🇬🇧 Iron Maiden (アイアン・メイデン)

レビュー作品数: 21
  

スタジオ盤①

ポール・ディアノ時代

Iron Maiden (鋼鉄の処女)

1980年 1stアルバム

 全世界で1億枚以上を売り上げる、ヘヴィメタル界でもトップクラスのセールスを誇るイングランドのバンド、アイアン・メイデン。スティーヴ・ハリス(B)を中心に1975年に結成しました。バンドリーダーであるスティーヴはプログレに影響を受けており、バッキバキで存在感のあるベースはメロディアスでもありサウンドにおいても中核を為しています。ギター以上にベースが目立っている楽曲も結構ありますね。パンクに影響を受けたポール・ディアノ(Vo)、デイヴ・マーレイ(Gt)とデニス・ストラットン(Gt)によるツインリードギター体制、そしてクライヴ・バー(Dr)の5人によるヘヴィなサウンドでNWOBHMムーブメントを牽引しました。ウィル・マローンのプロデュースによる本作は全編を通して高いテンションを保ち、パンクのように攻撃的でありながらも、ハードロック・プログレのような構築美を併せ持っています。
 ジャケットに描かれたゾンビはエディ・ザ・ヘッド(Eddie The Head)と言います。次作以降もジャケットに登場する、バンドのアイコン的なキャラクターです。本作ではキャラクターが確立していませんが、次作以降徐々にキモ可愛い感じになっていきます。笑 イラストレーターのデレク・リッグスによって描かれました。

 オープニングに相応しい強烈な「Prowler」。イントロから分厚くも切れ味抜群のリフに圧倒されますね。ポールによるパンク風の攻撃的な歌唱と、パンクでは見られなかったであろう分厚くて緩急あるテクニカルな演奏の融合。疾走感があり、リズムチェンジによる変速がとてもスリリングです。1980年代というヘヴィメタル黄金時代の幕開けを飾る名曲です。続いて1998年リマスター時に追加されたボーナストラック「Sanctuary」。ボーナストラックがアルバムの流れの邪魔をせず、自然と調和する箇所に入れたのは良い判断ですが、残念ながら2015年リマスターだと省かれています。かなりパンキッシュな楽曲で、彼らには珍しく比較的シンプルですが、強烈な攻撃性と疾走感はたまりません。「Remember Tomorrow」は哀愁漂うバラード曲です。ブルージーで哀愁たっぷりですが、間奏はやや大仰で緩急つけています。中盤に入ると加速し、リズミカルながらもテクニカルな演奏を見せつけます。プログレに影響を受けたスティーヴの趣味もありそうですね。続くデビューシングル「Running Free」はライブではファンが大合唱する人気曲です。クライヴの叩くノリの良いドラムとスティーヴのバキバキ唸るベースがリズミカルな演奏を展開。そしてキャッチーなメロディは一緒に歌いたくなりますね。そして7分に渡る大作「Phantom Of The Opera」。プログレ的な大作趣味はアイアン・メイデンの伝統芸になっていきます。ギター・ベース・ボーカルが一体となって同じメロディをユニゾンする3連符のリズムが特徴的ですが、ゆったりメロディアスなフレーズを聴かせるパートがあったりと、緩急富んだ構成で非常にスリリングな1曲です。
 レコード時代だとここから後半。「Transylvania」は変速でスリリングなインストゥルメンタルです。序盤と終盤でみられる超高速の演奏がとてもカッコ良い。速弾きギターと唸るベース、ドタバタと叩くドラムが作り出す、凄まじい緊張感が鳥肌ものの名曲です。続く「Strange World」はしっとりとしたバラードで、疾走曲の多いアルバムの中で一息つけます。泣きのギターが魅力的。そして「Charlotte The Harlot」で再び疾走。ポールのパワフルな歌唱が強烈なインパクトを与えます。高音域を弾くベースラインも印象的ですね。終盤の畳み掛けるような展開はとてもカッコ良い。そしてアルバムのラストに控えるのは、バンド名を冠したライブの定番曲「Iron Maiden」。これもまた疾走感に溢れた名曲です。ツインギターが絡み合って非常にカッコいいメロディを紡ぎ出します。微妙にタイミングがずれているような感じもありますが、そんなところもスリルを生み出しているのかもしれません。そしてポールの吐き捨てるようなボーカルスタイルがこの疾走曲によく似合うこと。スリリングでカッコ良い。

