🇬🇧 Cocteau Twins (コクトー・ツインズ)

スタジオ盤②

フォンタナ・レコード時代

Four-Calendar Café (フォー・カレンダー・カフェ)

1993年 7thアルバム

 米国での配給は『ブルー・ベル・ノウル』からメジャーのキャピトルでしたが、英国やその他地域での配給においてもメジャーレーベルのフォンタナ・レコードと契約を結びます。なおロビン・ガスリーの薬物依存は収まらず、本作録音中にエリザベス・フレイザーが神経衰弱を起こし、本作と前後してガスリーとフレイザーは離婚することになります。
 さて本作ですが、天上界ではなくリゾートでくつろぐようなまったりムードで、アンビエントな風合いです。ダークさや激しさは全く無くなっています。歌詞がはっきり聞き取れるという変化も賛否両論だったようです(ウィスパーボイスの多用で、相変わらず聞き取りづらいように思いますが)。なお、児童書『ミッケ!』シリーズで知られる写真家ウォルター・ウィックがジャケットアートを担当しました。

 「Know Who You Are At Every Age」はハッキリとしたドラムが楽曲を支えます。ギターや、囁くようなフレイザーの歌声は相変わらずエフェクトがかっていますが、そこまで過剰ではありません。そのため神秘性は無くなった感じがしますが、リラックスして聴けます。「Evangeline」はゆったりとしていて優しく、バカンスでくつろぎながら子守唄に癒やされているようなイメージ。シングルカットされてヒットしたようです。続く「Bluebeard」もイントロからリラックスムード。丸くなった優しい演奏で癒やします。メロディアスな歌はウィスパーボイスによるコーラスを重ねて、フワフワと浮遊感に満ちています。「Theft, And Wandering Around Lost」は少しダークな雰囲気が漂い、かつての名残を薄っすら感じさせますが、でも初期のような絶望に突き落とす感じは全く無いです。少しひんやりとした暗い空気の中で、サイモン・レイモンドのベースが響きます。ファルセットを駆使した歌は耳に心地良い。「Oil Of Angels」はアンビエントっぽい落ち着いた楽曲です。相変わらずエコーのようなエフェクトがかったサウンドですが、かなり隙間があって割とシンプルな印象で、フレイザーの歌を引き立てています。そして「Squeeze-Wax」は少し躍動感のあるポップな演奏に、囁くような歌がそよ風のようにそっと撫でます。心地良い楽曲です。「My Truth」はゆったりとした楽曲で、次曲「Essence」と合わせて、ぼんやりした演奏や歌はアンビエントのような癒やし系です。「Summerhead」は、少し陰があるものの、ポップで躍動感ある演奏でメリハリをつけます。そこに乗るウィスパーボイスはそよ風のよう。最後は「Pur」。序盤は掴みどころのない靄のような感じですが、中盤から一気に演奏が分厚くドラマチックになります。ガスリーのギターもノイジーな音を鳴らしたりして、最後の最後に聴きどころが来た感じです。

 丸くなって優しく心地良いのですが、ダークさは消え去り、聴いていてハッとする瞬間はあまり訪れません。BGMには向いていますが、フックに乏しい印象です。

Four-Calendar Café
Cocteau Twins
 
Milk & Kisses (ミルク&キス)

1996年 8thアルバム

 ロビン・ガスリーとエリザベス・フレイザーの夫婦関係は1993年に解消しましたが、音楽におけるパートナー関係は続き、サイモン・レイモンドも含めコクトー・ツインズの活動は1997年まで続きます。本作リリース後も次作レコーディングは進めていたようですが、突如解散を宣言し、それらマテリアルは日の目を見ることはありませんでした。解散に伴い、本作がコクトー・ツインズのラストアルバムとなりました。

