🇯🇵 Liz Triangle (リズ トライアングル)

同人作品:東方アレンジ③

CYAN

2014年 ベスト盤

 夏のコミケC86にて、久々のオリジナル作品となるシングル『COLOR』と同時頒布された東方アレンジ楽曲を集めた初のベスト盤です。2nd『SYMPATHY QUARTETTO』から7th『神風』までの楽曲からセレクトされています。Liz Triangleの代表曲「White Lotus…」をイメージしたのか、ジャケットアートにはlily-an作の聖白蓮が描かれています。

 「感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind」をアレンジした代表曲「White Lotus…」で幕を開けます。優しいピアノにシンセが絡んで希望に溢れる演奏、躍動感のある打ち込みのリズムと包容力のある歌声。これらが合わさってポップな名曲に仕上がりました。
 「錨の羅針盤」は「キャプテン・ムラサ」と「幽霊客船の時空を越えた旅」が原曲。勇壮なオーケストラで始まるも、歌が始まる直前に突如影を落としてスリリングに展開します。
 続いて「ヴワル魔法図書館」と「ラクトガール ~ 少女密室」をアレンジした「コイスル♥レシピ」。ふわふわ甘くポップな楽曲に合わせてlily-anも可愛らしく歌っています。
 「Heart Of Glass」は「おてんば恋娘」をバラードに仕立てました。これが感傷的かつ優しい名曲で、しっとりとしたピアノとストリングスが歌を引き立てて郷愁を誘います。卒業式にも合いそうな楽曲の雰囲気や感傷的な歌詞は、チルノのおバカなキャラクターイメージとはかけ離れていますが、「散るの?」とかけた「チルノ?」が歌詞に出てきます。
 そして「狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon」をアレンジした、ウドンゲの学名をタイトルに持つ「Ficus glomerata」。これも名曲ですね。アコギをバックにlily-anの優しい歌で始まると、バンド演奏が加わって楽曲に勢いをつけます。アンニュイな歌唱で憂いのあるメロディを歌います。
 「Rain After Tomorrow…」は「信仰は儚き人間の為に」を素朴で日常感のある感じにアレンジ。ゆったりとしたテンポで、アコギやピアノが温もりを感じさせ、メロディアスな歌に浸れます。
 そして「風神少女」を和風ロックに仕立てた「神風」。Liz Triangleはいくつか和風ロックアレンジを試みていますが、このアプローチが中々カッコ良くて好みなんです。切れ味鋭いギターを中心とした疾走感のあるバンド演奏に、三味線のような音色、古風な歌詞と色気のある歌唱が絡み合って、スリリングな和風ロックを聴かせてくれます。
 「kappaの演奏会」は「芥川龍之介の河童 ~ Candid Friend」のアレンジ。レトロ感のあるアコーディオンとアコギでノスタルジーを誘います。ウッドベース(?)が中々心地良く重低音を刻みます。
 続いて「小さな小さな賢将」をバラード風にアレンジした「宝塔の微笑む先に」。しっとりとしたピアノや憂いのあるストリングスで哀愁が漂っていますね。メロディアスな歌も感傷的な気分を誘います。
 「妖魔夜行」をオルタナティヴロックにアレンジした「moon light step」。爽やかさと寂寥感を併せ持つノイジーなギターを中心とした骨太なバンド演奏に、lily-anの優しくアンニュイな歌が切ない印象です。
 続いて「緑眼のジェラシー」をアレンジした「緑眼の獣」。悲壮感たっぷりのストリングスやピアノによりダークな雰囲気。中島岬がアレンジに関わっており、全体的にはやや大仰な味付けですが魅力的なベースを聴かせてくれたりして、楽曲の幅を広げるのに貢献しています。
 そして本作における和風ロック2曲目「神楽」。原曲の「平安のエイリアン」が持つ奇怪なメロディに和風全開の歌詞を乗せて、更に三味線や尺八のような和楽器の音色を駆使して、リズミカルに小気味良く聴かせます。軽快な印象ですが、ギターはかなりヘヴィです。
 最後に「讃えよ桜、憂いよ胡蝶、集う御霊は雪月花」。「幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life」を軸にした楽曲は和風の香りが漂います。溜め気味の歌は色気もありますね。そして楽曲が終わったと思ったら突如始まる「ボーダーオブライフ」ーアレンジしたスリリングな演奏。このドラマチックな楽曲構成も本作の大きな魅力です。なお洗練された『B1』バージョンではなく、初出の『SYMPATHY QUARTETTO』バージョンがセレクトされています。東方アレンジとして最初の作品ということもあり少し粗削りな印象で、本ベスト盤に唯一注文をつけるとしたらこれを『B1』バージョンにしてほしいというところでしょうか。笑

