🇺🇸 Misfits (ミスフィッツ)
レビュー作品数: 6
スタジオ盤
グレン・ダンジグ在籍期
1982年 1stアルバム
ミスフィッツは米国ニュージャージー州出身のハードコアパンクバンドです。ホラー映画から影響を受けたホラーパンクにもカテゴライズされたりしますね。私はメタリカがカバーしてたことでミスフィッツを知りました。「クリムゾンゴースト」と呼ばれる、バンドのシンボルマークとなる骸骨はバンドTシャツでも有名です。1977年に結成したミスフィッツは幾度かのメンバーチェンジを経て、グレン・ダンジグ(Vo/Gt)、ジェリー・オンリー(B)、ドイル・ウルフギャング・フランケンシュタイン(Gt)、アーサー・グーギー(Dr)の4名で本作をリリース。ちなみにジェリーとドイルは兄弟で、両者とも芸名です。
実は1978年に『スタティック・エイジ』を録音していたのですがお蔵入りし、これが日の目を見るのは1996年。そのため世に出た1stアルバムは本作となります。セルフプロデュース作となる本作はトータル僅か25分弱の爽快なパンク作品です。
オープニング曲「20 Eyes」は出だしからいきなりノイジーな重低音をぶちかましてきます。ヘヴィで疾走感溢れる楽曲ですが、グレンの歌が聞き取りやすくて意外とキャッチーな印象も受けます。続く「I Turned Into A Martian」で更に加速。勢いがありますがロックンロール色が微かに残り、ヘヴィな割には陽気な雰囲気です。コーラスも爽快ですね。疾走感のある「All Hell Breaks Loose」はリズムギターとベースがカッコ良い。「Vampira」は僅か1分半の楽曲で、まくし立てるような歌唱ではありますが、キャッチーでノリノリです。オイ!コールもノリが良くて楽しい。「Nike-A-Go-Go」はヘヴィなギターとドラムで蹂躙。演奏はヘヴィで結構邪悪な感じなのですが、シャウト気味の歌とコーラスが何となく楽しそうで、ノリの良さに気分が高揚するんです。「Hate Breeders」はラモーンズ風のキャッチーなロックンロール。「オーオオ」と陽気なコーラスを聴いていると一緒に口ずさみたくなりますね。「Mommy, Can I Go Out & Kill Tonight」はライブ録音。序盤はパワフルだけどノリの良いロックンロール。ですが中盤から超加速しハードコア化。メロディのない速くてアグレッシブな演奏で圧倒してきます。
レコード時代のB面、アルバム後半は「Night Of The Living Dead」で幕開け。明るい雰囲気のロックンロールで、コーラスもキャッチーですね。「Skulls」はラモーンズ直系のストレートな高速ロックンロール。歌メロは本作の中でも珍しく哀愁に満ちています。続く「Violent World」もラモーンズ風。シンプルな演奏と勢いのあるボーカルで一気に聴かせます。「Devil’s Whorehouse」は這うようにうねるベースに残響音のあるドラムが印象的。そして「Astro Zombies」はイントロから破壊力抜群のカッコ良い演奏を繰り広げますが、歌が始まると演奏はシンプルなロックンロールに。口ずさみたくなる歌メロが魅力的です。ラスト曲は僅か1分の「Braineaters」。メンバーがノリノリで合唱する楽しそうな楽曲です。
邪悪な見た目に反して比較的ポップなパンクで驚かされます。ヘヴィだしパワフルな疾走曲づくめなのですが、グレンの歌はキャッチーで聴きやすく魅力的です。
1983年 2ndアルバム
オリジナルは『Earth A.D. / Wolfs Blood』というタイトルでしたが、CDではシングル『Die, Die My Darling』から3曲を加えており『Earth A.D. / Die, Die My Darling』というタイトルで呼ばれることもあります。レコードでは僅か14分半、CDでも21分という短さ。前作はラモーンズをもう少し攻撃的にしたようなスタイルでしたが、本作は前作に比べより攻撃的に、より速くなったハードコアパンクを展開しています。またドラマーがアーサー・グーギーからロボに交代しています。
