🇯🇵 SOUND HOLIC (サウンド・ホリック) / SWING HOLIC (スイング・ホリック)

SWING HOLIC同人作品:東方アレンジ

VOL.01

2008年 1stアルバム

 SOUND HOLICの姉妹サークルである、ジャズに特化した音楽サークルSWING HOLIC、通称スイホリ。第1作目となる本作は『東方風神録』オンリーのジャズアレンジ楽曲が展開されます。インストゥルメンタルと歌で半々くらいですが、ボーカルは大半をA~YAが担当、1曲だけShihoriが担当しています。サンシャインクリエイション39で頒布されました。

 オープニング曲「9 o’clock @bar “EASTSIDE”」は「封印されし神々」のアレンジ。ジャズバーを意識したのか、店内の効果音をバックに始まります。オシャレに始まったかと思えば、テンポを速めて白熱するスリリングな演奏を繰り広げます。
 続く「The Wonderland」は「神々が恋した幻想郷」のアレンジ。思わず踊りたくなるようなリズム隊に、トランペットが華やかな音色を足します。英語と日本語を織り交ぜファルセット気味に歌うA~YAの歌声は、ジャズ演奏に良く似合いますね。中盤急に静かになるパートがあり、ベースを始めとした各楽器の演奏に浸れます。
 「Swingin’ Drunk Drinkin’」は「ネイティブフェイス」のインストアレンジ。軽快なハンドクラップに、渋い音色のサックス、かと思えば途中からギターが主導します。中盤で鍵盤がリードするパートはテンポアップし、静かに白熱しています。
 「麓の神社」をアレンジした「Eternal Brightness」は、木管のような音色の鍵盤(?)が特徴的です。6/8拍子の心地良いテンポで展開される楽曲は、歌も相まってミュージカルの劇中歌のようなイメージ。
 そして「フォールオブフォール ~ 秋めく滝」をアレンジした「Rainy Day, Rainy Sky」。残響感のあるビブラフォンがオシャレでムーディな感じ。ピアノやトランペット、ギターやオルガンなど、リードする楽器は目まぐるしく変わりますが、全体的にはまったりムードで聴き心地が良いですね。
 「Graveyard On Bossa」は「御柱の墓場 ~ Grave of Being」を静かでドリーミーにアレンジしています。
 続く「平成河童大系 8bit Jz mix」は「芥川龍之介の河童 ~ Candid Friend」のアレンジ。ジャズ感がほぼない本楽曲は、Shihoriの歌い方もあって電波ソング感が強く、本作の中では非常に浮いている印象です。
 「A DELUSION-迷妄- Another Take」は「信仰は儚き人間の為に」のアレンジで、全体的にベースが気持ち良く低音を刻みます。冒頭は6/8拍子で進行しますが、途中何度もリズムチェンジし、複雑な演奏で楽しませます。A~YAのスキャットがオシャレですね。
 そして「運命のダークサイド」のアレンジ曲「Wings of butterflies」。英語詞の歌をストリングスが彩りますが、序盤はメロディが見えづらく、有機的なのにどこか無機質な感触があります。一方で後半には転調したり歌唱にも感情が乗ってきて、メロディアスな印象に変わっていきます。
 最後は「少女が見た日本の原風景」のインストアレンジ「Life is but A sweet Game…」。パーカッションを用いたゆったりとした演奏に、メロウなサックスが哀愁ある主旋律を奏でます。浸れる1曲です。

 ジャズかつ『東方風神録』縛りで統一感があるのですが、唯一場違いなのが「平成河童大系 8bit Jz mix」。これが入ったことでアルバムの流れも統一感も崩れてしまっているのが残念です。

VOL.01
SWING HOLIC
 
VOL.02

2008年 2ndアルバム

 SWING HOLIC第2弾の本作は『東方妖々夢』(ほぼ)オンリーのジャズアレンジ作品です。ラスト曲以外はA~YAがボーカルを担当しています。M3-2008秋で頒布されました。

