🇯🇵 eufonius (ユーフォニアス)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

碧のスケープ

2009年 9thアルバム

 eufoniusは日本の音楽ユニットで、同人音楽ユニットで活動していたボーカルのriyaと、ゲーム音楽やアニメ音楽制作に携わっていたサウンドプロデューサー菊地創の2人組です。グループ名は「euphonious (耳に心地良い)」という単語をもじったもの。菊地が作編曲を、riyaが作詞を担当しています。
 2003年に同人即売会M3にて『eufonius』を発表。翌年にメジャーデビューを果たし、アニメ主題歌などを担当します。メジャーで活動する一方で同人活動(自主制作)も並行し、本作は通算8枚目のアルバムですがメジャーとしては3作目となります。本作はアニメ『true tears』の主題歌を中心に収録、透明感の溢れる楽曲が並びます。

 小曲「scape」で幕開け。神秘的でアンビエントな音色が響き、途中からオルゴールとコーラスが万華鏡のように世界を広げます。riyaの歌は浮遊感に満ちていて心地良い。意外にベースが効いています。「アネモイ ~album mix~」はアニメ『空を見上げる少女の瞳に映る世界』の主題歌。優しくて儚げな歌唱がキャッチーな歌メロを届けます。アクセントのように入るアコギが中々良い。続く「碧色の空」はイントロから憂いがたっぷりで、全体的に気だるく暗い雰囲気が漂います。アンニュイでメロディアスな歌は、サビでは語尾をふわっと上げるような歌い方が魅力的です。「Gebiet ~album mix~」はデジロックな楽曲。アコギと打ち込みのリズムビートが小気味良く刻みますが、全体的に暗くシリアスな雰囲気です。そして中盤からはビートが強まり、歌よりも演奏が主体。一転して「elekto」は音数少なく静かな癒やし曲。ピアノとriyaの囁くような歌が子守唄のよう。途中からドラム等が加わり楽曲を盛り上げますが、素朴な歌はそのまま優しいトーンを保ちます。「そのままの僕で ~Piano Solo~」は『true tears』挿入歌ですが、静かなピアノインストにアレンジされています。メロディが美しい。そして本作のハイライトとなる「リフレクティア」はアニメ『true tears』の主題歌。透明感のある歌声を幻想的な音色が彩り、そしてサビに向けてビートを強めて高揚感を煽ります。語感の良いサビメロがとても心地良い。線の細い儚げな歌唱は、時折美しいコーラスワークで支えます。続く「Angel on tree」も魅力的な1曲。序盤はピアノと歌だけのシンプルな構成ですが、跳ねるように歌うのでポップで可愛らしい印象です。中盤で楽器を増やすもののポップさは変わらず。ですが終盤は別の曲のように、憂いを帯びたしっとりとした歌を聴かせます。「Aporia」は無機質で冷たいサウンドに、時折音を外しそうな危うい歌がフワフワ漂います。「phosphorus」は頭サビで始まるキャッチーな楽曲です。幻想的なAメロからどんどんビートを強めて盛り上げていく展開は、お手本のようなアニソンですね。『神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS』のOP曲に起用されました。ラストの「空想庭園」は穏やかな楽曲です。ウィスパーボイスとよく合う、アコギ主体の優しいサウンド。サビでは分厚いコーラスがとても美しいのですが、バックではデジタル色を強めて無機質な要素が加わります。

 アニソンでも指折りの名曲「リフレクティア」が光ります。但しこれが突出しすぎていることや、キャッチーなアニソン曲と無機質なエレクトロニカ的楽曲が、アルバムとして結構アンバランスな感じもします。
 前々から友人が聴いていて気になっていたのと、アニメ『TARI TARI』での「リフレクティア」カバーで興味を持ったのがeufoniusを聴くキッカケとなりました(『true tears』を観た後だったかも)。