 ラストシングルである「Violaine」で本作の幕を開けます。演奏は気だるげで少し陰りがありますが、アンニュイな歌は多重録音で異なるメロディラインを重ね、幻覚的かつ心地良さを感じられます。間奏のガスリーのギターも彼ららしいですね。中々魅力的な楽曲です。「Serpentskirt」はイントロから深みのあるギターとドラムが重厚で、ひんやりと冷たさを感じさせます。ファルセットを活用した歌も神秘的で、かつてのように気高い印象。終盤には少し救いのような光が射し込んできます。なお香港盤ではフェイ・ウォンとデュエットしているそうです。優しく落ち着いた「Tishbite」はシングル曲で、ゆったりとリラックスした演奏と柔らかい歌で癒やしてくれます。ファルセットと地声の歌を織り重ねて心地良い浮遊感。「Half-Gifts」は「パパッ パパッ パ」と反復するシンセが耳に残りますね。演奏はリラックスムードですが、歌は癒やしというより神聖で少し近寄りがたさがあります。「Calfskin Smack」はレゲエやヒップホップ的なリズムトラックに、鍵盤と舞うような歌声でそよ風のよう。終盤のカラフルでメロディアスな間奏はドリーミーで気持ち良いです。「Rilkean Heart」は詩人ライナー・マリア・リルケを敬愛していたジェフ・バックリーへのオマージュです。リラックスムードの演奏にフワフワとした歌が浮遊感を生み出します。「Ups」は明るくポップな雰囲気ですが、巻き舌気味の歌はオペラのような格式高さもあります。でも巻き舌を多用しすぎて、だんだんギャグみたいに聴こえてくるという。笑 続いて「Eperdu」は後にサラ・ブライトマンもカバーした1曲。ガスリーのギターは心地良くも幻覚的で、そこにファルセットを多用した歌を重ねて神秘的なオーラを放ちます。「Treasure Hiding」は前半アンビエント風というかBGMとして聞き流してしまいますが、後半が煌めく夜空のように美しいんです。カラフルに彩られたサウンドが心地良く癒やしてくれます。そして最終曲「Seekers Who Are Lovers」。地声で憂いのあるメロディを歌い、エフェクトや重ねたサウンドにより幻覚的な魅力を放ちます。終盤に向かうにつれてダークさや緊張が漂います。

 序盤に少しダークさが戻って印象づけるものの、中盤からはフワフワとしてBGMのような楽曲が続きます。ロックというより、アンビエントやイージーリスニングの方が合いそうですね。

Milk & Kisses
Cocteau Twins
 
 

編集盤

The Pink Opaque (ザ・ピンク・オーペイク)

1986年

 『トレジャー~神々が愛した女たち』と『ヴィクトリアランド』の合間に発売されたコンピレーションアルバムで、所属する4ADレーベルで初めてCD形式でリリースされた作品です。
 コクトー・ツインズのベスト盤はこの後もいくつか出ていて、私は『ララバイズ・トゥ・ヴァイオレイン:1982-1990 VOL.1』も聴いたのですが、こちらの方が少数精鋭というか優れた名曲が厳選されている印象です。1982〜1985年の間に発表されたシングルやEP、アルバム曲よりセレクトされています。CDは入手困難なようで比較的高値がついていますが、Spotifyで全曲聴けるのは嬉しいですね。

