🇬🇧 Various Artists『C86』

レビュー作品数: 1
  

編集盤

C86

1986年

 英国の音楽雑誌『NME (New Musical Express)』による、インディーレーベルの新人バンドを集めた伝説的なコンピレーションアルバムが本作です。ギターポップ楽曲が詰まっており「『C86』のような音楽」を指すトゥイーポップというジャンルが後に誕生するくらいに、大きな影響を及ぼしました。本作に参加したバンドからはプライマル・スクリームやパステルズらが成功を収めていますが、数年程度の活動で終えてしまった短命のバンドも多いです。
 当初はカセットテープ形態のみの発売で22曲入りでした。CDではデラックスエディションということで3枚組72曲入りと大幅に増しています。ストリーミングだと「コンパクトエディション」と題して17曲に絞られていますが、本項ではこのコンパクトエディションをレビューします(なお、プライマル・スクリームもパステルズも入っていません…)。

 コンパクトエディションは、マイティ・レモン・ドロップスの「Happy Head」で幕開け(オリジナルでは2曲目)。ダイナミックで弾けるようなリズム隊が爽快で、そこにヘタウマな歌が乗ります。ノリが良く、そして清涼感があります。
 続いてマイティ・マイティの「Law」。リズミカルなドラムに、リードベースとも言うべき主張の激しいベースが軸を作ります。ギターは優しく軽やかで、ベースを引き立てる側に回っていますね。思わず踊り出したくなるような、小気味良い演奏が気持ち良いです。ボーカルはスミスのモリッシーっぽい雰囲気。
 スタンプの「Buffalo」は一風変わった楽曲で、フニャフニャした脱力系のひねくれたサウンドが独特です。貫禄ありそうなオッサン声ですが、歌がヘタクソなのがちょっと辛い。
 マッカーシーによる「Celestial City」は6/8拍子で奏でられる楽曲。テンポはゆったりとしていますが、ジャカジャカ鳴らすギターやシンバルの多いドラムなど、サウンドはラウドな感じ。メランコリックでアンニュイな歌声はモリッシーにも似ています。
 続いてザ・ジューン・ブライズの「Just The Same」は、キャッチーなアップテンポ曲です。ブラスやストリングス等を用いた演奏はくどくならない程度に程良く華やかだし、躍動感あるバンド演奏も爽やかですが、どこかノスタルジックな哀愁も漂います。
 ヤー・ヤー・ノーの「Another Side To Mrs Quill」はくぐもっていて、エフェクトをかけているのかアトモスフェリックなサウンドです。強靭なベースが楽曲の低音を支え、オーケストラなども用いつつどこかエキゾチックな感もあります。
 ザ・プリミティヴスによる「Lazy」。歪んだギターをかき鳴らしながら、演奏はリズミカルでノリノリです。でも歌はKeyが低いからか、テンション低くて不機嫌そうな雰囲気が漂います。
 ザ・バンド・オブ・ホリー・ジョイによる「Rosemary Smith」は、カラフルでサイケデリックなオルガンが際立っていて強い存在感を放ちます。そこに乗るボーカルはナルシーで、恍惚に浸るような歌い方です。
 そしてザ・ウェザー・プロフェッツの「Worm In My Brain」は、囁くようなボーカルで始まります。演奏は始めギターだけですが、グルーヴの強烈なベースやリズミカルなドラムが加わり、テンション低めながらもリズミカルな演奏に魅せられます。アコースティックな雰囲気とエキゾチックでサイケな感覚を併せ持ちます。
 ザ・ブリリアント・コーナーズの「Meet Me On Tuesdays」は軽快で魅力的なアップテンポ曲です。歪んだギターをかき鳴らしながらも、躍動感溢れるリズム隊が合わさって、爽快な演奏が繰り広げられます。晴れやかなトランペットや爽やかな歌メロを聴かせますが、歌唱スタイルもあってかどこか哀愁を纏っています。
 14アイスド・ベアーズの「Inside」は、ギターポップというよりもノイズポップというべきでしょうか。歪みまくったギターに唸るベース、そしてダイナミックで躍動感溢れるドラムが組み合わさって程良い爽快感があります。そこに乗る歌は素朴というか素人感満載ですが、メロディラインは結構キャッチーです。
 そしてザ・ジャスミン・ミンクスによる「World’s No Place」は躍動感あるアップテンポ曲です。ヘタウマなボーカルを除けば、力強いリズム隊と軽やかなギターによるノリ良く明るい演奏で楽しませてくれます。
 ビフ・バン・パウ!の「Love’s Going Out Of Fashion」はリラックスしてノスタルジックな雰囲気を醸しますが、ギターやブルースハープなどを重ねて情報量過多なサウンドというギャップがあります。キーの高い歌は若干無理している感じがします。
 ポップ・ウィル・イート・イットセルフの「Mesmerized」は僅か1分半のパンキッシュな疾走曲。ノイジーなギターを鳴らしますが、ミックスによりギターを抑えてブンブン唸るベースが前面に出ており、そこまで騒がしくないです。そして甘いボーカルを爽やかなコーラスワークで彩ります。
 続いて、ジャニターズの「Good To Be The King」。ノイジーなギターに爆音ベース、バタバタとしたドラムがパンキッシュな演奏を繰り広げます。こっちは前曲とは違って騒がしいですが、ノリノリで気持ち良いです。
 ザ・クレームによる「Gullible’s Travels」は、ギターがどこかノスタルジックな哀愁を醸します。甘酸っぱい演奏は魅力的ですが、ヘタウマなボーカルはちょっと残念かも。
 そして最後にジ・イノーマス・ルームの「I Don’t Need You」。テンポの速い躍動感ある演奏が気持ち良いですが、途中でスローダウンして一瞬まったりムード。そこから再加速して、軽快ですが煽られるような焦燥感もあります。

 異なるバンドの寄せ集めなのでスタイルが違うのは当たり前のはずですが、それでもギターポップという観点で比較的似通ったバンドが揃っています。大絶賛するほどでは無いですが、良曲も結構あって面白いです。コンパクトエディションは17曲入りで52分という程良いボリュームなので、ギターポップを知るのに適した作品だと思います。

C86
Deluxe 3CD Edition
Various Artists
 
 

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