 名曲尽くしで隙のないアルバムに仕上がっています。全体的にスリリングで、だれることがありません。ボーカリストの魅力は3rdアルバムからの後任ブルース・ディッキンソンに譲りますが、スタジオ盤の出来としては3rd『魔力の刻印』と肩を並べる最高傑作候補だと思っています。

Iron Maiden (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Killers (キラーズ)

1981年 2ndアルバム

 デニス・ストラットン(Gt)が脱退し、代わりにエイドリアン・スミス(Gt)が加入して制作された本作。エイドリアンはデイヴ・マーレイ(Gt)の幼馴染みで、ギターもデイヴから譲り受けたのだそうです。またプロデューサーにはマーティン・バーチを迎えています。マーティン・バーチは、本作から9thアルバム『フィア・オブ・ザ・ダーク』まで、アイアン・メイデン黄金期のアルバム制作に携わりました。

 インストゥルメンタル「The Ides Of March」で幕開け。行進をするかのようなリズムを刻むクライヴ・バーのドラム、そこに乗るツインギターがカッコいい。ダークで、大仰でちょっとクサい。そして前曲から流れるように続く「Wrathchild」はスティーヴ・ハリスのベースが強烈な存在感を放ちます。ポール・ディアノの吐き捨てるようなボーカルもカッコ良くて、強いインパクトを残します。このオープニング2曲の流れが素晴らしいですね。「Murders In The Rue Morgue」はブルージーなイントロでバラードかと錯覚させますが、歌が始まる前に急加速。勢いに満ちた演奏で圧倒します。音域の狭いポールのボーカルよりも、次作からの後任ブルース・ディッキンソンの方が合いそう…。「Another Life」はタムタムをリズミカルに叩くドラムからギターが入り、爆裂。メロディは弱いものの、全編勢いに満ちています。間奏のメロディアスなギターがカッコ良い。続く「Genghis Khan」はインストゥルメンタル。とても変なメロディですが、加速したり変拍子を交えたりとリズムチェンジの嵐で、テクニカルでスリリングな演奏を展開します。クライヴによる超速のドラム捌きが凄い。終盤に「Hallowed Be Thy Name」の原型が垣間見えます。「Innocent Exile」はスティーヴのメタリックなベースが強烈。終盤はリズミカルな演奏でノリノリです。
 アルバム後半のオープニングを飾る表題曲「Killers」。これが本作では出色の出来です。メタリックなベースにポールのシャウトで高揚感を煽り、そしてタッタカタッタカとリズムを刻んではリズムを変えて、とてもスリリングで癖になります。全編通してテンションの高い演奏、間奏で聴かせる速弾きギターなど、とにかくカッコ良い。「Prodigal Son」は本作では異色のナンバー。リズム隊は相変わらず武骨ですが、アコギが小気味良くポールも優しく歌う牧歌的な楽曲です。アルバムの中では浮いていますが、爽やかで優しい。続く「Purgatory」は一転、哀愁漂うメロディアスな疾走曲です。クサいですが中々の佳曲。「Twilight Zone」は1998年リマスターにのみ付属するボーナストラック。ファルセットと地声を行き来するポールのボーカルはかなり無理がある感じ。ラスト曲は「Drifter」で、ノリの良いロックンロールですが中盤場違いにブルージーなメロディが出てきたあと少し複雑に。ちょっと纏まりのない印象です。でも終盤のサイケ気味なギターは心地良い感じ。

 オープニング2曲や表題曲は素晴らしいものの、全曲満遍なくクオリティが高かった前作に比べると、楽曲により出来不出来の差が結構あるのも事実です。単曲でみると良い曲もあるのですが、アルバム全編を通すと少しイマイチな感じもします。また、複雑な構成を意識するあまりメロディが失われている楽曲もあるのが残念です。これは表現力に問題があったポールに配慮した結果かもしれませんが、バンドはポールを見限って、本作のツアー後ポールを解雇することに。

