🇬🇧 The Specials (ザ・スペシャルズ)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

The Specials (スペシャルズ)

1979年 1stアルバム

 スペシャルズはイングランド出身のバンドで、「2トーン」と呼ばれる、スカとパンクを融合した音楽の先駆者として知られています。メンバーにジャマイカ系移民を含む白人黒人混成のバンドで、1977年に結成しました。前進は「ジ・オートマティックス」、その後「コヴェントリー・オートマティックス」を名乗っていましたが、同名バンドがいることが判り、苦肉の策で「ザ・スペシャル・AKA・ジ・オートマティックス」と改名。長すぎるためファンから「スペシャルズ」と呼ばれるようになり、そこから今のバンド名に落ち着いたのだそう。
 メンバーは、リーダーのジェリー・ダマーズ(Key)とテリー・ホール(Vo)を中心に、ネヴィル・ステイプル(Vo)、リンヴァル・ゴールディング(Gt)、ロディ・“ラディエイション”・バイヤーズ(Gt)、ホレス・パンター(B)、ジョン・ブラッドベリー(Dr)。そして1stアルバムとなる本作はエルヴィス・コステロがプロデュースを手掛けています。

 「A Message To You, Rudy」はジャマイカ系英国人のダンディ・リヴィングストンの楽曲をカバーしたもので、スペシャルズの代表曲です。ゆるっとしたテンポで裏打ちのリズムが気持ち良く、特にドラムが魅力的ですね。ホーンがほのぼのとした空気感を生み出します。続く「Do The Dog」はソウル歌手ルーファス・トーマスの楽曲をアレンジしたものだそう。パンキッシュな仕上がりで、スカのリズムも相まって程良いドタバタ感があります。残響感のあるドラムが強い存在感を示しています。「It’s Up To You」はレゲエ色の強い楽曲で、リズミカルな演奏で心地良く揺さぶってきます。ゆったりしていますが、時折アッパーなパートを織り交ぜて緩急をつけています。「Nite Klub」は冒頭、大人数でワチャワチャした感じを醸し(タイトルにあるようにナイトクラブ的な雰囲気でしょうか)、そこからスカのリズミカルな演奏を繰り広げ始めます。ノリノリな楽曲で、中盤はベースの独壇場。とてもカッコ良いです。「Doesn’t Make It Alright」はゆったりテンポのレゲエ曲。隙間が多いですが、まったり癒やされます。続く「Concrete Jungle」はノリの良い手拍子と合唱から始まり、そのままガレージロック的な荒っぽいドラムが始まり、スカのリズムを取り入れた躍動感溢れる爽快な楽曲を繰り広げます。ベースもよく動き回って気持ち良いんです。「Too Hot」はジャマイカのミュージシャン、プリンス・バスターのカバー曲。リズム隊を強調した、魅力あるレゲエ曲を展開します。ゆったりしていますが、終盤にテンポを上げて緩急つけます。
 アルバム後半は「Monkey Man」で幕開け。レゲエグループ、トゥーツ・アンド・ザ・メイタルズのカバー曲です。ライブ録音なのか歓声で始まります。グルーヴ感と躍動感を併せ持つ、ノリの良いアップテンポ曲ですね。「(Dawning of A) New Era」はダイナミックなパーカッションをはじめ、ドタバタ感のあるスカで楽しませます。途中リズムチェンジして、陰りのあるレゲエといった空気に。緩急あって中々面白いです。「Blank Expression」はスローテンポのレゲエ曲で、リズミカルな演奏が心地良い気分にさせます。「Stupid Marriage」はDJのようなトークのバックでスカやレゲエのような気持ち良い演奏を展開。途中からボーカル交代して歌を披露します。そして「Too Much Too Young」はスペシャルズの代表曲の一つ。スカやレゲエのような気持ち良いリズムに、キーボードがトロピカルな風味を加えています。楽曲構成は単調ですが、優しい演奏が魅力的な1曲です。「Little Bitch」は軽快なギターを軸にしたロックンロール風のオープニングを経て、スカのリズムを強調したドタバタ感のある楽曲を展開します。ラスト曲「You’re Wondering Now」はスカのリズムを用いつつも、比較的まったりムード。歌も肩の力を抜いたような優しい歌唱です。

