🇬🇧 Japan (ジャパン)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Tin Drum (錻力の太鼓)

1981年 5thアルバム

 ジャパンはイングランド出身のバンドで、そして本作のジャケットアートには毛沢東のポスター。で、結局どこの国のバンドなんでしょうか!笑
 ジャパンはデヴィッド・シルヴィアン(Vo)とその弟スティーヴ・ジャンセン(Dr)、親友ミック・カーン(B)を中心に、1974年のロンドンで結成しました。後にリチャード・バルビエリ(Key)と、ロブ・ディーン(Gt)が加入。デビュー当初はアイドルとして売り出されたものの、本国英国ではほとんど無名でした。しかしバンド名もあってか日本では初来日で武道館公演という破格の待遇で、バンド側も「Life In Tokyo」というシングルを出したり、日本贔屓してくれていたようです。3rdアルバムあたりから本国でも人気が出始めました。デビュー当時がグラムロック風だったこともあり、ニューロマンティックに位置づけられたりしています。
 本作はスティーヴ・ナイとバンドによるプロデュース。広東や中国を取り扱っていて、ジャパンじゃないのか!という思いもありますが、シルヴィアンはかねてよりアジア音楽を志向していたようです。東洋音楽やアフロビートを取り入れた、独特な作品に仕上がっています。

 アルバムは「The Art Of Parties」で開幕。アフロビートを取り入れたビート感の強いリズムと、どこか怪しげなメロディ。そしてボーカルは粘っこく絡みつくような感じがします。エスニックだけど電子的な、独特のサウンドでひたすら反復するので耳に残ります。続く「Talking Drum」はベースがうねうねして、またインド音楽のようなエスニックで怪しげな音色も流れます。全体を支配する怪しいサウンドが不思議と癖になるのです。「Ghosts」はジャパン最大のヒットシングル。シンセサイザーを中心としたテクノポップ風のサウンドですが、静かで神秘的な雰囲気です。サウンドが静かなので自然と歌に意識がいきますが、この絡みつくような歌い方は怪しげです。「Canton」はタイトルが示す「広東」のとおり、中華風のメロディをシンセサイザーで奏でたインストゥルメンタル。中国の大自然が目に浮かぶ雄大な1曲です。わかりやすくて好きです。
 アルバム後半は「Still Life In Mobile Homes」で開幕。フレットレスベースが作るグルーヴ感が強烈な1曲で、そこにアジアンテイストのシンセがピコピコと鳴ります。間奏での狂言のような女性ボーカルは、写真家の藤井ユカによるもの。「Visions Of China」もグルーヴ感抜群のテクノポップ。ノリは良いのですが怪しげな雰囲気は変わらずで、そのギャップが印象に残ります。続く「Sons Of Pioneers」はベースがうねり、アフリカンビートを取り入れたパーカッションが気持ちの良いノリを作ります。シンセは神秘的で少し不穏な音色を合間合間に入れ、シルヴィアンの歌も怪しげです。最後の「Cantonese Boy」はアジア音楽の風味をうっすら感じさせるテクノポップです。リズムの取り方が独特ですっきりしないのですが、逆に違和感が強烈なフックを引っ掛ける感じで印象に残ります。

 なんちゃってアジア風で胡散臭いことこの上ないのですが、これが意外と悪くない。怪しげなテクノポップは不思議とやみつきになります。

Tin Drum
Japan
 
 
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