 「The Spangle Maker」はサイモン・レイモンドの弾くどんより暗いベースと、ドラムマシンを用いて淡々と刻むリズムが暗鬱な空気を作ります。演奏が比較的大人しめな分、エリザベス・フレイザーの歌を堪能することができる楽曲で、メロディアスな歌は感傷的な気分にさせます。終盤は音が隙間なく埋め尽くして楽曲を盛り上げます。「Millimillenary」も歌メロの良さが引き立っています。演奏はゆったりとして、ダークさは少なく穏やかで優しい印象。前曲に続いてフレイザーのメランコリックな歌が引き立っており、歌メロの良さに浸ることができます。「Wax And Wane (Remixed)」は『ガーランド』より。ウィル・ヘッジーのどんよりしたベースが暗鬱なムードを助長し、ロビン・ガスリーによる歪んで輪郭のぼやけたギターが楽曲全体に靄をかけるかのよう。フレイザーの歌は時折引きつるような感じで、不気味な雰囲気に満ちています。続く「Hitherto」はゴシックロックの名曲です。イントロから陰のあるメロディを奏で、歌は焦がれるような、悲しみを感じさせます。聴いていると込み上げてくるものがあります。ズシンと響く強烈なドラムも、楽曲の持つマイナスの感情を強く引き立たせる効果がありそうです。「Pearly-Dewdrops’ Drops (7″ Version)」は人気の高い楽曲です。底なしの闇を感じさせる前曲とは違って、煌めく夜空を眺めるかのように澄み切って美しい楽曲です。ゆったり穏やかな演奏は勿論、コーラスを重ねて神秘的な雰囲気をもたらすフレイザーの歌が魅力的です。「From The Flagstones」はエコー処理をしたドラムが力強く響くものの、全体的には輪郭のはっきりしない演奏が、ゆったりと水の中を漂うかのような心地良さを与えます。透明感のある音色や、幾重にも重ねた歌が万華鏡のように幻想的な世界を見せてくれます。続いて、シングルヒットした「Aikea-Guinea」は本作のハイライト。オリジナルアルバムに収録しなかったのが不思議なくらいの、コクトー・ツインズ屈指の名曲です。フレイザーはファルセットを用いて昇天するかのような心地良いコーラスを聴かせつつ、時折色気のある地声を交えて緩急をつけます。あまりに美しい歌唱に魅せられます。なお「Aikea-Guinea」とは「貝殻」を意味するスコットランドの口語表現だそうです。「Lorelei」は『トレジャー〜神々が愛した女たち』より。ファルセットを用いてふわっと浮遊感のある歌は「天使の歌声」と称されるだけあってとても心地良いです。中盤は地声でギャップも見せます。神秘的で心地良い前曲とは変わって「Pepper-Tree」では再びどんより暗鬱なムードに。そこまで過剰なエフェクトはかけていませんが、楽曲に漂う深い深い悲しみの空気に押し潰されそうになります。最後に時計の音のようなカチッカチッと不気味な音を響かせると、突如轟音で「Musette And Drums」が始まります。前曲からの流れがとても良いですね。隙間なく塗り潰す歪んだギター、そして強い緊張感を帯びた歌によって、救いのない絶望感が漂います。緊迫したスリリングな楽曲はひたすらダークです。

 コクトー・ツインズはシングル曲をオリジナルアルバムに起用しないことがほとんどですが、名曲がいくつもあるんですよね。そんな名曲群をうまくセレクトして、10曲・40分という丁度良いボリュームに纏めた本作は良質なベスト盤です。

The Pink Opaque
Cocteau Twins
 
Lullabies To Violaine, Vol 1: Singles And Extended Plays 1982-1990 (ララバイズ・トゥ・ヴァイオレイン:1982-1990 VOL.1)

2006年

 コクトー・ツインズは、1st EP『Lullabies』からラストシングル『Violaine』までを網羅した4枚組Boxセット『Lullabies To Violaine: Singles And Extended Plays 1982–1996』を1万プレス限定で2005年にリリース。その翌年に、このBoxセットの前半2枚から成る本作VOL.1と、後半2枚から成るVOL.2をそれぞれリリースします。シングルはオリジナルアルバムに起用しない、または別バージョンで収録することの多いコクトー・ツインズ。本作はコクトー・ツインズが特に輝いていた4AD時代のEP/シングルを収めており、オリジナルアルバムでは聞けない隠れ名曲も多いです。
 私はVOL.1は購入できたものの、VOL.2は注文後数ヶ月待った挙げ句に在庫切れ連絡が来てしまい(一時的なものだったようですが)、その間に興味を失ったこともあって結局VOL.1しか持っていません。笑 SpotifyでもVOL.1のみが配信されているようですね。
 
