🇬🇧 Camel (キャメル)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

Mirage (ミラージュ(蜃気楼))

1974年 2ndアルバム

 キャメルはイングランド出身のプログレバンドです。アンドリュー・ラティマー(Gt/Fl/Vo)、ダグ・ファーガソン(B)、アンディ・ウォード(Dr)の3名でまずブリューというブルースロックバンドを結成。その後ブリューのメンバーは、既に知名度のあったピーター・バーデンス(Key/Vo)にコンタクトを取り意気投合、この4人で新バンド キャメルを1971年に結成しました。1973年に1st『キャメル・ファースト・アルバム』を発表、その後レーベルを移籍して本作のリリースに至ります。
 プロデューサーにはキャラヴァン等を手掛けたデヴィッド・ヒッチコックを招いています。ジャケットはタバコの銘柄キャメルのパロディです。

 「Freefall」がいきなりカッコ良いんです。スペイシーで重厚な鍵盤で幕を開けるとベースが一定のヘヴィなリズムを刻み、鋭利なギターが炸裂。ピーターの歌が始まると少し気が抜ける感じもしますが、緊迫感のあるハードな演奏はとてもスリリング。グルーヴ感のあるベースがカッコ良い。後半は緊張を保ちつつもメロディアスな演奏を聴かせてくれます。続く「Supertwister」はインストゥルメンタル。叙情的なイントロでゆったりとした雰囲気を出してきますが、その後の展開はテンポも速いしリズムチェンジも多くて忙しいですね。中盤はアンドリューのフルートが優しく癒やしてくれるスローで心地良い楽曲になりますが、ラストに再加速してスリリングな演奏を展開します。そして「The White Rider」は9分超の楽曲で、3パートから成る組曲です。寂寥感のある演奏、一転して歓声の中行進曲のような賑やかな演奏を繰り広げ、そして哀愁たっぷりの渋い演奏へと忙しく場面転換。僅かに入る歌も渋いです。4分手前から急加速して、バタバタと手数の多いスリリングなドラムの上でメロディアスな演奏を好き勝手に繰り広げる演奏バトルへ突入。この部分もカッコ良いですね。5分40秒くらいからテンポダウンして歌メロパートへ。ラスト2分はヘヴィで混沌としたサイケデリックな演奏を繰り広げて終わります。
 レコード時代のB面、アルバム後半はインストナンバー「Earthrise」で幕開け。メロディアスですが、アンディの躍動感あるドラムも印象的です。中盤からは加速し、スリリングな演奏で駆け抜けます。焦燥感を煽るリズム隊の上でキーボードがビヨーンビヨーンと音を鳴らし、その後はギターソロへ。ダグのベースもかなり暴れ回っています。ラストはメロディアスな演奏を聴かせ終了。そしてラスト曲「Lady Fantasy」は3部から成る組曲で、本作最長の13分弱。イントロは、キーボードが際立つ以外はハードロックのようなヘヴィな演奏を展開。かと思えば急にメロウで哀愁漂う雰囲気になり歌を聴かせます。4分手前から加速して、緊張感漂う演奏バトルが開幕。1分半ほどスリリングな時間を過ごすと演奏は落ち着き、哀愁たっぷりのメロディアスな演奏へ。ゆったりとした時間が流れて余韻を楽しませると、8分過ぎから再び歌メロが始まります。その後はハードロッキンなゴリゴリとした演奏をしばらく聴かせたあと、最終盤は哀愁のメロディで締め括ります。

 メロディの良さもさることながら、ハードでスリリングな演奏が際立っていてカッコ良いです。歌メロパートは少なく、フュージョン的な作品として楽しめます。

Mirage
Camel
 
The Snow Goose (スノー・グース)

1975年 3rdアルバム

 本作はポール・ギャリコの短編小説『スノーグース』を題材としたコンセプトアルバムです。元々は長編の歌詞も作っていたそうですがポール・ギャリコ側の反対に遭い、権利問題から歌詞を破棄することになり、タイトルにも「Music Inspired By」が後付けされました。そんな経緯もあり本作は全編インストゥルメンタルですが、美しいメロディを堪能できる傑作に仕上がっています。プロデューサーは前作に引き続きデヴィッド・ヒッチコック、メンバーも前作と同じ顔ぶれです。

