🇺🇸 Mahavishnu Orchestra (マハヴィシュヌ・オーケストラ)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

The Inner Mounting Flame (内に秘めた炎)

1971年 1stアルバム

 米国ニューヨークで結成されたフュージョンバンド、マハヴィシュヌ・オーケストラ。1970年に、ジョン・マクラフリン(Gt)を中心に結成されました。オリジナルメンバーはヤン・ハマー(Key)、リック・レアード(B)、ビリー・コブハム(Dr)、ジェリー・グッドマン(Vl)。マクラフリンとコブハムがヒンドゥー教の導師に師事して「マハヴィシュヌ」の名を冠しています。
 このヴァイオリン込のメンバー編成や楽曲のアプローチはかなり革新的だったようで、ジャズ界隈だけでなく、キング・クリムゾンらプログレ勢をはじめロック界隈にも大きく影響を与えました。本サイトではその他(ジャズ/フュージョン)として扱いますが、プログレッシヴロックに位置づけられることもありますね。

 全編がインストゥルメンタルです。セルフプロデュースとなる本作は「Meeting Of The Spirits」で開幕。初っ端のドラムにも圧倒されるのですが、そこから一旦トーンを落としても、あまりに凄まじい緊張が場を支配します。ヘヴィでスリリングなギター、不安を煽るヴァイオリン、手数の多いドラムなど、とにかく緊迫しています。衝撃のオープニング曲です。「Dawn」はヴァイオリンとギターのユニゾンが特徴的。最初はまったりとしていますが、徐々にテンポアップして聴かせる速弾きは凄まじいです。「The Noonward Race」は疾走感のあるスリリングな演奏が爽快。軽快なドラムと跳ねたベースに支えられて、ギターやヴァイオリンが好き勝手に超絶演奏を披露します。これ、とてもカッコ良いです。続く「A Lotus On Irish Streams」は美しい音色でじっくり聴かせます。ヴァイオリン、アコギに加えてピアノの実に美しいこと。緊張感に満ちた本作の数少ない癒やしです。
 レコード時代のB面、アルバムの後半は「Vital Transformation」で開幕。概ね疾走気味ですが、変則的なリズムを刻む楽曲で、緩急つけた展開はスリリングです。「The Dance Of Maya」は重苦しいギターを中心にダウナーな雰囲気で始まります。変拍子を用いて怪しげなリズムを刻みながら、徐々にノリが良くなっていきますが、終盤のマクラフリンのギターは緊迫感があります。「You Know You Know」はいくつかのアーティストによってサンプリングされているのだそう。静かな中に時折メロウな音色を奏でますが、他の楽曲と比べると地味な印象です。そしてラスト曲「Awakening」は開幕から超絶技巧の演奏バトルで圧倒します。超速ドラムに荒々しいギター、歪んだキーボード等、これもとてもカッコ良いですね。

 超絶演奏が繰り広げられる凄まじくスリリングなアルバムという印象を持ちました。プログレから本作にたどり着きましたが、これがキング・クリムゾンの『太陽と戦慄』やジェフ・ベックの『ワイアード』あたりに影響を与えたんですね。

The Inner Mounting Flame
Mahavishnu Orchestra
 
Birds Of Fire (火の鳥)

1973年 2ndアルバム

 前作と同じくジョン・マクラフリン(Gt)、ヤン・ハマー(Key)、リック・レアード(B)、ビリー・コブハム(Dr)、ジェリー・グッドマン(Vl)のラインナップで制作されましたが、このメンバー編成では最後の作品となりました。本作はマハヴィシュヌ・オーケストラ最大のヒット作となり、全米15位、英国でも最高20位という、ジャズでは異例の大ヒットとなりました。
 ジャケットアートがロジャー・ディーン風で惹かれますが、調べてもその記載が出てこないのでロジャー・ディーン作ではない(?)みたいです。

 本作も前作同様にセルフプロデュース作で、全編がインストゥルメンタルです。オープニングは表題曲「Birds Of Fire」。どこかオリエンタルな雰囲気を醸し、怪しげながらも凄まじい緊張感を放ちます。マクラフリンの激しいギターは、グッドマンのヴァイオリンと時折ユニゾンをかまして不協和音を奏でます。恐怖すら抱くスリリングなサウンドに圧倒されます。カッコ良すぎます。「Miles Beyond (Miles Davis)」は全体的には静寂。ですが時折ジャジーな、じっかり聴かせるパートが現れます。そこでのコブハムの手数の多いドラムがバタバタとテクニックを魅せてくれます。「Celestial Terrestrial Commuters」もギターとヴァイオリンのユニゾンが不協和音のようなヘヴィなサウンドを奏でます。ハマーのシンセが時折これらのバトルに水を差す…そしてリズム隊も凄いですね。30秒に満たない「Sapphire Bullets Of Pure Love」がスペイシーなサウンドを奏でると、「Thousand Island Park」では一転してしっとりとしたメロウな楽曲に。アコギとピアノの美しい音色の虜になります。ですが浸っているとどんどんテンポアップして、いつの間にか超絶技巧を見せつけられています。「Hope」は美しさの中に不穏な雰囲気を見せます。中々ヘヴィです。
 アルバム後半は「One Word」で開幕。10分に渡る演奏が繰り広げられます。序盤はどこかダークな雰囲気があり、そして疾走感のあるドラムを中心に、凄まじい緊張が張り詰めています。中盤は各楽器がのびのびと演奏していて、そして終盤はコブハムのドラムソロを見せつけます。ラストは凄まじい速度で演奏バトルを繰り広げ終了。続く「Sanctuary」は切なさと不穏な空気を合わせ持つヴァイオリンとギターの音色にしんみりと浸れます。「Open Country Joy」は1分くらいまったりとしているのですが、突如激しい演奏が始まって煽り立ててくるスリリングな楽曲に変貌。終盤はタイトルにもあるようなカントリーというか牧歌的な雰囲気も醸し出します。僅か4分の間にドラマチックに変化します。ラスト曲は「Resolution」。ゆっくり力強い演奏で徐々に緊張を高めて終焉を迎えます。

 特に表題曲が素晴らしいです。また時折見せるギターとヴァイオリンのユニゾンはどこか不協和音のようで、不安にさせつつもスリリングな印象を抱きます。

Birds Of Fire
Mahavishnu Orchestra
 
 

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 『ワイアード』ではヤン・ハマーがジェフ・ベックと共演。

 
 
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