まずは「Earth A.D.」と題したアルバム前半。タイトル曲「Earth A.D.」はイントロからノイジーで、グレン・ダンジグの雄叫びとともに加速。速くて攻撃的なハードコアになり、歌心があって楽しかった前作とは違ってピリピリと緊張感が漂います。「Queen Wasp」もパワフルで勢いに満ちています。激しい演奏に対抗するためかグレンの歌はシャウトしっぱなし。そのまま勢いを止めずに「Devilock」。煽り立てるような速さで、ドイルのギターは重低音をかき鳴らし、ロボのドラムはシンバルをバシンバシン叩きながら激しく突き進みます。「Death Comes Ripping」はドコドコ叩くバスドラムが強烈。相変わらず激しい演奏ですが、メンバーのコーラスなど楽しそうだったりして、前作の雰囲気が少し残っています。「Green Hell」はギターが非常にヘヴィなリフを刻み、速いけど単調なドラムにまくし立てるような歌で勢いよく飛ばしていきます。
そしてCDで追加された「Mommy, Can I Go Out & Kill Tonight」。カウントで始まるこの楽曲はタムを用いたダイナミックなドラムがカッコ良い。30秒くらいで終わってしまったかと思えば、そのまま速いハードコアパンクを展開。
続いて「Wolfs Blood」と題したアルバム後半。タイトル曲「Wolfs Blood」はイントロからブチ切れボーカルとヘヴィな演奏をぶちかましてきます。強烈な楽曲です。僅か45秒の「Demonomania」でかっ飛ばして続くのは「Bloodfeast」。速すぎる楽曲群と比べると速さは控えめで(普通に疾走曲ですが笑)、彼らの魅力でもある歌メロの良さ、グレンの声の良さが引き立っています。「Hellhound」では再び速くて重いハードコアを展開。1分ちょっとで終わります。
そしてここからCDで追加された楽曲が続きます。メタリカもカバーした「Die, Die My Darling」は本作ではずば抜けてカッコ良い。ハードコア一辺倒のアルバムの中では浮いていますが、やや哀愁のある歌メロをフィーチャーしていて聴きやすいんですよね。リズミカルでノリの良い演奏に乗せて歌うグレンの声がまた良い声なんですよね。そして「We Bite」は勢いに満ちた疾走曲。ハードコアな演奏ですが、シャウトしっぱなしの歌に若干メロディアスなメロディが見いだせるのが救いです。
邪悪でカッコ良いジャケットどおりの、人を寄せ付けない攻撃性。初めて聞いたときはポップ性の減退に戸惑ったものの、聴けば聴くほど、ハードコアな楽曲の中にポップ性が見えてきてヤミツキになります。特に「Die, Die My Darling」は聴く価値がありますね。
1996年 3rdアルバム
1978年に録音されたもののお蔵入りしていた幻の1stアルバムです。この当時のメンバーはグレン・ダンジグ(Vo)、ジェリー・オンリー(B)、フランチェ・コーマ(Gt)、Mr.ジム(Dr)。メロコアを10年以上も前に先取りしたような感じで、音の悪さに目を瞑れば傑作だと思います。
1995年に再結成を果たしたミスフィッツ。その流れでリリースされた1996年のBoxセット『The Misfits』で本作は初めて日の目を見ることになりました。翌1997年に本作単品でリリースされたという経緯を持ちます。なお再結成ではグレンは参加しておらず、グレンがミスフィッツに復帰するのは2016年になります。
