🇬🇧 The Moody Blues (ムーディー・ブルース)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

Days Of Future Passed (デイズ・オブ・フューチャー・パスト)

1967年 2ndアルバム

 ムーディー・ブルースはイングランドのプログレッシヴロックバンドで、1964年結成というロック界でも最古参にあたるバンドです。ロックバンドの中ではいち早くオーケストラを導入し、プログレッシヴロックの隆盛に大きな影響を与えました。1stアルバムから本作までの間でメンバーチェンジがあり、本作のラインナップはレイ・トーマス(Fl/Vo)、マイク・ピンダー(Pf/Vo)、グレアム・エッジ(Dr/Vo)、ジョン・ロッジ(B/Vo)、ジャスティン・ヘイワード(Gt/Vo)。各々がそれぞれ作曲を行い、自分で作曲した楽曲をリードボーカルとして歌うことが多いようです。
 本作はトニー・クラークとヒュー・メンドルのプロデュース作。このうちトニー・クラークは、本作から1970年代末まで長らくプロデューサーとして携わることになります。

 オープニングを飾る「The Day Begins」からオーケストラの演奏が展開され、クラシックを聴いていたんだっけ?と錯覚します。途中に男の語りが入るものの、ロック的な演奏は見られません。「Dawn: Dawn Is A Feeling」でクラシックの演奏にドラムが加わり、演歌のような哀愁の歌が始まります。オーケストラはピアノを中心としたバンドサウンドと交互に現れ、「The Morning: Another Morning」へ。明るく陽気な雰囲気で、軽快なフルートの音色とコーラスを伴った楽しげな歌唱に気分も楽しくなります。「Lunch Break: Peak Hour」に入ると慌ただしいオーケストラが急げ急げと煽り立てるようです。中盤からハードロック的な、疾走するバンドサウンドに変貌します。ドラムがカッコいい。ほどよい緊張感を持った楽しい1曲です。「The Afternoon」では少し哀愁が漂います。メロトロンが全体の雰囲気を作り出しています。中盤からメロトロンに代わってオーケストラが登場。そして終盤に向けて哀愁のあるサウンドに変貌します。1日の終わりも近いのだと感じさせます。「Evening」で陽気で優雅なオーケストラを聴かせたあと、すこし民族音楽的なパートが現れます。哀愁を伴った少し暗いパートが後半を占め、そのまま「The Night」へと流れていきます。「サテンの夜」の邦題で知られるこの楽曲は、アコギとメロトロンの演奏がしっとりとした雰囲気を作り、「Yes I love you」の連呼が耳に残ります。フルートも加わり徐々に盛り上がります。キング・クリムゾンにも影響を与えたのではないかと思われるドラマチックな展開が魅力的です。

 オーケストラとロックの競演を果たしたロック界最初期の作品です。

Days Of Future Passed (50th Anniversary Edition 2CD+DVD)
The Moody Blues
 
To Our Children's Children's Children (子供たちの子供たちの子供たちへ)

1969年 5thアルバム

 邦題『子供たちの子供たちの子供たちへ』。原題も邦題も、文学的で素敵なタイトルだと思います。

 ロケットが打ち上がる効果音で始まる「Higher And Higher」がオープニングを飾ります。この年、アポロ11号が人類初の月面着陸を果たし、そんな時代背景もあってヒットしたようです。どんどんと上昇していくかのような楽曲は、聴いているとワクワクさせてくれる、オープニングに相応しい高揚感を煽る1曲です。続く「Eyes Of A Child I」では一転して、静かなサウンドにコーラスを多用した美しいメロディが響きます。キャッチーなメロディは聴き心地が良いです。続く「Floating」もキャッチーなメロディで、浮遊感のあるノリの良いサウンドに乗せて歌います。「Eyes Of A Child II」は疾走曲。サウンドだけ聴くと、2曲前のリプライズというわけではないようです。アコギが美しい音色を奏でる「I Never Thought I’d Live To Be A Hundred」を挟んで、メロトロンが緊迫感を生み出すインストゥルメンタル「Beyond」。結構これが耳に残るんですよね。続いて「Out And In」で静かに歌いますが、メロトロンが作り出す幻想的な雰囲気が心地よいです。
 アルバムはレコードでいうB面、後半パートに突入します。シングルカットされた「Gypsy」は、アコギとメロトロンを中心に演奏される、少し緊迫感のある楽曲です。陰鬱さを纏ったメロディを彩るコーラスワークも美しい。「Eternity Road」では前半は歌が楽曲を主導しています。後半は小気味良いアコギが心地よい。そして名曲「Candle Of Life」。タイトルからして美しく儚い感じが出ていますが、楽曲についてもタイトルから連想される雰囲気。メロトロンとピアノの音色が切ない印象です。「Sun Is Still Shining」で少しオリエンタルな怪しさを見せ、続いて30秒程度の「I Never Thought I’d Live To Be A Million」を挟んでラスト曲「Watching And Waiting」に繋ぎます。神秘的な雰囲気の中で優しい歌を聴かせて終わります。

 魅力的なメロディが際立つ作品です。ムーディー・ブルースはあまり多く聴いたわけではありませんが、その中では本作がお気に入りです。

To Our Children’s Children’s Children
The Moody Blues
 
Every Good Boy Deserves Favour (童夢)

1971年 7thアルバム

 タイトルの『Every Good Boy Deserves Favour』とは、アルバムの中に登場するE-G-B-D-Fというギターコードに由来しているそうです。

 「Procession」で始まります。ピロピロと音階が下がり、突如響く「Desolation…」の声とともに雷と雨音が響き渡り、続いて「Creation…」の声が響くと鳥のさえずりが聞こえてきます。そして「Communication…」の声と共にプリミティブな音楽が始まります。途中から中世風の音楽に変貌しますが、創世記から時代の進行を1曲に例えているのでしょうか。そしてハードロック的な雰囲気に変わったところで2曲目「The Story In Your Eyes」に続きます。ノリの良いハードロック曲で、メロトロンの演出がドラマチック。そのまま途切れず続く3曲目「Our Guessing Game」では、コーラスが複雑に絡み、賑やかで壮大な雰囲気。「Emily’s Song」では幻想的な雰囲気の中で優しい歌を聴かせてくれます。明るいアップテンポ曲「After You Came」。ここまで全ての楽曲が繋がっていますが、レコード時代の名残で、A面B面の都合で一旦途切れます。
 アルバム後半のスタートは「One More Time To Live」。フルートによる穏やかな始まりですが、徐々に壮大になっていきます。途中に「Procession」の歌詞とメロディを内包しながらドラマチックな展開に。アルバム通しで聴いていると、この瞬間が一番鳥肌が立ちます。そして「Nice To Be Here」はとてもメロディアスな楽曲で、キャッチーなメロディラインは耳に心地よく響きます。「You Can Never Go Home」ではヘヴィなギターが鳴り響きますが、それ以上に壮大なコーラスに意識がいくため、ヘヴィなサウンドもそこまで気になりません。ラスト曲「My Song」は美しいピアノで始まります。徐々に壮大になるサウンド。中盤からは場面転換が目まぐるしく、カオスな印象です。

 とてもメロディアスな作品で、ムーディー・ブルースの代表作として真っ先に上がる作品が本作でしょう。プログレに位置づけられているものの、楽曲が繋がっているコンセプトアルバムというだけで楽曲はそれほど小難しくなく、聴き心地の良いポップな作品です。

Every Good Boy Deserves Favour
The Moody Blues
 
 

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 オリジナルメンバーで1966年に脱退したデニー・レイン。ポール・マッカートニーのバンド、ウイングスで活躍。

 
 
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