🇨🇦 Neil Young (ニール・ヤング)
レビュー作品数: 3
スタジオ盤
1970年 3rdアルバム
ニール・ヤングはカナダ出身のシンガーソングライターです。1945年11月12日生まれ。バッファロー・スプリングフィールドやクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSN&Y)といったフォークロックバンドでキャリアを重ねつつ、1969年にはソロ活動を開始。ダニー・ウィットン(Gt)、ビリー・タルボット(B)、ラルフ・モリーナ(Dr)の3名から成るバックバンド「クレイジー・ホース」も同年に結成、ソロキャリアではクレイジー・ホースと連名の名義の作品もいくつかあります。
さて本作はヤングが24歳のときにリリースした作品で、CSN&Y在籍中に発表されたソロ3作目となります。次作と並び最高傑作に挙げられることも多いです。クレイジー・ホースのメンバーに加えて、ジャック・ニッチェ(Pf)、スティーヴン・スティルス(Vo)、ニルス・ロフグレン(Gt/Pf)、グレッグ・リーヴス(B)らが参加。ジャケット写真のいかつい顔からは想像もつかないような、優しくも切ない歌唱が魅力的です。
オープニング曲は「Tell Me Why」。ヤングと、ニルス・ロフグレンによるアコギ中心のサウンドが心地良いです。メロディはノスタルジックな雰囲気で、コーラスが美しいメロディを引き立てます。続く表題曲「After The Gold Rush」、これがとても美しい。ピアノによるシンプルな演奏ですが、それ故にヤングの優しい歌声で歌うメロディの美しさが強調され、心に染み入ります。遠くに響くビル・ピーターソンのフリューゲルホルンの音色が郷愁を誘います。「Only Love Can Break Your Heart」はゆったりとしつつも、3拍子のリズミカルな演奏が心地良く揺さぶってきます。そして本作中最もハードな1曲「Southern Man」。ブルージーでヘヴィなギターに加え、ドラムも力強いですね。そこにシリアスな雰囲気の歌メロが緊張感を与えていて、アルバムの流れに良いアクセントを加えます。そんなハードな楽曲のあとに続く1分強の小曲「Till The Morning Comes」は真逆で、跳ねるようなピアノを中心に軽やかでポップな印象。短いながらも親しみやすいメロディラインが耳に残ります。
アルバム後半の幕開けとなる「Oh, Lonesome Me」はカントリーミュージシャン ドン・ギブソンのカバー曲。楽曲が渋くて、そこにハーモニカが渋さを引き立てます。「Don’t Let It Bring You Down」は陰のあるメロディ。アコギは気持ち良いのですが、切ない感じです。続く「Birds」は後半のハイライト。派手なサウンドで飾らなくてもピアノだけで十分とばかりに、シンプルなサウンドに乗せてしっとりと切ない歌を聴かせてくれます。メロディアスなサビをコーラスが引き立て、涙を誘います。「When You Dance I Can Really Love」はハードな楽曲。少しだけトリッキーなリズムが妙なフックを引っ掛けます。続く「I Believe In You」はアコースティックなサウンドと優しい歌声が心地良い。ですが美しいメロディは憂いに満ちていて、切ない気分を誘います。最後は1分半の「Cripple Creek Ferry」。ゆったりとした曲調に温もりのあるコーラスワークは、牧歌的な印象を与えます。
3分足らずの短い楽曲が多く、全11曲35分はあっという間に終わります。ピアノやアコギの弾き語りによるシンプルな演奏に、良質なメロディの宝庫。秋の夜長にしんみりと浸りたいときに最適なお供です。
1972年 4thアルバム
ニール・ヤングの最高傑作と名高い作品です。本作と、収録曲であるシングル「Heart Of Gold」ともに全米1位を獲得しています。ただ、個人的にはあまり良さがわかっていません…。
バックバンドはクレイジー・ホースではなく、ベン・キース(Gt)、ティム・ドラモンド(B)、ケニー・バットリー(Dr)、ジャック・ニッチェ(Pf)から成る「ザ・ストレイ・ゲイターズ」を起用。またCSN&Yのメンバーやリンダ・ロンシュタット、ジェームス・テイラーなど数多くのミュージシャンがゲスト参加しています。
アルバムは「Out On The Weekend」で開幕。イントロからハーモニカが渋い哀愁を漂わせます。アコースティックな作風ですが、スティール・ギターのハワイアンな音色も心地良いです。続く表題曲「Harvest」もアコースティックで、まったりとした雰囲気。ヤングの優しい歌唱も合わさり牧歌的な印象を与えます。「A Man Needs A Maid」はピアノ中心のしっとりとした雰囲気ですが、途中から加わるオーケストラやグロッケンが優美に彩ります。他の楽曲と比べると過剰装飾な感じもしますが、地味な本作をうまく引き立てています。そして名曲「Heart Of Gold」。哀愁漂うアコースティックなサウンドにハーモニカが渋い。メロディアスな歌も印象的で、郷愁を誘います。淡々とした印象の「Are You Ready For The Country?」でアルバム前半は終了。
