🇺🇸 Pavement (ペイヴメント)

レビュー作品数: 5
  

スタジオ盤

ローファイ

Slanted And Enchanted (スランティッド・アンド・エンチャンティッド)

1992年 1stアルバム

 ペイヴメントは米国カリフォルニア州出身のインディーロックバンドで、ローファイと呼ばれるサウンドを特徴とします。1989年、ほとんどの作詞作曲を行う鬼才スティーヴン・マルクマス(Vo/Gt)と、スコット・カンバーグ(Gt/B)の2人で結成。スタジオを貸していたギャリー・ヤング(Dr)が、作曲に勝手に口出ししてきた挙げ句、後にメンバーに加入(20代中心のメンバーの中で10歳以上も年上で、奇行も目立ったそう)。その後にマーク・イボルド(B)、ボブ・ナスタノヴィッチ(Perc)を加えた5名体制となりますが本作制作中の加入だったようで、レコーディングはマルクマス、カンバーグ、ヤングの3名で行ったようです。
 本作はペイヴメントがローファイと呼ばれる所以となった作品で、チープな音質に加えてやる気のないヘロヘロな歌が際立ちます(それでいてポップセンスが光ります)。評論家からはインディーロックの傑作として評価されています。

 オープニング曲は「Summer Babe (Winter Version)」。ゆったりとした曲調に轟音ギターが響きます。やる気のない淡々とした歌は脱力感がありますが、それゆえに心地良さを生み出しています。続く「Trigger Cut / Wounded-Kite At :17」はスッカスカな演奏に、冷めた歌声でひねたメロディを聴かせます。やる気がないのに不思議とポップセンスが光るんですよね。ストロークスより10年も前にストロークスをやっているような雰囲気があります。「No Life Singed Her」はノイジーでハイテンションな楽曲です。轟音ギターや単調なベースが響き、演奏に合わせずシャウトするマルクマス。音質がかなり悪いですが、単調な反復を繰り返す演奏も妙にヤミツキになります。「In The Mouth A Desert」も歪んだギターが重低音を響かせ、どっしりと鈍重な演奏です。ですが歌はやる気がなくて気だるく、サビメロなんて思いっ切り外しています。ヘタクソ…ですが不思議と憎めないんですよね。ダウナーな雰囲気はニルヴァーナにも通じます。「Conduit For Sale!」はリズム隊がノリの良いダンサブルなビートを刻みますが、全体的には緊張が張り詰めてピリついた雰囲気。ナレーションのようなメロディのない歌は、サビ(?)ではヤケクソ気味に叫びます。後半に向かうにつれてどんどん緊張が高まるスリリングな楽曲です。続く「Zürich Is Stained」は一転して、スッカスカで淡々としていて緊張が解けます。1分強の小曲「Chesley’s Little Wrists」は変な楽曲で、歪んだギターがサイケのようなそうでないような音を奏で、アクセントとして鉄琴が鳴ります。歌もめちゃくちゃです。「Loretta’s Scars」はグランジーなギターが重低音を響かせ、やる気のない歌は演奏に埋もれがち。でもその演奏に中毒性があって中々クセになるんです。続く「Here」は穏やかな演奏に囁くような優しい歌メロを聴かせます。ひねた楽曲が多い中でストレートにメロディが良く、心が温まります。「Two States」はカンバーグがボーカルを取る1曲。リズミカルなドラムとベースがノリの良いビートを刻み、歌も楽しそう。オールドロックのようなギターソロも良いですね。2分足らずの小曲なのが物足りないくらいです。「Perfume-V」は比較的テンション高めの演奏に対し、低血圧気味のやる気のないボーカルに大きなギャップがあります。ギターが終始ザリザリとノイジーな唸りを上げ、ベースも心地良いグルーヴを作っています。「Fame Throwa」は楽曲構成がめちゃくちゃで、先の全く読めない変態的な楽曲です。終始汚く歪んだ音で、ぶっ飛んだ構成も含めてある意味サイケデリックな感じ。あまりにひねくれていて、強烈なインパクトを残します。続く「Jackals, False Grails: The Lonesome Era」はリズミカルなドラムが心地良く、ノイジーに歪んだ音は中盤でエキゾチックな雰囲気も出してきます。ヘロヘロボーカルもどこか心地良い。ラスト曲は「Our Singer」で、ゆったりとした演奏は単調なのに、時折トリッキーなリズムを刻んでフックをかけてきます。

