🇺🇸 The Smashing Pumpkins (スマッシング・パンプキンズ)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Siamese Dream (サイアミーズ・ドリーム)

1993年 2ndアルバム

 米国シカゴ出身のオルタナティヴロックバンド、スマッシング・パンプキンズ。通称「スマパン」。1988年にビリー・コーガン(Vo/Gt)と日系3世のジェームス・イハ(Gt)(日本名は井葉吉伸)が出会って結成しました。その後ダーシー・レッキー(B)、ジミー・チェンバレン(Dr)が加わり、インディーレーベルからシングルをリリース後、1991年には1stアルバム『ギッシュ』をリリース。しかしセールス的には思ったほど振るわず、同時期にデビューしたニルヴァーナが大ヒットする中、強いプレッシャーのもと制作されたのが本作『サイアミーズ・ドリーム』です。ブッチ・ヴィグとビリーの共同プロデュースとなる本作は、グランジ・オルタナ旋風巻き起こる米国で大いに受けて、全世界で600万枚を超える大ヒットとなりました。
 なおオリジナルのジャケットアートは白色基調の無垢な印象ですが、2011年リマスター時に暗めのトーンのジャケットに差し替えられました。またジャケットに写る少女たちは、2018年のスマパン再結成ツアーに伴う撮影で久しぶりに再会することに。そこで大人になった2人が抱き合う写真がインスタグラムに公開されました。素敵なエピソードですね。

 「Cherub Rock」で開幕。徐々に盛り上がっていくイントロから高揚感を煽ります。武骨なリズム隊に乗せてノイジーでヘヴィなギターが唸る。でも気だるげな歌メロは意外にポップで、また歌が始まるとメタリックな演奏にグルーヴが加わり、心地良く揺さぶられます。「Quiet」はうねるようなダーティなサウンドがとてもカッコ良い。ノイジーだし、ベースもゴリゴリいっていますが、ビリーのシャウト気味の歌にはどこか脱力感があります。重いけど不思議と心地良さも同居しているんですよね。「Today」はスマパンの代表曲。ビリーの声質はさておき気だるく甘い歌メロに、メリハリのある演奏が印象的。全体的にノイジーですが、時折メロディアスなギターが美しく、心地良さを覚えます。続いて7分近い「Hummer」は雑音のような演奏からフェードイン。時にノイジーですが全体的に音数が少なく、その中ではくっきりとした輪郭を作るダーシーのベースが印象に残ります。歌はアンニュイな感じ。「Rocket」はスローテンポの楽曲。ノイジーなギターを中心に幻覚的な世界を作り、気だるい歌も浮遊感を生むのに一役買っています。後半に向かうにつれ少しずつテンポを上げ、幻覚的な感覚から目を覚まさせるかのよう。ラストは轟音でスリリングな終焉を迎えます。続いて「Disarm」はアコギ主体ですが、チャイムやストリングスが加わることで壮大な雰囲気へと仕上がっています。「Soma」は静かに囁くように展開しますが、後半に雰囲気が一変。ノイジーなギターが出てきて、前半の静けさが嘘のように掻き乱します。彼らもグランジでしたね。「Geek U.S.A.」はダイナミックな1曲。ジミーのドラムが生み出す躍動感が爽快で、でもギターが地を這うようにヘヴィなのでダーティな印象も合わせ持っています。しかし疾走曲は中盤突如ブレーキをかけてスローテンポに。そしてまた疾走するというスリリングな展開がとてもカッコ良いです。「Mayonaise」は憂いを帯びた楽曲です。音は相変わらず歪んでいますが、時折アコギでしっとりとした雰囲気を演出。ゆったりとしたテンポで、アンニュイな雰囲気の歌メロが心地良い。続く「Spaceboy」はアコギ中心のシンプルな演奏に、時々メロトロンが盛り上げます。美しい1曲で魅せられますね。メロディは似てないですが、雰囲気はデヴィッド・ボウイの「Space Oddity」にも通じるものがあります。続いて9分近い大曲「Silverfuck」。ノイジーなギターが唸りを上げ、タムを多用するドラムと武骨なベースがスリリングです。ダイナミックでカッコ良い。中盤から静けさが訪れ、不穏な雰囲気と浮遊感が同居します。ラストはスリリングでノイジーな轟音で終焉。続く小曲「Sweet Sweet」は一転して穏やかで、それでいて爽やかさも感じさせます。そしてラストの「Luna」はメロディアスな楽曲です。気だるげな歌と優しいサウンドでゆったりと癒してくれます。

