🇬🇧 Iron Maiden (アイアン・メイデン)

レビュー作品数: 14
  

スタジオ盤

ポール・ディアノ時代

Iron Maiden (鋼鉄の処女)

1980年 1stアルバム

 全世界で1億枚以上を売り上げる、ヘヴィメタル界でもトップクラスのセールスを誇るバンド、アイアン・メイデン。本作は、ハードロックにパンクの攻撃性を加えたヘヴィメタルを展開する、アイアン・メイデンの1stアルバムです。アルバムは高いテンションを持ち、パンクのように攻撃的でありながらも、ハードロック・プログレのような構築美を併せ持っています。
 プログレに影響を受けたバンドリーダー、スティーヴ・ハリス(B)。バッキバキで存在感のあるベースは、メロディアスでもありサウンドにおいても中核を為しています。ギター以上に目立っている楽曲も結構あります。パンクに影響を受けたポール・ディアノ(Vo)、デイヴ・マーレイ(Gt)とデニス・ストラットン(Gt)によるツインリードギター体制、そしてクライヴ・バー(Dr)の5人によるヘヴィなサウンド。

 ジャケットに描かれたゾンビはエディ・ザ・ヘッド(Eddie The Head)と言います。次作以降もジャケットに登場する、バンドのアイコン的なキャラクターです。本作ではキャラクターが確立していませんが、次作以降徐々にキモ可愛い感じになっていきます。笑

 オープニングに相応しい強烈な「Prowler」。ポールによるパンク風の攻撃的な歌唱と、パンクでは見られなかったであろう分厚いサウンドと、緩急あるテクニカルな演奏の融合。1980年代というヘヴィメタル黄金時代の幕開けを飾る名曲です。続いてリマスター時に追加されたボーナストラックである「Sanctuary」。ボーナストラックがアルバムの流れの邪魔をせず、自然と調和する箇所に入れたのはナイス判断ですね。強烈な攻撃性と疾走感がたまりません。「Remember Tomorrow」は哀愁漂うバラード曲です。中盤の加速など、緩急ある構成はプログレに影響を受けたスティーヴの趣味でしょうか。続き、デビューシングル「Running Free」はライブではファンが大合唱する人気曲です。ノリの良いドラムに硬質なベースがバキバキ唸り、そして覚えやすいメロディは確かに歌いたくなります。そして7分に渡る大作「Phantom Of The Opera」。プログレ的な大作趣味はアイアン・メイデンの伝統芸になっていきます。あとは3連符のリズムもアイアン・メイデン特有ですね。緩急あって非常にスリリングな1曲です。続く「Transylvania」はインストゥルメンタルです。イントロと、後半でみられる超高速の展開が非常にスリリング。速弾きギターと唸るベース、ドタバタと叩くドラムが作り出す凄まじい緊張感が鳥肌ものの名曲です。疾走曲が続いた後で、しっとりとした「Strange World」でひと息。そして「Charlotte The Harlot」で再び疾走し、サビでのポールのパワフルな歌唱が強烈なインパクトを与えます。そしてラストに控えるのは、表題曲でありライブの定番曲「Iron Maiden」。これもまた疾走感に溢れた名曲です。ツインギターが絡み合って非常にカッコいいメロディを紡ぎ出します。微妙にタイミングがずれているような感じもありますが、そんなところもスリルを生み出しているのかもしれません。

 名曲尽くしで隙のないアルバムに仕上がっています。全体的にスリリングで、だれることがありません。ボーカリストの魅力は3rdアルバムからの後任ブルース・ディッキンソンに譲りますが、スタジオ盤の出来としては3rd『魔力の刻印』と肩を並べる最高傑作候補だと思っています。

Iron Maiden (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Killers (キラーズ)

1981年 2ndアルバム

 デニス・ストラットン(Gt)が脱退し、代わりにエイドリアン・スミス(Gt)が加入して制作された本作。エイドリアン・スミスはデイヴ・マーレイの幼馴染みで、ギターもデイヴ・マーレイから譲り受けたのだそうです。

