🇺🇸 Guns N’ Roses (ガンズ・アンド・ローゼズ)
レビュー作品数: 3
スタジオ盤
1987年 1stアルバム
ガンズ・アンド・ローゼズ(通称ガンズ)は米国のハードロックバンドで、ハードロック界最後の大物と呼ばれます。全世界で1億枚以上を売り上げるモンスターバンドで、1985年にカリフォルニア州ロサンゼルスで結成。アクセス・ローズ(Vo)とイジー・ストラドリン(Gt)、元L.A.Gunsのメンバー3人で結成するも、元L.A.Gunsメンバーが相次いで脱退。ダフ・マッケイガン(B)、スラッシュ(Gt)、スティーヴン・アドラー(Dr)を新たに加えたラインナップでデビュー。バンダナを巻いたアクセルや、シルクハットを被ったスラッシュなど、キャラも濃ゆいですね。
ドラッグ、アルコール、暴力などの問題児ばかりを抱えたガンズは悪童として名を馳せ、見てくれは派手で攻撃的ですが実態はそうでもないハードロックバンドとは一線を画し、元来不良の音楽だったロックの原点に立ち返ったような破天荒さでした。楽曲についてもハードロックにパンクの攻撃性を足したような、スリリングな仕上がりになっています。
マイク・クリンクによってプロデュースされた本作は、デビュー作にして全世界で3000万枚以上を売り上げるという驚異的な大ヒットとなりました。デビュー作での売上枚数としては世界一でしょうか?なお、ロボットが女性を犯すというジャケットが問題視され、アクセスの腕に彫られたタトゥーをモチーフにした今のデザインに変更されました。
オープニング曲「Welcome To The Jungle」から圧倒されます。アクセルの終始ハイトーンの歌や「シャナナナナナナナ…」が強烈なインパクト。スラッシュのギターリフや、終盤のバッキバキのベース等もカッコ良いです。とにかくカッコ良い以外の言葉が出てこない、ハードロック永遠のアンセムです。楽曲から伝わってくる悪びれた雰囲気は、見せかけじゃなくて本当に悪童だったというね。そんな素行の悪さもこの楽曲の魅力に繋がっているのかもしれません。続く「It’s So Easy」も、ヘヴィで攻撃的なサウンドはカッコ良い。しかしアクセルのボーカルは、前曲のハイトーンボイスを聴いた後だとまるで別人のようにトーンが低く、そして渋い。終盤にはハイトーンボイスが戻ってきますね。疾走感に溢れる名曲です。「Nightrain」はパーカッションとメタリックなベースが強烈で、そしてギターも非常に鋭利でザクザク切り込んできます。そんな強烈な演奏に負けじとボーカルも後半に向かうにつれてどんどんヒートアップしていきます。「Out Ta Get Me」はヘヴィなロックンロール。ノリで押すタイプの楽曲ですが、結構メロディラインも魅力的です。続く「Mr. Brownstone」は抜群のグルーヴ感を持つ楽曲で、身体が勝手に動いてしまうような心地良いリズム。サウンドの軸となるベースを中心に、独特のリフが耳に残ります。渋さも感じるカッコ良い1曲です。「Paradise City」は大ヒットシングルで、とてもキャッチーなメロディ。シンセサイザーはアクセルが弾いています。ゆったりと始まりますが、バキバキと唸るベースが加わってスリリングになります。そして終盤にテンポアップしてからの怒濤の展開は、非常に激しくて緊迫しており鳥肌ものです。
レコードでいうB面、アルバム後半は「My Michelle」で始まります。ダークな雰囲気の1曲ですが、サビで疾走する展開が良い感じ。続く「Think About You」はノリの良いロックンロール。哀愁漂うサビの裏で奏でられるアゴキのアルペジオが美しい。そしてこれまた屈指の名曲「Sweet Child O’ Mine」。数多くのアーティストにカバーされています。強烈に印象に残るイントロのギターソロはスラッシュの名演でしょう。アクセルの歌もとてもメロディアスで、ガンズはロックンローラーであるだけでなくメロディアスなバラードも一級品です。終盤の泣きのギターも切なくてたまりません。続く「You’re Crazy」は前曲の切ない雰囲気をぶっ飛ばす、パンキッシュな疾走曲。カッコ良いです。「Anything Goes」はギロが鳴ってたり、トーキングモジュレーターでワウワウ唸っていたり、かなり実験的。でもキャッチーなメロディとノリの良さで、カッコ良いロックンロールに仕上がっています。ラスト曲は「Rocket Queen」。メタリックなベースがイントロを主導します。渋い。間奏の喘ぎ声は、実際にシている場面を録音したのだとか…エロい。終盤に転調して哀愁漂うメロディアスな楽曲に変貌。最後までスリリングな名曲揃いでした。
