🇺🇦 Antony Kalugin (アントニー・カルージン)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Stellar Gardener

2021年

 ウクライナ第二の都市ハルキウ出身のミュージシャン、アントニー・カルージン(フルネームはアントン・アレクサンドロヴィッチ・カルージン)。1981年2月11日生まれ。本国では著名なキーボード奏者で、カルファーゲン、サンチャイルド、ホッグワッシュといったシンフォプログレバンドの中心人物です。バンド活動と並行してソロでも多くの作品をリリースしています。
 本作は全ての演奏をアントニー自身でこなしたというソロ作です。2020年に亡くなった実母への追悼から制作され、前作から僅か3ヶ月のスパンでリリース。ガーデニングを好んだという母のイメージが楽曲に表れているのだとか。それぞれ20分に渡る「Stellar」と「Gardener」という2つの大曲から成り、残り4曲はボーナストラックという構成です。シャチが舞う幻想的なジャケットに惹かれて聴いてみました。このクリスチャン・ラッセンを想起させるジャケットアートはイゴール・ソコルスキーの作。

 20分に渡る1つ目の大曲「Stellar」。夜空を眺めるかのようにひんやりとスペイシーなサウンド、そして列車の効果音がバックに流れるオープニング。そして1分過ぎから晴れやかな音色が広がりますが、キャメルのように叙情的でメロディアスです。幻想的な音が立ち込める中、跳ねるようなベースに爽快なドラムが躍動感を与えます。リズムチェンジを繰り返して場面転換しながら、メロウなギターやカラフルなシンセサイザーで、心地良いメロディアスなサウンドに浸れます。7分頃から勢いを増し、程よくスリリングなメリハリある演奏で楽しませます。10分手前くらいから静けさが訪れ、美しくもメランコリックな音で感傷的な気分に。ハードになって引き締めたかと思えば、幽玄な音を聴かせたりと変化に富んでいます。終盤は緊張が張り詰めますが、そこから優しく穏やかな音へと緩急つけて、ラストは感傷的なピアノソロにヴァイオリンが絡んで穏やかに締め括ります。
 そしてもう1つの大曲「Gardener」は21分弱。本家バンド活動カルファーゲンで活躍する女性ボーカルのオルハ・ロストフスカがゲスト参加しています(ボーカルといってもほぼ大半は演奏ですが)。カラフルなシンセを軸に、駆け抜けるようにドライブ感のある序盤。トリッキーなリズムを取り入れつつも、勢いに満ちたスリリングな演奏は高揚感を掻き立てます。5分辺りからサックスが絡んで楽曲に変化をもたらしたかと思えば、エフェクトをかけて天から響くかのような幻想的なボーカルが。アントニーとオルハが演奏に埋もれそうな優しい声を聴かせます。アコギやフルートが出てくる7分台はトラッド風ですが、そこから怪しげな静寂、そしてドラマチックな演奏で盛り上げます。大団円を迎えそうな雰囲気ですがまだ21分のうちの半分、ようやく折返し地点。そこから加速したのち、切なくノスタルジックな演奏へ。カラフルかつ叙情的な鍵盤使いは『静寂の嵐』の頃のジェネシスのような切なさ。15分頃から再びスケール感を増して、ときにヘヴィな音も交えながらラストに向けて引き締めます。最終盤の強引なリズム展開も印象的。
 ここからはボーナストラックで、「Stellar」や「Gardener」のパーツと思しき4分前後の楽曲が並びます。「Stellar Castle」は冒頭から暗く悲壮感が漂いますが、そこから幽玄の東洋的なメロディを聴かせます。後半はハードな演奏で引き締めつつ、スケール感を増します。メランコリックな良インストですね。続く「Stellar Garden」、これが中々良い。躍動感や疾走感に満ちてワクワクさせてくれる部分が濃縮されていて、時折ハードな側面を見せて緊張を与えつつ、そこから晴れやかな音色を奏でて明るい気分にさせてくれます。終盤はスペイシーで華やかです。「Stellar Age」は重厚なオルガンで幕を開けます。前半はジェネシスやスティーヴ・ハケットを想起させる壮大で優雅な演奏。中盤以降はヘヴィな側面を見せつつ、リズムチェンジを多用してスリリングな演奏を繰り広げます。「Stellar Heart」は落ち着いた雰囲気の楽曲で、後半のピアノソロが美しいですね。しっとりとした演奏で、途中からヴァイオリン等が絡んで優美な演奏を聴かせて締め括ります。

 ジャケットアートのように、幻想的でカラフルな世界が広がります。キャメルやジェネシスのファンに訴求できそうな良作でした。
 なおAmazonではデジタル配信しか見つかりませんでしたが、プログレ系専門店だと輸入盤CDも取り扱っているみたいです。

Stellar Gardener
Antony Kalugin
 
 
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