 オープニング曲「Drinkin’ And Dreamin’」は「妖々夢 ~ Snow or Cherry Petal」のアレンジ。思わず踊り出したくなるようなグルーヴに満ちていて、それでいて煙たく渋い雰囲気です。オルガンの味付けが良いですね。
 続く「Sa.Ku.Ra.」は「さくらさくら ~ Japanize Dream…」のアレンジ。A~YAが英語詞で歌い、間奏ではご機嫌なサックスを聴かせてくれます。躍動感あるベースも気持ち良い。
 「ティアオイエツォン(withered leaf)」をアレンジしたのが「Boogie Woogie Wonder Cat」。トランペットやサックスを主軸とした、賑やかでご機嫌なインストゥルメンタルです。躍動感あるリズム隊も楽しい気分にさせてくれます。
 「Half & Half」は「広有射怪鳥事 ~ Till When?」のインストアレンジです。サックスが主旋律を奏でるパート以外はドラムがフィーチャーされていて、高揚感を掻き立ててくれます。好みの作風です。
 「遠野幻想物語」をアレンジした「Just make your life alive」は、メロウな歌ものです。トランペットがジャズっぽい渋みを加えますが、アーバンなAORっぽい感触です。
 続く「東方妖々夢 ~ Ancient Temple」のアレンジ「Friday Night Phantasy」。トランペットが刑事物ドラマのBGMのように聴こえます。笑 前曲と同じような雰囲気で、ジャズというよりAORやシティポップ要素が強めな感じがします。
 そして「幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life」のボーカルアレンジ「Border of life」。躍動感のあるドラムに、キャッチーな歌メロで本作のハイライトとも言えます。A~YAの優しい歌唱に魅せられ、間奏ではサックスソロが光ります。
 「#800080」は紫色のカラーコードで、八雲紫のテーマ曲「ネクロファンタジア」をアレンジしたインスト曲。ビブラフォンの音色が美しい、比較的落ち着いた演奏を繰り広げますが、時折盛り上がりを見せ、静かな中に緩急をつけます。
 「Fun with music」は「天空の花の都」のボーカルアレンジ。シンプルなリズムを反復するドラムが妙に気持ち良く、歌やサックスが楽曲を盛り上げると、何故かドラムが引き立つ不思議です。
 「無何有の郷 ~ Deep Mountain」をアレンジした「Deeper and Deeper」は、冒頭からトランペットとサックスが壮大さを感じさせます。その後は一転して、パーカッションに支えられた、アットホームなリラックスした空気が漂います。寂寥感のあるメロディがしんみりさせます。
 そして「Twilight Rendezvous」は本作唯一のオリジナル曲ですが、これが中々魅力的なんです。3拍子で奏でられるミュージカルのようなノリの楽曲で、A~YAの高音気味な歌が気持ち良いです。
 そして最後に「Noisy Jazzy Happy Ensemble」。「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」をアレンジした楽曲で、Shihoriのポップな歌い方は電波ソング感満載。また、演奏楽器はジャズっぽものの、エフェクトをかけたりとアレンジで遊んでいます。

 電波ソング(?)を後ろに持ってきたことで、前作よりはアルバムの統一感が増した印象です。

VOL.02
SWING HOLIC
 
VOL.03

2008年 3rdアルバム

 SWING
HOLIC第3弾は『東方永夜抄』(ほぼ)オンリーのジャズアレンジアルバムです。本作ではボーカリストがA~YAのみで統一感があります。冬のコミケC75にてSOUND HOLIC『紅 -KURENAI‐』と同時頒布されました。