 チープでスッカスカですが中毒性が高く、またひねくれポップなメロディは魅力的。ローファイブームの火付け役となったのも頷ける、インディーロックの名盤です。
 ペイヴメントは人によって名盤と推す作品が分かれるようですが、個人的にはこの1stが一番好みです。

Slanted And Enchanted
Luxe & Reduxe (2CD)
Pavement
Slanted And Enchanted
Pavement
 
Crooked Rain, Crooked Rain (クルーキッド・レイン)

1994年 2ndアルバム

 アルコール依存やライブでの数多くの奇行に加え、勝手にメジャーレーベルと契約しようとしたギャリー・ヤング(Dr)をバンドは解雇(ちなみにヤングは日本の雑誌『ロッキング・オン』で「おやじに訊け!」という連載を持っていたそうです。色々とエピソードが面白い)。そして後任としてスティーヴ・ウェスト(Dr)が加入。スティーヴン・マルクマス(Vo/Gt)、スコット・カンバーグ(Gt)、マーク・イボルド(B)、ボブ・ナスタノヴィッチ(Perc)、スティーヴ・ウェスト(Dr)の5名体制で新たなスタートを切りました。
 図らずも前作が想定外な絶賛を受けプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、本作はポップな側面が際立ち、ペイヴメント最大のヒット作となりました(2009年までに50万枚ほど売れたそうです)。なおマルクマスは皮肉屋と言われるらしく、歌詞には皮肉たっぷり込められているのだとか。

 アルバムは「Silence Kid」で幕開け。音質は前作から向上しつつも、マルクマスのヘロヘロなボーカルや全体に漂う倦怠感は前作のスタイルを踏襲していますね。無理やり2曲を繋げたような強引な楽曲展開を繰り広げます。「Elevate Me Later」はマルクマスとカンバーグの2人のギターが哀愁を醸し出します。渋い。続く「Stop Breathin」は8分の6拍子のリズムが緩く心地良く揺さぶってきます。マルクマスの歌も優しいですね。後半は演奏が長々と続きますが、さほど大きな盛り上がりもなくダウナーな音色になんとなく心が落ち着きます。「Cut Your Hair」はペイヴメントのヒット曲で、気だるくひねくれポップな良曲です。時折火がついたように攻撃的な歌唱を見せますが、全体的にはやる気のないヘロヘロボーカルです。また裏声で「ウウウウー」と歌う部分がブラーっぽいですが、マルクマスとブラーのデーモン・アルバーンは友人関係を築くようで『ブラー』制作に大きな影響を与えます。「Newark Wilder」はメロウで落ち着いた雰囲気が漂います。かすれ気味の囁き歌声でメロディアスな歌を歌います。後半、ギターの優しい響きに浸っていると、テクニカルなことをしようとして諦めたかのようにパッタリ音が途絶えてしまう瞬間に驚かされます(それも計算でしょうけど)。続く「Unfair」は珍しく躍動感のある楽曲です。マルクマスはハイテンションでシャウト連発してキレまくっていますが、演奏は比較的メロディアスなフレーズを奏でています。「Gold Soundz」はメロウな演奏にメロディアスな歌が乗りますが、歌はかなり不安定で相変わらずといった感じ。途中から躍動感を増しますが、全体的には切ない雰囲気を保ちます。「5-4=Unity」はジャジーなインストゥルメンタルです。時折スペイシーな演出も挟んだりして、プログレ的な印象を抱きます。そして「Range Life」はゆったりと穏やかな演奏にアンニュイな歌で、どこか哀愁が漂いますが素朴で温かい良曲です。なお歌詞でスマッシング・パンプキンズをおちょくっており、そのせいでマルクマスとスマパンのビリー・コーガンは犬猿の仲になってしまったのだそう。「Heaven Is A Truck」もアンニュイかつ気だるげで、前曲と似たような雰囲気。ピアノがアクセントとして効いています。そして「Hit The Plane Down」はベースが際立つ少しダーティな演奏やヴォコーダーを通したような歌で、だれてきた終盤を一瞬引き締めますが、その後は単調な演奏をダラダラと聴かせて相変わらず緩い。ラスト曲「Fillmore Jive」はローファイな音質でまったりギターを聴かせ、サビ部分はエコーがかった歌で空間の広がりを見せます。壮大であるがゆえに名曲に化ける可能性を秘めつつも、彼ら特有の音質の悪さやドラムの粗が目立ったりしてちょっと残念。