 パンクと言いつつも攻撃性は控えめな印象ですが、スカやレゲエの持つリズムによって気持ち良い楽曲が詰まった良作です。

The Specials
Special Edition 2CD
The Specials
 
More Specials (モア・スペシャルズ)

1980年 2ndアルバム

 前作で成功したスペシャルズ。リーダーのジェリー・ダマーズ(Key)が主導して2トーンの音楽性からの拡張を押し進めます。一方でメンバーのうち何名かはその方針に反発、バンドは亀裂が走って1981年にスペシャルズは解散(2派に分裂という表現が適切でしょうか)することになります。

 オープニングを飾るのは「Enjoy Yourself」。リズミカルな演奏に乗る軽やかなピアノが特徴的で、ジャズや初期ロックンロールにも通じるようなレトロな雰囲気です。途中からホーンが賑やかに楽曲を彩ります。続く「Man At C&A」はレトロな楽曲を軸としつつ、レゲエのリズムとダブを用いて、輪郭のはっきりしない独特の酩酊感を生み出しています。ゴシック的な怪しげな雰囲気もありますが、その割にはレゲエ風のドラムが陽気な感じ。「Hey, Little Rich Girl」は躍動感のあるリズムが心地良く、それでいて牧歌的で懐かしさのある優しい歌メロが魅力的です。「Do Nothing」はレゲエっぽさを残しつつも、トロピカル風味のまったりとした楽曲を展開します。「Pearl’s Cafe」は冒頭の鉄琴がドリーミーですね。楽曲は古いロックンロールのような感じがします。女性コーラスがアクセントになっています。「Sock It To ‘Em J.B.」はホーンやサックス、オルガンと、ボーカルの掛け合いが賑やかなアップテンポ曲です。落ち着いた楽曲が多いので、躍動感のある本楽曲がアルバムに緩急をつけてくれます。
 アルバム後半は7分を超える「Stereotypes/Stereotypes Pt. 2」で幕開け。冒頭のホーンの音が時代劇みたい。笑 全体的にアンニュイで、暗く落ち着いた雰囲気を醸し出しますが、パーカッションが陽気な音を鳴らしているので場違い感があります。そして途中から、ダブ処理を行ったボーカルが響き渡って存在感を放ちます。続く「Holiday Fortnight」はトロピカル感のある陽気なインストゥルメンタル。アップテンポで、躍動感のあるパーカッションが気持ち良いです。「I Can’t Stand It」はテリー・ホール(Vo)とローダ・ダカール(Vo)による男女ボーカルの優しい歌メロを、パーカッシブでリズミカルな演奏が引き立てます。「International Jet Set」はシンセポップ的なアプローチを取り入れつつ、幽霊でも出てきそうな怪しげなムードが漂います。単調な反復のおかげでトリップ感があるんですよね。そして最後は「Enjoy Yourself (Reprise)」。田舎を想起させるようなゆったりテンポの演奏に、合唱するスタイルもほのぼのとした感じです。

 レトロ回帰した感じで、前作よりも落ち着いて大人びた雰囲気になっています。リズミカルで心地良いものの、刺激は少なくなってしまったというのが正直な感想です。

 本作後にスペシャルズは解散。テリー・ホール(Vo)、ネヴィル・ステイプル(Vo)、リンヴァル・ゴールディング(Gt)の3人は「ファン・ボーイ・スリー」を結成、残されたメンバーはジェリー・ダマーズを中心に「スペシャルAKA」を名乗って活動することになります。その後何度か再結成を果たしています。

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