 がやがやした店内の環境音で始まる「in the beginning of..」は「永夜抄 ~ Eastern Night.」のアレンジですが、即興演奏感が強いですね。スピード感のある演奏をさくっと聴かせて次曲へ。
 続く「Proud of our country」は「少女綺想曲 ~ Dream Battle」のアレンジ。3拍子のゆったりとしたメロウな楽曲に、A~YAの大人びた歌唱がオシャレな雰囲気を醸し出します。トランペットが渋いですね。
 「狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon」をアレンジした「Lunatic Eyes」は、原曲の妖しげなメロディラインをサックスがなぞることで、渋くてオシャレな感じに仕上げています。リズム隊と合わせてノリを増していくと、ピアノやジャズギターにバトンを渡します。
 「もう歌しか聞こえない」のアレンジ曲「Graceful Mid-night」は、まったりとリラックスした雰囲気が漂い、ヴァイオリン(ヴィオラ?)が優雅なムードを演出します。
 「月まで届け、不死の煙」をアレンジした「Burn out the time」では一転して、躍動感のあるジャズに仕上がっています。そして華やかな演奏の中にあっても、A~YAの歌は引き立っています。オルガンが活躍する中盤も好みです。
 「エクステンドアッシュ ~ 蓬莱人」をアレンジした「Smoke and Ash」はフルートとサックスがリードしますが、フルートが加わったことで(良い意味で)プログレ感があります。
 そして、「Letter -never to arrive-」のボーカルアレンジ「竹取飛翔 ~ Lunatic Princess」。まったりとしたアコースティックギターを軸に、ピアノが静かに装飾します。そして、甘美で大人びた歌声に魅せられます。
 「Playin’ in Asia」は「プレインエイジア」のアレンジで、シンセや打ち込みを用いることでシティポップ的な雰囲気があります。優しいギターが演奏の主軸ですが、時折オーボエが顔を出します。
 続いて、「千年幻想郷 ~ History of the Moon」をアレンジした「City on the moon」。跳ねるようなドラムが、ダンサブルで魅力たっぷりです。ボーカルは全体的に低めのトーンですが、サビ部分は天に登るかのよう。
 「Dawn of Eastern Dreams」は「恋色マスタースパーク」のアレンジです。まったりとして渋みのある演奏で、木管のようなキーボードの音色のせいか寂寥感が混じります。聴いていると込み上げてくるものがあります。
 「妖怪宇宙旅行」のアレンジ「Over the moon light higher」は躍動感あるリズム隊、特にパワフルなドラムが強烈ですが、歌やヴァイオリンなども負けず劣らず存在感を示します。ジャズ感は薄めですが、カッコ良いです。
 ラストの「Fruity High Life」は唯一のオリジナル曲。パーカッションやクラップがリズミカルで気持ち良く、多重コーラスに包まれた歌をはじめ、優しくドリーミーな雰囲気に包まれています。

 前作までにあった電波ソング(?)はなく、ボーカリストも統一されていることからアルバムの雰囲気が一貫しています。個人的に好みの作風です。

VOL.03
SWING HOLIC
 
VOL.04

2009年 4thアルバム

 本作は『東方紅魔郷』(ほぼ)オンリーのジャズアレンジアルバムです。個人的に『東方紅魔郷』楽曲が大好きということもありますが、日本語詞で歌われる楽曲がこれまでより多めだからか、個々の楽曲が引き立っていて、個人的にはSWING HOLICの「VOL.**」シリーズで一番好みです。
 東方オンリーの同人即売会、東方崇敬祭で頒布されました。

 「赤より紅い夢」をアレンジした「Swing in the Scarlet Dream」は、これまでのシリーズ作品に倣って、がやついた店内で始まる…というような演出がなされています。ご機嫌なウッドベースに、ハンドクラップを交えてノリノリです。
 続いて、「おてんば恋娘」をアレンジした名曲「冷たい湖畔のシンフォニア」。「One time! …Three time!」という掛け声に合わせて指定回数を鳴らす演奏に、冒頭から惹き込まれます。踊りたくなるような気持ちの良い演奏に、A~YAの大人びた歌唱がオシャレで魅力的です。
 「上海紅茶館 ~ Chinese Tea」をアレンジした「Shanghai Chinese Girl」は、テンポ速めで疾走感に溢れています。トランペットとサックスのユニゾンパートが爽快ですが、ソロパートもカッコ良く聴かせてくれます。
 「NEW LOCKED CITY」は「ラクトガール ~ 少女密室」のアレンジ。ベースが低音で存在感を示し、渋いトランペットにドリーミーなビブラフォンなど、夜のジャズバーが似合いそうなメロウな楽曲を展開します。
 続く「Devils’ dining」は「メイドと血の懐中時計」のボーカルアレンジ。ローファイなサウンドのリズムトラックがインパクト大ですが、キャッチーなメロディラインを艶っぽく歌うボーカルも好みです。
 「ほおずきみたいに紅い魂」をアレンジした「Mystic Flier」は、シンセサイザーの導入によってアーバンな楽曲に仕上がっています。
 そして、「U.N.オーエンは彼女なのか?」のアレンジ「The fifth man, last man (is you)」。躍動感があって賑やかなイントロから惹き込まれます。英語詞ということもあってか、A~YAの歌はやや早口気味な印象で、中毒性がありますね。そして中盤はトリッキーなリズムや目まぐるしい場面転換で魅せてくれます。
 「Crescent Moon」は「ルーネイトエルフ」のアレンジで、アコギとチェロ(?)を中心としたアコースティック感のある演奏です。オルガンが楽曲を静かに引き立てています。
 続いて名曲「Luna on Ritardando」。「月時計 ~ ルナ・ダイアル」のボーカルアレンジで、本楽曲のみSYOが歌い、かつ日本語詞です。焦がれるような歌唱をフィーチャーして、演奏は比較的静かですが、ややトリッキーな跳ねるようなリズム隊は爽快です。
 そして「亡き王女の為のセプテット」をアレンジした「My life as like the shade」。ボサノバのようなまったりムードに、トランペットとサックスの奏でる主旋律が染みます。演奏を引き立てているからか、A~YAの囁くような歌は楽器のように溶け込んでいます。
 そして最後に「Gonna Getta Way!」。オリジナル曲で、ジャズ感の薄いアッパーなダンスチューンです。A~YAのオシャレな歌声と英語詞のおかげか、時折入るサックスのおかげか、ダンスチューンと言えどアルバムの雰囲気はそこまで崩しておらず、馴染んでいる気がします。

