🇩🇪 Amon Düül II (アモン・デュールII)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Phallus Dei (神の鞭)

1969年 1stアルバム

 アモン・デュールIIは、西ドイツ出身のロックバンドです。アモン・デュールからプロミュージシャン志向のメンバーが分離独立するかたちで、1968年に結成しました。本家と比べると楽曲構成もしっかりとしている印象です。メンバー交代も激しかったそうですが、クリス・カラー(Gt/Vn/Vo)とジョン・ヴァインツィール(Gt)を中心に、本作にはクリスチャン・ティーレ(Vo/Vn)、レナーテ・クナウプ(Vo)、デイブ・アンダーソン(B)、ファルク・ログナー(Key)、ペーター・レオポルド(Dr)、ディーター・ザーファス(Dr)らが参加。なお本家からもメンバーがゲスト参加するなど、分離したものの友好関係にあったようです。
 そんな本作はカンの『モンスター・ムーヴィー』とともに、ドイツプログレの草分け的なアルバムと見なされているそうです。オラフ・キュブラーのプロデュース。

 20分に及ぶ表題曲「Phallus Dei」で幕開け。当初はレコードB面だったようですが、再発時にA面に変わったみたいです。実験的な演奏は神秘的で浮遊感があるかと思えば、実験的で不協和音を鳴らしたり。そして3分半くらいからテンポの速いドラムが焦燥感を煽り始め、混沌としつつもハードロック的でスリリングな演奏を繰り広げます。8分手前あたりから場面転換し、テンションを少しだけ緩めつつ、コーラスが神秘的な雰囲気を醸します。そしてまた引き締め直し、10分辺りで一区切り。後半はパーカッションを活用して原始的な雰囲気になり、どんどんテンションを上げていきます。15分辺りからパワフルな歌唱と力強い演奏で、原始ハードロックのような感じに。終盤はテンションを緩めて心地良い余韻を味わえるんですが、ベースが中々気持ち良いです。
 アルバム後半のオープニング曲は「Kanaan」。エキゾチックかつ荘厳な雰囲気でパーカッションが楽曲を盛り上げます。かと思えば手数の多いドラムが楽曲を上書きするように焦燥感を煽り立てます。緩急が極端で、スリリングな演奏は楽しいですね。「Dem Guten, Schönen, Wahren」はギターが不穏なフレーズを奏で、ファルセット気味の奇妙な歌が不気味さを増長します。そして頻繁に場面転換を行うんですが、躍動感のあるリズム隊の気持ち良さからか、ギターの幻覚的なエフェクトのせいか、いつの間にかトリップ感が生まれて呑み込まれるんです。そして「Luzifers Ghilom」は8分半に及ぶ大作。サイケデリックな感覚が強いです。謎のMCが入ったかと思えば、テンポを増して躍動感のある楽曲へ変貌。勢いあるパートはパンキッシュな感じもしますが、場面転換の多さはプログレですね。ラストは2分程の小曲「Henriette Krötenschwanz」。行進曲のような小気味良いドラムに、オペラのようなボーカルが特徴的です。

 本家アモン・デュールと比べると整然としていて聴きやすく、緩急ある楽曲構成もスリリングで面白いです。

Phallus Dei
Amon Düül II
 
Yeti (地獄!)

1970年 2ndアルバム

 アモン・デュールIIの傑作と名高い本作は、レコード時代は2枚組となる大作でした(約68分でCDだと1枚)。アルバム前半は前作同様にきちんと構築された楽曲が並び、逆に後半パートは全てインプロヴィゼーション(即興演奏)です。
 ジャケットに写る死神は、メンバーのファルク・ログナー(Key)によってデザインされたものだそうです。

 レコード時代のA面は、4曲から成る組曲「Soap Shop Rock」で幕を開けます。1曲目「Burning Sister」は躍動感のあるハードな演奏が爽快な楽曲です。パワフルに暴れ回るドラムに気持ちの良い重低音を鳴らすベース、サイケ的な陶酔感のあるリードギターが魅力的な演奏を展開。そしてサイケな演奏に男女混成のボーカルがトリップ感を加えます。カッコ良い。続く「Halluzination Guillotine」はブルージーなベースを軸にしつつ、ギターがサイケ感を強めます。終盤に不協和音のような音を立てたかと思えば、陰りのある「Gulp A Sonata」が短いながらゴシック的な世界観を展開。そしてヴァイオリンが特徴的な「Flesh-Coloured Anti-Aircraft Alarm」へ。不穏で焦燥感を煽る演奏は時折カッコ良いパートを交えてメリハリをつけます。最後に1曲目のフレーズのリプライズで、スリリングな組曲を締め括るのでした。そして3分ほどの小曲「She Came Through The Chimney」。クリーンなギターによる魅力的な演奏を軸に、ボンゴやフルートが彩りを与え、ヴァイオリンがノイズを加えます。
 レコードB面は「Archangels Thunderbird」で開幕。リズミカルなドラムに、ヘヴィなギターとベースが原始ハードロック的な演奏を繰り広げます。終盤は目の覚めるような轟音が襲います。続く「Cerberus」はカッコ良いインストゥルメンタル。アコースティック楽器を用いた音色はフォーキーながらも、緊張感に溢れるスリリングな演奏バトルを展開。終盤は電気楽器に持ち替えて、更にスリルを増します。「The Return Of Rübezahl」は短いインスト曲です。どことなくエキゾチックな感じがするハードな演奏を繰り広げます。「Eye-Shaking King」は引きずるようなヘヴィなサウンドですが、重低音が効いていて不思議と心地良さもあります。そして強烈なエフェクトをかけたボーカルが楽器のように登場。インパクトがあります。「Pale Gallery」はパーカッシブで高揚感を煽るドラムを軸に、電子的なノイズを唸らせてトリップ感を誘います。

 レコード時代だと2枚目に突入。ここからはインプロヴィゼーションパートへと変わります。まずはC面全てを占める表題曲「Yeti (Improvisation)」。18分に及ぶ即興演奏です。強烈なエフェクトをかけたサウンドは、ときに不快なノイズを放ち、ときに神秘的な感覚を誘います。冒頭は靄のような演奏ですが、3分辺りからつんざくようなギターとアグレッシブなパーカッションが場面転換を試みます。よく動き回るベースも加わって、躍動感に溢れるスリリングな演奏バトルを展開。6分辺りからテンポは落ち着いて、ボーカルも加わります。心地良い演奏にゆったり揺られているといつの間にか折返しも過ぎ、10分過ぎから再びテンションを高めていきます。ベースがリードするゆったりパートに突入したのち、実験的でサイケデリックな演奏を繰り広げます。冒頭こそ取っつきにくい空気がありますが、途中からは魅力的な演奏によって世界観にのめり込めます。
 最後にレコードでいうD面です。「Yeti Talks To Yogi (Improvisation)」は陶酔感のあるサイケデリックな演奏を繰り広げます。途中からテンポの速いドラムが焦燥感を掻き立て、心地良い轟音ノイズに呑み込まれます。ラスト曲は9分に及ぶ「Sandoz In The Rain (Improvisation)」。アコースティックに始まり、エキゾチックな雰囲気を醸し出します。フルートが良い味を出していますね。

 前半はキャッチーなハードロック的な楽曲が並び、後半パートも即興の割には完成度が高く、聴きごたえのある作品です。

Yeti
Amon Düül II
 
 

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