🇬🇧 The Beatles (ザ・ビートルズ)

レビュー作品数: 13
  

スタジオ盤①

Please Please Me (プリーズ・プリーズ・ミー)

1963年 1stアルバム

 ビートルズは英国リヴァプール出身のロックバンドです。ジョン・レノンを中心に、前身となるバンド「The Quarry Men (クオリーメン)」を1957年に結成。メンバーチェンジやバンド名の改名を繰り返しながら、ビートルズが誕生しました。デビューから解散まで不動のメンバーで、ジョン・レノン(Vo/Gt)、ポール・マッカートニー(Vo/B)、ジョージ・ハリスン(Gt/Vo)、リンゴ・スター(Dr/Vo)の4人。またプロデューサーに就いたジョージ・マーティンは、ビートルズの大半の作品のプロデュースに関わっており「5人目のビートルズ」とも呼ばれます。
 なお1962年のデビュー直前まで、ビートルズにはスチュアート・サトクリフ(B)、ピート・ベスト(Dr)というメンバーも在籍していました。スチュアート・サトクリフは画家を目指して1961年に脱退、しかし翌年に若くして病死してしまいます。またピート・ベストは実力が伴わずレコーディング直前で解雇され、代わりに加入したのがリンゴ・スターだったそうです。デビュー直前まで在籍していた2人も「5人目のビートルズ」とみなされることもあるようです。

 本作はビートルズのデビュー作で、件のジョージ・マーティンがプロデュース。「Love Me Do」でデビューし、続くセカンドシングル「Please Please Me」のヒットを受けて本作が制作されたようです。既発曲を除きわずか1日で録音された本作は、全14曲中6曲がカバー曲、8曲がオリジナル曲で、トータル約33分。これら楽曲群の中ではシングル曲「Love Me Do」と「Please Please Me」が光ります。カバー曲では「Twist And Shout」が良いですね。
 ポールが歌うノリノリのロックンロール曲「I Saw Her Standing There」で始まります。メンバー皆がボーカルを取り、「Please Please Me」や「Twist And Shout」等はジョン、「Love Me Do」や「P.S. I Love You」等の楽曲ではポールで、ジョンとポール2人で歌う楽曲も多いです。また、「Chains」と「Do You Want To Know A Secret」ではジョージが、「Boys」ではリンゴがボーカルを取ります。

 楽曲もサウンドも古臭くて、時代を感じさせるロックンロールが並びます。でも聴いていて心地よいんですよね。街中のあちこちで楽曲が流れているのもあって、知らず知らずのうちに聴き慣れているからでしょうか。
 全英1位を獲得後、30週連続1位を記録しましたが、その座を引きずり降ろしたのは自身の2ndアルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』でした。

Please Please Me (2009 Remastered)
The Beatles
 

With The Beatles (ウィズ・ザ・ビートルズ)

1963年 2ndアルバム

 数多くのパロディを生み出した有名なジャケット。これはロバート・フリーマンが撮影したものですが、レコードのジャケットがアートとして注目されるきっかけを作った作品が本作だったようです。マッシュルームカットで揃えられたメンバーの髪型が印象的ですが、これはデビュー時から。ビートルズの大成功とともに、この髪型も流行することになります。

 なおデビュー作に引き続き「EMI・レコーディング・スタジオ」でレコーディングをしており、基本的にこのスタジオを拠点に数々の名盤を録音していくことになります。アビイ・ロードに位置するこのスタジオで後に大傑作『アビイ・ロード』が生まれることになり、このスタジオはビートルズにあやかって後に「アビイ・ロード・スタジオ」と改名することになります。

 前作に引き続きオリジナル曲とカバー曲が混在していて、オリジナル8曲、カバー6曲。基本路線は前作を踏襲していますが、オリジナル曲では「Don’t Bother Me」でジョージ・ハリスンが作詞作曲に挑戦しています。またカバー曲ですが、アコースティックに奏でられる「Till There Was You」も聴いていて心地よいです。
 楽曲では「All My Loving」が頭ひとつ抜けている印象があります。メロディラインが優れていて、耳に残ります。あとは「Hold Me Tight」もポップな歌メロの裏で奏でられるギターリフがカッコいいですね。いずれもレノン=マッカートニー名義。これはビートルズ時代最後まで続きますが、実際に共作の楽曲もあれば、ジョン・レノン単独で作った楽曲、ポール・マッカートニー単独で作った楽曲いずれもこの名義で発表しています。