Killers (2015 Remastered)
Iron Maiden
 

ブルース・ディッキンソンの加入~黄金期

The Number Of The Beast (魔力の刻印)

1982年 3rdアルバム

 ポール・ディアノの代わりに加入した新ボーカリスト、ブルース・ディッキンソン。前任ポールとは比べ物にならない幅広い声域を持ち、ハイトーンボイスも使いこなします。表現力が格段にアップした強力な布陣でリリースされた本作は、これまでよりドラマチックでメロディアスになった正統派ヘヴィメタルの傑作です。同時に、エディが描かれた悪魔的なジャケットも含めて、メタル特有のある種のダサさもほんのり醸し出していたりもします。笑 メタラー曰くダサいは誉め言葉だと言いますが。そして本作において全英1位を獲得しました。

 1曲目「Invaders」からパワフルな疾走曲でいきなりノックアウトされます。イントロから迫力が尋常じゃなく、凄まじい緊張感を放ちます。特にドラムが凄くて、スリルを生み出しているのはクライヴ・バーのおかげかもしれません。そして新任のブルースの歌声にその実力の高さを感じさせます。表現力が全然違う。そして切れ味抜群のギターやメタリックなベースもカッコ良い。「Children Of The Damned」は緩急ある展開がとてもスリリングです。前半はスローテンポで、ブルージーかつヘヴィ。ブルースの哀愁漂う歌メロも良いですね。中盤から一気に加速、高揚感を煽ります。エイドリアン・スミスとデイヴ・マーレイによる、激しいけれどもメロディアスなツインギターも魅力的。続いて、ナレーションから始まるヘヴィな楽曲「Prisoner」。鈍重に始まったあとに加速し、疾走感に溢れています。そしてサビではキャッチーな歌を聴かせてくれます。スティーヴ・ハリスのベースラインも印象的ですね。「22 Acacia Avenue」はイントロの鋭利なギターリフが強烈です。6分半の中でコロコロ場面転換する忙しい楽曲ですが、中盤の3連符ドラムも結構強烈なインパクト。
 そしてレコード時代のB面オープニングを飾るのは表題曲「The Number Of The Beast」。新約聖書に出てくる獣の数字をテーマにした楽曲です。イントロの静かな展開から尋常じゃない緊張感を放っていて、非常にスリリング。ポールでは表現できなかったであろう、ブルースの人間離れした超ハイトーンボイスに圧倒されます。そんなスリリングな楽曲ですがキャッチーな側面もあって、ライブではサビの「666! The number of the beast!」が大合唱されるという。中盤のギターソロ等も含め、演奏も歌も終始カッコ良く、アイアン・メイデン5本の指に入る名曲です。続く「Run To The Hills」もライヴの定番曲。白人の殺戮から逃げるインディアンを描いた楽曲で、タッタカタッタカ刻むリズムで走っていく様子を表現しているようです。ブルースのどこまでも伸びるボーカルも魅力的で、キャッチーなメロディは口ずさみたくなりますね。感動的な1曲です。「Gangland」は、スピードに緩急つける楽曲が多い本作の中では珍しくストレートな疾走曲です。爽快ですが、本作においては影が薄いかも。続き、1998年リマスター時にのみ入るボーナストラック「Total Eclipse」。ミドルテンポで展開するヘヴィな楽曲で、パワフルなリズム隊が強烈。後半一瞬だけ疾走する展開がスリリングです。そして、最後に控える7分の大作「Hallowed Be Thy Name」。死刑執行を間近に控える囚人の心情を描いた楽曲で、これがまた名曲なのです。イントロから重厚な鐘の音が響き渡り、緊迫した空気が漂います。そしてダークなメロディで徐々に盛り上がっていきます。スリリングでドラマチック、7分という長さを感じさせない構成力の高さ。ライブの定番で、アイアン・メイデンの中でもトップクラスの人気曲です。