名曲揃いで、文句なくハードロック史上トップクラスの名盤です。デビュー作でこのクオリティは奇跡的です。ハードロックをこれから聴こうと思っている人はまず最初に手にすべき作品ではないでしょうか。
なお、30周年となる2017年も特に記念盤も出ず、長らくリマスターされていませんでしたが、待望のリマスター&デラックスエディションが2018年ようやくリリースです。
1991年 3rdアルバム
ミニアルバム『GN’R Lies』(海外では2ndアルバム扱いらしい)をリリースしたあと、ドラッグ中毒を理由にスティーヴン・アドラー(Dr)を解雇。後任にマット・ソーラム(Dr)を迎え、またディジー・リード(Key)も同時期に加入しました。アクセス・ローズ(Vo)、スラッシュ(Gt)、イジー・ストラドリン(Gt)、ダフ・マッケイガン(B)と合わせて6人体制。
本作と次作『ユーズ・ユア・イリュージョン II』は同時発売しました。元々曲数を半分にして1枚に纏めるよう圧力もあったようですが、ガンズ側は全部詰め込んで2枚に分けて発売。実質2枚組のような作品です。全16曲、76分…長いよ。楽曲を厳選せずに全部惜しみなくリリースした分、微妙な楽曲も含み玉石混交です。『II』も合わせてマイク・クリンクとバンドの共同プロデュース。
オープニング曲「Right Next Door To Hell」はメタリックなベースからエッジの効いたギターリフが鋭く切り込んできます。アグレッシブで、軽快なロックンロールです。出だしは素晴らしいスタート。「Dust N’ Bones」は渋い演奏に乗せて、気だるい歌唱を披露するのはアクセルではなくイジー。本作ではいくつかイジーがリードボーカルを取っています。続いてポール・マッカートニーのカバー曲「Live And Let Die」。原曲が既にスリリングな楽曲で、原曲に比較的忠実なアレンジ。原曲と比べると、荒くエッジの立った鋭いギターが印象的です。「Don’t Cry」はブルージーなバラード曲。ハードな楽曲の多い本作の中で、こういうメロディアスな楽曲は光りますね。間奏の哀愁漂うギターがたまりません。「Perfect Crime」はアグレッシブな疾走曲。異様なテンションで畳み掛けるように迫ってきます。イジーがボーカルのゆったりとした「You Ain’t The First」、泥臭いブルージーな「Bad Obsession」と続いた後、ヘヴィな「Back Off Bitch」。イントロは鈍重ですが、テンポを少し上げてキャッチーなロックンロールを展開します。疾走ドラムが煽る「Double Talkin’ Jive」は3つ目のイジーボーカル曲。ゴリゴリしたベースがカッコ良い。終盤唐突に静寂が訪れ、アコギの美しい音色が響きます。そして9分に渡るバラード曲「November Rain」。哀愁漂うアクセルの歌が染み渡ります。また、終盤のギターが奏でる哀愁のメロディの美しいこと。長いのですが、壮大で圧巻です。続く「The Garden」はアリス・クーパーをゲストボーカルに招いています。絡みつくような、怪しく不気味なボーカルが印象的。「Garden Of Eden」は疾走ロックンロール。まくし立てるような早口ボーカルを中心に、勢い任せに疾走するので爽快です。「Don’t Damn Me」は正統派ヘヴィメタル的な、ノリの良い楽曲です。メタリックなリフがカッコ良く、ベースがバキバキ唸っています。「Bad Apples」は軽快なピアノとグルーヴィなベースが主導するロックンロール。これもダフのベースの存在感が凄い。「Dead Horse」はアコギでしっとり始まりますが、突如ヘヴィなハードロック曲に変貌。でも激しく歌う歌は結構メロディアスです。ラストは10分長の「Coma」。マットのヘヴィなドラムを中心に、全体的にダークな雰囲気が支配するハードな1曲です。プログレメタル的な1曲で、複雑な構成ですが変化に満ち溢れていて、とてもスリリング。
