🇨🇳 動物園釘子戶 (Zoo Gazer)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

動物園釘子戶

2018年 1stアルバム

 動物園釘子戶は、中国出身のドリームポップ/インディーロックバンドです。メンバーはBao(Gt/Vo)、小彭(Gt/Synth)、玩喜(B/Vo)、ZZ(Dr/Sample)の4人で、江蘇省徐州市を拠点に2017年頃から活動をしています。
 ゲストボーカルとして段二と王尊贤を招き、2018年には本作をリリースします。「Zoo Gazer」という名が示すようにシューゲイザー/ドリームポップの趣があります。

 アルバムは30秒ほどのインスト曲「準備 (Ready…)」で幕を開け、始まるのが「Lakeside」。躍動感あるドラムが高揚感を掻き立てつつ、エフェクトのかかったギターは包み込むような優しさがあります。歌はありますが、靄のように掴みどころがない感じ。輪郭がぼんやりした楽曲ですが、シンセサイザーが比較的シャープです。「大大大大大象 (Biiiiig Elephant)」は、イントロがスピッツの「ロビンソン」を彷彿とさせます。笑 穏やかでまったりした空気の中、頻発される「ダッシャン (大象)」が耳心地良くて魅力的です。「額角 (Angulus Frontalis)」は演奏主体の楽曲です。柔らかなギターがドリーミーで心地良い音色を奏でますが、中盤や終盤ではシューゲイザー的な轟音ノイズを鳴らします。また、後半で聴ける、低音でメロディを奏でるベースも中々気持ち良いですね。そして「24FPSummer」は、ピコピコしたシンセサイザーで幕を開けます。シティポップやドリームポップを混ぜたような優しくメロウな楽曲は、途中から強い残響が響くボーカルと轟音ギターによってマイ・ブラッディ・ヴァレンタインにも通じる幻覚的な世界へと誘います。途中、女性による日本語の語りがあってビックリ。全体的にはカラフルでドリーミーな良曲です。続く「Cube」は柔らかくも軽快なギターと、跳ねるようなリズム隊によって高揚感を掻き立てます。そこに少しダウナーな歌のギャップも良い。「動物園警鈴大作 (Leave The Zoo)」はザラついた轟音ギターで幕を開けますが、シティポップ的な洗練された一面も見せます。そして男女混声ボーカルが霧の中で歌っているかのよう。終盤に向けて、神秘性を保ちながらも緊張を高めていきます。そして最後は「一個人在濱湖公園 (Alone At The Lakeside Park)」。囁くような歌はダウナー気味ですが、演奏は包み込むような優しさに満ちていて、穏やかで心地良いです。

 全体的に穏やかでまったりしていて、包み込むような優しさに満ちています。夢心地に浸れる魅力的な名盤です。

 
藏 在 你 的 房 間 (Hiding In Your Room)

2020年 1stEP

 ポップなジャケットアートが可愛らしい、5曲入りのEPです。シューゲイザー色はやや薄まり、シティポップのような雰囲気が漂います。クレジットにはBao(Gt/Vo)、小彭(Gt/Synth)、玩喜(B/Vo)、そして小羊(Dr/Sample)とあり、ドラマーが変わったようです。

 2分足らずの小曲「3:00AM」で幕開け。レコードノイズのようなエフェクトと、ヒップホップのようなローファイでくたびれたドラム、対してアーバンな雰囲気を放つシンセサイザーが対照的です。続くタイトル曲「藏在妳的房間」は、メロウで落ち着いたシティポップやフュージョンのような感触です。ドラムがやけに際立っているものの、80年代っぽい香りの漂うシンセやギターが楽曲の中心を担っています。「娜斯簡卡, 妳是星星」は、チープな打ち込みが始まったかと思えば、弾けるような生ドラムが高揚感を掻き立てます。消えてしまいそうな歌に、ベールの掛かったような演奏ですが、ハキハキしたドラムが輪郭を作り出します。そして時折洪水のように、シューゲイザー的な爆音が押し寄せる展開もたまりません。そして「隧道口蟲鳴夜」はシングル曲。ファンクを取り入れたシティポップというか、そこにトロピカルな感覚も混ざっている気がします。優しく包み込むような落ち着いた歌は相変わらずですが(それが良さでもあります)、楽曲は陽気なトーンです。最後の「分享一朵從未見過的雲」は、憂いのあるボーカルを落ち着いた演奏で引き立てます。かと思えば、間奏では洪水のようなけたたましいサウンドが押し寄せてくるので、スリルも持ち合わせていますね。男女混声の囁くようなコーラスワークに加えて、カラフルに彩られたサウンドで、終盤はあまりに美しい世界を見せてくれます。