 プロデューサーにはマーティン・バーチを迎えています。マーティン・バーチは、本作から9thアルバム『フィア・オブ・ザ・ダーク』まで、アイアン・メイデン黄金期のアルバム制作に携わりました。
 行進をするかのようなリズムを刻むドラムにのるツインギターがカッコいいインストゥルメンタル「The Ides Of March」、そして前曲から流れるように続く「Wrathchild」はベースが強烈な存在感を放つこれまたカッコいい楽曲で、この2曲の流れが素晴らしいです。また表題曲「Killers」も出来が良く、タッタカタッタカとリズムを刻んではリズムを変えて…と癖になります。
 これらの楽曲は素晴らしいものの、全曲満遍なくクオリティが高かった前作に比べると、楽曲により出来不出来の差が結構あるのも事実です。単曲でみると良い曲もあるのですが、アルバム全編を通すと少しイマイチな感じもします。また、複雑な構成を意識するあまりメロディが失われている楽曲もあるのが残念です。

 なお本作のツアー後、ポール・ディアノが解雇されますが、これは技術力に問題があったのではと言われているようです。

Killers (2015 Remastered)
Iron Maiden
 

ブルース・ディッキンソン時代①

The Number Of The Beast (魔力の刻印)

1982年 3rdアルバム

 ポール・ディアノの代わりに加入した新ボーカル、ブルース・ディッキンソン。前任ポールとは比べ物にならない幅広い声域を持ち、ハイトーンボイスも使いこなします。表現力が格段にアップした強力な布陣でリリースされた本作は、これまでよりドラマチックでメロディアスになった正統派ヘヴィメタルの傑作です。同時に、エディが描かれた悪魔的なジャケットも含めて、メタル特有のある種のダサさもほんのり醸し出していたりもします。笑 メタラー曰くダサいは誉め言葉だと言いますが。

 1曲目「Invaders」からパワフルな疾走曲でいきなりノックアウトされます。イントロから迫力が尋常じゃなく、凄まじい緊張感を放ちます。特にドラムが凄くて、スリルを生み出しているのはクライヴ・バーのおかげかもしれません。そして新任のブルースの歌声にその実力の高さを感じさせます。表現力が全然違う。続く「Children Of The Damned」は前半がスローテンポですが、中盤から加速するという緩急ある展開がとてもスリリングです。ギターの音色も激しいけれども美しい。ナレーションから始まるヘヴィな「Prisoner」。疾走感もありますが、サビではメロディアスな歌を聴かせてくれます。「22 Acacia Avenue」はイントロのギターリフが強烈です。場面転換が忙しい楽曲ですが、中盤の3連符ドラムが結構強烈です。そして表題曲「The Number Of The Beast」は新約聖書に出てくる獣の名前。イントロの静かな展開も、尋常じゃない緊張感を放っていて、非常にスリリング。ポールでは表現できなかったであろうブルースの人間離れした超ハイトーンボイスも聴けます。あまりの凄まじさに圧倒されます。そんなスリリングな楽曲ですがキャッチーな一面もあって、ライブではサビの「666! The number of the beast!」が大合唱されるという。中盤のギターソロ等も含めて終始カッコいい楽曲だと思います。続く「Run To The Hills」もライヴの定番曲。白人の殺戮から逃げるインディアンを描いた楽曲で、ドラムのリズムが走っていくリズムを表現しているようです。ブルースのどこまでも伸びるボーカルも魅力的で、感動的な1曲です。「Gangland」は、スピードに緩急つける楽曲が多い中で珍しくストレートな疾走曲です。続き、リマスター時に追加されたボーナストラック「Total Eclipse」。前半はヘヴィなミドルテンポですが、後半一瞬疾走する展開がスリリング。そして、最後に控える7分の大作「Hallowed Be Thy Name」。これがまた名曲なのです。重厚な鐘の音が響き、死刑執行を間近に控える囚人の心情を描いた楽曲です。7分という長さを感じさせない構成力。ライブの人気曲で、アイアン・メイデンの中でもトップクラスに人気の1曲です。

 疾走曲が多く、その疾走曲も1曲のなかでリズムを変えたりするので緊張感が持続し、あっという間にアルバムを聴き終えます。またライヴの定番曲も多く収録されていますので、まずは本作か、または『鋼鉄の処女』を入門とするのが良いのではないでしょうか。

左:通常盤。
右:エディのフィギュアが付くCollectors Edition。

The Number Of The Beast (2015 Remastered)
Iron Maiden
The Number Of The Beast (Deluxe) (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Piece Of Mind (頭脳改革)

1983年 4thアルバム

 ドラマーがクライヴ・バーからニコ・マクブレインに交替して制作された4作目。アイアン・メイデン屈指の超名曲「The Trooper」がこの作品を大きく牽引しますが、他は際立った楽曲が少なく、全体的に地味な印象は否めません。ギターリフ等は所々で耳に残るのですが、ミドルテンポの楽曲が多く、疾走曲の少なさが地味な印象を抱かせるのだと思います。