泥臭くブルージーなルーツミュージックや、バラードだとか色々詰め込まれた本作。『II』と比べるとハードな楽曲が多い印象です。長いですが、時折素晴らしい名曲が顔を出します。
1991年 4thアルバム
『ユーズ・ユア・イリュージョン I』と同時発売。実質2枚組の片割れです。全14曲76分。ジャケットアートは、ラファエロの『アテナイの学堂』の一部分を切り出して加工したものだそうです。
なお『I』と『II』と合わせて全世界で3000万枚以上売り上げました。
1曲目の「Civil War」から8分近い大曲。アコギとピアノでしっとり始まった後、ノイジーなサウンドでドラマチックに盛り上げます。哀愁のメロディは切なく、また終盤に再び現れるピアノが良い味を出しています。続く「14 Years」はイジー・ストラドリンがリードボーカルを取る楽曲です。軽やかなピアノとバキバキのベースが印象的。「Yesterdays」はメロディアスな楽曲。アクセル・ローズの歌うメロディラインが美しいです。そしてボブ・ディランのカバー曲「Knockin’ On Heaven’s Door」。渋くてブルージー。そしてヴァースの音数が少ないので、哀愁あるメロディが引き立ち、ドラマチックなサビを際立たせます。間奏のギターソロも素晴らしい。ラストはゴスペル風で壮大です。ここまでゆったりとした楽曲が続きましたが、「Get In The Ring」はアップテンポ曲。歓声やゴングなどの演出が面白い1曲ですが、複数のジャーナリストを実名で非難するなどパンキッシュで怒りに満ち溢れた楽曲です。「Shotgun Blues」も疾走感のある楽曲で、ノリの良さが気持ち良いロックンロールです。疾走2曲の後はメロディアスな「Breakdown」。テンポは比較的速く、かつ変速でスリリングなのですが、哀愁あるメロディをじっくり聴かせるタイプの1曲です。「Pretty Tied Up (The Perils Of Rock N’ Roll Decadence)」はオリエンタルな雰囲気を持ったイントロからカッコ良い。怪しげながらもキャッチーなメロディも魅力的です。続いて9分近い「Locomotive (Complicity)」はダーティなイントロから惹かれます。ギターリフに中毒性があってグルーヴ感も強烈なので、長さを感じさせません。リズム隊とズラして歌うメロディの妙な違和感も、中毒性を助長しますね。「So Fine」は急逝したパンクの先駆者ジョニー・サンダースに捧げた1曲。切ないメロディを歌うのはダフ・マッケイガンで、作詞作曲も行いました。9分半に渡る大曲「Estranged」は、非常にブルージーで哀愁のある楽曲。スラッシュの泣きのギターソロや、メタリックなベースなど聴きどころも多く、そしてドラマチックなバラードです。ガンズ版「Stairway To Heaven」といった感じ。「You Could Be Mine」は映画『ターミネーター2』の主題歌に採用されました。キャッチーなメロディを持った疾走ロックンロールです。「Don’t Cry」は『ユーズ・ユア・イリュージョン I』に収録されたものの歌詞違いバージョン。ラストの「My World」は場違いのようなヒップホップ曲で、1分半で終了。これは要らなかったのでは…?
『I』はロックの躍動感に溢れた作品ですが、『II』はバラード中心のメロディアスな作品という印象です。アルバムトータルでも長いし、単曲でもいくつか大曲もあったりするのですが、でも良い曲が多いんですよね。
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