🇺🇸 Minor Threat (マイナー・スレット)

レビュー作品数: 3
  

編集盤

First Two Seven Inches

1984年

 米国ワシントンDC出身のハードコアバンド、マイナー・スレット。USハードコアシーンにおける重要バンドの一つで、活動期間は僅か3年ながら、DIY精神やストレート・エッジ思想(後述)という考え方や姿勢はパンクシーンに大きな影響を与えました。
 1980年にイアン・マッケイ(Vo)、ジェフ・ネルソン(Dr)の2人で結成し、知り合いのパンクバンドのレコードを製作するレーベルとしてディスコード・レコードを自ら設立。そしてマイナー・スレットのバンド活動においては、ライル・プレスラー(G)、ブライアン・ベイカー(B)を加えた4名体制になります。1981年に1st EP『Minor Threat』と2nd EP『In My Eyes』をリリース。これら2枚のEPに2曲を追加したコンピレーション盤が本作です。
 1st『Minor Threat』と同じジャケット写真が用いられていますが、階段でうずくまるように寝ているのはイアンの実弟アレック・マッケイ。この強烈なジャケは、後にパンクバンドのランシドがオマージュしています。
 
 
 まずは1st EP『Minor Threat』より。スタスタと高速で駆け抜ける「Filler」で幕を開け、続く「I Don’t Wanna Hear It」も爆裂ドラムで始まり疾走します。シャウトしっぱなしですが、タイトルの連呼が耳に残ります。「Seeing Red」はベースリフにざらついたギターがカッコ良くイントロを奏でると、ひたすら疾走。そして「Straight Edge」はマイナー・スレットの思想を示した楽曲で、タバコ/ドラッグを吸わない、酒を飲まない、フリーセックスをしないという3原則を打ち立てました。このストイックな姿勢をストレート・エッジ思想と呼び、後発のハードコアシーンに大きな影響を与えています。楽曲自体は僅か45秒で、超高速で駆け抜けていきます。「Small Man, Big Mouth」はざらついたギターが途中タタッ、タタッと小気味良く刻み、リズミカルで気持ち良いです。「Screaming At A Wall」は1分半しかないのに『Minor Threat』では最長の楽曲です。ガラスの割れる音とともに「Bottled Violence」が始まります。高速ドラムが爽快。そしてバンド名を冠した「Minor Threat」。他がとても速いハードコア曲ばかりなので、そこそこ速いのに比較的速度は遅く感じます。逆にハードコアに馴染みのない私にはこれくらいの速度の方が聴きやすいですが。笑 途中に加速パートを交えて緩急をつけます。

 続いてオムニバス盤『Flex Your Head』に寄稿した2曲。「Stand Up」で疾走したあとに続く「12XU」ワイヤーのカバー曲。原曲よりも速いうえにシャウトしっぱなしのイアンのボーカルスタイルもあって、原形を留めていない気もします。

 そして2nd EP『In My Eyes』より。タイトル曲「In My Eyes」はスピードに緩急をつけて、疾走曲だけの『Minor Threat』よりも上達した印象です。骨太なベースや叩きつけるようなドラムもカッコ良くて、本作では一番取っつきやすいと感じました。続いて「Out Of Step」は高速のドラムカウントとともに高速の疾走曲を繰り広げます。終盤にギターソロを交えたりして、前作からの進化を感じます。「Guilty Of Being White」はイアンのシャウトで幕を開け、アグレッシブに駆け抜けます。でも音が洗練されていて聴き取りやすいですね。「Steppin’ Stone」はポール・リヴィア&ザ・レイダーズのカバー曲。これだけミックスが違うのかそういう演出か、冒頭はデモのような音質の悪さです。でもノリノリのロックンロールで、パンクの初期衝動を感じさせてくれます。途中からヘヴィなハードコアに変貌します。
 
 
 全14曲入りですが、1曲が短くトータル19分しかありません。疾走曲揃いですが、緩急ついて洗練されている『In My Eyes』楽曲の方が個人的には好みです。

 ちなみに、本作に加えて1stアルバム『Out Of Step』、3rd EP『Salad Days』も含めて順に並べたベスト盤『Complete Discography』というものがあります。別作品ですが同じジャケット写真で、マイナー・スレットの楽曲を網羅できます。

左:網羅的なベスト盤『Complete Discography』。CDをお求めの際は、別作品ですがこちらをどうぞ。
右:本項でレビューした『First Two Seven Inches』はこちら(配信orレコードのみ)

Complete Discography
Minor Threat
First Two Seven Inches
Minor Threat
 
 