 疾走曲が多く、その疾走曲も1曲のなかでリズムを変えたりするので緊張感が持続し、あっという間にアルバムを聴き終えます。またライヴの定番曲も多く収録されていますので、まずは本作か、または『鋼鉄の処女』を入門とするのが良いのではないでしょうか。

左:通常盤。
右:エディのフィギュアが付くCollectors Edition。

The Number Of The Beast
(2015 Remastered)
Iron Maiden
The Number Of The Beast
Deluxe Edition (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Piece Of Mind (頭脳改革)

1983年 4thアルバム

 ドラマーがクライヴ・バーからニコ・マクブレインに交替して制作された4作目。プロデューサーは引き続きマーティン・バーチ。アイアン・メイデン屈指の超名曲「The Trooper」がこの作品を大きく牽引しますが、他は際立った楽曲が少なく、全体的に地味な印象は否めません。ギターリフ等は所々で耳に残るのですが、ミドルテンポの楽曲が多く、疾走曲の少なさが地味な印象を抱かせるのだと思います。ですが商業的には成功を得ました。

 オープニングから3連符が強烈な「Where Eagles Dare」で開幕。ニコのドラムが強烈で、また全編通して鈍重で力強いギターリフが奏でられます。ただし大きな盛り上がりもなく6分強の長さがやや冗長に感じられる上、これまでの作品のオープニング曲よりメロディが弱いのも残念です。続く「Revelations」ブラック・サバスばりに引きずるように重たいギターリフがインパクトがあり、途中加速するという緩急ある佳曲です。スローテンポな序盤はブルージーで哀愁たっぷり。メロディアスなギターは聴きごたえがあり、ベースもカッコ良いです。後半はテンポアップしてスリリングに。ですがスピード感のあるライブを聴くと、スタジオ録音はもったりした印象が強いです。哀愁漂うミドルテンポの「Flight Of Icarus」は本作中最もメロディアスな1曲。サビメロではブルース・ディッキンソンの伸びやかなボーカルが響き、コーラスワークも印象的。また、ズッズズ ズッズズと力強いリフが勇壮なイメージを抱かせます。ここに来てようやく疾走曲「Die With Your Boots On」。演奏は硬派なロックンロールですが、歌メロはキャッチーで耳馴染みが良いです。後半のエイドリアン・スミスの伸びやかなギターソロもカッコ良いですね。
 後半のオープニングを飾る「The Trooper」。アイアン・メイデンでは1、2を争う超名曲です。スティーヴ・ハリスのバッキバキの硬質なベースが暴れ回り、デイヴ・マーレイとエイドリアンのツインギターが印象的なギターリフを刻みます。そしてダイナミックなドラムも高揚感を煽ります。非常にスリリングで鳥肌が立ちます。ブルースの歌も耳に残るメロディで口ずさみたくなります。邦楽の感覚で聴くと「サビがない!」と思うんですが、ある意味全編通してサビというか聴きどころのような気もします。シングルカットされましたが、シングルのジャケットに描かれた、軍服を着込んで英国旗を掲げたエディがダサカッコいいんです。「Still Life」はメロウな展開から盛り上がっていきますが、あまりパッとせず印象が薄いです。「Quest For Fire」も地味…。ギターリフなんてメイデン節全開なんですが、メロディがかなり弱いです。冗長な楽曲が並んだあとに疾走曲「Sun And Steel」。タッタカタッタカ跳ねるようなリズムに乗せて、メロディアスな歌をコーラスで飾って聴かせてくれます。こういうキャッチーな疾走曲を前半に持ってくれば、本作の印象もだいぶ変わっただろうに…。そしてラスト曲「To Tame A Land」は7分半の大作。ラストに大作を持ってくるのはアイアン・メイデンお決まりのパターンですね。中東風のメロディが特徴的な楽曲です。派手さには欠きますが、中盤のベースソロやトリッキーでスリリングな演奏など、所々惹かれるものがあります。

 超名曲「The Trooper」を携え、また佳曲もいくつかあるものの、ライブバージョンを聴いてしまうとどれももったりした印象は否めず。逆に、地味だった本作がライブで息を吹き込まれたと見るべきか…。個人的には本作は後回しで良いと思っています。