 ノイジーでメタリックなサウンドが中心ですが、意外に楽曲のバラエティは豊富で、(歌声に癖があるけど)ポップなメロディが良かったりします。正直ビリーの歌声の癖が強くてスマパンは長らく苦手でしたが、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーに少し似てる(?)と気付いてからは聞けるようになりました。

Siamese Dream (2011 Remastered)
(Deluxe Edition 2CD+DVD)
Smashing Pumpkins
Siamese Dream
Smashing Pumpkins
 
Mellon Collie And The Infinite Sadness (メロンコリーそして終りのない悲しみ)

1995年 3rdアルバム

 米国のみで1000万枚以上を売り上げた、スマパンの代表作です。2枚組2時間に渡る大作で、ビートルズの『ホワイト・アルバム』にインスパイアを得たというバラエティ豊富な内容です。メンバーは前作に引き続きビリー・コーガン(Vo/Gt)、ジェームス・イハ(Gt)、ダーシー・レッキー(B)、ジミー・チェンバレン(Dr)で、プロデューサーに名を連ねるのはアラン・モウルダー、ビリー・コーガン、フラッド。
 幻想的で素敵なジャケットアートはジョン・クレイグの作で、ラファエロ『アレクサンドリアのカタリナ』の女性の身体とジャン=バティスト・グルーズ『The Souvenir』の女性の顔を合成し、背景は子供用事典から拝借したのだそう。ジャケットだけ見るとプログレっぽいし、1曲目でのメロトロンの使用なんかもプログレを連想するんですが、全体的にはグランジ・オルタナやメタル系です。

 まずは「Dawn To Dusk」と名付けられたDisc1。表題曲「Mellon Collie And The Infinite Sadness」で幕開けです。ビリーの弾く優しいピアノとメロトロンが美しい音色を奏で、心温まりますね。そして「Tonight, Tonight」ではシカゴ交響楽団が壮大なイントロを奏で、ワクワクさせてくれます。優しい歌メロを展開しながら、ストリングスとドラムがどんどん盛り上げていく展開は、美しくもスリリングで素晴らしいです。そんな美しいオープニング2曲から一転、「Jellybelly」は歪んだギターがノイジーでヘヴィな音を立てます。メロディはキャッチーですが、サウンドはメタリックでダーティな印象で、終盤は破壊力満点です。前曲とのギャップが中々強烈ですがカッコ良いです。「Zero」もメタル路線。ジェームスの鈍重なリフがズズンと響きますね。「Here Is No Why」はヘヴィでファンキーなリフが印象的。グルーヴ感抜群のサウンドが心地良い。続く「Bullet With Butterfly Wings」はリズミカルなビートが心地良く響きます。ギターは相変わらずノイジーで轟音を奏でてるし、ビリーの歌もシャウト気味ですが、メロディはキャッチーで意外と取っつきやすいです。「To Forgive」はゆったりとしたテンポで憂いに満ちたアンニュイな1曲です。ノイジーな楽曲が続きましたが、ここでひと息つけますね。続く「Fuck You (An Ode to No One)」で再びメタリックに。地を這うようにヘヴィなギターもカッコ良いですが、パタパタと手数の多いジミーのドラムが特にスリリング。ビリーも怒鳴るように歌い、全編恐ろしい緊迫感に満ちていて魅力的です。「Love」は音が割れる、ノイズまみれの加工がされています。でも不快なノイズに気だるさが混じって、不思議と世界観に浸れます。そして一転「Cupid De Locke」は幻覚的で美しい音色が入り乱れ、万華鏡のようです。どこかアジアっぽさも感じるサイケデリックなサウンド。ポップなメロディも良いですね。穏やかでまったりとした「Galapagos」を挟んで、「Muzzle」は哀愁漂う楽曲で、ドラムが魅力的です。エンディングっぽい雰囲気を出していますがここでは終わらず、9分超の大曲「Porcelina Of The Vast Oceans」へ。浮遊感のある空間をメタリックなサウンドが蹂躙した後、気だるげな歌が始まります。後半に向けて徐々にヘヴィになっていきますが、若干冗長です。そしてジェームスが囁くような優しい声で歌う「Take Me Down」で静かに締め括ります。

