noir」はしっとりとしたピアノやアコギが優しい楽曲です。時折フランス語を交えた歌はアンニュイな雰囲気。続く「赤と黒 (original ver.)」はアニメ『ノワール』のイメージソングで、狂騒のイントロから畳み掛けるような頭サビで一気に惹きつけます。『EROTIC&HERETIC』収録バージョンとはアレンジの細部が異なりますが、聴き比べても誤差レベルです。明確に違うのは終盤にヴォコーダーを通した歌が一瞬入るところでしょうか。「月蝕グランギニョル」から3曲続けてアニメ『AVENGER』のタイアップ曲が続きます。まず本楽曲は奇抜で複雑なメロディラインがインパクトのある黒アリ曲。Aメロからはアンニュイで妖しげな雰囲気も見せますが、サビメロのインパクトにかき消されてしまいそうです。続く「未來のイヴ」はダークゴシックなイントロからアリプロらしい世界観を展開します。鬱々としたメロディのバックでグルーヴ感のあるベースが蠢きます。疾走感があることに加えて、サビメロはキャッチーで聴きやすいですね。「地獄の季節」はおどろおどろしい雰囲気で、メロディには哀愁が漂います。リズミカルな打ち込みにシンセストリングス、様々な音色が詰め込まれたダークゴシックな演奏は、量産型アリプロ楽曲です。
 そして、通常盤にのみ収録される「亡國覚醒カタルシス (orchestral crowd ver.)」。原曲はアニメ『.hack//Roots』のタイアップですが、本作に収録されたのはアレンジバージョン。奇抜でダークなメロディラインを軸に、オーケストラアレンジと分厚いコーラスにより重厚感に溢れて壮大な仕上がりです。

 前半は驚くほど無垢ですが、後半に向かうにつれてダークゴシックな黒アリへと変わる変遷を見ることができます。個人的にはやはり後半の「コッペリアの柩」からが本領発揮といった印象です。

COLLECTION SIMPLE PLUS
限定盤 (DVD付)
ALI PROJECT
COLLECTION SIMPLE PLUS
通常盤
ALI PROJECT
 
薔薇架刑

2007年

 Mellow Head(現ランティス)からのリリースで、最大ヒット曲「聖少女領域」をはじめ、ローゼンメイデンシリーズのアニメタイアップシングルを中心に選曲されたベスト盤です。同シリーズのキャラクターCDからも楽曲のフルバージョンを収録。本作はオリコンチャートで自身最高位となる週間5位を記録しました。
 私は水銀党員と翠星会員の友人からそれぞれ薦められてローゼンメイデンを履修したことで、アリプロにも触れることになりました(「コッペリアの柩」が先だったかもしれませんが)。笑

 まずはアニメ『ローゼンメイデン』より「禁じられた遊び」。仰々しくダークなイントロから、アンニュイでダークなひねくれポップを繰り広げます。歌詞も「跪いてお嘗めよ」と強烈なインパクトを放ちます。続いて「聖少女領域」も『ローゼンメイデン』タイアップ曲で、最大のヒットとなったALI PROJECTの代表曲ですね。仰々しくて疾走感のあるダークゴシックな楽曲で、まくし立てるように早口な頭サビから一気に惹き込まれます。Aメロからのどうしようもない諦めのような気だるさも心地良いし、過剰装飾な演奏も楽しませてくれます。ひねていますがキャッチーな名曲だと思います。「君がため、惜しからざりし命さへ」はエレクトロニックな楽曲で、ヘヴィなギターが唸ります。不穏に張り詰めた演奏に、恨みがまじさの感じる歌メロなど、ドロドロとして淀んだ感じです。分厚いコーラスワークも不気味。「春蚕 (Full Version)」はエキゾチックで妖しげな色っぽさが漂う楽曲で、『EROTIC&HERETIC』あたりの楽曲にも近しい雰囲気。ゆったりとしていますが、時折不穏を増長します。「極楽荊姫」は中東風のメロディを奏でるストリングスと歌メロ、そこにグルーヴィに重低音を唸らせるベースが加わり、独特の怪しい雰囲気を作り出します。「眠れる城 (Full Version)」はクラシカルで優しくも哀しげな演奏が特徴的。演奏に合わせて、歌もクラシック風の優雅な感じです。続く「S嬢の秘めやかな悔恨」は悲壮感漂うストリングスで幕を開けますが、アンニュイな歌が始まる頃には気だるい心地良さが訪れます。「名なしの森 (Full Version)」はテクノ的なチープで無機質な打ち込みを軸に、様々な音が散発的に鳴る小気味良いサウンド。歌は意外にメランコリックで、ダンサブルな演奏とはギャップがあります。「阿修羅姫」はゲーム『舞-HiME〜運命の系統樹〜』のテーマ曲で、本作では唯一のローゼンメイデンシリーズ以外のタイアップ曲です。おどろおどろしいイントロを経て、疾走感のあるダークゴシックな楽曲を繰り広げる、「聖少女領域」系譜の1曲ですね。件の楽曲をマイナーアレンジしたような雰囲気で、タイトルにもあるような和風要素も時折感じられます。続く「薔薇獄乙女」は『ローゼンメイデン オーベルテューレ』のOP曲。ゆったりとしたテンポで中東風のエキゾチックなメロディを展開しますが、サビではテンポアップし、まくし立てるようにスリリングな楽曲へと変わります。ストリングスがどこか不気味な雰囲気。そして「あたしがアリスだった頃」はゆったりとして、アンニュイで憂いのある楽曲です。ストリングスやアコギを中心に組み立てられているものの、曲調は「熱帯性植物園」にも似ていますね。最後は表題曲「薔薇架刑」。「そうびかけい」と読みます。重厚なストリングスをバックに、クラシカルで荘厳な雰囲気の楽曲を展開。オペラのように歌うメロディは中々複雑です。

 ALI PROJECT入門盤としてオススメできる1作。アニメ『ローゼンメイデン』シリーズも合わせてどうぞ。

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薔薇架刑
ALI PROJECT
 
 
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