 オープニングから3連符が強烈な「Where Eagles Dare」で開幕。ニコのドラムが強烈で、また全編通してこの印象的なギターリフが奏でられます。ただ6分強の長さがやや冗長に感じられ、これまでの作品のオープニング曲よりメロディが弱いのが少し残念。続く「Revelations」は引きずるように重たいギターリフがインパクトがあり、中盤で加速するという緩急ある佳曲です。これはなかなかカッコよく、7分弱という長さを感じさせません。哀愁漂うミドルテンポの「Flight Of Icarus」は本作中最もメロディアスな1曲で、ブルース・ディッキンソンの伸びやかなボーカルが響きます。歌メロがキャッチーな「Die With Your Boots On」を挟んで、名曲「The Trooper」。アイアン・メイデンでは1、2を争う超名曲です。スティーヴ・ハリスのバッキバキの硬質なベースが暴れ回り、デイヴ・マーレイとエイドリアン・スミスのツインギターが印象的なギターリフを刻みます。そしてダイナミックなドラムも高揚感を煽ります。非常にスリリングで鳥肌が立ちます。ブルースの歌も耳に残るメロディで口ずさみたくなります。邦楽の感覚で聴くと「サビがない!」と思うんですが、ある意味全編通してサビというか聴きどころのような気もします。シングルカットされましたが、シングルのジャケットに描かれた、軍服を着込んで英国旗を掲げたエディがダサカッコいいんです。そして何曲か挟んで疾走曲「Sun And Steel」ではメロディアスな歌をコーラスで飾って聴かせてくれます。こういう疾走曲を前半に持ってくれば本作の印象も変わっただろうに…。そしてラスト曲「To Tame A Land」は7分半の大作。ラストに大作を持ってくるのはアイアン・メイデンお決まりのパターンですね。中盤のベースソロは強烈なものの、全体的にあまり印象に残りません。

 超名曲「The Trooper」が魅力的ですが、名曲ゆえに数々のライブ盤でも聴けるので本作は後回しでも良いかもしれません。

Piece Of Mind (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Powerslave (パワースレイヴ)

1984年 5thアルバム

 巷ではオープニング2曲の評価がずば抜けて高く、ヘヴィメタルファン必聴レベルの名曲です。個人的にはそれらオープニング2曲に加え、ラスト2曲も強烈なインパクトがある作品だと思っています。

 オープニングを飾る「Aces High」は、あまりにカッコ良いイントロから鳥肌もの。強烈な攻撃力で迫る演奏に圧倒されますが、疾走感がとても気持ち良い。そしてパワーメタルに多いに影響を与えたであろうクサい展開とメロディ。笑 ハイトーンボイスを駆使して超高音で歌うブルース・ディッキンソンの歌もたまりません。第二次大戦期の英独の戦闘機による戦闘を描いた楽曲です。続く「2 Minutes To Midnight」もめちゃめちゃカッコいい。イントロからゾクゾクするのはこの楽曲も同様ですが、前曲のクサさがダメだった人も、この楽曲なら納得でしょう。歌がとてもメロディアスで聴きやすく、サビは一緒に歌いたくなります。世界終末時計2分前、核戦争による人類死滅を警告する1曲です。
 この2曲に注目しがちですが、他にも佳曲揃いです。「Losfer Words (Big ‘Orra)」はインストゥルメンタル。ギターがメロディを奏でますが、3連符のリズムの中で一際輝くのはスティーヴ・ハリスの硬質なベースでしょう。痺れます。メロディアスな「Flash Of The Blade」、インストゥルメンタルかと錯覚するような長い間奏を持つ「The Duellists」、ひたすら疾走する「Back In The Village」といった佳曲が続きます。表題曲「Powerslave」は、ジャケットに描かれたスフィンクスに扮したエディを連想する1曲です。ヘヴィなリフが強烈で、そして中東風のメロディが他の楽曲とは少し違う毛色を醸しています。でもアルバムの和を乱さない程度の良いアクセント。そしてラスト曲「Rime Of The Ancient Mariner」は13分半に渡るアイアン・メイデン史上最長の楽曲…でした。2015年の『魂の書~ザ・ブック・オブ・ソウルズ~』で18分の楽曲が出て来たので、最長の座は奪われてしまいましたが。笑 プログレ的な楽曲で、場面転換を駆使しているおかげで冗長に感じません。とてもスリリングなラスト曲です。