Piece Of Mind (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Powerslave (パワースレイヴ)

1984年 5thアルバム

 タイトル曲に触発された、スフィンクスに扮したエディのジャケットアートが特徴的な本作。巷ではオープニング2曲の評価がずば抜けて高く、ヘヴィメタルファン必聴レベルの名曲です。個人的にはそれらオープニング2曲に加え、ラスト2曲も強烈なインパクトがある作品だと思っています。
 メンバーは前作に引き続き、スティーヴ・ハリス(B)、ブルース・ディッキンソン(Vo)、デイヴ・マーレイ(Gt)、エイドリアン・スミス(Gt)、ニコ・マクブレイン(Dr)の顔ぶれにマーティン・バーチがプロデューサーとして就きました。しばらくこの固定メンバーで続きます。

 オープニングを飾る「Aces High」は、第二次大戦期の英独の戦闘機による戦闘を描いた楽曲で、邦題「撃墜王の孤独」。あまりにカッコ良いイントロから鳥肌もので、強烈な攻撃力で迫る演奏に圧倒されますが、疾走感に溢れておりとても気持ち良い。そしてパワーメタルに大いに影響を与えたであろうクサい展開とメロディ。笑 ハイトーンボイスを駆使して超高音で歌うブルースの歌もたまりません。ギターソロも魅力的です。続く「2 Minutes To Midnight」もめちゃめちゃカッコいい。イントロからゾクゾクするのはこの楽曲も同様ですが、前曲のクサさがダメだった人もこの楽曲なら納得できると思います。疾走感のある演奏はスティーヴのメタリックなベースが際立っています。また歌がとてもメロディアスで聴きやすく、サビは一緒に歌いたくなりますね。世界終末時計2分前、核戦争による人類死滅を警告する1曲です。このオープニング2曲に注目しがちですが、他にも佳曲揃いです。「Losfer Words (Big ‘Orra)」はインストゥルメンタル。3連符を刻むリズミカルな楽曲で、途中ギターがメインメロディを奏でます。この楽曲において一際輝いているのはスティーヴの硬質なベースで、バキバキ唸っていて痺れます。続く「Flash Of The Blade」はイントロから凄まじく緊迫した空気が漂います。テンポも速くて焦燥感をひたすら煽りますが、サビメロは意外にキャッチーなんです。後半のツインリードギターが奏でるメロディアスなフレーズも中々良い。「The Duellists」もピリピリと緊張が伝わってきます。中盤ひたすら長い間奏を展開、メロディアスなギターがカッコ良いものの、間奏パートが長くてちょっと冗長かも。
 アルバム後半は疾走曲「Back In The Village」で幕開け。レコード時代はB面オープニングでしたが、CDやデジタル音源で通しで聴くと若干埋もれます。疾走しっぱなしでスリリングなんですが、起伏に欠ける印象。続く表題曲「Powerslave」が名曲。イントロからヘヴィなギターリフが強烈。そしてジャケットアートを想起させる、中東風の怪しげなメロディが他の楽曲とは少し違う毛色を醸しています。でもアルバムの調和を乱さない程度の良いアクセントになっていて、これが結構やみつきになります。ギターソロはデイヴがメロウに聴かせ、エイドリアンが爽快に弾くという対比になっています。終盤ニコの手数の多いドラムもカッコ良い。そしてラスト曲「Rime Of The Ancient Mariner」は13分半に渡るアイアン・メイデン史上最長の楽曲…でした。2015年の『魂の書~ザ・ブック・オブ・ソウルズ~』で18分の楽曲が出て来たので、最長の座は奪われてしまいましたが。笑 詩人サミュエル・テイラー・コールリッジの『老水夫行』にインスパイアされたプログレ的な楽曲で、数ある大作の中でも上位に来る傑作でしょう。序盤は勇壮に突き進むような演奏と哀愁漂う歌メロが印象的で、途中リズムチェンジして緊張が高まります。5分過ぎに突如静寂が訪れますが、不穏な気配が漂います。聴き入っていると7分半辺りからテンポアップ、「The Number Of The Beast」を想起させる盛り上がり方は鳥肌ものです。終盤はメロディアスな演奏に時折複雑なリズムを絡ませ、そして最後に序盤と同じような歌メロに回帰して終了。ドラマチックでスリリングな名曲です。