 前作のようなスッカスカでヘタクソなサウンドからは成長が見られ、ゆったりとしてメロディアスになりました。ドラムがギャリー・ヤングからスティーヴ・ウェストに交代して上手くなった分、良くも悪くも普通なバンドになってしまった印象です。

Crooked Rain, Crooked Rain
La’s Desert Origins (2CD)
Pavement
Crooked Rain, Crooked Rain
Pavement
 

脱ローファイ化

Wowee Zowee (ワーウィ・ゾーウィ)

1995年 3rdアルバム

 収録楽曲は18曲で全アルバム中最多ながら、前作から僅か1年2ヶ月と最短ブランクでリリースされています。奇をてらった無茶苦茶な楽曲構成は1stに回帰した感もありますが、音質も演奏技術も向上。キラーチューン不在と言われる作品ですが、メロディアスな楽曲は多く、彼らのポップセンスを堪能できます。
 前任ドラマーのギャリー・ヤングが興奮したときに「Wowee Zowee!」と頻繁に叫んでいたことがタイトルの由来です。このフレーズの元ネタはフランク・ザッパの楽曲「Wowie Zowie」(『フリーク・アウト!』収録)で、アートワークに見られるコミック風の吹き出しも同アルバムをモチーフにしているのかもしれません。

 アルバムは「We Dance」で幕開け。アコギやピアノが穏やかな空気を作り出し、スティーヴン・マルクマスのアンニュイな歌声は甘く優しいです。とてもメロディアスで心落ち着く楽曲です。続く「Rattled By The Rush」は渋く泥臭いブルースロックを軸に、メリハリのあるヘヴィなギターを聴かせます。気だるいんですが演奏にはパンチがあります。「Black Out」はメロディアスでキラキラとしています。歌はやる気がないのですが、演奏で聴かせてくれます。裏声と狂ったシャウトでポップなメロディを歌う「Brinx Job」を挟んで、「Grounded」。イントロのギターは透明感があるのですが、ダウナーな歌が始まると歪んだ音色を響かせます。透明感があったり濁ったりと音に振れ幅がありますが、根底部分はメロディアスです。続いて「Serpentine Pad」は彼らにしては珍しく攻撃的でスリリングなグランジ曲です。ディストーションの効いた轟音ギターにシャウトしっぱなしのボーカルはパンキッシュでカッコ良い。一転して「Motion Suggests」はオルガンのイントロにギロを鳴らすパーカッションなどオールドロックのような佇まい。メロウな演奏で癒やします。「Father To A Sister Of Thought」は諦めのような切なさや優しさが感じられます。ペダル・スチールギターが特徴的で、のどかな海岸通りをイメージさせます。唐突にアウトロで場違いにヘヴィになるという。そして「Extradition」は実験的な楽曲。ウィスパーボイスで歌うメロディは若干ひねており、中盤では別の楽曲を無理矢理挿入したような感じで、終盤に元に戻るという変態的な展開。「Best Friend’s Arm」はアップテンポ曲。空元気のように叫び散らしたかと思えばすぐさまエネルギー切れ。そしてドラムのカウントを皮切りにまた空元気のように走り出します。気だるげな終盤は呪術的な雰囲気すら漂っているし、変な楽曲です。続いて「Grave Architecture」。ヘロヘロなボーカルは音が取れていませんが、ギターがキャッチーな音色を奏で、心地よく浸ることができます。後半はまた一貫性のない変態的な楽曲構成で、そこにヤケクソ気味な歌で混沌としています。憂いを帯びた歌メロを聴かせる「AT&T」は、楽曲が進むにつれてテンションを上げます。どもったサビメロなんかはひねくれポップな感じですね。終盤はヤケクソ気味にシャウト。続く「Flux = Rad」はグランジーな1曲。歪んだヘヴィなギターにノリの良いリズム隊。そして沸々とした歌はどんどん攻撃的になっていきます。やけっぱちで荒々しくてカッコ良いです。一転して「Fight This Generation」では一気にダウナーモード。どんどん沈んでいきますが、サイケっぽい演奏が心地良く揺さぶります。後半はダークで緊張感に満ちつつも、若干実験的な雰囲気。「Kennel District」は歪んだギターを響かせつつも、全体的に気だるくて諦念のような空気が漂います。続く「Pueblo」はまったりと落ち着いています。サビで聴かせるメロディアスなギターが感傷的で良いですね。後半の盛り上がりもドラマチックで、アルバムの終焉に近づいてきました。そして終盤を飾る大作「Half A Canyon」。短い楽曲が多い中で6分超え。ブルージーで泥臭いギターが鈍重な演奏を行い、1970年前後のハードロックを想起させます。中盤ノイジーな悲鳴を挟むと、テンポアップして別楽曲のように展開。オルガンやヘヴィなバンド演奏をバックに絶叫しっぱなしで狂気を感じます。最後の「Western Homes」は変な楽曲。リズミカルな演奏にブルージーなギターやスペイシーなシンセ、グルーヴィなベースなど、全楽器がそれぞれバラバラな方向性なのに上手く纏め上げていて不思議な感覚です。