 名曲が多くて聴きごたえのある作品です。

Powerslave (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Somewhere In Time (サムホエア・イン・タイム)

1986年 6thアルバム

 初のライブ盤『死霊復活』を挟んで発表された本作は、ジャケットに描かれたSFの世界観のような近未来的なイメージがあります。ギターシンセの導入など新たなアプローチもされていますが、徐々に楽曲が長尺になってプログレへのアプローチが強まっていく点に変化がみられます。これまでも大作はありましたが、本作では7分超えの楽曲が3曲もあります。そんなプログレ的なアプローチは次作で完成を見ることになります。

 オープニング曲は「Caught Somewhere In Time」。イントロの途中から加速するスリリングな楽曲です。ギターシンセを大胆に導入した楽曲ですが、ギターシンセよりもバキバキと唸る高速ベースが目立ちます。疾走しっぱなしですが構成は複雑で、なんと1曲目から7分半あります。キャッチーなイントロで一気に引き込んでくる「Wasted Years」。この曲はギターが最高に良いのですが、ブルース・ディッキンソンの哀愁あるメロディアスな歌も魅力的な楽曲です。続く「Sea Of Madness」ではマシンガンのようなドラムと硬質なベースが強烈。LAメタルのようにキャッチーでポップな「Heaven Can Wait」は何気に7分半もあるんですね。途中でリズムチェンジがあって飽きない構成。後半の楽曲だと「Deja-Vu」が優れています。泣きのギターで始まりますが、哀愁の中にポップさを兼ね備えた疾走曲です。中盤の強烈なドラムも印象的。とってもメロディアスで魅力的な1曲です。そしてラスト曲「Alexander The Great」は8分半の大作。哀愁あるイントロから、徐々に壮大になっていきます。ブルースの歌がかっこいい。ただし歌が終わった後の演奏は長いので少しダレるかも。

 ずば抜けた楽曲が無いのであまり聴くことがないのですが、全体的な水準は高めで佳曲揃い。アイアン・メイデンの中では、かなりポップでキャッチーな作品です。

左:通常盤。
右:エディのフィギュアが付くCollectors Edition。

Somewhere In Time (2015 Remastered)
Iron Maiden
Somewhere In Time (Deluxe) (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Seventh Son Of A Seventh Son (第七の予言)

1988年 7thアルバム

 プログレ的なアプローチはこれまでもありましたが、本作はプログレ的大作主義のひとつの頂点です。ヨーロッパでは7人兄弟の7番目の息子は特別な力を持つとされているようで、そんな7番目の息子の更に7番目の息子というのを主軸に置いたコンセプトアルバムです。

 オープニング曲「Moonchild」はアコギをバックにブルース・ディッキンソンが静かに歌い、歌が終わるとそしてヘヴィメタル的な激しい楽曲に変貌します。スリリングでオープニングに相応しい1曲です。「Infinite Dreams」はミドルテンポの楽曲で、力強さの中に哀愁漂うメロディを奏でます。そして「Can I Play With Madness」は明るくキャッチーな楽曲です。タイトルを連呼するサビは分かりやすい。ギターシンセは前作から導入されていますが、ここではかなり前面に出ています。そして本作では一番の人気曲「The Evil That Men Do」。ゴリゴリベースが目立つ、気持ち良いほど疾走するこの楽曲はブルースの歌がとてもメロディアスで聴きやすいです。続いて表題曲「Seventh Son Of A Seventh Son」。個人的には本作ではこれが一番好きです。10分の大作で、シンセサイザーによって彩られて壮大な仕上がりです。ゆっくりと着実に踏み締めるような序盤、そして中盤4分くらいからは静かながらも緊迫感が張り詰め、ドラムが徐々に迫ってきます。7分くらいから凶暴化して非常に激しいインストパートに変貌。この展開に圧倒されます。非常にスリリングでカッコいい。続く「The Prophecy」は地味な楽曲ですが、激しい本編の後のアウトロのアコギがとても美しい。そして「The Clairvoyant」はベースソロから始まります。リズムギターとドラムが加わり、リードギターが美しいメロディを奏でて…と、徐々に盛り上がるイントロで痺れます。本編ではリズムチェンジを繰り返して忙しいですが、展開の目まぐるしさに終始緊張感を強いるスリリングな1曲です。ラストは「Only The Good Die Young」。哀愁漂う疾走曲です。歌メロはキャッチーで聴きやすい。そしてアウトロで「Moonchild」の冒頭フレーズが出てきて、アルバムの統一感を生み出しています。この終わり方が好き。