 前作と同年に発表され、30週連続全英1位を獲得していた前作を玉座から引きずり下ろした本作は21週連続1位に居座りました。2作合わせて51週連続1位を独占し続けるとは恐ろしいですね。耳馴染みの良いロックンロールが並ぶ、心地よい作品です。

With The Beatles (2009 Remastered)
The Beatles
 

A Hard Day's Night (ハード・デイズ・ナイト)

1964年 3rdアルバム

 旧邦題は『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』。昔のロック作品はこういった独自の邦題も多いですが、あまりに原題からかけ離れたこの邦題は如何なものかと思います…。ファンからもそういう声が多かったのか、再発時には『ハード・デイズ・ナイト』に改題されました。笑

 これまでの2作はオリジナル曲とカバー曲が半々でしたが、本作は全てがオリジナル曲で、かつ全てがレノン=マッカートニーの作曲。初主演映画『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』のサントラ盤として、映画の撮影で作った7曲と、新曲6曲を加えた作品です。

 オープニングを飾る表題曲「A Hard Day’s Night」で一気に引き込まれます。冒頭のジャーンと鳴らすコードのあと歌が始まりますが、この短いイントロがカッコいい。そして始まるノリの良いロックンロールはとてもキャッチーです。このキャッチーな楽曲はジョン・レノンが作りましたが、ボーカルはジョンとポール・マッカートニーがうまく連携しています。また「If I Fell」の少し憂いのある楽曲も、ロックンロール一辺倒から抜け出して幅が出てきた感じです。こちらはジョンの作曲にポールが手伝って完成したそうです。他にもシンプルなサウンドで奏でられるバラード曲「And I Love Her」もしっとりしていて良い。「Tell Me Why」や「Can’t Buy Me Love」といったノリの良いロックンロール曲も耳に残ります。前半に名曲が集中している印象ですが、後半も耳馴染みの良い楽曲揃いです。

 とにかくキャッチーな楽曲の宝庫。ポップさが加わったロックンロールな楽曲群はあちこちにフックがあって、きっと何かしら引っ掛かることでしょう。
 また特徴的なジャケットアートも、あちこちにパロディやオマージュのようなものを見かけるので、ジャケットアートから既に影響力のある作品です。

A Hard Day’s Night (2009 Remastered)
The Beatles
 

Beatles For Sale (ビートルズ・フォー・セール)

1964年 4thアルバム

 クリスマスに間に合うようにと、前作から僅か5ヶ月でリリースされた本作。クリスマスセールとかけて『Beatles For Sale (ビートルズ売出し中)』と名付けられました。ちなみに影響されたかされていないのか、ザ・フーもパロディのような『The Who Sell Out (ザ・フー売切る)』という作品を後にリリースしています。『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に影響されたと言われていますが。

 多作のビートルズでも流石に制作期間が足りなかったようで、前作では全曲オリジナル曲でしたが、本作では初期2作と同様に、全14曲中6曲がカバー曲という構成です。

 ポール・マッカートニーがデビュー前に作曲したという「I’ll Follow The Sun」。このアコースティックで透明感のあるバラードは染み入ります。また「Eight Days Week」のメロディラインは明るい気分になりますね。本作で唯一、初期ベスト『赤盤』に採用されたキャッチーな1曲です。また「Every Little Thing」はイエスがカバーしていてそちらを先に知ったのですが、アレンジはイエスの方が好みだったりします。ただしメロディの良さはビートルズの賜物でしょう。
 カバー曲では、チャック・ベリーの「Rock And Roll Music」が良い出来で、ノリの良いロックンロールをジョン・レノンが激しく歌います。ロックンロールはジョンの十八番ですね。

 少し内省的な雰囲気を増したアルバムですが、メンバーが笑っていないそのジャケットにもアルバムの雰囲気を感じさせます。それでも耳馴染みの良さは変わらず、聴き心地の良い作品に仕上がっています。

Beatles For Sale (2009 Remastered)
The Beatles
 

Help! (ヘルプ!)

