🇯🇵 cosMo@暴走P (コスモ アット ぼうそうピー)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

初音ミクの消失

2010年 1stアルバム ※cosMo@暴走P feat.初音ミク名義

 cosMoは日本のクリエイターで、初音ミク黎明期から活動しているボカロPです。「初音ミクの暴走」で有名になったことから「暴走P」とも呼ばれ、組み合わせた「cosMo@暴走P」の名義を主に使うようになります。ニコニコ動画に楽曲を投稿して有名になりますが、2010年に本作でメジャーデビューを果たします。
 本作は2007年~2010年にニコニコ動画で投稿した楽曲群をリマスタリングして収録。初音ミクの誕生から結末を描いたコンセプトアルバムとなっており、単曲として楽しめるだけでなくアルバムトータルでも高い完成度に仕上がっています。cosMoが所属する同人音楽サークル「CHEMICAL SYSTEM LE」のメンバーであるGAiAが一部作詞をしていますが、全作曲と大半の作詞をcosMoがこなしています。また、可愛らしいジャケットアートは左によるもの(「左」というハンドルネームだそうです)。

 「新世界」で開幕。爽快な疾走曲で、勢いに満ちたリズム隊と軽やかなピアノが気持ち良い。そして初音ミクを文字通り楽器のように使ったコーラスワーク、また高速の演奏とユニゾンしたりしています。「初音ミクとあそぼぅ!!」はイントロから壮大で、初音ミクの誕生を祝うかのよう。ミクの歌うキャッチーなメロディをホーンが彩ります。そしてグルーヴ感抜群のベースも強烈。テンポも速く、明るく楽しい雰囲気です。一転して「A.I.」はピアノだけの静かな演奏をバックに、しっとりとしたバラードを展開。途中からヴァイオリンがアクセントとして加わり、後半は打ち込みドラムも入って少しずつ盛り上げていきます。そして「初音ミクの暴走」はcosMoの代表曲。ファンキーなリズムとホーンによる賑やかな演奏は楽しいですね。AメロBメロがらき☆すたの「もってけ!セーラーふく」っぽい。笑 全編早口な歌詞は耳触りが良いですが、ボーカロイドでありながら結構人間味のある表現をしているのは流石です。「初音ミクの戸惑」はトリッキーなリズムでプログレ的なイントロですが、歌が始まると演奏はシンプルに疾走します。歌はメロディアスですが、途中ボーカロイドだから成し得る超早口が圧倒的です。続く「初音ミクの分裂→破壊」は壊れたオルゴールのようなイントロを終えると、一気にダークなメタル曲へと変わります。悲壮感に満ちて緊迫した演奏で、ヘヴィで鋭利なギターや焦燥感を煽る高速ドラムがスリリングです。歌メロはメランコリック。終盤は壮大で、ドラマチックな印象を抱きます。「さよなら常識空間」は昔懐かしのゲームのような8bit音楽を流し、レトロな感を演出しながらも、メタリックなバンド演奏を展開。メロディはキャッチーで爽やかですが、どこか切ない感じがします。「0」はピアノとヴァイオリン中心の哀愁漂う疾走曲。超早口で展開される歌メロは強い憂いに満ちており、コーラスワークもメランコリックな感覚を誘います。終盤は緊迫感が増し、憂いを更に引き立てます。「初音ミクの終焉」はこれまでと違ってメルヘンチックな印象。ですが歌詞は、打ち捨てられたことに絶望するような重たい内容です。そして表題曲「初音ミクの消失」。壊れたように超早口の歌詞が怒濤のように押し寄せ、強烈なインパクトを与えます。目まぐるしい早口パートが鮮烈なだけでなく、早口じゃないパートではメロディアスな歌がとても魅力的なのです。キャッチーで勢いのある演奏も相まって耳に残る名曲です。最後の「深刻なエラーが発生しました」がグサリと刺さりますね。そして前曲から続く「Hyper∞LATiON」は疾走メタル曲。ヘヴィで激しいのですが、カラフルで瑞々しいキーボードがアクセントとしてヘヴィさを和らげます。ミクの加工されたボーカルは声色もテンポもコロコロ変わり、とても目まぐるしい。「∞」も疾走曲で、焦燥感を煽り立てるスリリングな楽曲です。歌や途中加わるピコピコシンセはキャッチーですが、演奏は結構トリッキーで高速プログレといった趣です。「初音ミクの激唱」はエンディング向きの雰囲気。激唱というタイトルから連想するほど激しくはなくて、晴れやかで穏やかな雰囲気。求める声が聞こえることにココロを持ったことの意味を見出し、喜びの感情に溢れています。終盤は急加速して激唱していますね。ラスト曲「浅黄色のマイルストーン」はキャッチーなシンセポップ曲。明るい雰囲気で、ピコピコサウンドが心地良い。爽やかにアルバムを締め括ります。

