🇺🇸 Joan Jett (ジョーン・ジェット)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Bad Reputation (バッド・レピュテーション)

1981年 1stアルバム

 ジョーン・ジェット、本名ジョーン・マリー・ラーキンは米国ペンシルベニア州出身のミュージシャンです。1958年9月22日生まれ。1975年末にガールズロックバンドのランナウェイズを結成して3年間活動し、1979年春に解散。その後ジョーンは英国に渡ってソロ活動に取り組み始め、セックス・ピストルズのポール・クック(Dr)、スティーヴ・ジョーンズ(Gt/B)とレコーディングしています。その後米国に戻り、プロデューサーのケニー・ラグナと協力して1980年に自主制作盤『ジョーン・ジェット (Joan Jett)』をリリースしますが、自身のレーベルを始めたのは女性アーティストでは初でした。ジョーンはボーカルとリズムギターを担当し、リー・ハート(Gt)、ジェフ・ピーターズ(B)、ポール・シモンズ(Dr)、ケニー・ラグナ(Key)が参加しています。
 その後ジョーンはメンバーを募ってブラックハーツを結成、『ジョーン・ジェット』は『バッド・レピュテーション』と改題して再発売されることになりました。

 アルバムはタイトル曲「Bad Reputation」で幕開け。力強いビートを響かせる爽快なロックンロールで、ジョーンがだみ声で歌い散らします。パンキッシュな良曲ですね。続く「Make Believe」は低音を刻むリズムギターにメロディアスな歌が乗ります。穏やかな印象ですが、途中だみ声で「うっせぇ、あ゙あ゙ーあ゙あ゙ーあ゙ー」って空耳が聴こえるとサビに突入。笑 「You Don’t Know What You’ve Got」は晴れやかなロック曲。パワフルな歌唱でハードさが加わるものの、楽曲自体は比較的牧歌的な印象です。「You Don’t Own Me」はセックス・ピストルズの元メンバー参加曲。哀愁のピアノが主導するしっとりした楽曲で、パンク色は意外に薄いです。でもメランコリックなメロディを儚げに歌うジョーンの歌が中々魅力的なんですよね。サックスも渋く良い味を出しています。「Too Bad On Your Birthday」は旧き良きロックンロールな趣。渋くてルースな演奏はグルーヴが効いていて心地良く、気だるげな歌もなんとなく浸れます。「Do You Wanna Touch Me (Oh Yeah)」は爽快なロック曲。ビートが爽快なドラムは思わず手拍子したくなりますし、だみ声で力強く歌うジョーンの歌はノリノリな印象。ほどよくノイジーなギターも爽快です。
 レコード時代のB面、アルバムは後半に突入。「Let Me Go」はキャッチーな歌メロが耳に残りますね。演奏は骨太ですが、取っつきやすいのはジョーンの歌のおかげでしょうか。「Doing Alright With The Boys」はリズミカルで軽快なビートのおかげでノリノリな演奏です。ハードなギターやゴリゴリベースもカッコ良い。パワフルな歌はキャッチーで、聴いていると元気が貰えますね。「Shout」はパンキッシュな疾走ロックンロール。勢い溢れる爽快な演奏に浸っていると、途中リズムチェンジして跳ねるようなビートを効かせたり、中々楽しい楽曲です。「Jezebel」は骨太なロックンロール。力強いギターがカッコ良いです。歌メロは爽やかな印象で、口ずさみたくなるようなキャッチーさがあります。「Don’t Abuse Me」はもう一つのピストルズ元メン参加曲。こちらはピストルズしていますね。分厚く力強い演奏にピアノが映えます。ただピストルズよりは攻撃性は薄く、爽やかで楽しいロックンロールという風合いです。ラスト曲「Wooly Bully」は程良い気だるさのある、ノリの良いロックンロール。強烈なだみ声を聴かせながら、時折悲鳴のようにシャウトします。レコーディングにはブロンディのフランク・インファンテ(Gt)とクレム・バーク(Dr)が参加。

 自主制作を出してしまう気概や人脈はパンクですね。音楽自体はロックンロールに回帰していて、だみ声でパワフルな歌唱が力強い演奏ともよく合っています。全体通して明るくパワフルで、聴いていると元気を貰えます。なお大半の楽曲はカバー曲なのだとか。

Bad Reputation
Joan Jett
 
I Love Rock 'N Roll (アイ・ラブ・ロックンロール)

1981年 2ndアルバム ※Joan Jett & The Blackhearts (ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツ) 名義

 ジョーン・ジェットは、プロデューサーのケニー・ラグナの力を借りてバンドメンバーを募集。そこに集まってきたゲイリー・ライアン(B)、エリック・アンベル(Gt)、リー・クリスタル(Dr)らでバックバンドのザ・ブラックハーツを結成します。そして本作のレコーディング最中に、ギタリストがエリックからリッキー・バード(Gt)に交代。
 本作はトータル1,000万枚以上を売り上げた、ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの代表作です。本作リリース後に「I Love Rock ‘N’ Roll」をシングルカットし、これがビルボード7週連続1位の快挙を成し遂げました。この大ヒットに後押しされて本作も大成功を収めました。

 ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの代表曲「I Love Rock ‘N’ Roll」で幕を開けますが、これはジ・アローズというバンドのカバー曲。手拍子したくなるようなリズミカルなビート、そしてブルージーでハードなギターにサビメロの合唱など、パンクというよりハードロック的ですね。力強い演奏はテンションが上がります。「(I’m Gonna) Run Away」はローファイな荒々しいギターを奏でるロックンロール。音質は悪いしジョーンはだみ声で歌いますが、ハードさが出ているものの、本質の部分は明るく楽しいロックンロールです。「Love Is Pain」もギターが強烈…ですが、途中加わるグルーヴィなベースはもっと強烈。スローテンポでどっしりした演奏で楽しませます。「Nag」はイントロもなくいきなり始まるロックンロール。コーラスに手拍子などノリノリで、明るく楽しい楽曲です。キンキンしてハードなギターも爽快。続いて、ジョーン色っぽい吐息で始まる「Crimson And Clover」。トミー・ジェイムス&ザ・ションデルズのカバー曲です。スローテンポでどっしりした演奏に乗る歌は妖しげな雰囲気ですが、中盤はテンポアップして駆け抜けます。緩急あって良いですね。
 アルバム後半のオープニングは「Victim Of Circumstance」。時折強烈なシャウトを挟みますが、基本は明るくキャッチーなメロディなので取っつきやすいです。そしてハードな演奏は歌メロの良さを引き立て、清涼飲料水のように爽快な印象。続く「Bits And Pieces」はデイヴ・クラーク・ファイヴのカバーで、ノリの良いロックンロールです。リズミカルなドラムが気持ち良くて、思わず身体が動き出しそうです。「Be Straight」は躍動感のあるドラムにノイジーなギターが爽快。ブラックハーツの面々によるバッグコーラスが野太くてちょっと可笑しいです。「You’re Too Possessive」はハードで爽快な疾走曲。ハスキー声で歌うメロディもキャッチーで中々魅力的です。「Little Drummer Boy」は低いテンションから徐々にヒートアップしていきます。原曲は米国の有名なクリスマスソングらしいですが、あまりクリスマス感はありませんね。

 力強いロックンロールが詰まった楽しい作品です。トータル30分のサクッと聴ける手軽さもまた魅力ですね。

I Love Rock ‘N Roll
Joan Jett & The Blackhearts
 

 

関連アーティスト

 『バッド・レピュテーション』にポール・クック(Dr)とスティーヴ・ジョーンズ(Gt)が参加。

 
 
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