1965年 5thアルバム

 旧邦題『4人はアイドル』。なんだその邦題は…。
 さて本作は初期ビートルズの傑作です。超名曲「Yesterday」と「Help!」が有名ですが、カーペンターズがカバーした「Ticket To Ride」も収録。耳馴染みの良い楽曲が並びますが、この3曲が突出しすぎている感はあります。主演映画『ヘルプ!4人はアイドル』の楽曲と、新録の楽曲を収録しており、制作背景は『ハード・デイズ・ナイト』みたいですね。
 手旗信号のジャケットが印象的ですが、当初「HELP」を表現しようとしたところ見た目が良くなかったことから今のポーズとなったそうです。ポーズを優先したこの手旗信号を読むと「NUJV」になるんだとか。

 「Help!」はノリの良いロックンロールで、ジョン・レノンがアイディアを出し、ポール・マッカートニーが手伝って完成した楽曲です。ジョンが軽快に歌いますが、加熱する人気に対しての悲鳴を歌にしたようです。また「You’ve Got To Hide Your Love Away」も地味に良い出来です。そしてレコードでいうA面最終曲「Ticket To Ride」は「涙の乗車券」という邦題で有名ですね。メロディアスで歌いたくなります。ジョンが作曲し、リードボーカルも取った曲です。初期の名曲はジョンが牽引してきたとしみじみ思います。しかしポールが才能を爆発させた「Yesterday」が本作では一番よかったり。笑 ジョンに煽られて素晴らしい楽曲を生み出すことになるポールは、稀代のメロディメイカーとして才能を開花させます。ポールが夢の中でこの曲が浮かび、周りに聴かせても誰も知らなかったことから自身のオリジナル曲として認識し、世にリリースされることになります。この楽曲は「世界で最も多くカバーされた曲」としてギネス記録を持ちますが、音楽の教科書で初めて知る人も多いでしょう。サビらしいサビを持たない、良く聴くと不思議な展開をする楽曲ですが、あまりにメロディが良い素晴らしい楽曲だと思います。この楽曲で締めないのがビートルズらしいのですが、ラストはノリの良いロックンロールナンバー「Dizzy Miss Lizzy」で締めます。

 なおこの時期はローリング・ストーンズと全英チャート1位を奪い合っていたそうです。1964年から1966年末までずっとビートルズかローリング・ストーンズが1位を独占していて、ほかにはボブ・ディランと『サウンド・オブ・ミュージック』のみがチャート争いに現れたそうです。

Help! (2009 Remastered)
The Beatles
 

Rubber Soul (ラバー・ソウル)

1965年 6thアルバム

 ビートルズ中期に突入しますが、本作はロック史においても非常に重要な1枚だと思います。これまでのアルバムと言えばシングルの寄せ集めだったり一発録りも多かったのですが、アルバム制作に重きを置き、多様な楽器や多重録音などを活用した作品です。アルバムの重要性が増し、ロック界に数多くの名盤を生むきっかけを作った作品ではないかと思います。作曲センスに優れ、アイドル的な扱いだったのがまさしくアーティストに変わった瞬間だと思います。
 なおタイトルの『ラバー・ソウル』についてはエピソードがあります。米国の黒人ブルースミュージシャンが、ローリング・ストーンズのことを「プラスティックソウル(=偽りのソウルミュージック/偽りの魂)」と呼んだそうですが、これを揶揄して、更に「Rubber Sole=ゴム底靴)」とかけて「それなら僕たちは『Rubber Soul (=ゴムのソウル)』だね」ということでこのタイトルになったのだとか。ゴムのように多様に変化する音楽性を指しているのかもしれませんね。