表題曲「Static Age」で幕を開けます。パンク曲ですがそこまで速くはないですね。グレンの攻撃的な歌唱が目立ちます。「TV Casualty」はロックンロール色の強い楽曲で、トーンの低い演奏と、キーの高いシャウトしっぱなしのボーカルがややミスマッチな感じ。「Some Kinda Hate」は、重低音をゴリゴリ響かせるフランチェのギターとジェリーのベースがカッコ良いです。歌も結構楽しい雰囲気ですね。「Last Caress」は本作のハイライト。勢いのあるパンキッシュな演奏とメロディアスでポップな歌の組合せは、1978年にして既に1990年代のメロコアブームの到来を予見していたかのようです。グレンは良い声してるんですよね。続く「Return Of The Fly」はジェリーのベースがブイブイ唸っていてカッコ良いです。演奏はヘヴィで粗削りですが、伸びやかでほのかに哀愁漂う歌は光るものがあります。Mr.ジムの躍動感あるドラムで始まる「Hybrid Moments」もまたメロコアに通じるものがあり、キャッチーな歌メロが魅力的な1曲です。「We Are 138」はひたすら「俺たちは138だ」と連呼する楽曲です。これの元ネタはジョージ・ルーカス監督作の映画『THX 1138』で、ただ識別番号で呼ばれるだけの存在を意味しているのだとか。ノリノリで楽しい1曲です。「Teenagers From Mars」は序盤抑揚がなく平坦ですが、途中から少し陰のあるメロディを歌い上げます。ヘヴィに楽曲を引き締めるリフがかなりカッコ良いですね。「Come Back」は他の楽曲と比べ単調な展開ですが、重戦車のように骨太なリフがゴリゴリ響いて高い緊張を終始保っています。5分という大したことのない長さなのですが本作では最長で、他の楽曲が2分足らずのものが多くてやけに長く感じます。続く「Angelfuck」は明るく晴れやかな雰囲気のパンク曲。ロックンロール色の強い演奏にキャッチーな歌メロで魅せます。「Hollywood Babylon」はうねりまくる硬質なベースと緊張を高めるヘヴィなリズムギターがとてもカッコ良い。ポストパンク系にも通じる演奏で、ミニマルを取り入れて単調に反復するだけなのに恐ろしいほど緊張感に満ちた演奏はとにかくスリリングでたまりません。「Attitude」はイントロからパワフルに迫り来る演奏がスリリングですが、歌は口ずさみたくなるくらいにキャッチーで爽やかなんです。勢いに満ちたパンク曲「Bullet」で駆け抜けた後は、少し毛色の異なる楽曲「Theme For A Jackal」。演奏は緊迫した場面を表現しているかのようで、歪んだギターは効果音に徹していたりピアノが入っていたりアヴァンギャルドな風合いも強いです。パンキッシュな疾走曲だけでなく、ちょっと凝った曲も演奏できるのだと意外な引き出しに驚かされます。「She」はノイジーなラモーンズといった演奏に、グレンのボーカルはオフスプリングっぽいかも。続く「Spinal Remains」もひたすらノイジーですが、演奏はシンプルなロックンロール。シャウト気味の歌もロックンロールしていますね。「In The Doorway」はノイジーなサウンドで蹂躙するかのようですが、少し陰のあるメロディで歌はじっくり聴かせるタイプ。
全体的に音質がイマイチで粗削りな印象は否めませんが、そんなマイナスイメージを吹き飛ばすくらい純粋にメロディの良さで聴かせる良曲が詰まっています。
グレン不在の再結成
1997年 4thアルバム
再結成を果たしたミスフィッツはグレン・ダンジグ在籍時の幻の1stアルバムをリリースしましたが、再結成時にグレンは不在で、むしろ裁判を経てグレンからミスフィッツというバンド名の権利を勝ち取ったからこその再結成でした。メンバーはジェリー・オンリー(B)、ドイル・ウルフギャング・フランケンシュタイン(Gt)に加えて、新加入のマイケル・グレイヴス(Vo)、Dr.チャド(Dr/Key)。プロデューサーにはダニエル・レイを迎えています。