 バラエティ豊富な楽曲群は取っ散らかっているのですが、良質なメロディが随所に聴けます。中々心地良い作品です。

Wowee Zowee
Sordid Sentinels Edition (2CD)
Pavement
Wowee Zowee
Pavement
 
Brighten The Corners (ブライトゥン・ザ・コーナーズ)

1997年 4thアルバム

 これまでセルフプロデュース体制でしたが、ミッチ・イースターとブライス・ゴギンを共同制作者に招いています。落ち着いていて円熟味のある作品で、前作よりも商業的には成功。ですが成功をよそにメンバーは他の音楽プロジェクトや家族との時間を優先し、バンドに亀裂が走り始めました。

 「Stereo」はギターとベースが単調な音を奏でる不可思議なイントロから始まります。シンプルなのに変なフレーズ、そして歌もなんか変なメロディで、違和感があるから印象に残るんです。そして楽曲が進むとグランジっぽい荒々しく躍動感のある演奏も見せます。「Shady Lane / J vs. S」は落ち着いた演奏にポップなメロディを聴かせますが、明るいサビメロに不穏な音色が混じる違和感。終盤はメドレー2曲目に移って、メロウなインストゥルメンタルを展開します。「Transport Is Arranged」はメロディアスでしっとり聴かせる良曲。スティーヴン・マルクマスの囁くような声や、メロトロンかフルート(?)のような穏やかな音色をはじめバンド演奏も円熟味があります。でも一筋縄ではいかなくて、中盤から不穏な音を発したかと思えば暴力的にヘヴィに。そして序盤のような穏やかさを取り戻します。「Date W/ IKEA」はヘヴィで歪んだギターが唸っています。歪みまくった音質の悪いギターが楽曲を汚していますが、核となるメロディや歌は爽やかで澄んでいて、そして哀愁が漂います。続く「Old To Begin」はメロウで落ち着いた楽曲で、ゆったりと心地良く聴かせます。ですが楽曲が進むとヘヴィさを見せたり、マルクマスの絶叫のようなシャウトも現れます。「Type Slowly」も落ち着いて円熟味があります。囁くような歌はメロディアスですが、じっくり聴かせるタイプの楽曲なので時折音を外すのが若干気になったり。笑 マーク・イボルドのベースが何気に心地良いです。そしてだれてきたアルバムを引き締める「Embassy Row」。序盤こそメロウでゆったりとしていますが、途中から躍動感のある楽曲へと変貌。歌は無理矢理テンションを上げているようで若干苦しそうですが、跳ねるようにノリの良い演奏は聴いていると楽しいです。「Blue Hawaiian」は鍵盤がアンビエント風ですが、そこに淡々としたバンド演奏や抑揚のない歌が絡んでいきます。全体的に単調なトーンですが、粗いギターソロがあったり聴かせる場面もあります。続く「We Are Underused」もゆったりと聴かせます。終盤の反復するコーラスが壮大で名曲感があるものの、ゆったりとした楽曲ばかりで正直埋もれてしまっている印象。「Passat Dream」は少しテンポアップして、タイトな演奏で引き締めます。他の楽曲と違ってクールな雰囲気。「Starlings Of The Slipstream」はゆったりとしていますが、アウトロだけは歪んだギターが不快な金属音で唸りを上げてインパクトがあります。ラスト曲は「Fin」。ゆったりとして温かい演奏ですが、憂いを帯びていてどこかメランコリック。終盤のギターソロが染み入ります。