 ライブでも定番の名曲が多く、疾走曲も多いので聴きやすい作品です。ヘヴィメタル特有のクサさ・ダサさも薄ら感じますが笑、入門盤にも適しているでしょう。

Powerslave (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Somewhere In Time (サムホエア・イン・タイム)

1986年 6thアルバム

 初のライブ盤『死霊復活』を挟んで発表された本作は、ジャケットに描かれたSFの世界観のような近未来的なイメージがあります。映画『ブレードランナー』に触発されたみたいですね。ギターシンセの導入など新たなアプローチもされていますが、徐々に楽曲が長尺になってプログレへのアプローチが強まっていく点に変化がみられます。これまでも大作はありましたが、本作では7分超えの楽曲が3曲もあります。そんなプログレ的なアプローチは次作で完成を見ることになります。大作はスティーヴ・ハリスが作曲していますが、本作は作曲面でエイドリアン・スミスの貢献も大きいです。

 オープニング曲は「Caught Somewhere In Time」。イントロの途中から加速するスリリングな楽曲です。ギターシンセを大胆に導入した楽曲ですが、ギターシンセよりも、スティーヴのバキバキと唸る高速ベースが目立ちます。疾走しっぱなしですが構成は複雑で、なんと1曲目から7分半あります。歌メロは弱いですが代わりにメロディアスなギターが聴けたり、また全編通して白熱した演奏はスリル満点でカッコ良いです。続いて名曲「Wasted Years」。緊張が張り詰めたイントロで一気に引き込んでくるこの曲はエイドリアンの作で、彼のポップセンスが発揮されています。イントロや間奏で聴けるギターソロがとてもカッコ良く、またブルース・ディッキンソンの哀愁あるメロディアスな歌も魅力的な楽曲です。続く「Sea Of Madness」では、ニコ・マクブレインのマシンガンのようなドラムとスティーヴのゴリッゴリなベースがとにかく強烈。メロディな歌よりも疾走感溢れるリズム隊に意識がいきます。7分半の「Heaven Can Wait」はLAメタルのようにキャッチーでポップ。口ずさみたくなる歌メロが魅力的なだけでなく、途中でリズムチェンジがあったり、ライブ映えしそうな合唱パートがあったりと飽きない構成に仕上がっています。
 アルバム後半は「The Loneliness Of The Long Distance Runner」で開幕。イントロは落ち着いていますが、溜めていたのか、歌が始まると一気に加速して駆け抜けます。中盤の、エイドリアンとデイヴ・マーレイのハモるギターが心地良いです。「Stranger In A Strange Land」は重厚でダークな雰囲気で、あまりアイアン・メイデンらしくない感じ。間奏では渾身の泣きのギターをじっくり聴かせてくれます。続いて、後半のハイライトとも言える「Deja-Vu」。泣きのギターで始まりますが、そこから加速。ツインリードが奏でるメロディアスで哀愁漂うフレーズが魅力的ですが、ポップさも兼ね備えた疾走曲です。中盤の炸裂するようなドラムも印象的。そしてラスト曲「Alexander The Great」はアレキサンダー大王について歌った8分半の大作。哀愁あるイントロから、徐々に壮大になっていきます。ブルースの歌がカッコ良いですね。ただし歌が終わった後の演奏は長いし、緊張感も欠けるので正直少しダレます。

 ずば抜けた楽曲が無いのであまり聴くことがないのですが、全体的な水準は高めで佳曲揃い。アイアン・メイデンの中では、かなりポップでキャッチーな作品です。

左:通常盤。
右:エディのフィギュアが付くCollectors Edition。

Somewhere In Time
(2015 Remastered)
Iron Maiden
Somewhere In Time
Deluxe Edition (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Seventh Son Of A Seventh Son (第七の予言)