「Abominable Dr. Phibes」はインストゥルメンタル。鈍重でメタリックなサウンドがおどろおどろしい雰囲気を作り出します。そのまま続く表題曲「American Psycho」。キャッチーなコーラスはとても楽しそうで、おどろおどろしい雰囲気はぶち壊し…なのですが、演奏は地を這うように重いです。キャッチーさとヘヴィさを同居させた、疾走感のあるハードコアを繰り広げます。「Speak Of The Devil」もパワフルな疾走曲。ヘヴィにうねる重低音はスリリングですが、それでいながら歌メロは一緒に合唱したくなるようなキャッチーさがあります。「Walk Among Us」はハードなロックンロール。1分半にも満たない短さですが、結構カッコ良いです。緊迫感のある短いイントロを経て始まる「The Hunter」。マイケルの歌にスポットを当てた疾走曲ですが、正直グレンに歌ってほしかったです。「From Hell They Came」は陽気かつメロディアスなハードコア。メンバーのコーラスのおかげか、こちらはマイケルボーカルが結構馴染んでいる感じ。犬の遠吠えで始まる「Dig Up Her Bones」。ドイルのヘヴィなカミソリギターに、ジェリーの金属質なベースがカッコ良いです。演奏は相変わらず疾走していますが、哀愁じみた歌はメロディアスで、比較的じっくり聴かせる印象です。「Blacklight」は金属バットで殴ってくるような、ジェリーの暴力的なベースが強烈。Dr.チャドのドラムも強烈なビートをかましてきます。「Resurrection」は明るめなメロコア。ボーカルがやや物足りないものの、メロディはキャッチーです。「This Island Earth」も前曲に似たワンパターンな演奏で若干冗長かも。「Crimson Ghost」はミスフィッツのトレードマークであるドクロの呼称です。これがカッコ良い楽曲で、3連符を駆使した重厚なミドルテンポを展開。そこから雄叫びを皮切りに超加速。まくし立てるような早口と焦燥感を煽る演奏でスリルを与えてくれます。「Day Of The Dead」はヘヴィで速いロックンロール。歌が若干こもり気味で、メロディよりもスリリングな演奏が主体です。「The Haunting」はヘヴィで焦燥感を煽るような演奏がスリリング。メロディはキャッチーなのですが、途中にトリッキーなリズムを挟んで奇妙な違和感でフックを掛けてきます。「Mars Attacks」は疾走感はそのままに複雑な楽曲展開を繰り広げ、パンクというよりメタルな雰囲気。少し哀愁のあるキャッチーなメロディは魅力的です。続く「Hate The Living, Love The Dead」はイントロからハイテンションな演奏が炸裂。ヘヴィで勢いがあってカッコ良いです。「Shining」では更に勢いづき、躍動感があって爽快です。キャッチーなメロディも中々良い感じ。ラスト曲は8分に渡る「Don’t Open ‘Til Doomsday」ですが、途中に無音パートと隠しトラックを含みます。まずは疾走感のあるメロコアを展開。キャッチーだけど憂いのあるメロディを聴かせます。本編は3分足らずで終え、約3分の無音パートを経て隠しトラック「Hell Night」へ。ダイナミックなリズム隊が炸裂し、サビではメンバーの合唱が爽やかな印象を生み出します。
2分前後の楽曲が17曲(と隠しトラック1曲)並び、似たような楽曲も多いため、メロディはキャッチーと言えども中盤は若干冗長な印象は否めません。ですが終盤持ち直して一気に駆け抜けるさまは爽快です。
1999年 5thアルバム
マイケル・グレイヴス(Vo)、ドイル・ウルフギャング・フランケンシュタイン(Gt)、ジェリー・オンリー(B)、Dr.チャド(Dr/Key)とプロデューサーとしてダニエル・レイという、前作に引き続きの布陣でリリースされました。グレン・ダンジグ不在ながらも高い人気を誇る作品で、バンドイメージはそのままに、よりメタリックかつキャッチーで聴きやすくなりました。しかし本作後にジェリーを残して皆脱退してしまうことになります。
タイトルはホラー/SF雑誌『Famous Monsters Of Filmland』が由来で、バンドロゴも同雑誌のフォントを借用しているのだとか。ダサカッコ良いジャケットアートも印象的ですね。
