🇺🇸 System Of A Down (システム・オブ・ア・ダウン)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Toxicity (毒性)

2001年 2ndアルバム

 システム・オブ・ア・ダウン(略称SOAD)は米国カリフォルニア州出身のオルタナメタルバンドです。1992年にソイルというバンドを結成、その後メンバーチェンジを経て1994年にシステム・オブ・ア・ダウンへと改名しました。メンバーはサージ・タンキアン(Vo/Gt/Key)、ダロン・マラキアン(Gt/Vo)、シャヴォ・オダジアン(B)、ジョン・ドルマヤン(Dr)の4人組で、全員がアルメニア系米国人です。第一次大戦中に起きた、トルコ(当時オスマン帝国)によるアルメニア人ジェノサイド。その事実をトルコも米国も認めていませんが、虐殺の悲劇を米国に認めさせるためにシステム・オブ・ア・ダウンは音楽を通じて活動しているといいます。イスラム風味やプログレなどをごちゃ混ぜにした変態的なヘヴィメタルに、怒りに満ちた強烈なボーカルが非常に個性的。人によって好みのはっきり分かれそうなバンドです。
 リック・ルービンをプロデューサーに迎えて制作された本作は2001年9月4日のリリース。その翌週に9.11同時多発テロの惨劇が起こるのですが、予言じみた歌詞があるとかで良くも悪くも注目され、それが後押しになったか全米1位を獲得するに至りました。

 オープニング曲「Prison Song」は、鈍重なのに切れ味抜群のギターリフがとにかく強烈です。歌が始まるとハイハットの高速連打。歌も強烈なインパクトを放ち、抑揚のないラップで始まったかと思えば裏声、そして怒声にデスボイスと表現力が豊か…それが1曲に詰め込まれているのですから、何だこれ?!って思うんです。「Needles」はスラッシュメタル。メタリカの『セイント・アンガー』に強く影響を与えたことが窺える楽曲です。サビのイスラム風のメロディに合わせて「ホイ!」というコーラス、これが耳について離れません。有名な空耳があって「ほーら天ぷら間に合わない!ホイ!」というもの。サビではこのフレーズを連呼しますが、そうとしか聞こえなくなりますね。笑 「Deer Dance」はメロディがトルコっぽい。サビでは怒鳴り散らすかのように変貌します。歌に合わせて緩急つけるヘヴィな演奏も良いのですが、やはりサージの表現力溢れる歌に意識が向かってしまいますね。「Jet Pilot」は、出だしからマシンガンのように怒鳴り散らす頭サビが強烈。サビを終えるとクールダウンしますが、またサビでは怒鳴り、演奏も加速します。僅か2分ですが強烈なインパクト。続く「X」も2分足らずですが、マシンガンのような強烈なボーカルがドラムと合わさって怒濤のように押し寄せます。「Chop Suey!」は彼らの代表曲です。メロディアスなギターにダイナミズム溢れるベースと、イントロから聴かせます。そしてメタリックな演奏へ変わり、煽り立てるような早口ボーカル。かと思えば急にスローダウンし、メランコリックで哀愁漂うパートへと変化。緩急があまりに強烈で、とにかく目まぐるしく変化します。アクセントとして入るピアノも美しいですね。「Bounce」は前曲で見せた美しさが嘘のように、攻撃的で怒濤のようなサビメロと、奇怪なラップパートを交互に繰り返します。サージのエキセントリックなボーカルが相変わらず強いインパクト。「Johnny」はちょっとふざけた感じのサージの歌が面白い。「Forest」はサージの歌とリズミカルな演奏の掛け合いが印象的。攻撃的な歌唱ながらもサビメロはメロディアスで、結構じっくり聴かせます。そして歌が終わった後の演奏も聴きごたえがあります。ここまで爆走してきましたが、「ATWA」では大人しくなり、しんみりと聴かせます…が序盤だけ。サビではまた怒濤のようにパワフルな歌と演奏でぶん殴ってきます。メロディアスなバラードです。「Science」は疾走感に溢れるメタル曲。イスラム風の怪しげなメロディが独特ですが、演奏自体は比較的正統派なメタルでしょうか。「Shimmy」は這うように鈍重なギターとリズミカルなドラムで幕を開け、直後ヘヴィに疾走。歌とヘヴィな演奏がリズミカルに展開するので耳に残りますね。「シミシミシミ…」のサビも強烈。そして表題曲「Toxicity」。リズムチェンジの多用で目まぐるしく展開しますが、ゆったりとしたパートでは8分の6拍子の揺られるようなリズムが心地良いです。怒鳴るように力強く歌うメロディは哀愁が漂います。ラストはぶつ切りですが…。続く「Psycho」は、キンキンとしたギターにチリチリしたハイハットで神経質なイントロを演出。歌が始まると歌と演奏が合わさって銃弾のように降り注ぎます。一転してサビメロはゆったりとしており、グルーヴィで怪しげです。ラストの「Aerials」はメロディアスでじっくり聴かせるタイプの楽曲で、エキセントリックな楽曲が多い本作の中では数少ない一般的(?)なメタルです。そして隠しトラックに繋がり、プリミティブなパーカッションに民族音楽的な怪しい歌を披露して終了。

 超個性的なメタル。これがうまくハマるとやみつきになるんですよね。『毒性』というより『中毒性』って感じの作品です。全15曲。2~3分の楽曲も多くトータル44分でそこまで長くないのですが、目まぐるしい展開で時間以上に濃密なので、ややお腹いっぱいな印象です。

Toxicity
System Of A Down
 
 
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