スタジオ盤

Out Of Step

1983年 1stアルバム

 1983年に、新たにベーシストとしてスティーヴ・ハンセンが加わり、マイナー・スレットは5名体制になりました。それまでベースを務めたブライアン・ベイカーはギターへ転向し、ライル・プレスラーとのツインギター体制となります。
 そして本作はマイナー・スレット唯一のフルアルバムです。楽曲が複雑になり、アレンジも洗練されました。その影響はスラッシュメタルやグランジ、ポストハードコアなどに波及しているそうです。

 オープニングを飾る疾走曲「Betray」。リズムに緩急をつけてフックをかけ、終盤ではリズムチェンジを噛ますトリッキーな展開で魅せます。サウンドも洗練された印象。爆音ベースが唸ってカッコ良いですね。続く「It Follows」はベースリフで始まる疾走曲。イアン・マッケイのシャウトするボーカルだけでなく、合唱が入ることでパンク感が出てきます。「Think Again」は切れ味鋭いダーティなギターに始まり、速すぎずかつ躍動感あるリズムで気持ち良いです。中盤のベースとドラムによる間奏も中々カッコ良い。「Look Back And Laugh」はギターがメタリックで重厚なイントロを奏でますが、歌が始まると明るくキャッチーな楽曲へと変わります。そして中盤には加速してハードコア的な楽曲へ。「Try!」の連呼がキャッチーで耳に残ります。「Sob Story」は疾走曲。パタパタと忙しなく手数の多いジェフ・ネルソンのドラムが魅力です。続いて「No Reason」は武骨なベースとドラムだけでイントロを奏でてカッコ良い。そこにザクザクとしたギターとイアンのシャウトが続きます。「Little Friend」は飛び出すような勢い溢れるパワフルな演奏で圧倒します。ハードコアの高速な演奏は、中盤リズムチェンジをすると普通の速さに。緩急ついた展開も良いです。そして表題曲「Out Of Step」。これが速い速い。1分20秒という、実は本作では最短の楽曲だったりします。途中でリズム隊だけの演奏に、シャウトしない歌(というより喋りのような…)を乗せます。ラスト曲「Cashing In」はキレッキレのギターがザクザクとしていますが、合唱する歌メロは結構キャッチーです。終盤は6/8拍子で妙にリズミカルですね。

 ただ速いだけではなく緩急つけてくれるので、前2作のEPと比べて格段に進化した印象です。配信かレコードのみのリリースのようですが、全楽曲はベスト盤『Complete Discography』でも聴くことができます。

Out Of Step
Minor Threat
 
Salad Days

1985年 3rd EP

 1983年にスティーヴ・ハンセンが脱退して、イアン・マッケイ(Vo)、ジェフ・ネルソン(Dr)、ライル・プレスラー(G)、ブライアン・ベイカー(B)の4人体制に戻ったマイナー・スレット。ですが長続きせず、同年中に音楽性の不一致を理由に解散することとなります。そして4人体制時にレコーディングした楽曲を、解散1年半後にリリース。本作ではハードコアを脱却した楽曲が奏でられます。

 「Stumped」はブライアンのベースリフで幕開け。速くないですがヘヴィでスリリングな楽曲で、徐々にテンションを増していく展開がアツい。ハードコアとして聴くと肩透かしを喰らうかもしれませんが、ロック(オルタナ寄りでしょうか)としては結構カッコ良いと思います。続く「Good Guys (Don’t Wear White)」はガレージロックバンドのザ・スタンデルズのカバー。アコギも用いて、躍動感ある軽快なロック曲を展開します。シンプルでスタンダードな楽曲構成で、キャッチーで取っつきやすいですね。ハードコアの欠片もありませんが、気持ちの良いギターロックを繰り広げます。そして最後に表題曲「Salad Days」。疾走感のあるベースにハードコアを感じさせつつ、チャイムを用いることでかなりキャッチーな感じがします。部分的にアコギを取り入れて柔らかい印象に仕上げつつも、タッタカタッタカと駆け抜けるハードコアの持つ爽快さを保っています。

 3曲で僅か7分の短いEPなのであっという間に終わってしまいます。ハードコアというよりオルタナといった趣ですが、中々魅力的な楽曲が集まっています。本作も配信かレコードのみで、CDはリリースされていませんが、ベスト盤『Complete Discography』でも聴くことができます。

 なお、マイナー・スレット解散後、イアン・マッケイはフガジを結成して活躍することとなります。

Salad Days
Minor Threat
 
 
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