🇨🇳 假假條 (JaJaTao)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

時代在召喚 (The Rite Of Spring)

2016年 1stアルバム

 假假條は、中国出身のアヴァンギャルドなロックバンドです。米国のバークリー音楽大学に留学し帰国した劉與操を中心に、2013年に北京で結成されました。
 本作はグランジ/オルタナメタルを軸に、道教音楽や中国の葬儀音楽などの要素を織り交ぜているのだそうです。ノイズまみれの凶悪な楽曲と、退廃的でダウナーな楽曲を繰り広げて緩急ある展開です。レディオヘッドの『パブロ・ハニー』を手掛けたショーン・スレイドをプロデューサーに迎えているそうです。

 オープニング曲は「湘靈鼓瑟 (Renaissance Empress 1991)」。つんざくようなノイズで強烈な幕開けです。キンキンとしつつも重低音も唸らせますが、グランジを更にメタリックにしたような印象。そこにデス声を用いて呻くような、強烈な歌を乗せます。凄まじいインパクトです。「犬決犬 (Kim’s Doggy Execution)」は民族楽器のような音色にエキゾチックな感覚がありますが、そこから重低音を響かせるヘヴィな演奏を展開。多重に重ねてエフェクトをかけたボーカルは落ち着いた良い声で、どことなくデヴィッド・ボウイを想起させます。終盤にはヒステリックに呻くように感情が爆発。続くタイトル曲「時代在召喚 (Spring)」。ノイズによる不協和音から、グランジーな楽曲を繰り広げます。不穏と絶望を増幅させたニルヴァーナといった印象を抱きました。強烈な呻き声を上げるボーカルも、凄まじいインパクトを放ちます。カッコ良くてスリリングな良曲です。一転して「羅生門工廠 (Rashomon Sq)」は暗く退廃的な雰囲気の楽曲です。霧に包まれたかのようなぼんやりとした音像に、アコギが陰りのあるフレーズでダウナーな気分にさせます。寂寥感があって切ないです。「年 (Year)」は再びノイズ要素を増します。激しく炸裂するドラムに唸るようなボーカルで、怒りが渦巻くような印象。「冇頌 (Ode To “MAO”)」では再び、暗く退廃的な雰囲気。哀愁漂う歌のバックでチェロ(?)の音色が更に哀愁を引き立てます。絶望感が漂いますが、メロディの美しさが光ります。「愛人同志 (Comrade Lover)」はノイズまみれの激しいイントロを経て、歌が始まると演奏は一気にシンプルに。そしてデス声で喚くとノイジーな演奏が表出します。静と動の対比が強烈な1曲です。2分強の「見過的大爺 (The Way to Build)」は、躍動感たっぷりのグランジーな演奏に乗せて、音が割れるほどの強烈なシャウトで埋め尽くします。ノリの良さと不快なノイズが入り乱れた、凄まじいパワーに溢れるスリリングな楽曲です。そして「鋼・烝 (Iron Mom)」はスローテンポな楽曲です。歪んだギターやシンバルを炸裂させながら、ダウナーに展開。落ち着いた声によるメランコリックな歌に浸っていると、途中から泣き叫ぶかのような強烈な呻き声で圧倒します。ラスト曲は「盲山 (Blind Mountain)」。伝統楽器を用いることでエキゾチックな雰囲気を醸しながら、強い緊張が張り詰めています。収録時間は24分にも及びますが、これは隠しトラック的な演出でしょうか。実際には5分強で楽曲は終わり、長い長い無音時間を経て19分頃から再開。そこでは逆再生のような不思議なサウンドが流れていきます。

 静と動の対比が強烈で、メリハリがついています。ノイズ要素が強いので、聴いていると心がざわつきますが、スリリングでカッコ良い作品です。
 

時代在召喚
假假條
 
 
 類似アーティストの開拓はこちらからどうぞ。