 前作よりもシンセサイザーの色合いが強まったことで、シティポップ感が増しました。ラスト曲がとても感動的です。

藏​在​你​的​房​間
動物園釘子戶
 
動物園釘子戶II

2023年 2ndアルバム

 5年ぶりとなる動物園釘子戶のフルアルバムです。調べてもアルバムの詳しい情報が見つけられないのでよく分かりませんが、アルバム全体の雰囲気は1stアルバム同様にシューゲイザー/ドリームポップを軸としています。

 オープニングは「準備II (Ready II)」。前作も「準備」で始まっていましたね。会話から始まり、物語の始まりを告げるかのようなギターが、静かに高揚感を掻き立てます。ベースが加わり、もう一つのギターが加わり、楽曲が徐々に色づいてきました。すると始まる「關於你的明天 (Tomorrow About You)」。冒頭からノイジーなサウンドと、対照的に囁くような優しいボーカルでシューゲイザーを繰り広げます。輪郭がぼやけているのに、透き通っているかのような感触。途中主旋律を奏でるトランペットが良いですね。「貓貓 (Cat)」スロウダイヴのような陰りのある柔らかなシューゲイザーに、インディーロック風のローファイなドラムの組み合わせが心地良いです。メランコリックな歌メロも素敵。中盤の猫の鳴き声のようなメンバーのコーラスが可愛らしいですね。笑 続く「決定戒煙的晚上 (The Night Decide To Quit Smoking)」は、どこか懐かしさを感じられる、甘くてメロディアスなギターポップです。爽やかな曲調ですが、Baoのボーカルは優しくてあまり主張しないのがいいですね。後半咳き込んでいますが、タイトルから禁煙がテーマ(?)と思われる歌と関係しているのでしょうか。「在空中花園 (In The Hanging Garden)」は、陰りがあり、諦めのような寂寥感があります。そこに80年代風のシンセサイザーが、ニューウェイヴ的な感覚を加えます。そして「成年期長頸鹿 (Adult Giraffe)」は6/8拍子のゆったりと揺さぶるようなテンポの楽曲に対して、忙しなく刻むドラムが印象的です。メロウで、そして陰りがある楽曲に浸れば浸るほど、後ろでパタパタと主張する魅惑のドラムに惹きつけられます。「沮喪的歲末 (Depressed End Of The Year)」はシングル曲。男女混声の素朴な歌を、シティポップ的な楽曲で引き立てます。ファンク色があり、落ち着いているのに跳ねるような感覚があります。テンションを高める後半は中々スリリングですね。「浣熊慘敗 (Raccoon’s Fiasco)」は暗くてダーティな雰囲気のイントロで緊張を高めますが、歌が始まると4つ打ちの気持ち良いビートで牽引。ノリの良さとひりついた感覚を両立していて、歌も珍しくデス声のような荒々しさも見せます。そして「形狀 Pt.I (Shape Pt.I)」と次曲はプログレ組曲です。冒頭からトリッキーなリズムで惑わせます。落ち着いているのに、不思議なリズムパターンが気になって仕方がありません。笑 中盤に不思議な効果音を奏でたかと思えばファンクっぽくなったりと、楽曲は忙しなく変化し、終盤は暴力的に暴れ回ります。そのまま続く「形狀 Pt.II (Shape Pt.II)」は、淡々と反復しつつも抜群のグルーヴ感を持つ演奏で楽しませ、そしてテンションを高めていきます。彩りを与えるスペイシーなシンセ、後半のアヴァンギャルドな感覚、オペラのようなコーラスなど、プログレ要素満載で楽しませてくれます。歌唱にも熱が入っていますね。最後の「霧, 鐘錶, 和柔軟的地面 (Fog, Clock, And Soft Ground)」はドリームポップ的な演奏に乗せて、女性による中国語の語りが展開されます。浮遊感のある演奏が心地良いです。

 前作にはなかった攻撃的な一面も時折垣間見え、落ち着いた雰囲気の中にスリルを持たせて緩急をつけています。本作も優れた作品です。

 
 
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