 続いて「Twilight To Starlight」と銘打ったDisc2。ノイジーなギターの唸りから始まる「Where Boys Fear To Tread」は、ヘヴィなリフが魅力のメタリックな楽曲です。歌もヘヴィですね。続く「Bodies」も地を這うようなヘヴィなサウンドで蹂躙し、またビリーの歌は毒づくようなだみ声でサビでは叫び散らすように強烈。ですが中々カッコ良いグランジ曲です。そしてオープニング2曲のヘヴィさが嘘のように「Thirty-Three」は優しくノスタルジックな音色とメロディアスな歌でしんみりとした気分にさせます。「In The Arms Of Sleep」もアコースティック主体のサウンドをバックに憂いに満ちた歌が乗り、沈んでいくような感覚です。続いて代表曲の一つ「1979」。リズムは淡々として反復するのでなんとなく中毒性があり、そこにメロディアスで気だるげな歌が合わさることで世界観に引きずり込まれます。そして徐々に盛り上がっていく展開がまた良いんですよね。「Tales Of A Scorched Earth」では再びヘヴィになり、這うような重低音が強烈…ですがグルーヴ感がありますね。ビリーは絶叫しっぱなしだし、終盤はノイズまみれで聴く人を選びそうです。メロディアスなイントロで幕を開ける「Thru The Eyes Of Ruby」は7分半の大曲。歌メロは憂いに満ちていて、時折ノイジーな轟音で踏みにじりますが、それでも美しいと感じさせてくれるメロディが魅力的です。アコギを弾きながら内省的な歌を歌う「Stumbleine」を挟んで、7分に渡る「X.Y.U.」。前曲のしんみりとした雰囲気から一変して、ノイジーなイントロから緊張感を高めていきます。迫り来る重低音に攻撃的な歌唱はスリリングですが、中盤に急激にテンポダウン。スローテンポで不穏な空気を作った後、ビリーの絶叫によって再びスピードアップ。どんどん加速して激しくなった後にまたスローテンポに戻り、負の感情が渦巻くような不気味な混沌を見せて終了。続く「We Only Come Out At Night」はビリーの歌も楽曲のルースな雰囲気も、ローリング・ストーンズを彷彿とさせます。気だるくて肩肘張ってないのでリラックスして聴けます。ダーシーの歌う「Beautiful」も気だるくて、ドリーミーな感覚です。メロディやサウンドにはポップさがにじみ出ていて、ビートルズにも通じるかも。「Lily (My One And Only)」もポップでまったりとしており、緩くて心地良い空間を作ります。「By Starlight」は落ち着いた雰囲気で、ちょっと渋い相性を加えたポップソング。やっぱりストーンズっぽい気がするんですよね。最後の「Farewell And Goodnight」はメンバー全員が歌に参加。囁くような歌声は穏やかで、夢心地な雰囲気の楽曲です。アウトロの美しいピアノも印象的。
 終盤はポップで優しい楽曲が続いて、アルバム中盤のヘヴィさが嘘のようですね。

 バラエティ豊富な楽曲は時にノイジーで時に美しい。…ですが曲数が多くて若干冗長なのが残念ではあります。わざわざ各Discに副題を打っているので、別々で聴くことを推奨してるのかもしれませんが、曲数を絞って1枚に集約しても良かったかも…。

 1996年に、薬物中毒でサポートメンバーのジョナサン・メルヴィンが亡くなり、同室で薬物摂取していたジミーが逮捕・解雇されるという出来事がありました。その後2枚のアルバムを出すも2000年に解散、2005年に再結成して流動的なメンバーで今も活動を続けています。

Mellon Collie And The Infinite Sadness (2012 Remastered)
Smashing Pumpkins
 
 
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