 ポール・マッカートニーが叫ぶ「Drive My Car」でノリ良く始まります。続いて「ノルウェーの森」の邦題で知られる「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」はジョージ・ハリスンがシタールを聴かせます。西洋音楽でない要素をポップミュージックに持ち込んだ初の楽曲とされ、音楽的な拡がりを見せ始めます。ジョージはインド音楽に傾倒していくことになります。そんな楽曲ですが、しっとりしていてとてもメロディアスです。コーラスを多用する「You Won’t See Me」。同様にコーラスを多用し哀愁漂う「Nowhere Man」はこのメロディが涙を誘いますが、こちらはジョン・レノンの作。そしてジョージ作曲の「Think For Yourself」はコーラスの多用に美しさがあります。ポールが作曲しジョンが手伝った「Michelle」、これもアンニュイで哀愁漂うメロディも美しい。「Michelle ma belle (ミッシェル、美しい)」とフランス語で韻を踏んでいます。アンニュイな楽曲と言えば「Girl」もそう。またイントロのギターが美しい「In My Life」では、バックにチェンバロのような音色が聞こえます。これはプロデューサーでもあるジョージ・マーティンが弾いたピアノを録音、そのテープを半分の速度で再生してオーバーダビングしたのだそうです。

 全体的に内省的な雰囲気が漂うアルバムに仕上がっています。前作からの大きな成長を感じますが、次作で更に成長を見せてくれます。

Rubber Soul (2009 Remastered)
The Beatles
 

Revolver (リボルバー)

1966年 7thアルバム

 本作はサイケデリックに振った作品で、中期の名盤です。
 コンサートで再現困難な楽曲が多かったのもありますが、本作はコンサートで披露されることはなかったそうです。本作リリースは1966年8月5日ですが、1966年8月29日を最後にコンサート活動を終了したのもあるかもしれません。

 ジョージ・ハリスンの「Taxman」から始まりますが、ノリの良い名曲です。本作にはジョージの楽曲が3曲収録されていますが、シタールをバリバリ使ってインド音楽への傾倒が顕著な「Love You To」、もう1曲はキャッチーな「I Want to Tell You」。ジョージの才能の開花を感じさせます。
 さて曲順に辿ると「Taxman」に続く2曲目はポール・マッカートニー作曲の「Eleanor Rigby」です。これが本作でも1、2を争う名曲だと思います。ストリングスが印象的ですが、メロディラインも美しい。また、ポール作曲のラブバラード「Here, There And Everywhere」も美しいです。ポールのメロディメイカーとしての才能はビートルズ随一、いや、世界でも有数でしょう。「Yellow Submarine」はポール作曲ですがリンゴ・スターが歌います。作曲が苦手なリンゴですが、おどけたボーカルは愛嬌があって魅力的ですね。日本でも「イエロー・サブマリン音頭」なんて日本語カバーが流行ったようです。他にも、ポール作曲の楽曲ではキャッチーな「Good Day Sunshine」やメロディアスな「For No One」等も耳に残ります。
 さてこれまでのビートルズを牽引してきたのはジョン・レノンのロックンロール曲ですが、本作では他のメンバーの成長もあってか、前半ではあまりジョンの気配がありません。中盤以降は「She Said She Said」のようなサイケデリックを少し感じさせる楽曲や、ギターリフがカッコいいロックンロール「And Your Bird Can Sing」等で主張していますので安心です。笑
 さてラスト1つ前の「Got To Get You Into My Life」で綺麗に纏めに入りかけたあとにぶちこまれる、強烈なラスト曲「Tomorrow Never Knows」。脳みそを掻き乱して目が回るようなサイケデリック全開の楽曲で、非常に強烈なパンチ力を持ちます。ジョンが作曲し、ポールのアイディアでテープを繰り返す手法を用いています。サイケデリックロック時代の幕開けを感じさせる超名曲です。なおミスチルも同名の名曲を出していますが、洋楽へのオマージュが多いので間違いなくビートルズを意識したことでしょう。

 アルバムとしての纏まりには欠けるものの、溢れんばかりのアイディアが詰まっていて、そして美しい歌メロの宝庫です。1曲たりとも捨て曲がないどころか、名曲じゃない楽曲を探すのが難しい。これまでの作品も名盤でしたが、ビートルズは本作で更に高みへといくのでした。レビューにあたり順を追って聴いていますが、それまでの作品と、『ラバー・ソウル』・『リボルバー』の2作品の間で劇的な成長を感じます。もちろん初期は初期で魅力があるのですが、本作は本当に凄い作品です。

Revolver (2009 Remastered)
The Beatles