🇯🇵 BLANKEY JET CITY (ブランキー・ジェット・シティ)
レビュー作品数: 3
スタジオ盤
1992年 2ndアルバム ※THE BLANKEY JET CITY名義
「ブランキー」の略称で親しまれるBLANKEY JET CITYは、同年代のTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとともに日本のロックシーンに大きな影響を与えたロックバンドです。「ベンジー」の愛称で呼ばれる浅井健一(Vo/Gt)と、照井利幸(B)、中村達也(Dr)の3人で1987年に結成。ブランキーという名の黒人がジェットシティという街の市長になるという、そんな自分たちの作った物語がバンド名の由来だそうです。結成から1994年頃までTHE BLANKEY JET CITY名義で活動していましたが、サインを書くのに面倒だという理由でTHEが抜けて今の名前になりました。
本作はアマチュア時代から演奏してきた楽曲を中心にレコーディングしたそうですが、結果としてライブでもよく演奏される代表曲を多く収録した作品に仕上がりました。土屋昌巳によるプロデュース。
オープニングを飾るのは「RAIN DOG」。ダーティなイントロから緊張が走ります。そして疾走し出すと、独特な声の浅井の歌が始まります。まくし立てるような歌唱だからか、説明的な歌詞が際立って独特な世界観を築きます。そして歌のバックで照井のベースがとてもカッコ良い。続く「冬のセーター」は骨太でクールなロックンロール。キレ味のあるリフや、中村が時折放つ銃弾のようなドラムがスリリングです。音数は少ないですが、寒々しい空気が伝わります。「SOON CRAZY」は強靭でダイナミズムに溢れるリズム隊がノリノリですが、浅井の歌はやや狂気じみた雰囲気が漂います。「回り…始めたぁッ!」が強いインパクト。続く「ヘッドライトのわくのとれかたがいかしてる車」は渋くてクールなギターとうねるベースが強烈です。ラテン風味のパーカッションはノリが良いものの、どこかレトロで怪しげな空気。「絶望という名の地下鉄」は、弾けるような幕開けに珍しくキャッチーさを見出せます。でもキャッチーなのは最初だけで、ブンブン唸るベースをはじめ強い緊張が漂います。独特のタイトルは、テネシー・ウィリアムスの戯曲『欲望という名の電車』をもじったのだとか。「とけちまいたいのさ」は照井のベースソロで幕開け。レゲエのようなカッティングを用いてリズミカルですが、レゲエのような陽気さはなく、少し暗くてダーティな印象。そして「★★★★★★★」。★で伏せられた本当のタイトルは「人殺しの気持ち」。異様にハイテンションかつ疾走感に溢れた楽曲で、アドレナリンが吹き出そうなほどスリリングです。煽り立てるような演奏は切れ味抜群でヒリヒリしており、歌詞も攻撃的。「クリスマスと黒いブーツ」は躍動感があり、ギターも陽気な音色を奏でます。でも演奏は時折緊張感を放つし、浅井の悲痛な歌唱は楽曲に影を落とします。そして表題曲「BANG!」。突如鳴るアコギが、ガレージロック風味のアルバムの中でも存在感を放ちます。リズミカルで軽快ですが緊張も漂います。憂いのあるメロディラインが魅力的です。続く名曲「ディズニーランドへ」もアコギをかき鳴らしますが、速弾きで緊張が漂います。タイトルとは裏腹に、とにかく暗くて重たい。病んでしまった友人からディズニーランドへ誘われるも、断りたいと思う冷たい自分をヒステリックに嘆きます。歌が盛り上がると演奏も重たさを増します。「二人の旅」はメロウなギターが渋い、落ち着いた楽曲です。途中から徐々にリズム隊が盛り上がり、リズミカルな演奏で楽しませます。終盤はダンサブルな演奏をひたすら繰り広げますが、その中でオルガンの味付けが良い感じ。ラスト曲は「小麦色の斜面」。本作においては珍しく明るい雰囲気の楽曲です。グルーヴィなベースが良い。全編通してスリリングですが、終盤は特にハイテンションでアツいです。
