🇺🇸 Chick Corea (チック・コリア)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Now He Sings, Now He Sobs (ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス)

1968年

 チック・コリアはジャズピアニストで、本名はアルマンド・アンソニー・コリアといいます。米国マサチューセッツ州出身の1941年6月12日生まれ。1964年頃からキャリアをスタートし、1966年の録音をもとに1968年に『トーンズ・フォー・ジョーンズ・ボーンズ』でデビュー。同年に、ソニー・レスターのプロデュースで本作をリリースします。チック・コリア(Pf)をリーダーに、ミロスラフ・ヴィトウス(B)、ロイ・ヘインズ(Dr)のトリオ演奏を展開。自由奔放な演奏はとてもスリリングで耳を奪われます。

 14分近い「Steps – What Was」で幕開け。チックの弾くピアノは自由奔放で、軽やかですが狂ったようなテンションの高さ。それに高速で合わせてくるベースとドラムとも相性抜群で、とてもスリリングです。中盤ではロイのドラムソロが炸裂。手数の多い演奏は緊迫した空気を作り出します。ドラムソロが終わると穏やかで大人びた演奏が展開されますが、穏やかなままでは終わらず、即興的な演奏は次々と表情を変えていきます。ピアノの音色が当たりを柔らかくしていますが、かなり複雑な気が…。終盤にはベースソロも用意されています。とてもカッコ良く、聴きごたえのある演奏です。続く「Matrix」はキャッチーで軽やかなピアノで始まります。ですが軽やかなのは上辺のメロディだけで、結構激しい演奏バトルを繰り広げています。勢いも凄まじくてスリリングですね。中盤ではミロスラフがベースソロを聴かせてくれます。ソロが終わると軽やかなピアノと手数の多いドラムが戻ってきて、ピアノとドラムの掛け合いを始めます。
 レコード時代の後半はタイトル曲「Now He Sings, Now He Sobs」。少し陰のある雰囲気。超速の前2曲と比べると、序盤は落ち着いていてメロディに重点を置いているような印象を抱きますが、徐々にヒートアップして激しさを増していきます(先に述べた「落ち着いてい」るという形容詞を撤回したくなるくらい)。ロイのドラムは激しく炸裂するし、チックのピアノはメロディこそ感傷的ですが、その表現も結構荒っぽく、やはりスリリングです。「Now He Beats The Drum, Now He Stops」は10分調に渡る楽曲。序盤はチックのピアノソロで、音量も控えめにじっくり聴かせます。徐々にテンポアップ。中盤からリズム隊が加わると躍動感を増して、爽やかで心地良い演奏を展開。リズミカルな演奏は高揚感を煽ります。ラストの「The Law Of Falling And Catching Up」は実験的な1曲。効果音のように楽器を鳴らすだけの、曲とは呼べないような演奏で締め括ります。
 なおCD化に際し、この後ろに8曲が追加となっていますが、私の手持ちの音源は5曲しかないのでレビューはここまで。

 勢いに溢れる演奏はスリリングで、聴く側にも緊張感を強いますがとてもカッコ良い。そのためジャズに耐性がなくロック耳の私でもすんなり聴くことが出来る名盤です。

 本作リリースと前後して、チックはマイルス・デイヴィスのグループに加わり、名盤と名高い『ビッチェズ・ブリュー』にも参加します。

Now He Sings, Now He Sobs
Chick Corea
 
Return To Forever (リターン・トゥ・フォーエヴァー)

1972年

 本作はチック・コリア名義ですが、後に立ち上げるフュージョンバンド「リターン・トゥ・フォーエヴァー」の実質的な1stアルバムと見なされています。メンバーはチック・コリア(Key)、ジョー・ファレル(Fl/Sax)、スタンリー・クラーク(B)、アイアート・モレイラ(Dr)とフローラ・プリム(Vo/Perc)夫妻。チックは全編に渡りエレクトリックピアノを弾いています。1970年代のフュージョンアルバムとしてはセールス的に大成功したメガヒット作で、「カモメのチック」と呼ばれる所以となったジャケットも有名です(本当はカモメじゃなくカツオドリらしい)。このジャケットのおかげで、音楽も海を優雅に渡るような爽やかなイメージを増幅させます。

 12分に渡る表題曲「Return To Forever」でアルバムは幕を開けます。静かに始まりますが、じわりじわりと盛り上がっていきます。フローラの優雅なスキャットや、ジョーの心地良いフルートに癒されます。5分手前で一区切りしたあと訪れる平穏から徐々に、クラークのベースとコリアのエレピのバトルが展開。音量的には穏やかですが、結構白熱した演奏が繰り広げられます。緊迫感を煽るドラムもスリリング。フローラがバックで妖しげに、スキャットや叫び、吐息混じりの声をまぜこぜにして、演奏を盛り上げます。続く「Crystal Silence」は静かで神秘的なエレピをバックに、心地良いサックスの音が響きます。ドラムもベースもおらず、時折パーカッションを鳴らしています。大きな盛り上がりはなく、メロウでまったりと癒してくれますね。「What Game Shall We Play Today」はキャッチーな名曲。フルートやエレピがポップなメロディを奏で、フローラの歌も美しくて癒されますね。ドラムやベースも、跳ねるような軽快なリズムを作り出します。歌は英語ですが、どこかラテンフレーバーが漂い、個人的には地中海が浮かびます。
 レコード時代はB面を丸々占める、23分の大作「Sometime Ago – La Fiesta」。実質は2曲のメドレーですが、それでも凄い存在感です。序盤は実験的で取り留めのない音がちらほら。そこからスタンリーのウッドベースソロを聴かせます。途中少し冗長な感じもしますが、5分半過ぎからジョーのフルートが鮮烈に響きます。そこからドラムも強烈にスリルを増し、バンドとして纏まった演奏が始まります。8分過ぎから始まる、チックのエレピが弾くメインメロディとフローラの歌がキャッチーでポップな印象。リズムはラテン系の陽気なノリで、楽しい気分にさせてくれます。歌が終わると演奏は徐々にヒートアップ、激しい演奏バトルを展開しますが、またキャッチーな歌が戻ってきます。歌が終わった後はしばらく静寂が続きますが、15分半頃からフラメンコのような情熱的な演奏を展開。激しさを増していきますが、エレピとサックスが奏でるメロディはキャッチーで耳を奪われます。緊張が張り詰めた演奏は非常にスリリングで鳥肌ものですが、リスナーを置いてけぼりにしないよう親しみやすいメロディが時折表れては心をガッチリ掴みます。魅力的な名曲です。

 ブラジル出身のアイアートとフローラの影響か、ほんのり漂うラテンの香りが、イタリアンプログレと横並びでもさほど違和感のない印象に仕立て上げます。メロディが結構キャッチーで聴きやすいです。

リターン・トゥ・フォーエヴァー
Chick Corea
 
 
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