碧のスケープ
eufonius
 
フォノン

2011年 12thアルバム

 本作はカラフルでキラキラとした楽曲を届けるという意図で『フォノン (phonon=音響量子)』というタイトルにしたそうで、色とりどりのポップ曲に溢れています。また、eufoniusの特徴の一つに独特の造語があり(ファンからは「riya語」と呼ばれているそう)、英語に似た響きのフレーズが歌詞に散りばめられています。本作では初っ端から「riya語」全開で、透明感のある歌声に語感の良いフレーズが合わさり浮遊感を生み出します。

 タイトル曲「phonon」は1分半の小曲。ウィスパーボイスで歌うのは不思議な響きが心地良い造語で、フワフワと浮遊感に浸れます。中盤からは躍動感のあるドラムがしっかりとリズムを刻みます。そして続く「サイクレイション」は個人的にハイライト。頭サビのこの楽曲、サビ部分がriya語で歌われていて浮遊感たっぷり。そしてバックの打ち込みはダンサブルで、跳ねるような歌唱と合わせてとても心地良いんです。「比翼の羽根」はアニメ『ヨスガノソラ』のテーマ曲で、eufoniusでも人気の高い楽曲です。ストリングスが彩るイントロを経て、儚げで切ない歌唱は転調を重ねてメロディアスなサビへと繋ぎます。サビでのファルセットの使い方や転調が独特で、強く印象に残る名曲ですね。また、バックのベースも地味に良い仕事をしてます。「マナ」はオルゴールを中心としたエレクトロニカなサウンドが寒々しい音色を響かせ、そこにriyaの透明感ある歌声が広がります。続いて「キラリクルリ」はアコギやアコーディオンが温もりを感じさせる、ほのぼのとした楽曲です。素朴で可愛らしい歌も優しくて、メロディとサウンドの両面でriyaの歌声の魅力を活かした佳曲だと思います。個人的にはエレクトロニカ路線よりも、アコースティック基調のこういう楽曲の方が好きですね。「ゆきなみき」は声優の野中藍に提供した楽曲のセルフカバー。ノスタルジックな歌メロやバンドサウンドに混じるシンセが少し古臭いものの、キュートな歌声の魅力が勝って個人的には好き。曲調も声質も中島愛っぽい感じがします。「fugace」はリズム隊が不在で、序盤の演奏はピアノを軸とし、途中からアコギが優しく響きます。そしてriyaのエコーがかった歌が幻想的に広がります。終盤に無機質なリズムトラックが入るものの、正直これは不要だったと思います…。「分解能」はダウナーで憂いに満ちたバンドサウンドを聴かせます。暗く沈んでいくヘヴィで粘っこい演奏に、透明感のある儚げな歌声がミスマッチですが、楽曲としては中々良いです。「涙の記憶」はriyaの歌声をフィーチャーした楽曲で、優しくメロディアスな歌をピアノがしっとり彩ります。サビはやけに壮大な感じ。ちなみに本楽曲はアニメ『true tears』の挿入歌で、その繋がりでラストに「リフレクティア」のフレーズがチラッと聴けます。「きらきら」はレトロゲームのようなチープなシンセがどこか懐かしい。徐々に楽器は増え、途中から加わるバンドサウンドやストリングス、そして跳ねるようにポップで可愛らしい歌が、ワクワクした感覚を生み出します。「MySmile」は素朴でほのぼのとしたポップソング。可愛らしい歌唱が心地良く、優しく温かいのですが、どこかノスタルジーを感じさせて感傷的な気分も誘います。終盤にピッタリの楽曲ですね。続いて「光のフィルメント」は、声優の高垣彩陽に提供した楽曲のセルフカバーです。若干シリアスな雰囲気でやや緊張が張り詰めていますが、ビートはダンサブル。最後は「遥かな日々」。序盤はriyaの歌をフィーチャーしており、穏やかで心地良い歌は時折分厚いコーラスで多幸感があります。2分過ぎからストリングスが入ると、穏やかさは保ちつつも曲調が結構変わって、メドレーで別の楽曲を繋いだかのような感じ。

 ポップな佳曲が揃っており、特にオープニング3曲の流れの良さが魅力的。私はeufoniusは『碧のスケープ』と本作しか知りませんが、アルバム全体で見ると本作の方が断然好みです。

フォノン
eufonius
 
 
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