 これまではサクッと聴けるアルバムの方が手に取る回数が多かったのですが、初期の名曲が満遍なく網羅されていて選曲も良いので最近は聴く頻度がかなり増えました。Liz Triangle入門盤として最適な作品だと思います。

CYAN
Liz Triangle
 
MAGENTA

2014年 ベスト盤

 東方オンリーイベント博麗神社秋季例大祭にて、19th同人アルバム『laglange point』と同時頒布。8th『B1』から14th『reunion』までをまとめたベスト盤第2弾となります。なお、バンド生演奏というので趣旨が異なるからか、13th『HIEROGLYPH』からは1曲も収録されていません。
 1曲目をフィーチャーしたのか、lily-an作のフランドール・スカーレットがジャケットに描かれています。

 「U.N.オーエンは彼女なのか?」をアレンジした「who killed U.N.Owen」で幕を開けます。ALI PROJECTのようにゴシックと電子音楽を組み合わせた怪しげな雰囲気。フランドール・スカーレットをイメージしたかのようなlily-anの幼く可愛らしい歌唱は、ダークな演奏や狂気を帯びた原曲メロディなどと合わさって狂気を演出しています。
 続いて「プライマリーフェイス」。「ネイティブフェイス」を爽やかなポップスにアレンジした楽曲です。魅力的なコーラスワークに加えて、グルーヴィなベースラインが気持ち良い。サビでは違う歌を二重に走らせて浮遊感に満ちています。
 「天地無双」は「有頂天変 ~ Wonderful Heaven」をアグレッシブなロック曲にアレンジ。kaztoraとebaが共同で編曲したLiz Triangleでも5本の指に入る傑作で、強い求心力、溢れ出る自信とエネルギー。正直、本ベスト盤の1曲目に持ってくるべき楽曲だと思います。切れ味抜群のギター、骨太なベースに騒がしいドラム、そしてヘヴィなオルガンによる味付けもカッコ良くて、そんな演奏にも全く引けを取らないlily-anのクールかつ力強い歌も魅力的です。
 「プレインエイジア」をアレンジした「大切な歴史」は打ち込みのリズムトラックに乗せてPecoのラップをフィーチャー。哀愁のあるlily-anの歌とデュエットを繰り広げます。
 「shall we Dance」は「亡き王女の為のセプテット」のアレンジ。同楽曲のアレンジなら大仰でメタリックな「紅薔薇へ捧げる小夜曲」を収録してほしかったところですが、こちらは前者と違って甘くポップな感じに仕上がっています。ベースラインが何気に良い。
 そして、「ネクロファンタジア」をパンキッシュなロックにアレンジした「Phantasmagoria」。個人的にLiz Triangleで一番好きな楽曲です。azukiによる、八雲紫と西行寺幽々子の関係を描いた歌詞の素晴らしさは『B1』の項でも述べたとおりで、lily-anの焦がれるような歌唱が歌詞の持つ切なさを強く訴えかけます。躍動感のあるロック演奏もカッコ良くて、ebaによるギターソロもとてもアツいんです。
 「GILR`S WAR」は「メイガスナイト」のアレンジ。『DOUBLE NINE』収録時は「GiRL’s WaR!!」という表記でしたが、表記違いで楽曲は同じだと思います。跳ねるようなベースにカラフルなキーボードの洪水など、騒がしいのですが清涼感に溢れるカッコ良いロック曲に仕上がりました。
 「六十年目の東方裁判 ~ Fate of Sixty Years」をダンスアレンジした「refrain」。爽やかな楽曲展開で、lily-anの歌も柔らかい印象です。
 「ライン」は「大神神話伝」をダンスアレンジ。最初はピアノだけでシンプルですが、シンセサイザーが加わるとピコピコとした感じになります。
 続く「明神変化」は「佐渡の二ッ岩」を和風ロックにアレンジ。「どっこいしょ」や「ソレソレソレソレ」といった掛け声がお祭りっぽくノリノリですが、メロディラインは哀愁が漂います。
 そして「Pandemic」は「平安のエイリアン」をミクスチャーロックに仕上げました。華やかなホーンに彩られたリズミカルかつ切れ味鋭いバンド演奏に乗せて、Pecoのラップもキレッキレでカッコ良い。lily-anの歌もラップに負けじと力強くクールな歌唱を聴かせます。畳み掛けるような勢い満ちた楽曲で楽しませてくれます。
 「Cosmic Mind」は「感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind」のアレンジ。同楽曲のアレンジはしっとりとした名曲「White Lotus…」がありますが、こちらはポップで弾けるようにダンサブルです。カラフルな鍵盤サウンドに、多重コーラスによる浮遊感が心地良いですね。
 最後に「聖徳伝説 ~ True Administrator」をアレンジした「The Starry true」。ピコピコしたテクノポップ風で、明るく希望に満ちています。サビ手前でスローダウンし再加速するギミックでフックを掛けてきたり、ポップなメロディも魅力的な名曲です。

