🇺🇸 Neutral Milk Hotel (ニュートラル・ミルク・ホテル)
レビュー作品数: 1
スタジオ盤
1998年 2ndアルバム
ニュートラル・ミルク・ホテルは米国ルイジアナ州出身のインディーロックバンドです。ジェフ・マンガム(Vo/Gt)の宅録プロジェクトとして1989年より活動を開始し、1996年に『オン・アヴェリー・アイランド』をリリース。その後ジュリアン・コスター(B)、スコット・スピレイン(Tr)、ジェレミー・バーンズ(Dr)をメンバーに迎えて本作を制作。マンガムの幼馴染であるロバート・シュナイダーのプロデュース。
本作はジャケットアートが強烈なインパクトですね。奇怪なジャケットなので聴く前から勝手にプログレ系だと想像していましたが、組曲構成やトラッドフォークっぽい演奏はプログレにも通じます。そこにオルタナやローファイの要素も取り込んだ作風です。
アコギをかき鳴らす「The King Of Carrot Flowers, Pt. One」で幕開け。牧歌的な演奏と素朴な歌声は1970年代のトラッドフォークっぽいですね。僅か2分で終わってそのまま「The King Of Carrot Flowers, Pts. Two & Three」へ。楽曲の雰囲気も組曲形式を取るところも、ジャケットの印象どおりプログレっぽいのですが、中盤辺りからガレージロック的な荒々しさも出てきてスリリングな楽曲に変貌します。音質の悪さは確かにローファイですね。でも粗さの中に耳馴染みの良いメロディが光ります。そして表題曲「In The Aeroplane Over The Sea」。牧歌的なアコースティックサウンドに、ノスタルジックで良質な歌メロが心地良い。アクセントとして加わるホルンも、聴いていると田舎な景色が目に浮かびますね。温かい1曲です。「Two-Headed Boy」もアコギを弾くのは変わらず、ですが速めのテンポで若干ピリついた演奏は緊張が漂い、焦燥感を煽ります。力強く歌う歌も緊張の糸が張り詰めています。そのまま途切れず続くインストゥルメンタル「The Fool」。トランペットが憂いを帯びたメロディを鳴らし、切なさで満ち溢れます。「Holland, 1945」はノイズミュージックを取り入れ、汚く歪んだサウンドで暴れ回るパンキッシュな1曲です。でも演奏の粗さと裏腹に、マンガムの素朴な歌唱はノスタルジックなメロディを歌い、心地良さも内包しています。ポップセンスが光ります。落ち着いた雰囲気の小曲「Communist Daughter」で優しい空気に戻し、続いてフォーキーな「Oh Comely」。アコギ弾き語りの落ち着いた楽曲で、感傷的な歌が切ないですね。大きな盛り上がりもなくひたすら弾き語るのですが、8分を超える長尺曲でちょっと長いかも…。終盤にホルンやトランペットが加わりますが、その音色は憂いに満ちています。「Ghost」は軽快なアコギと酷く歪んだギターが綺麗と汚いを入り混ぜた音を奏で、そしてカチャカチャ鳴るドラムが高揚感を煽ります。どんどんテンポアップする楽曲構成もなんとなくワクワクしますね。そしてタイトルを関していない「Untitled」(無題)はインストゥルメンタルです。全体的に強く歪ませたサウンドですが、同様に歪んだバグパイプが牧歌的なメロディを奏でます。炸裂するドラムも含めて雑音まみれでこんなに歪んでいるのに、核となるメロディ部分は中々美しく、不思議と心地良さを感じられるんです。ラスト曲は「Two-Headed Boy, Pt. Two」。憂いを帯びたアコースティックな楽曲で、郷愁を誘います。
フォーキーでノスタルジックな楽曲に溢れています。時折ノイジーな演奏も聴かせますが、一貫してメロディアスでノスタルジックなメロディが心地良いんです。
1999年には解散してしまうため本作がラストアルバムとなりますが、2013年に再結成して2015年まで活動しています。
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