 「冷たい湖畔のシンフォニア」と「Luna on Ritardando」という名曲をはじめ、単曲でも存在感のある楽曲が多いです。SWING HOLIC入門にどうぞ。

VOL.04
SWING HOLIC
 
VOL.05

2010年 5thアルバム

 本作は『東方花映塚』(ほぼ)オンリーのジャズアレンジアルバムです。前作同様にメインボーカルはA~YAで、Nana TakahashiとSYOがそれぞれ1曲ずつ参加しています。
 博例神社例大祭7にて、SOUND HOLIC名義の『Metallical Astronomy』と同時頒布されました。

 「花映塚 ~ Higan Retour」をアレンジした「A Night of Phantasmagoria」で幕開け。サックスやトランペット、ピアノが即興的な演奏を繰り広げ、リズム隊もスリリングです。
 「花のウィンナーワルツ」は「フラワリングナイト」のアレンジ。幻覚的なビブラフォンが鳴り響く、渋く落ち着いた演奏は、スモーキーな空間を想起させます。A~YAの大人びた歌唱も、ジャズバーが似合いそうなメロウな雰囲気です。
 「六十年目の東方裁判 ~ Fate of Sixty Years」をアレンジした「Grazin’ Bullets-Flower mix-」は、パタパタと速いテンポで繰り広げます。Nana Takahashiのハキハキした歌唱はポップス向きですが、エフェクトをかけて歌声の輪郭をぼかすことでジャズに馴染ませています(それでも若干浮き気味…)。
 続く「Vampirish Shooting World」は「東の国の眠らない夜」のインストアレンジ。賑やかになったり抑えたりと緩急をつけていますが、ドラムは終始スリリングで、魅力的なアレンジに仕上がっています。
 「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」をアレンジした「You may know “Dream”」は、A~YAの歌を引き立てたシンプルな演奏ながらも、存在感のあるドラムが結構好みだったりします。
 「Flowering Landscape」は「今昔幻想郷 ~ Flower Land」をアーバンな雰囲気にアレンジ。メロウなジャズギターをしんみり聴かせ、シンセが彩ります。
 続いて「彼岸帰航 ~ Riverside View」をアレンジした「L→R KOMACHI」。躍動感あるアップテンポなジャズで、A~YAとサックスを主軸に据えつつ、パタパタと忙しないドラムが高揚感を掻き立てます。中々に爽快な佳曲です。
 7分近い「Melancholic Doll」は、「ポイズンボディ ~ Forsaken Doll」を渋めにアレンジ。アコースティックな演奏をバックに、ハーモニカがノスタルジックな雰囲気を醸します。
 そして「風神少女」をアレンジした「瞬瞳的刹那」。SYOの儚げな声で歌われるメランコリックなメロディラインを、ドリーミーなジャズ演奏が彩ります。輪郭がぼんやりしている中で、くっきりとしたドラムの魅力も引き立ちます。
 「No-PE-No-GE」はレトロ感漂うオリジナル曲。A~YAの歌はソウルフルな感じで、渋い演奏によく合います。
 ラストの「Blue Rain in Kyoto」は「レトロスペクティブ京都」のアレンジ。サックスと鍵盤が、シティポップ的なアーバンさを持ちつつ、渋い雰囲気を醸し出します。