1988年 7thアルバム

 プログレ的なアプローチはこれまでもありましたが、本作はプログレ的大作主義のひとつの頂点です。ヨーロッパでは7人兄弟の7番目の息子は特別な力を持つとされているようで、そんな7番目の息子の更に7番目の息子というのを主軸に置いたコンセプトアルバムです。『魔力の刻印』以来となる全英1位を獲得しただけでなく、いくつかのシングルヒットも生みました。
 また前作でギターシンセサイザーを導入していましたが、本作でもシンセサイザーを活用。ときに楽曲をキャッチーに、ときに荘厳に演出します。使いこなれて効果的に活用できている印象です。

 オープニング曲「Moonchild」はアコギをバックにブルース・ディッキンソンが静かに歌いますが、歌が終わるとシンセを皮切りに盛り上げ、ヘヴィメタル的な激しい楽曲に変貌します。この序盤の展開は鳥肌ものだし、メタル化して疾走するパートもスリリング。パワフルな歌唱でキャッチーなサビメロを届け、更にエイドリアン・スミスのギターシンセがバックで彩ります。バキバキ唸るスティーヴ・ハリスのベースも絶好調ですね。オープニングに相応しい名曲です。続く「Infinite Dreams」はミドルテンポの楽曲で、序盤はメロウな雰囲気で進行。中盤リズムチェンジ後の歌メロは力強さの中に哀愁が漂い、切なさを誘います。後半はエイドリアンとデイヴ・マーレイのツインギターが奏でるメロディアスなハモりが聴きどころでしょう。「Can I Play With Madness」は明るくキャッチーな楽曲です。コーラスワークを駆使した、タイトルを連呼するサビは分かりやすいですね。ギターシンセが前面に出ており、爽やかでポップな雰囲気を作り出します(でもリズム隊はヘヴィなのでご安心を)。そして本作では一番人気のライブ定番曲「The Evil That Men Do」。スティーヴのゴリゴリベースがお得意のギャロップ奏法を披露し、ニコ・マクブレインのドラムと合わせてタッタカタッタカと気持ち良い疾走感を生み出します。そしてブルースの歌はとてもメロディアスかつ伸びやかで聴きやすいですね。耳に残る名曲です。続いて表題曲「Seventh Son Of A Seventh Son」。10分近い大作で、個人的には本作ではこれが一番好みです。序盤はシンセサイザーによって荘厳な雰囲気が作られ、気持ちが引き締まりますね。ゆっくりだけど力強く着実に踏み締めるような序盤、タイトルを連呼するブルースの歌には若干中毒性があります。そして中盤4分くらいからは静かながらも緊張が張り詰め、シンセがひんやりとした空気を作ります。ニコのドラムが徐々に力強くなってきて、7分くらいから演奏は凶暴化。非常に激しいインストパートに変貌し、スリリングな演奏でリスナーを圧倒します。全編通して実にカッコ良い。続く「The Prophecy」は本作の中ではやや地味な印象。6/8拍子のリズミカルな演奏でゆったり揺られ、その後の激しい本編。ですが聴きどころはアウトロの美しいアコギでしょうか。そして「The Clairvoyant」はスティーヴのメタリックなベースソロから始まります。リズムギターとドラムが加わり、リードギターが美しいメロディを奏でて…と、徐々に盛り上がるイントロがカッコ良くて痺れますね。本編はリズムチェンジを繰り返して忙しいですが、目まぐるしい場面転換に加えて終始張り詰めた空気で緊張を強いてきます。ですがメロディアスなフレーズには惹かれるものがあります。ラストは哀愁漂う疾走曲「Only The Good Die Young」。ギャロップ奏法で焦燥感を煽りつつも、歌メロはメロディアスかつキャッチーで聴きやすい。そしてアウトロで「Moonchild」の冒頭フレーズが出てきて、アルバムの統一感を生み出しています。この終わり方が素敵です。

 この時代特有のシンセサイザーの導入で当時は賛否両論だったようですが、作り込まれていて完成度が非常に高いです。個人的には聴く頻度も高く、お気に入りの1枚です。

Seventh Son Of A Seventh Son (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
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