アルバムは鈍重なインストゥルメンタル「Kong At The Gates」で幕開け。歪んで重苦しいサウンドはパンクじゃなくてヘヴィメタルですね。そのまま続く「The Forbidden Zone」で重さはそのままに疾走、パンキッシュな楽曲になります。一撃の重たいドラムやノイジーなギターなどヘヴィな演奏とは対照的に、マイケルの歌うメロディはキャッチーで明るい雰囲気です。「Lost In Space」はスラッシーなイントロから高揚感を煽ります。ヘヴィながらも爽快なビートがカッコ良いハードコア曲です。「Dust To Dust」はヘヴィなロックンロール。マイケルの歌はカラッとした陽気な雰囲気でハードロックっぽいですね。メロディがキャッチーな疾走曲「Crawling Eye」を挟んで、続く「Witch Hunt」はシンプルながら強烈なビートが爽快なパンク曲。Dr.チャドのパワフルなドラムが特に印象に残ります。「Scream!」は一気にスローテンポに。ヘヴィに歪んだ音をバックに嘆き声。そこからテンポアップして、軽快な演奏に乗せて哀愁たっぷりのメロディアスな歌を聴かせます。「Saturday Night」も哀愁漂う楽曲です。ゆったりとした6/8拍子に乗るメロディアスな歌が魅力的で、これが実に良いメロディなのです。続く「Pumpkin Head」もスローで陰のあるメロディで開幕。ですがそこはパンクバンド、ゆったりとした楽曲ばかりは続けません。途中急加速し、本作中最速レベルの勢いある演奏とまくし立てるような歌で、スリルを提供してくれます。「Scarecrow Man」はダーティな演奏と陽気でアメリカンな歌が特徴的なロックンロール。途中にドイルのギターソロを含んだり、ハードロックっぽい楽曲です。「Die Monster Die」は演奏だけ聞くとニルヴァーナのようにグランジっぽく歪んでいるんですが、歌メロはかなりキャッチーで取っつきやすい感じ。ノイジーだけど疾走感溢れる「Living Hell」に続き、「Descending Angel」はメリハリのあるノリの良いビートが爽快。ですが歌はメロディアスで憂いに満ちています。キンキンとしたノイズで始まる「Them」。暴力的な演奏は重低音がよくうねり、ノイズは不気味に鳴り続けます。でも歌は結構キャッチーなんですよね。「Fiend Club」は途中までやや地味な印象がありますが、サビではメンバーのコーラスが加わった大合唱でノリノリです。暴力的な演奏とメロディアスな歌が対照的な「Hunting Humans」で爽快に駆け抜けると、終盤に控える人気曲「Helena」。ノリの良いリズム隊とノイジーなギターがシンプルかつ骨太な演奏を繰り広げます。そして1分過ぎから急加速し、勢い溢れる疾走ハードコアへ変貌。暴力的な演奏で蹂躙したあと最後にテンポダウン、序盤と同じ骨太な演奏に戻して締め括ります。ラストは短いインストゥルメンタル「Kong Unleashed」。重苦しい演奏でアルバムを纏めます。
演奏はメタリックでヘヴィですが、アメリカンで陽気な歌はキャッチー。ジャケットからはキワモノ感が漂いますが、メロディが良くて意外と聴きやすいです。
編集盤
1986年
バンド名を冠した本作は、ミスフィッツ解散後にリリースされたベスト盤です。シングルと1st、2ndアルバム、1985年のコンピレーション作『Legacy Of Brutality』からセレクトされていて、これがあればグレン・ダンジグ期ミスフィッツの主要な楽曲が聴けます。なお本作の正式名称は『Misfits』ですが、9年後に出るベスト盤『Collection II』との対比で、本作は『Collection 1』や『Collection I』という別名で呼ばれることもあります。
グレン・ダンジグ(Vo)、ジェリー・オンリー(B)を中心に据えつつ、ギタリストとドラマーは流動的で、時期によってまちまちです。