 個人的には花映塚曲はそこまで馴染みがないのですが、良質なアレンジが並び、聴きやすい作品です。

VOL.05
SWING HOLIC
 
VOL.06

2010年 6thアルバム

 『東方地霊殿』(ほぼ)オンリーのジャズアレンジ作品となる、SWING HOLICの第6弾。冬のコミケC79にて、SOUND HOLIC『文-BUN-』と同時頒布されました。

 「エネルギー黎明 ~ Future Dream…」をアレンジしたオープニング曲「Subterranean Dreams」。いつものシリーズより冒頭の拍手が大きい感じで、バーではなくもう少し規模の大きい場所で演じているかのような演出です。即興感の強いクールな演奏に痺れますね。
 続く「おアツいのがお好き」は「廃獄ララバイ」のアレンジ。A~YAによる冒頭のカウントが色っぽいです。ピアノやウッドベースの引き立つレトロ風味な演奏に、日本語詞の歌が乗りますが、これがミュージカルや古い映画のような印象を抱きます。
 「What Daemon Loves」は「旧地獄街道を行く」のアレンジ。SWING HOLIC初登場の3Lの歌唱は、大人な色気に満ちた魅力的なもので、ジャズ演奏によく似合います。サックスの音色も色気たっぷりで誘惑してきます。
 続いて「少女さとり ~ 3rd eye」のインストアレンジ「The Third Eye」。サックスとトランペットが賑やかに盛り上げます。ピアノが原曲踏襲の怪しげなメロディを弾きますが、テンポが速くてノリノリな感じ。中盤は即興的なサックスソロにスリリングなドラムと、とても聴きごたえがあり、そこから主旋律に戻ってくる展開に思わずガッツポーズ。
 「封じられた妖怪 ~ Lost Place」をアレンジした「Ogress Spider」は、ドリーミーなシンセや打ち込みによってモダンでアーバンな仕上がりですが、アコギがサウンドに温もりを与えます。憂いのあるSYOの優しい歌唱が、楽曲と合わさって感傷的な気分を誘います。
 「緑眼のジェラシー」をアレンジした「Green Eyed Monster」は、冒頭の入り方がジャズロックやプログレっぽい印象を抱きました。躍動感たっぷりのドラムをはじめ、程良いスピード感が気持ち良いです。サックスがメインですが、悲しいフレーズを弾くピアノや木管のアクセントが魅力的。
 「業火マントル」をアレンジした「Take Fire」は、7拍子(?)の変拍子でフックをかけてくるので、これもプログレっぽい印象を抱きます。A~YAの歌が始まると、トリッキーな楽曲はキャッチーさを帯びてきます。
 そして「ラストリモート」のアレンジ「瞼と光と恋の歌」。個人的に原曲が大好きということもありますが、メランコリックなメロディを歌う、SYOのアンニュイな歌がとても良いです。演奏は歌を引き立てつつも、跳ねるようなベースが生み出す躍動感が気持ち良い。
 「Journey of the Soul」は「死体旅行 ~ Be of good cheer!」のインストアレンジ。キーボードが幽玄な雰囲気を作りつつも、アコギが身近で温もりあるサウンドを奏でます。
 「Hey, John!」はオリジナル曲で、程良くレトロ感のある明るいワルツです。A~YAによる英語詞の歌は、楽曲と合わさってミュージカルっぽい雰囲気。
 そして最後に、「渡る者の途絶えた橋」をアレンジした「decolorize」。電子色の強いダンス楽曲なのでかなり浮いていますが、A~YAの歌やサックスによって辛うじてアルバムに馴染んでいます。リズミカルなドラムパターンや加工されたボーカルに中毒性があって、単曲としては結構好みです。

 いくつかの楽曲にジャズロック/プログレ的な感覚があり、個人的に刺さるアレンジです。また、これまでも担当してきたA~YAとSYOだけでなく、3Lのボーカルもジャズにピッタリで良い感じです。