アルバム後半はアコースティック色の強い「Old Man」で幕開け。ジェームス・テイラーの奏でるバンジョーの音色が印象的ですね。サビでのコーラスワークも魅力です。「There’s A World」は一転してオーケストラによって過剰装飾された楽曲です。アルバムの中では浮いていて、正直要らなかったのではとも思ったり…。「Alabama」はハードでブルージーなギターが際立つ1曲。演奏はハードですが歌はメロディアスで、コーラスワークがメロディの良さを引き立てます。聴きごたえがある楽曲ですね。続く「The Needle And The Damage Done」はライブ録音。ほぼアコギだけのシンプルな演奏にメロディアスな歌を聴かせます。ですが最後の拍手をフェードアウトではなくバッサリ切るのは頂けないですね。ラストは7分近い「Words (Between The Line Of Age)」。比較的ハードな演奏で、ミドルテンポで進行しますが、中盤テンポを落としてじっくり聴かせます。長い間奏では哀愁を帯びた渋い演奏を聴かせ、終盤に向けてハードな演奏と憂いのある歌唱で盛り上げていきます。聴きごたえのある楽曲です。
前作は不思議とすんなりハマったのですが、本作は冗長な印象が強いです。最高傑作という評価がしっくりきておらず、その印象は初めて聴いたときも、聴いて10年近く経った今レビューを書いているときもあまり変わっていません。「Heart Of Gold」は魅力的ですけどね。
1990年 18thアルバム ※Neil Young & Crazy Horse (ニール・ヤング&クレイジー・ホース) 名義
44歳のニール・ヤングが打ち出したのは、当時最先端のグランジ。『ハーヴェスト』からここまでの途中経過は聴いていませんが、テクノとか幅広く手を出していたみたいですね。バックバンドであるクレイジー・ホースの面々はフランク・サンペドロ(Gt)、ビリー・タルボット(B)、ラルフ・モリーナ(Dr)。
オープニングは7分に渡る「Country Home」。晴れやかな雰囲気で、エレキギターをはじめとした音色には古臭さと1990年代の真新しいロックの両面が表れている気がします。歌にはヤングのフォーキーな側面が出ており牧歌的な印象です。「White Line」はノイジーなギターが少しシリアスな雰囲気を作り、力強いリズム隊が躍動感を生みます。ですが渋いメロディに心地良いコーラスワークなんかはフォークロック時代の作品に通じるものがあります。「F*!#in’ Up」はヘヴィなロックンロール。時代相応のノイジーな音を奏でていますが、それでも本質の部分は旧き良きロックといった印象です。暗さを纏っていますが躍動感もあり、結構カッコ良いと思います。「Over And Over」はカラッとしているけど、歌メロには少し切なさを感じます。そして何より、轟音だけど晴れやかなギターが心地良くて魅力的。演奏パートを比較的長めに取っていますが、正直歌無しでも十分聴ける楽曲です。続く「Love To Burn」は10分に渡る大曲。歪んでノイジーなサウンドはヘヴィなのですが、ブルージーな感覚も持っている。破壊衝動とかそういったヘヴィさではなく、サウンドのヘヴィさの裏に温もりの感じられるというか…なので結構心地良く揺られるんです。「Farmer John」はヘヴィで緊張感のある楽曲。少し暗い雰囲気で、ノイジーなギターが切り込み、ドラムもかなり力強いですね。「Mansion On The Hill」はパンキッシュな1曲。跳ねるようなリズミカルな演奏はハードでメリハリがあります。ですが美しいコーラスワークを活かした歌はメロディアスで心地良いのです。「Days That Used To Be」はほのぼのとした雰囲気ですが、張り上げるような歌唱がロックな感じ。メロディは聴きやすくて心地良いです。「Love And Only Love」は本作最長の10分超え。リズム隊はひたすら反復するだけですが程良く緊張感があって、また中毒性を持っています。そこに乗るギターもノイジーでスリリング。最後の「Mother Earth (Natural Anthem)」はライブ録音。それまでの楽曲は心地良いノイズでしたが、こちらは音が割れんばかりに歪んだ轟音ギターが強烈です。ですが賛美歌のような分厚いコーラスの歌は美しくて、ヘヴィなサウンドとは対照的です。
ノイジーで歪んだサウンドが特徴的ですが、同時代のグランジバンドに比べるとヘヴィさは控えめで、代わりに温もりが感じられます。旧き良きロックから本質の部分は変わっていないのでしょう。突出した楽曲はない印象ですが心地良いです。
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