🇬🇧 Catfish And The Bottlemen (キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメン)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

The Balcony (ザ・バルコニー)

2014年 1stアルバム

 キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメン(略称:CATB)は、英国ウェールズ出身のインディーロックバンドです。ヴァン・マッキャン(Vo/Gt)、ビリー・ビビー(Gt)、ベンジー・ブレイクウェイ(B)、ジョン・バー(Dr)で2007年に結成しました。2010年にはジョンからボブ・ホール(Dr)に交代しています。アークティック・モンキーズを手掛けたジム・アビスをプロデューサーに迎えた本作は、どことなくポストパンク・リバイバル色を残すインディーロックを展開します。

 オープニング曲は「Homesick」。イントロなく歌で始まり、小気味良いドラムがリズムを刻みます。途中からヴァンはパワフルな歌唱になり、それに合わせて演奏は力強さを増します。ビート感のあるドラムが気持ち良い。続く「Kathleen」は彼らの代表曲です。リズミカルで気持ちの良い演奏に、少し陰りのあるメランコリックな歌唱が特徴的。そしてサビでは感情たっぷりにシャウト気味の歌唱になります。カッコ良いですね〜。「Cocoon」は力強いイントロに始まりますが、歌が始まると激しさは去ってアンニュイな空気感に。陰りのあるサビはコーラスで引き立っていますね。そしてダイナミズムのあるドラムが楽曲を支えます。続く「Fallout」は哀愁に溢れていますが、刻むビートが高揚感を掻き立てます。躍動感とメロディアスな雰囲気を両立した良曲ですね。そして「Pacifier」は、ノイジーながらも清涼感に溢れるイントロからワクワクさせてくれます。疾走感の中に混じる寂寥感、キレのある演奏、そして力強い歌唱も合わさってキャッチーで魅力的な楽曲に仕上がっています。カッコ良い1曲ですね。「Hourglass」はアコギの弾き語りで始まり、少しずつ楽器は増えていきますが、全体的に牧歌的な雰囲気を保っています。素朴で温もりが溢れています。一転して「Business」は頭から力強いビートで始まります。爽やかさと憂いを両立した歌唱は優しいですね。耳に残る歌メロだけでなく、重低音が心地良くて魅力的です。「26」は弾けるような躍動感があります。盛り上がるのかと思えば、サビでは陰りや寂寥感が増す印象。「Rango」は荒削りなイントロで勢いをつけつつ、歌が始まると感傷的な気分に浸らせてくれます。また、中盤で一瞬音が途絶えた後、ノイズが増して轟音で埋め尽くしてきます。そして「Sidewinder」はメランコリックなフレーズを奏でるイントロで魅せられます。歌が始まるとファンクのような跳ねるベースに、ビート感のあるドラムがノリの良さを生み出しますが、メロディは感傷的です。最後に「Tyrants」。楽曲構成が目まぐるしいです。静と動の緩急をつけた中盤でメリハリをつけますが、終盤は先がまるで読めません。

 全編を通してドラムが気持ち良く、勢いのある楽曲が多くて聴きやすいです。40分にも満たない、サクッと終わるのも好印象です。

The Balcony
Catfish And The Bottlemen
 
The Ride (ザ・ライド)

2016年 2ndアルバム

 前作『ザ・バルコニー』の録音を終え、リリースの前にビリー・ビビー(Gt)が突如脱退。代わりにジョニー・ボンド(Gt)が加入しました。そして後期オアシスを手掛けたデイヴ・サーディをプロデューサーに迎え、制作された本作は全英チャート1位を獲得しました。ワニのジャケットがカッコ良いですね。