VOL.06
SWING HOLIC
 
東方ぴあのとりお

2013年 11thアルバム

 SWING HOLIC名義では通算11作目となる本作は『東方紅魔郷』オンリーのピアノトリオアレンジです。panomanとSanokan、ゲストの事務員G、紅い流星(東京アクティブNEETs)、まらしぃ という5名のピアニストを、リズム隊のRyuichi(B)とAkihisa(Dr)が支えるピアノトリオ編成です。
 博麗神社例大祭10にて、SOUND HOLIC名義の『夢-YUME-』、『幻想★あ・ら・もーどⅡ』と同時頒布されました。

 「赤より紅い夢」をアレンジした「the Embodiment of Scarlet Devil」でアルバムの幕開け。panomanのピアノは和音も用いますが、そっけない単音パートが印象的です。
 「Midnight Bird」は「ほおずきみたいに紅い魂」と「妖魔夜行」の混合アレンジで、Sanokanがピアノを弾きます。リズム隊とともに跳ねるような演奏に始まり、そこから憂いを帯びたピアノをしんみり聴かせながら盛り上げます。終盤の盛り上がりが気持ち良い。
 続いて「ルーネイトエルフ」と「おてんば恋娘」をアレンジした「The Misty Lake」。前半は、ゲストの事務員Gによる繊細なピアノソロに浸れます。後半はベースとドラムが加わってジャズムードに。メロウに…そして徐々に楽しそうな雰囲気を醸し、ラストは激しいです。
 ここから4曲はSanokanがピアノを担当。「上海紅茶館 ~ Chinese Tea」をアレンジした「Chinese Tea Party」では、流麗ながら力強くもあるピアノを弾きます。ピアノの美しさもさることながら、リズム隊が生み出す躍動感も気持ち良くて、トリオならではの魅力を発揮しています。
 「明治十七年の上海アリス」のアレンジ「華人小娘」は、冒頭の力強さに気圧されますが、その後のノリノリな演奏に魅せられます。静と動の緩急というか、演奏にこもった感情の起伏が豊かで、聴きごたえがあります。
 「MAGiCAL GiRL」は「ヴワル魔法図書館」と「ラクトガール ~ 少女密室」の混合アレンジ。スローテンポでメロウに聴かせる、比較的リラックスムードの演奏です。
 「Jack the ludo bile」は「メイドと血の懐中時計」のアレンジ。ウッドベースソロで開幕しますが、連譜を弾くピアノパートで主導権が移ります。ピアノが美しく跳ねるように主旋律を奏で、ご機嫌なベースがノリを生み、ドラムは激しめながらもピアノを引き立てます。原曲が大好きという補正もありますが、魅力的なアレンジに仕上がっています。
 そして、panomanによる「月時計 ~ ルナ・ダイアル」アレンジ「lunar dial」。冒頭から低音が効いていて緊張感たっぷりですが、主旋律が始まると途端に落ち着きを見せ、オシャレな雰囲気に。そして時折スリリングな演奏を交えて緩急をつけます。カッコ良いです。
 ゲストの紅い流星がピアノを弾く「紅星ミゼラブル」は、「ツェペシュの幼き末裔」と「亡き王女の為のセプテット」のアレンジ曲。比較的繊細なピアノに対してドラムがパワフルで、かつテンポの速さも相まって、オシャレなのに中々のスリルがあります。ベースも気持ち良い。
 続いて、「魔法少女達の百年祭」をアレンジした「The Wizards」。Sanokanの弾くピアノは繊細で憂いに満ちているかと思えば、ダイナミックなドラムにも張り合える力強さも見せます。キャッチーなメロディも魅力的。
 ゲストの まらしぃ が弾く「Sister Flandre」は「U.N.オーエンは彼女なのか?」のアレンジ。冒頭から速弾きで魅せ、原曲の持つ狂気性を時折表出させて、常時ピアノが引き立っている気がします。
 最後はpanomanによるピアノソロ「Eastern Dream」。「紅より儚い永遠」と「紅楼 ~ Eastern Dream…」のアレンジで、ノスタルジックなメロディを一人切なく奏でます…が、途中から跳ねるように弾くので楽しそう。

 ピアニストは異なるものの、編成や、紅魔郷縛りという点で統一感があります。全体的に躍動感に満ちていて、BGMというよりも積極的に聴けるジャズ作品に仕上がっているという印象です。
 個人的にはSOUND HOLIC/SWING HOLIC通して一番のお気に入り作品です。

東方ぴあのとりお
SWING HOLIC
 
 

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