 
 まずはDisc1のレビューです。ロビン・ガスリー(Gt)、ウィル・ヘッジー(B)、エリザベス・フレイザー(Vo)の3人によるコクトー・ツインズ1st EP『Lullabies』。「Feathers-Oar-Blades」はヒリヒリとした緊張感に満ちたサウンドを放つ、疾走感のあるゴシックロックの名曲です。ドラムマシンによるバスドラム連打に、グルーヴ感溢れるベースがカッコ良いですね。またフレイザーのあどけなさの残る地声での歌唱もとりわけ魅力的なんです。続く「Alas Dies Laughing」はホラー映画のBGMのような、ダークでおどろおどろしい雰囲気が漂います。ガスリーのノイジーかつ音像のぼやけたギターが場の緊張を高め、執拗に反復する歌もどこか狂気じみています。「It’s All But An Ark Lark」は8分に渡る大作。1分ほどノイズを実験的に鳴らした後、不穏でピリついた空気の中でヒステリックな歌唱を披露。時折引きつったように震えた声を出し、憑依しているかのような不気味さを見せますが、アンニュイなアルト声に魅了されるんです。後半はダイナミズムのあるリズム隊にキリキリとノイジーなギター、複雑に重ねたコーラスが合わさって独特のトリップ感を生みます。
 続いてEP『Peppermint Pig』より名曲「Peppermint Pig (7″ Version)」。リズムはダンサブルでベースもやけにマッチョですが、ギターが奏でる音色はダークさ満点。暗く冷たい演奏に合わせて、歌メロも陰りを強く感じさせますが、時折ふっとアンニュイになる瞬間に色気のような魅力を感じます。「Laughlines」も救いのない闇が全体を覆っていますね。緊張の張り詰めたダークな3拍子に乗せて、怒りをぶつけるような歌唱が焦燥感を掻き立てます。「Hazel」はイントロからドラムマシンによるドラムの雨あられ、そして怒り任せにまくし立てるような歌で緊張Maxに。ダークで殺気のある楽曲が並ぶスリリングなEPでした。
 ここからは、ヘッジーが脱退して2名体制となった時期のEP『Sunburst & Snowblind』。ドリーミーだ多幸感溢れる名曲「Sugar Hiccup (12″ Version)」は『ヘッド・オーヴァー・ヒールズ』収録バージョンと比べるとサビ後のコーラスが異なっています。口ずさみたくなるようなキャッチーでメロディアスな歌に、空間を隙間なく埋め尽くすサウンドによって幻想的な心地良さに包まれます。「From The Flagstones」は星空を眺めるかのように、澄み切ってキラキラと煌めくような演奏と優しい歌がとても心地良いですね。多幸感のある楽曲ですが、力強く響くドラムやベースが楽曲を引き締めます。続く「Hitherto」はイントロからどんよりとしてダーク。フレイザーの歌はメランコリックかつ切迫した感じで、悲壮感に押し潰されそうな、感傷的な気分にさせます。「Because Of Whirl-Jack」は疾走感のある楽曲で、この時期には既に珍しいかも。ほぼイントロ無しで歌が始まり、陰のあるメロディを歌います。ダークな楽曲にアクセントとして加わる鍵盤が儚さを加えています。意外とグルーヴィですね。
 そしてサイモン・レイモンド(B)加入後のEP『The Spangle Maker』より。「The Spangle Maker」はベースがどんよりと暗い空気を作り出します。大人しい演奏ゆえにメランコリックな歌が引き立つ1曲です。続いて「Pearly-Dewdrops’ Drops (Alternate Version)」は、煌めく夜空のようにドリーミーな楽曲です。穏やかで透明感のある演奏に重ねたコーラスが美しくて、ゆったりと癒やしてくれます。「Pepper-Tree」はひんやりと冷たい空気が流れ、暗鬱なムードが漂います。そこまで派手さもなければ大きな盛り上がりもありませんが、どうしようもない深い悲しみを感じる1曲です。
 ここからはEP『Aikea-Guinea』へ。「Aikea-Guinea (Alternate Version)」は指折りの名曲です。多重録音による歌メロが天上界へと誘うように心地良く、ファルセットに時折地声を織り交ぜてとても魅力的です。演奏と合わせて、万華鏡のようにキラキラと美しい1曲です。「Kookaburra」は巻き舌を多用した歌唱が独特ですね。キラキラとしてぼんやり輝く演奏が心地良いです。「Quisquose」はアンビエントのような、メロウで深みのある演奏に浸れます。フレイザーの歌は、何かが憑いているかのような狂気じみた地声と、天女のような美しく透き通ったファルセットを使い分けて、独特の神秘性を放ちます。「Rococo」はインストゥルメンタル。開幕40秒ほど静寂を保ったあと、レイモンドのベースとドラムマシンが力強いリズムを刻みます。全体を覆う暗い空気とピリピリとした緊張感が、心をざわめかせます。
 