クールで骨太なロックンロールが詰まった一作。全編を通して緊張感溢れる演奏でスリリングです。
1993年 3rdアルバム ※THE BLANKEY JET CITY名義
ライヴアルバム『Live!!!』を挟んでリリースされた3rdアルバムです。前作同様に土屋昌巳のプロデュース。BLANKEY JET CITYの代表曲が数多く詰まっており、ファンの間では『Bang!』と人気を二分する傑作です。なお代表曲「悪いひとたち」は歌詞に「麻薬」と含まれていたため、本作収録時に該当部分が消されています(後にベストアルバム『THE SIX』で完全版を収録)。
ハイテンションな「PUNKY BAD HIP」で幕開け。浅井健一の吐き捨てるようなタイトルコールから、緊張に満ちたスリリングな演奏を繰り広げます。シャウト気味に歌う語り口調の歌詞は、独特の世界観を築き上げます。バイク乗りのロックンロールで、エンジンを吹かすようなゴリゴリと骨太な演奏。勢いのあるスタートダッシュを切ります。続く「RED-RUM (夢見るBELL BOY)」は照井利幸のゴリゴリベースがカッコ良い。ジャジーでオシャレな雰囲気を持ちつつも、ゴリゴリと武骨な演奏がスリリングです。そして名曲「D.I.J.のピストル」。レッド・ツェッペリンの「Rock And Roll」から拝借したという中村達也のパワフルなドラムが強烈なロックンロールです。なおD.I.J.とは、歌詞にもあるように「ドキドキするようなイカレタ人生」の略だそうで…ちょっとダサいですが笑、でもハイテンションな楽曲はとてもスリリングでカッコ良いです。「死神のサングラス」は静寂に緊張の糸がピンと張り詰めたイントロからスリリングです。音数が少ないのですが、その中で強烈に主張するベース。初期ポストパンク的な、ヒリヒリとした演奏で何をしてくるか分からないスリルがあります。歌詞の中でセックス・ピストルズの名を強烈にシャウトする場面はちょっとビックリ。続いて「12月」では、メロウで幻想的なギターとうねるベースが、緊張を保ちつつも心地良い浮遊感を提供します。そして憂いに満ちたサビメロの美しいこと。メロディアスなギターも魅力的です。「ROBOT」は強い哀愁が漂う楽曲。浅井の憂いのあるアコギ弾き語りから悲しげなオルガンが加わり、そして強靭なリズム隊が楽曲をドラマチックに盛り上げます。中でも爆音ベースが強い存在感を放ちます。一転して「ライラック」は全体的に明るい雰囲気。アコギやエレキギターが小気味良く、浅井の歌も楽しげですね。「ヴァニラ」は6分半の長尺曲。暗くてブルージーな雰囲気が漂います。サビを悲劇的な演奏で引き立てます。暗く重いです。「車泥棒」は骨太なロックンロールで、エッジの鋭いリフがカッコ良い。沸々と湧き上がる感情を無理やり抑え込むかのような緊張が走ります。続いて「ICE CANDY」ではアコギをかき鳴らして緊張を高めると、ダイナミズムに溢れるドラムがドコドコ、ベースも唸る唸る。サビメロではパンキッシュに疾走します。爆発力があり、爽快でとてもカッコ良いです。そして名曲「3104丁目のDANCE HALLに足を向けろ」。ファンキーかつ切れ味抜群の疾走サウンドに、まくし立てるような早口の歌。速くてテクニカル、そしてクールでオシャレな感じすらあります。アークティック・モンキーズを10年以上先取りしたような印象。ラストは問題作「悪いひとたち」。9分超の楽曲です。フォーキーで優しい演奏にポエトリーリーディングのような浅井の歌が乗りますが、初っ端から凄惨な歌詞世界が広がります。どうしようもない世界に希望を見出すような感じでしょうか。アウトロはストリングスも混じって壮大です。