 本作は『スノーグース』のストーリーを知っているとより楽しめるでしょう。ときは1930年代、醜い容姿のため人目を避けひっそりと暮らす心優しい青年ラヤダーの元に、傷ついた白雁を抱えた少女フリーザが訪れます。彼らは何年にも渡り交流を深めますが、第二次大戦が勃発。ラヤダーは傷ついた兵士を介抱するために戦場へ赴き、白雁も同行。そしてラヤダーの死を知らせるためフリーザのもとに白雁だけが戻り、フリーザはラヤダーを亡くしてはじめて自分の恋心に気づくという悲しいストーリーです。

 アルバムは「The Great Marsh」で静かに幕開け。鳥のさえずりや虫の鳴き声が遠くに聞こえ、落ち着いた演奏がフェードイン。シンフォニックな演奏が優しい世界観を作り出し、そのまま続くのは突出した名曲「Rhayader」。フルートとピアノが織り成す心が洗われるような美しいメロディで、繊細でどこか切なさを帯びつつも、リズム隊が加わると躍動感が加わって不思議と可愛らしさが感じられます。中盤はロックバンドらしくギター主導のメロディや演奏バトル風のスリリングな側面も見せてくれますが、序盤と終盤のフルートが奏でる主旋律は庇護欲を掻き立てるような愛らしさがあり、メロディだけで可愛いと思える素敵な名曲です。そのまま続く「Rhayader Goes To Town」は緊張感漂う演奏を展開。速弾きでトリルを繰り返すキーボードに、バタバタと忙しないリズム隊。中盤からはテンポを落として、ブルージーなギターを中心に渋い演奏をじっくりと聴かせます。ここから短い楽曲が続きますが、「Sanctuary」ではアコギを中心に幻想的で叙情的な音を奏で、余韻が心地良く響き渡ります。「Fritha」ではアコギとスペイシーな鍵盤が牧歌的でのどかな雰囲気を作り出します。そして表題曲「The Snow Goose」はメロウなギターを中心に、落ち着いているけどどこか憂いを感じさせる心地良いメロディで癒やしてくれます。後半はギターとオルガンで盛り上げて泣かせにくるんです。「Friendship」で少し雰囲気を変えて木管が主導。幻想的なのですが、どこか陰のある感じです。そしてドラムが盛り上げて「Migration」へ。歌詞はないもののアンドリュー・ラティマーの歌が入る唯一の楽曲です。そしてフェードアウトしていき、「Rhayader Alone」がエレピ等を用いて静かな空間を作り出します。
 演奏は後半パートに突入。「Flight Of The Snow Goose」はシンセサイザーがスペイシーな音を奏でながら緊張を高めていきます。そして高まったところでメロディアスな主旋律がはじまり、胸に染みるんです。アグレッシブなリズム隊もスリリングに楽曲を盛り上げます。後半のハイライトでしょう。「Preparation」はフルートの優しい音色が目立ちますが、中盤から無機質で冷たい雰囲気へと変わっていきます。エコーがかったコーラスが寒々しい雰囲気。そして「Dunkirk」になると力強いベースなどダークな気配が支配します。ダンケルク撤退という戦争パートがテーマになっています。どんどん緊迫して不穏に、スリリングになっていきます。そして終盤、高まった緊張を一気に解き放つかのように攻撃的な演奏で暴れ回ります。そして「Epitaph」。暗く冷たい演奏に、鐘の音が無情に響き渡る悲しい1曲です。そして「Fritha Alone」では悲しみに満ちたピアノが切ない音色で涙を誘います。辛い…。「La Princesse Perdue」はストリングスとシンセが切なさを帯びつつも晴れやかでスリリングな演奏を繰り広げます。疾走パートはジェネシスの「…In That Quiet Earth」にも似た雰囲気ですが、こちらの方が先ですね。ラストのメロディアスで叙情的なパートも染み入ります。ラストの「The Great Marsh」で静かに余韻を聴かせて物語を終えます。