 BPMの高いキャッチーな楽曲が多く並んでおり、単曲としても高いレベルにありながらも、1枚のアルバムとして非常によく纏まっているんです。初音ミクの誕生から終焉というコンセプトも明瞭で良いですね。ボカロのアルバムは数えるほどしか聴いていませんが、その中では頭一つ抜けた傑作だと思います。

初音ミクの消失
cosMo@暴走P feat.初音ミク
 
星ノ少女ト幻奏楽土

2012年 2ndアルバム ※cosMo@暴走P feat.初音ミク・GUMI名義

 前作『初音ミクの消失』は「消失」シリーズを纏めた作品でしたが、本作は「空想庭園」シリーズを纏めたものになります。初音ミクだけでなく、GUMI、巡音ルカ、鏡音リン・レン、神威がくぽ(いずれもボーカロイド)を活用し、それぞれのキャラクターを物語の登場人物として扱っています。全作詞作曲をcosMoが手掛けますが、サークル仲間のGAiAが世界観構築に携わっています。また前作同様イラストレーターの左がジャケットアートを担当しています。

 「星の少女と幻想楽土」はピアノのしっとりとした雰囲気ではじまりますが、突如スペイシーなシンセと複雑なリズムによってプログレに変貌。巡音ルカの歌は聖歌隊のような雰囲気があり、楽曲と合わさると幻想的な印象を抱きます。踏切の音で始まる「家出少年と迷子少女」はGUMIのボーカル。ファンタジー感のあるメタル演奏に、フワフワした歌声が乗っかります。でも若干の機械っぽさに違和感があったり。「修道少女と偶像少女」は初音ミクをフィーチャーしたキャッチーな楽曲。演奏は壮大かつメタリックで、そしてやけにトリッキー。1曲の中でコロコロと場面転換するので目まぐるしい印象です。GUMIをフィーチャーした「童心少女と大人世界」は8分近い大曲。1曲の中でいくつか場面転換し、どんどんテンポアップしていきます。語り口調ですが、どうも感情移入できず冗長な印象が否めません。「ボクらのコスモロジー」は初音ミクをフィーチャー。優しい歌唱でメロディアスな印象です。「Dr. リアリスト」は神威がくぽがシアトリカルに歌っています。アコーディオンがレトロな雰囲気を演出。途中で加速し、高速で慌ただしく展開します。3拍子で展開する「冒険少女と箱庭遊戯」「電波少女と空想庭園」は初音ミクのボーカル。後者はメタリックでありながらも、バックで流れるレトロゲームのような8bit音源が良いアクセントになっています。RPGっぽい歌詞もキャッチーなメロディのお陰で好意的に聴けるというか、どことなく前作に通じる作風で好みです。7分超の「転生少女と転生少年」は鏡音リン・レンを起用、またキャラクターが増えましたね。メタリックで激しい演奏にメランコリックな歌メロで、少し大仰に哀愁を演出するクサメタルです。個人的にはちょっと苦手。続く「AI少女と深層心海」は12分に渡る大作で、これまでに出てきたボーカロイド達が歌に参加しています。序盤はメタリックな演奏をオルゴールのような鍵盤で和らげますが、やはり大仰な印象。中盤はアンビエント系のピアノでしんみり聴かせるかと思えば、神威がくぽの歌のバックで鋭利なギターがザクザクと金属質な音を立てます。後半に入り巡音ルカの歌うパートは神秘的な雰囲気が漂います。アクセントとして入るメロトロンが良いですね。最終パートは音の洪水のように、こだまするボーカルと激しい演奏が聞き手を呑み込んできます。「浅紫色のエンドロール」は雰囲気を変え、ジャジーで大人びた印象のワルツです。目まぐるしく展開する楽曲が多い中ではゆったりムードで聴ける数少ない楽曲で、通しで聴いているとほっとできる瞬間です。「「もう一つの迷子少女」」から「「最凶の少女と☆」」まで1分程度の寸劇が5曲続いたあと、ラスト曲は「「転生」」。これも2分に渡る寸劇で、ピアノと波のSEをバックに神威がくぽと初音ミクが会話を交わして終わります。

 17曲70分超とボリューム満点ですが、1曲の中でも場面転換が多くて落ち着きが無く、散漫で冗長な印象は否めません。またシアトリカルな作風がクサく、個人的にはどうにも馴染めませんでした。

星ノ少女ト幻奏楽土
cosMo@暴走P feat.初音ミク・GUMI
 
 
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