 この時代特有のシンセサイザーの導入で当時は賛否両論だったようですが、作り込まれていて完成度が非常に高いです。個人的には聴く頻度も高く、お気に入りの1枚です。

Seventh Son Of A Seventh Son (2015 Remastered)
Iron Maiden
 

No Prayer For The Dying (ノー・プレイヤー・フォー・ザ・ダイイング)

1990年 8thアルバム

 作曲や演奏面でアイアン・メイデンに大きく貢献してきたギタリスト、エイドリアン・スミスが脱退してしまいます。後任にはヤニック・ガーズを迎えました。このエイドリアン不在の穴が大きく、更にブルース・ディッキンソンの調子も良くないのか、本作はイマイチな楽曲ばかりでほとんど聴くことがありません。

 疾走曲「Tailgunner」で幕開け。イントロに緊張感があって、本作の中では良い楽曲です。ただしアイアン・メイデンのこれまでのオープニング曲に比べると弱いです。表題曲「No Prayer For Dying」はブルースの声がしゃがれ気味でグラハム・ボネットみたいに聴こえます。リズムチェンジ等を駆使してアイアン・メイデン節を見せてくれるのですが、なんとなく魅力に欠ける気がします。「Public Enema Number One」はなかなか良くて、ギターソロが爽快です。また、ストレートなロックンロールナンバー「Hooks In You」は気持ち良い疾走曲。なお、作曲は脱退したエイドリアンで、彼の置き土産でした。ラスト曲「Mother Russia」は前作『第七の予言』に通じるものがありますが、パワー不足というか今一歩といった感が強いです。

 所々にハッとする場面はありますが、全体的に地味な印象は否めません。突出した楽曲があればまた評価は変わったでしょうが、名曲に恵まれず、イマイチな印象が強いです。

No Prayer For The Dying (2015 Remastered)
Iron Maiden
 
Fear Of The Dark (フィア・オブ・ザ・ダーク)

1992年 9thアルバム

 正直言ってしまうと楽曲の出来不出来の差が大きいのですが、オープニング曲とラスト曲が非常に強烈なのが救いです。特にラスト曲「Fear Of The Dark」はアイアン・メイデン史上最高の楽曲だと思います。

 オープニング曲「Be Quick Or Be Dead」はイントロからドラムが強烈で、ギターリフも非常にカッコいい。パワフルな疾走曲で、圧倒されます。この楽曲はブルース・ディッキンソンとヤニック・ガーズの共作。前作でヤニックが新たに加入しましたが名曲がなく不安でしたが、本作は彼も大きく貢献。続く「From Here To Eternity」は歌メロがキャッチーな疾走曲。そして「Afraid To Shoot Strangers」は7分近い楽曲。静かで哀愁漂う歌をしっとりと聴かせますが、ファンの期待どおり、このまま静かな楽曲では終わりません。笑 中盤から雰囲気が変わり、後半は疾走曲に変貌します。アイアン・メイデンお得意のパターンですが安心します。「Childhood’s End」はドラムとベースの合わせ技で刻まれるリズムがカッコ良く、リズムチェンジもスリリングな1曲です。また、「Judas Be My Guide」はとてもキャッチーなメロディを持つ1曲です。ほどよい哀愁が良い感じ。サビは一緒に歌いたくなります。そして最後に控える7分超の表題曲「Fear Of The Dark」。個人的にはアイアン・メイデンの中で最も好きな楽曲です(「The Trooper」も捨てがたいですが…!)。強烈なギターリフが奏でるイントロからカッコいい。そして静かになり、ダークな雰囲気の中で、ブルースの低い声で囁くような歌が響きます。そして始まる疾走パートはリズムチェンジを多用して非常にスリリング。スリリングな演奏をバックにパワフルに歌うブルースの歌メロは、ダークさを伴いながらもキャッチーで、ライブではファンが大合唱します。

 本作はマーティン・バーチ最後のプロデュース作になっただけでなく、音楽的な衝突によってフロントマンのブルース・ディッキンソンが脱退するという大きな転換点を迎えます。

左:通常盤。
右:エディのフィギュアが付くCollectors Edition。

Fear Of The Dark (2015 Remastered)
Iron Maiden
Fear Of The Dark (Deluxe) (2015 Remastered)
Iron Maiden