🇨🇦 Palaye Royale (パレイ・ロイヤル)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Boom Boom Room (Side A)

2016年 1stアルバム

 ファッション―アート・ロックバンドを自認するカナダのスリーピースロックバンド、パレイ・ロイヤル。ロンドンパンクっぽいセンスのあるポスターを見て彼らを知りました。レミントン・リース(Vo)、セバスティアン・ダンジグ(Gt/Key)、エマーソン・バレット(Dr/Pf)の3人組で、それぞれ「The Vampire (吸血鬼)」、「The Pirate(海賊)」、「The Gentleman(紳士)」のキャラクター属性を持つそうです。ジャケット写真を見ると分かりやすいですね。
 当初「クロップ・サークル」というバンド名で2008年に結成。2011年に改名してパレイ・ロイヤルを名乗ります。メンバーはベースレスですが、アルバムにはサポートミュージシャンとしてジョン・ソシンが参加。「現代のグラムロックを鳴らすバンド」とも評されており、サウンド面ではロックンロールに回帰し、またビジュアル面でもアピール。往年のグラムロックやロックンロールバンドの影響が強く見られます。スマッシング・パンプキンズのジェームズ・イハによるプロデュース。

 オープニング曲は「Don’t Feel Quite Right」。力強いドラムに荒いギターを鳴らしてヘヴィにシャウト。どことなくT・レックスっぽさも感じつつ、それよりもキレのあるパンキッシュなロックンロールを展開します。これはカッコ良い。「How Do You Do?」はローファイな環境で古臭いロックンロールを奏でますが、色気たっぷりに歌いこなし、スタイリッシュな印象すら抱きます。程良い疾走感がたまりません。「My Youth Generation」は気怠げなロックンロール。揺さぶるようなビートがとても心地良く、メロディもキャッチーです。シャウトしっぱなしのレミントンの歌はパンクですね。「Mr. Doctor Man」も力強いビートが高揚感を煽ります。少し陰のあるメロディが魅力的。終盤テンポダウンして、リズミカルな演奏に渋い哀愁を漂わせた後に再加速。中々スリリングですね。「Sick Boy Soldier」は更にトーンを落とし、暗鬱な雰囲気で始まります。歌は暗めですが、リズミカルなビートは爽快。そして終盤テンポを落としスローテンポで哀愁を漂わせています。「Live Like We Want To」はスッカスカのガレージロック。音数は少ないですがスタイリッシュでカッコ良い演奏に、ストロークスらガレージロック・リバイバル勢を想起させます。爽快でスカッとします。「Ma Chérie」はスリーピング・ウィズ・サイレンスのケリン・クインをゲストボーカルに招いています。レミントンのだみ声と、女声と聞き間違うほどのケリン・クインのハイトーンが対照的です。若干ブルージーなギターと、相変わらずリズミカルなビートを刻むドラムも爽快。「Too Many People」はメロディアスな歌メロが魅力的。リズミカルな演奏が際立ちますが、キンキン唸るギターも中々良いです。続く「Where Is The Boom?」は静かなイントロで始まり、一気にエンジンをかけるパンキッシュなロックンロール。軽快ですが、歌メロには少し哀愁が滲み出ています。途中リズムチェンジする、少しトリッキーなパンク曲ですね。「Clockwork」は8分の6拍子を刻む、暗く哀愁たっぷりのバラードです。レミントンのシャウト気味のボーカルは、まるで泣き叫ぶかのように感情たっぷりです。古臭いメロディを荒々しいサウンドとともに激しく歌う「Warhol」を挟んで、渋カッコ良い「Rag Doll」。序盤は暗く怪しげな雰囲気に魅せられますが、聴き進めていくとどんどんテンポアップしてノリノリになるので、気付くとうまく乗せられています。そして終盤はテンポを落としてじっくり聴かせ、またリズミカルな演奏に乗せられる…とても楽しめる良曲です。ラスト曲は「All My Friends」。静かな演奏からグイグイ盛り上がっていきます。だみ声を除けばメロコアっぽいかな?爽やかさの中に少し切なさを交え、ラストに相応しいですね。
 ここからはボーナストラック。「Get Higher」は縦ノリのロックンロールで、歌は抑揚が少なく気だるげですが、強烈なビートを聴いていると自然と身体がリズムを刻み出します。爽快な1曲です。「White」もリズミカルな演奏が気持ち良いですね。気だるいだみ声の歌は、声質の聞きにくさに反してキャッチーで聴きやすいです。