オープニングを飾るのは「She」。重低音をかき鳴らしながら、スカスカのドラムが軽快さも生み出しています。「Hollywood Babylon」はメタリックでひりついた演奏が、ポストパンク的な緊張感をもたらします。でもグレンの歌声は取っつきやすいというか、キャッチーさを加えて良いアクセント。ジェリーの弾くベースがうねってカッコ良いですね。続く「Bullet」は速くて攻撃的、そして陰りがあって焦燥感を煽るパンク曲です。でも本質はノリの良いロックンロールという感じ。シャウト尽くしの歌はやや一本調子な印象。「Horror Business」の演奏は暴力的ながら、コーラスも含めた歌は結構ノリノリで、意外と楽しそうな雰囲気も伝わってきます。そして「Teenagers From Mars」は音が割れんばかりに演奏が爆裂。ブイブイ唸りを上げてノイジーですが、歌メロはキャッチーさも兼ね備えていて、サビメロは口ずさみたくなるほど。「Night Of The Living Dead」では音質が変わって、残響のあるミックスがちょっとイマイチ。でも、アーサー・グーギーの叩くリズミカルなドラムは気持ち良いんです。そして「Where Eagles Dare」は爆音ベースが重低音をかき鳴らし、焦燥感を煽ります。ヘヴィでスリリングな演奏ですが、グレンの高いキーの歌が対照的で聴きやすい。「Vampira」はスピードが上がります。音質の悪さが気になりますが、勢いがあってかつ「オイ!」のコールも爽快。「I Turned Into A Martian」も速いですね。どんどん加速していきます。コーラスも交えた雄叫びがキャッチーさをもたらしてくれます。「Skulls」はシンプルな疾走ロックンロール。演奏は単調ですが、合唱するかのような歌がメロディアスで中々良い感じです。
レコード時代の後半は「London Dungeon」で幕開け。地を這うようなベースとビートが気持ち良いドラム、そして重厚なギターが絡むイントロから高揚感を掻き立てます。暗くてスリリングな楽曲に、哀愁漂うメロディアスな歌を聴かせてくれます。「Ghouls Night Out」はイントロから残響処理をしたドラムがカッコ良い。分厚くて勢いのある演奏、そしてメロディアスな歌も魅力的です。「Astro Zombies」は音質の悪さは残念ですが、ノリの良いパンキッシュなロックンロールに、キャッチーなメロディなので聴きやすいです。激しいカウントで幕を開けるのは「Mommy Can I Go Out And Kill Tonight?」。序盤はヘヴィなドラムが目立ちますね。30秒ほどで一旦演奏を終えた後、グレンのMCを挟んでハードコア曲へと変貌。速くて攻撃的です。そして名曲「Die, Die My Darling」。本作唯一の3分超えです。暴力的ですがキレのある演奏、そして哀愁を醸し出すキャッチーな歌メロがたまらなく魅力です。メタリカがカバーしたことで有名ですね。「Earth A.D.」は速い演奏で焦燥感を煽り立てます。緊張感たっぷりの楽曲ですが、「A.D.」の連呼がやけに耳に残ります。そして続くのは「Devilock」。ミスフィッツのメンバーは特徴的な髪型をしていて、長く伸ばした前髪を真ん中に固めてつららのように垂らしていますが、これをデビロックヘアーと呼びます。その名前の由来にもなったこの楽曲はハードコア曲で、ダーティな演奏で暴れ回っています。「Death Comes Ripping」は速くて激しいですね。特にロボの叩くドラムの雨あられはとてもスリリングです。続いて「Green Hell」は重低音を細かく刻みながら、重戦車のようなヘヴィさで爆走します。シンバルの多用も激しいです。最後の「Wolfs Blood」は本作最短の1分強の楽曲です。ダーティに疾走する演奏をバックに、グレンがシャウトしっぱなしです。
楽曲によっては音質の悪さが目立ちますがポップセンスが光る良曲が揃っています。ミスフィッツ入門にどうぞ。
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