 「7」はボブ・ホールの力強いドラムと、ベンジー・ブレイクウェイの骨太なベースで始まります。前半の演奏はシンプルなので、キャッチーな歌メロが引き立ちますね。晴れやかなようで憂いも見せます。終盤はノイジーな演奏で楽曲を盛り上げます。続く「Twice」はアグレッシブなイントロから、アップテンポの楽曲が始まります。ヴァン・マッキャンの歌を引き立てるかのようなシンプルで比較的静かな演奏は、サビで爆発。グランジ…とは質感が違いますが、緩急が極端な演奏でインパクトを与えてくれます。終盤はややスローテンポになって、速さでも緩急つけます。「Soundcheck」はイントロなく歌が始まりますが、冷めたような歌唱がカッコ良い。終盤のギターソロもメロディアスで魅力的です。「Postpone」は少し陰りのある雰囲気で幕開け。そして途中からタッタカタッタカとリズミカルな演奏に乗せられます。リズムに変化を与えて飽きさせません。そして「Anything」もイントロなく始まります。安定感のあるリズム隊に、憂いのある冷めたボーカルで魅せます。サビでは豹変して激しさを見せますが、そんな中で陰りのあるメロディラインが良い感じ。「Glasgow」は小気味良くアコギを弾きながらヴァンが歌います。激しくロックしている楽曲が多い中、極力シンプルな楽曲でアルバムの流れに緩急をつけます。続いて「Oxygen」は叩きつけるような強烈なビートで開幕。6/8拍子(?)のリズミカルな感覚が気持ち良いです。2分強の「Emily」は本作では最短の1曲。程良い疾走感に憂いをたたえる楽曲です。「Red」は陰りのある楽曲で、激しくて焦燥感溢れるサビがスリリングです。感情たっぷりのギターソロも聴きどころですね。「Heathrow」はアコースティックな楽曲ですが、しんみりとした雰囲気が漂います。そして最後に「Outside」。力強いリズム隊と透明感のあるギターが歌を引き立てます。途中でリズムチェンジして引きずるような感覚を伴ったかと思えば、光が射し込むかのようなサビメロなど、変化に富んでいます。

 シングルカットされた冒頭3曲のみならず、クールでカッコ良い楽曲が詰まっています。本作も40分足らずでサクッと聴けるのが良いですね。

The Ride
Catfish And The Bottlemen
 
The Balance (ザ・バランス)

2019年 3rdアルバム

 キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメンの最新作となります。リリース直前に立て続けにシングルをリリースし、勢いづいた本作は全英2位を獲得しました。メンバーは前作に引き続きヴァン・マッキャン(Vo/Gt)、ベンジー・ブレイクウェイ(B)、ジョニー・ボンド(Gt)、ボブ・ホール(Dr)、プロデューサーはジャックナイフ・リー。

 リードシングル「Longshot」で幕開け。彼らのシングルの中では最も高い順位となりました(全英25位)。シンプルな演奏でヴァンの歌を引き立てつつも、リズム隊は骨太で、ズシンと力強いビートを刻みます。サビでの憂いのあるメロディが良い感じ。続く「Fluctuate」はスリリングな良曲です。ダイナミズムに溢れるドラムが高揚感を煽り、冷めたようなボーカルはサビでは感情たっぷりに歌って緩急をつけます。「2all」は陰りのある楽曲で、サビを終えると唐突に場面転換。2番での武骨なリズム隊がロックしててカッコ良いです。終盤にはノイズまみれの轟音ギターが楽曲に彩りを与えます。「Conversation」はシューゲイザー的なイントロで高揚感を掻き立てますが、歌が始まると一気にシンプルな演奏に。サビは分厚くて極端な緩急をつけます。「Sidetrack」は冷めたような淡々とした序盤から徐々に盛り上げていきます。力強いリズムビートが気持ちいい。そして「Encore」は、力強いイントロからワクワクさせてくれます。爽やかだけどどこか切ない雰囲気で、静と動の緩急も魅力的です。「Basically」は強靭なリズム隊が際立つ1曲で、ポストパンク的なトリッキーな楽曲構成です。「Intermission」は2分足らずの小曲で、音数少なく静かで淡々とした楽曲を展開。続いて「Mission」は前曲との対比もあって、躍動感たっぷりに高揚感を掻き立てます。かと思えばリズムチェンジの嵐で、無茶苦茶な楽曲構成で戸惑わせてきます。「Coincide」は硬質なイントロがカッコ良い。爽やかで少し陰りがある楽曲ですね。そしてラストは「Overlap」。リズムチェンジを駆使したトリッキーな楽曲ですが、終始ダンサブルなビートでカッコ良いです。最後がぶつ切りなのは仕様でしょうか…?

 作風としてはこれまでの延長上にあります。個人的には前作・前々作の楽曲の方が刺さりましたが、安定感のある作風です。
 2021年にはボブ・ホールが脱退、翌年には、既にジョニー・ボンドも脱退していたことが伝えられました。公式発表はありませんが、事実上の解散状態にあります。

The Balance
Catfish And The Bottlemen
 
 
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