 旧き良きロックンロールをスタイリッシュに奏で、パンキッシュに歌います。リズムビートがワンパターンなので後半は若干飽きがくるものの、力強く爽快なビートは高揚感を煽ります。

Boom Boom Room (Side A)
Palaye Royale
 
Boom Boom Room (Side B)

2018年 2ndアルバム

 前作発表後、レミントン・リース(Vo)が映画『アメリカン・サタン』に歌声だけ出演し、映画内の架空のバンドで楽曲を披露したみたいです。そんな活動を挟んでリリースされたパレイ・ロイヤルの2ndアルバムが本作。8曲入り27分弱というボリュームはミニアルバムかと見紛いますが、彼らの演奏スタイルからすると物足りないボリュームくらいが丁度良い気がします。プロデューサーには、ライナス・オブ・ハリウッドの名で知られるケヴィン・ドットソン。

 オープニング曲は「Death Dance」。エマーソン・バレットのドラムは、ワンパターンだった前作に比べるとテクニカルになった印象です。歌の雰囲気はアークティック・モンキーズっぽい印象で、中盤一気に加速してからの展開もダーティなアクモンって感じ。プロダクションによるところも大きいんでしょうか。続く「Teenage Heartbreak Queen」はセバスティアン・ダンジグのダーティでカッコ良いギターリフで開幕。レミントンは相変わらずのだみ声ですが、キャッチーな印象を抱くのは、躍動感のある弾けるリズムのおかげでしょう。爽快な1曲です。「You’ll Be Fine」もリズムビートが焦燥感を煽り立てます。エマーソンのドラムは力強くて、パターンは少ないですが単曲単位だと本当に魅力的。どんどん加速していき、暗い雰囲気を纏いながら、レミントンがシャウト気味のヒステリックな歌唱を披露。終盤リズムチェンジしたあと更にシリアスさを増しますが、これが非常にスリリングで圧倒されます。「Dying In A Hot Tub」で一気にトーンダウン。アコギをバックに内省的な歌で暗い雰囲気に。でもサビでは一気に弾け、力強い歌唱が強烈に響き渡ります。「Mrs. Infamous (My Sweetness)」はレミントンの憂いのある歌から始まりますが、歌が終わるとダイナミズムに溢れるロックンロールに。少し影を感じさせる歌メロが良いアクセントになっています。「Hospital Beds」も出だしだけは憂いを感じさせますが、そこから一気に爽やかで軽快なロックンロールへ変貌。メロディもキャッチーで魅力的です。またバックでうっすら鳴るピアノが良いアクセントになっています。続いて、「Love The Void」は昔の映画のようなレトロな雰囲気のイントロから、軽快でリズミカルな演奏が始まります。パンキッシュな歌は激しいんですが、サビメロを飾るベルの音色もあってかクリスマスっぽいポップな雰囲気をも醸し出しています。これも中々魅力的な楽曲ですね。そして最後に「The Boom」。ピアノ演奏にオーケストレーションが中心で、ドラムがいなくて静かで優雅な雰囲気。ボーカルもだみ声シャウトではなく無線通信のような加工された声で、美しい演奏を引き立てるためか淡々としています。短い楽曲ですが他の楽曲とは質の異なる、彼らの可能性を感じさせる1曲です。

 表現力が増し、ロックンロール一辺倒からバリエーションが増えました。結構アークティック・モンキーズにも近い雰囲気で(アクモンよりもダーティで荒ぶっていますが)、個人的には好みの1作です。

Boom Boom Room (Side B)
Palaye Royale
 
 
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