 叙情的な楽曲が多いのですが、中でも「Rhayader」が出色の出来で、可憐で可愛らしい楽曲です。アルバムトータルで見ても、聴いた中ではキャメルで最も好きな作品です。

The Snow Goose: Re-Recorded Edition
(2013 Version)
Camel
The Snow Goose (Expanded Edition)
Camel
 
Moonmadness (ムーン・マッドネス「月夜の幻想曲(ファンタジア)」)

1976年 4thアルバム

 前作『スノー・グース』が大絶賛され、バンド人気が勢いづく中、その勢いに乗って3週間で楽曲を書き上げたそうです。そんな本作もキャメルの中では人気の高い作品です。
 本作はアンドリュー・ラティマー(Gt/Fl/Vo)、ピーター・バーデンス(Key/Vo)、ダグ・ファーガソン(B)、アンディ・ウォード(Dr)のオリジナルラインナップで制作された最後の作品で、プロデューサーはラット・デイヴィスに交代しています。幻想的なジャケットアートが素敵ですが、ジャケットの世界観に似つかわしいファンタジックな楽曲が展開されます。

 2分間のインストゥルメンタル「Aristillus」で幕開け。ピーターの色鮮やかな鍵盤を中心に、幻想的なサウンドで高揚感を煽ります。続いて7分に渡る「Song Within A Song」はメロディアスな楽曲。ゆったりとしたメロウなサウンドに、アンドリューのフルートが感傷的な気分を誘います。落ち着いた歌声はダグによるもの。中盤に何度かリズムチェンジし、徐々にテンションを上げていきます。幻想的な雰囲気は保ちながらも、終盤はスリリングな演奏を繰り広げています。「Chord Change」はインストゥルメンタルで、7拍子の緊迫した演奏で幕開け。テンション高い演奏バトルで魅せてくれます。2分前後くらいから演奏は落ち着いてまったりムードになり、メロディアスなギターをじっくりと聴かせてくれます。後半はオルガンにバトンを渡し、引き続きメロウな音で癒やしますが、終盤は再びテンポアップし、スリリングに締め括ります。「Spirit Of The Water」はピーターがボーカルを担当。ピアノ主体の落ち着いたサウンドに、エフェクトを強めにかけた歌声が幻想的な広がりを見せます。
 アルバムは後半に突入。「Another Night」はアンドリューがマイクを取ります。イントロから緊張感のあるギターを展開、そしてハードで少し陰のある演奏へと変わります。幻想的な本作においてはやや異色の、ハードロック色の強い楽曲ですが、後半になるとハードな演奏の中に彼ららしいメロディの良さも表れてきます。「Air Born」は哀愁のフルートで幕開け。ピアノも悲しげで美しいです。そして渋くメロディアスなフレーズ、アンドリューの暗い歌声がメランコリックな雰囲気。そしてラストの「Lunar Sea」は9分超のインストゥルメンタルです。この名前を聞くと某ヴィジュアル系が頭に浮かぶのはきっと私だけではないはず(歳がバレる笑)。ひんやりとしたシンセに始まり、手数の多いドラムやメロディアスなギターが美しくもスリリングな演奏で魅せてくれます。中盤はシンセがスペイシーな音を出してひと息。そして再びテンション高い演奏バトルを繰り広げます。これが恐ろしく緊張感に満ちていてカッコ良いんです。

 幻想的でメロディアスな楽曲が多いのは勿論、ただメロディアスなだけでなく、演奏バトルを展開するスリリングな「Chord Change」や「Lunar Sea」などメリハリのある展開が魅力的です。

 本作の後、諸問題からダグを解雇し、元キャラヴァンのリチャード・シンクレア(B)が加入します。その後一時的に元キャラヴァンメンバー数名が加わって、キャメルオリジナルメンバーの数を上回るという出来事もあったそうです。

Moonmadness (Deluxe Edition)
Camel
Moonmadness
Camel
 
 

関連アーティスト

 リチャード・シンクレア(B)をはじめ、1970年代末にはメンバーの多くが一時的にキャメルへ加入。

 
 
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