 メロディアスで落ち着いた良質な楽曲が多いですが、起伏に欠けるため、単曲だと良い楽曲もアルバム通して聴くと冗長な印象が否めません。

Brighten The Corners
Nicene Creedence Edition (2CD)
Pavement
Brighten The Corners
Pavement
 
Terror Twilight (テラー・トワイライト)

1999年 5thアルバム

 本作はペイヴメントのラストアルバムです。当初はセルフプロデュースとして進めていましたが制作が難航。レディオヘッドベックとの仕事で知られるナイジェル・ゴッドリッチをプロデューサーに迎えて制作された本作はローファイとは程遠く、音質も良いし細部まで作り込まれています。
 制作中、スティーヴン・マルクマスの楽曲のみがフィーチャーされ、残りのメンバーの意見がほとんど採用されないことにコット・カンバーグやボブ・ナスタノヴィッチらが不満を抱えていました。ツアー中にマルクマスが態度を悪化させたことから亀裂が決定的になり、1999年にペイヴメントは解散しました。

 オープニング曲は「Spit On A Stranger」。数秒だけ場違いなドラムが入った後に、メロウで優しい楽曲がスタートします。ギターの音色や囁くようなコーラス、あとマーク・イボルドのベースも温もりを感じさせ心地良く響きます。続く「Folk Jam」はフォーキーで温もりのあるサウンドやマルクマスの倦怠感のある歌い方で緩さを出しつつ、比較的アップテンポでノリの良い楽曲です。中々心地良い。「You Are A Light」はゆったりとしていて、メロディアスな歌に浸れます。後半から楽曲の雰囲気が変わり、ジャジーなようで実験的でもあるスペイシーなサウンドに溢れ、時折暴力的に歪んだギターも響きます。「Cream Of Gold」は冒頭3曲のまったりムードとは異なり、イントロからヘヴィで重厚な雰囲気が漂います。分厚く重ねた音が響き渡り、ピリピリと緊張が増してくるとマルクマスの歌も攻撃的に。スリリングです。「Major Leagues」は録音に間に合わなかったスティーヴ・ウェストの代わりにドミニク・マーコットがドラムを叩いています。円熟味のある落ち着いた楽曲で、優しくも切なさが漂います。続く「Platform Blues」ではレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドがゲスト参加し、ハーモニカを吹いています。穏やかな演奏とヘヴィな演奏を交互に繰り返すスリリングな楽曲で、先の読めない展開に加えて、時折表出する凶暴な演奏がカッコ良い。「Ann Don’t Cry」はマルクマスがブツブツとダウナーな歌を歌い、メロウな演奏が穏やかな空間を作りつつ時折不穏な音色も響かせます。淡々としたベースが心地良い。「Billie」はアコギが温かく、憂いのある歌メロが魅力的。穏やかなポップソングと思わせておいて、サビ部分は豹変して狂気じみた歌い方で驚かせます。「Speak, See, Remember」はジャジーなドラムに呟くような歌で、地味目に抑えつつも跳ねるような楽しい感覚を生み出します。ギターもブルージーで渋い。終盤リズムチェンジして、爽やかな雰囲気を出したかと思えば凶暴性も内包していて、ヘヴィなギターがザクザクとえぐってきます。そして「The Hexx」は暗くてしんみりムード。比較的少ない音数で遠近感のある音響が響き、強い憂いを帯びた楽曲は気分が沈んでいきそうです。最後の「Carrot Rope」はポップな楽曲です。アコギで落ち着いた声で進むものの、サビ部分は空元気のように躍動感に溢れています。

 円熟味のある作品ですが、時折表出する暴力的な演奏がスリリングで、アルバムの流れに緩急をつけています。佳曲揃いで中々良いです。
 1999年の解散後、2010年に再結成。ツアーと編集盤のリリースを行っています。2020年にも30周年記念公演が予定されていましたが、新型コロナのため延期となり、2021年6月に公演が予定されています。

Terror Twilight
Pavement
 
 
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