 個人的にはリアルタイムで追いかけていた思い入れのある作品から選曲されていることもあって、それが逆にベスト盤特有の選曲や曲順への不満に繋がってしまい、『CYAN』より物足りない印象です。

 私が当時追いかけていたのはこのベスト盤まででした。Liz Triangleは本作以降もコンスタントに作品頒布を続けていましたが、lily-anの体調悪化を理由に、2017年の24th同人アルバム『Triangle』をもって惜しまれながらも解散。9年の活動に幕を閉じますが、その3年後の2020年に復活して再始動しています。

MAGENTA
Liz Triangle
 
 

同人作品:オリジナル

F15H 80RN

2009年 4thアルバム

 夏コミC76にて東方アレンジ『AQUA』と同時頒布された、『Ein』に続くオリジナルアルバム第2弾で全編ロックに振り切っています。りすとらではなくLiz Triangleとしての作品となりますが、kaztora、lily-anのほか、azukiも作詞で参加。またゲストとして同人サークルEtherよりRyo(B)も参加しています。
 本作を知ったのは頒布1〜2年後くらいで、知った頃には既にプレミア価格になっていましたが、中古ショップで偶然見つけて購入した記憶があります。

 オープニングを飾るのは「GIFT」。スカのリズムを取り入れたパンキッシュな楽曲で、エッジの鋭いギターが特徴的です。キンキンしていますが、軽めのドラムが緩衝材になって爽やかに仕上がっていますね。そしてlily-anの歌は高音キーを活かして可愛らしくポップな印象。耳心地が良くて本作では光る1曲です。
 「街」はノイジーなギターをかき鳴らしますが、主旋律は哀愁を纏っています。グランジ以降のオルタナ路線ですね。歌もアンニュイで憂いがあり、切ないながらもしんみりムードにはならないよう程良いテンポの速さで駆け抜けます。
 続く「ハイエナロジック」は緊張感たっぷりのスリリングな楽曲です。ヴォコーダーを通して加工したボーカル、強く歪めて騒がしくヒリヒリしたギターや、疾走感のあるドラムが焦燥感を煽ります。初めて本作に触れたときに一番良いと思った楽曲がこちらでした。今聴くと、ノイジーな割にちょっとドラムの重さが足りない気もしますが、アクセントとして加わっているオルガンの良さに気づいて少し違った良さを見出しました。
 ラスト曲「白詰草」は、グランジやメタル的なギターにデジロック的な要素を取り入れた、ダークでスリリングな楽曲です。ヘヴィな演奏に、色気を帯びた声で焦がれるように歌うlily-anのボーカルが良く映えます。

 lily-anの歌声にポップさを見出せるものの、東方アレンジで見せる多彩なポップ曲と比べると、ロック一辺倒でストイックな感じ。ここまで尖れるんだと意外な印象ですが、メロディセンスには光るものがあり中々の好盤です。

F15H 80RN
Liz Triangle
 
 

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 黒岩サトシ(Lyrics)やsassy(Gt)の所属する同人音楽サークル。

 
 
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