高い緊張感に疾走感を加えたスリリングな楽曲を軸にしつつ、表現力が増して緩急ついた楽曲構成。とてもカッコ良いです。個人的には『Bang!』よりこちらが好みです。
ライブ盤
1992年 ※THE BLANKEY JET CITY名義
『Bang!』リリース後に行われた、渋谷公会堂でのライブを収めたライブ盤です。1stと2ndアルバムの楽曲を収録。スタジオ録音で見せた強い緊張感はライブでも健在で、ヒリヒリとした攻撃的でスリリングな演奏が繰り広げられます。
オープニングSEの後「絶望という名の地下鉄」が始まりますが、初っ端から中村達也のダイナミックなドラムソロに気持ちが高ぶりますね。中盤からは武骨で強靭なリズム隊が際立ち、ピリピリと緊張感が漂います。そのまま続けざまに「冬のセーター」へ。ダーティなイントロからスリリングです。リフがカッコ良い。浅井健一の歌が始まると最小限の音数で、緊迫した空気を醸し出します。悲痛混じりの歌も魅力的ですね。「僕の心を取り戻すために」はパンキッシュな疾走ロックンロール。煽り立てるように速いドラム、そして中盤のギターソロもカッコ良いです。アウトロではそれぞれの演奏が激しくぶつかり合い、とてもスリリング。続く「Bang!」で一旦緊張が解けます。ノリの良いビートで跳ねるような感覚。でも歌メロにはどこか憂いが漂います。「TEXAS」はブルージーなハードロック風のイントロから急激に疾走。高速ドラムに武骨なベースが強い緊張を放ち、浅井のギターは速いながらも渋さがあります。「2人の旅」は渋いイントロを聴かせると、音数少ない中で始まる浅井の歌が意外に上手いと実感します。アウトロの渋くメロディアスなギターも中々聴きごたえがあります。「不良少年のうた」は照井利幸のベースソロで開幕。いつ爆発するのかわからない不穏な静寂が漂い、サビで浅井がシャウト気味に歌うとロックンロールな風合いに。「SOON CRAZY」も怪しげなイントロから緊張が漂います。そしてダーティに走り始め、武骨でカッコ良いロックを繰り広げます。リズム隊がマッチョで骨太な印象。「MOTHER」は照井の重く太いベースがズンズン響きます。緊迫したスリリングな演奏ではベースが際立ちます。悲痛のような浅井の歌も強烈。そして「ディズニーランドへ」ではアコギに持ち替えてスパニッシュのような速弾き。ピリピリと張り詰め、暗鬱な空気が立ち込めます。ヒステリック気味に歌う歌詞が切なくて辛いです。「小麦色の斜面」はハイテンションで勢いに満ちていますが、ヒリヒリとした楽曲が多い中で明るい雰囲気のこの楽曲には救われますね。中村のドラムが雨あられのように降り注ぎ、照井のぶっといベースはソロも用意されております。浅井のギターと早口な歌は軽快。続く「胸がこわれそう」はゴリゴリベースが楽曲の核を担う骨太なロックンロール。浅井の歌唱は割とリラックスした感じで、少し緊張が解けた感じがします。「RAIN DOG」は鈍器で殴るかのように、ゴリゴリとした暴力的な演奏が強烈でカッコ良い。一撃一撃はヘヴィですが、ノリノリなロックンロールでもあり爽快です。最後は「Baby Baby」。タッタカタッタカとパワフルな高速ドラムから、悪びた雰囲気のロックンロールを展開します。骨太でノリが良い演奏で楽しめますね。スカッとラストを終えます。
ハイテンションで、強い緊張が張り詰めた演奏を繰り広げますが、終盤は楽しげでノリノリな雰囲気。ライブバンドなのだと実感できるカッコ良さです。
関連アーティスト
同時期に活躍したロックバンドで、プライベートでの交流も深いです。
類似アーティストの開拓はこちらからどうぞ。