 
 ここからDisc2のレビューです。時期的には『ヴィクトリアランド』直前〜『ヘブン・オア・ラスベガス』辺りですね。
 まずはEP『Tiny Dynamine』より「Pink Orange Red」。憂いに満ちた深みのあるギターに、エコーをかけたボーカルが加わり、神秘的で気高い雰囲気を放ちます。ゆったりとしてメロディアスです。「Ribbed And Veined」はインストゥルメンタル。打ち込みが若干浮いていますが、全体的には霧に包まれたような、神秘的で薄暗い雰囲気に満ちています。「Plain Tiger」はガスリーのギターが寂寥感に満ちていますが、フレイザーの優しいウィスパーボイスが救いですね。途中から地声による歌を幾重にも重ねて力強く存在感を見せますが、これがまた神話の世界かのようです。ここまで北極圏のような寒々とした神秘的な楽曲が並びますが、続く「Sultitan Itan」は少しだけ温もりを取り戻します。多重録音による歌がメインで、リズミカルな演奏が歌を引き立てています。
 続いてEP『Echoes In A Shallow Bay』より、まずは「Great Spangled Fritillary」。リズミカルな演奏と不思議な歌は、どこかの民族音楽のようなプリミティブな感じがします。「Melonella」はイントロもなく歌で始まりますが、メロディアスで陰りのある歌メロに惹きつけられます。鍵盤やギターを始めとした演奏はそこまで激しさはありませんが、途中感情的に歌う場面は緊張が高まりスリリングです。中々の良曲です。「Pale Clouded White」はトーンの低い歌をはじめとして強い緊張が張り詰めますが、グワングワンと揺さぶるようなトリップ感もあります。ダークサイケかつ神秘性も保った、初期楽曲のようなスリリングな楽曲です。そして「Eggs And Their Shells」はエフェクトをかけたギターを何重にも重ねて目眩のような幻覚を生み出し、優しい歌メロの心地良さよりも酔うような気持ち悪さが勝ります。
 そしてEP『Love’s Easy Tears』へ。表題曲「Love’s Easy Tears」は明るく落ち着いたトーンで、ゆったりとしています。歌声が遠くから聴こえ、音像のぼやけたギターが前面に出て全体を分厚く包み込みます。「Those Eyes, That Mouth」はメロディアスな歌を包む演奏が多幸感に溢れています。ギターがとてもカラフルな上に、重ねたコーラスも美しく、極上の世界を味わえます。続く「Sigh’s Smell Of Farewell」も、幻想的でありながら牧歌的な優しさも感じられ、心地良い1曲です。そして「Orange Appled」。ぼんやりとしたエコー処理は相変わらずですが、取っつきやすさも感じられるポップでメロディアスな楽曲です。
 最後にシングル『Iceblink Luck』。「Iceblink Luck」は『ヘブン・オア・ラスベガス』にも収録されました。カラフルなイントロから惹きつけるこの楽曲はかなりポップな仕上がりで、神秘的かつ人を寄せ付けない気高さを持っていたコクトー・ツインズがだいぶ親しみやすくなったと思います。心地の良い名曲です。終盤のダイナミックな演奏も魅力的。「Mizake The Mizan」はゆったりとリラックスした雰囲気の1曲。ファルセットによる歌を重ねて浮遊感に溢れますが、レイモンドのベースが引き締めてくれます。最後に「Watchlar」。ピコピコとしてテクノ的な、コクトー・ツインズらしからぬ楽曲です。歌は相変わらず浮遊感に溢れていますが、ダンスミュージックへのアプローチに少し違和感があります。
 
 
 曲数が多いのですが、思わぬ名曲もあったりで侮れません。特にDisc1の楽曲群が好みでこちらばかり聴いています(逆にDisc2はほとんど聴いていない…)。年代順に並んだ楽曲は「記録」としても価値がありますね。

Lullabies To Violaine, Vol 1: Singles And Extended Plays 1982-1990
Cocteau Twins
 
 
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