🇬🇧 Gary Numan (ゲイリー・ニューマン)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

The Pleasure Principle (ザ・プレジャー・プリンシプル)

1979年 1stアルバム

 英国ロンドン出身のミュージシャン、ゲイリー・ニューマン。1958年3月8日生まれ、本名はゲイリー・アンソニー・ジェームズ・ウェブと言います。1976年にチューブウェイ・アーミーというニューウェイヴバンドを結成し、2枚のアルバムを出した後に1979年に解散、同年中にソロ名義で活動を開始します。ジョン・フォックス(ウルトラヴォックス)を師と仰いで活動をする彼は、今では電子音楽のパイオニアという評価を得ていますが、キャリア初期は激しい批判にさらされたようです。ソロ初となる本作は全英1位を獲得。ボーカルやシンセサイザーを担当するゲイリー・ニューマンをサポートするのは、ポール・ガーディナー(B)、クリス・ペイン(Key/Vla)、セドリック・シャープリー(Dr)、ビリー・カリー(Vn)、ギャリー・ロブソン(Cho)。ピラミッドを眺める、レトロフューチャー感のあるジャケット。童顔のニューマンはこの時21歳くらいでした。

 「Airlane」でアルバムの幕開け。アナログシンセがプワーンプワーンとチープで脱力感のある音を奏でますが、骨太なベースとかっちりしたドラムはスリリングでカッコ良く、このギャップが楽しいインストゥルメンタルです。「Metal」は奇怪なフレーズを反復して中毒性を生み出し、時折変な効果音を加えています。ニューマンの歌うメロディもなんか変な感じ。「Complex」はゆったりと漂うような感覚を味わえる楽曲です。ピアノやシンセがスペイシーな効果音を織り交ぜながら海のように広がり、ヴィオラがどこか懐かしいメロディで優しくそよぎます。続く「Films」はイントロからタイトなドラムがカッチリ決まっていてカッコ良い。ベースがうねり、シンセが少しダークで影のある音を奏でますが、ニューマンの歌はどうにも気の抜けた感じがします。「M.E.」でダークさを増し、演奏はややシリアスなムードなのですが、歌からはシリアスさは感じられず一本調子なのが、良い意味でのギャップを感じます。
 レコード時代のB面オープニング曲は「Tracks」。A面1曲目に持ってきた方が良いんじゃないかと思うくらい、キャッチーで魅力的な楽曲です。しっとりピアノと憂いのある歌で始まりますが、そこから晴れ間が見えて躍動感のある楽曲へと変貌。シンセがカラフルな音色で彩る、ポップでメロディアスな良曲です。続く「Observer」はシンセがダンサブルなフレーズを反復してインストゥルメンタルかと思わせますが、楽曲半ば過ぎた頃からニューマンの歌が加わります。7分半もある「Conversation」は、重低音がリズミカルに響きヘンテコな歌が乗る、ひねくれポップ感。変だけど癖になりそうな中毒性を持っていますが、ちょっと長いかも…。そして全英1位獲得シングル「Cars」。リズミカルなシンセが変だけど癖になりそうなフレーズを奏で、タイトなドラムとのギャップがあります。アルバムを通して聴くとそこまで突出している感はありませんが、不可思議で新鮮なこのアルバムの要素が詰まっていて、真新しさでヒットしたのかなと思いました。ラスト曲は「Engineers」。タカタカ刻むドラムに支えられて行進するかのよう。それでいて電子的な効果音を織り交ぜて変な感じにしています。

 タイトでカッチリしたリズム隊と、気の抜けたアナログシンセと変なニューマンの歌というギャップが新鮮な感覚です。ひねていますがポップセンスもある、面白い作品だと思います。

The Pleasure Principle
30th Anniversary Expanded Edition (2CD)
Gary Numan
The Pleasure Principle
Gary Numan
 
 
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