🇬🇧 Magazine (マガジン)

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スタジオ盤

Real Life (リアル・ライフ)

1978年 1stアルバム

 イングランドのマンチェスター出身のポストパンクバンド、マガジン。バズコックスの創設者であるハワード・ディヴォート(Vo)と、後にスージー・アンド・ザ・バンシーズで活躍するジョン・マッギオーク(Gt/Sax)を中心に、バリー・アダムソン(B)、ボブ・ディッキンソン(Key)、マーティン・ジャクソン(Dr)の5名で1977年に結成しました。ディッキンソンは早々に脱退してデイヴ・フォーミュラ(Key)に交代しています。
 マガジンは「Shot By Both Sides」でシングルデビューしますが、この楽曲はディヴォートがバズコックス脱退前に同バンドのピート・シェリーと共作した楽曲でした。その後1stアルバムとなる本作『リアル・ライフ』を制作。後にニューウェイヴ/オルタナ系バンドの多くを手掛けて名を挙げるジョン・レッキーがプロデューサーに就きました。

 アルバムは「Definitive Gaze」で幕開け。シンセサイザーがときに妖しく、ときにポップな音色を奏でますが、ディヴォートの歌はキャッチーさには遠い印象。終盤は実験的でアヴァンギャルドな演奏を繰り広げます。「My Tulpa」はフォーミュラの弾くスペイシーな電子音が目立ちますが、歌が始まるとキャッチーな雰囲気へと変わります。ピコピコしてノリが良いですね。そして名曲「Shot By Both Sides」。勢いがあって、緊張感のあるひりついた演奏で惹きつけて、耳に焼き付く印象的なフレーズ。歌メロはそこまででも無いんですが、陰のあるスリリングな演奏はとてもカッコ良いです。マッギオークのギターソロも切ない感じで良い。「Recoil」は疾走感のあるパンキッシュな1曲です。スタスタと叩くもののスカスカな感じもするジャクソンのドラムを軸に、荒っぽく勢いある演奏。ボーカルもテンション高めですね。続く「Burst」はスローテンポで重ためな空気が立ち込め、ざらついたギターが焦燥感を掻き立てます。でも中盤からは憂いのある演奏に変わって、ひたすら反復するメロディアスな歌とともに感傷的な気分を誘います。
 アルバムは後半に突入。「Motorcade」はイントロからフォーミュラの弾くチープなシンセサイザーで、オカルティックで不気味な雰囲気を醸し出しています。バンド演奏が入ると躍動感が加わって、不安と高揚感が同居する不思議な感覚を味わえます。中盤に大きく加速し、よりスリリングに。終盤はテンポを落とし、不協和音を織り交ぜて絶望感があります。「The Great Beautician In The Sky」は3拍子の楽曲で、荒削りながらもダークでゴシックな演奏が特徴的ですが、ディヴォートのヘタでねちっこい歌で台無し。笑 後半にリズムチェンジをかますと、ポップなメロディを展開してキャッチーな印象に変わります。インパクトがあり、そして妙に中毒性があります。「The Light Pours Out Of Me」は単調なドラムに支えられて、独特のギターリフが目立ちます。時折加わるシンセはゴシックロックのようなダークな雰囲気を作り出します。そしてラスト曲「Parade」。毒気のない透明感のあるピアノに癒やされますがそれも束の間、陰りのあるシンセへと変わるとダークな表情を見せます。他の楽曲よりもメロディアスですが、ひねた部分も兼ね備えていて一筋縄ではいきません。

 演奏や歌の拙さはあるものの、プログレ的な要素を取り入れつつひねくれたスリリングな楽曲を展開。「Shot By Both Sides」が出色の出来で、「The Great Beautician In The Sky」も中々の佳曲です。

Real Life
Magazine
 
Secondhand Daylight (セカンドハンド・デイライト)

1979年 2ndアルバム

 マーティン・ジャクソン(Dr)が脱退して後任にジョン・ドイル(Dr)が加入しました。前作で大半の楽曲を作曲したハワード・ディヴォートは今作ではほとんど関わらず(作詞には関与)、大半が他のメンバーにて作曲しています。後にデュラン・デュランのヒット作を手掛けることになるコリン・サーストンがプロデュースしました。

 「Feed The Enemy」でアルバムは幕開け。ピアノやシンセ、オルガンなどを組み合わせたデイヴ・フォーミュラの多彩な鍵盤が、ダークで悲壮感漂う世界観を作り出します。そしてリズムチェンジすると、バリー・アダムソンの骨太なベースとジョン・マッギオークの哀愁のギターを鳴らして、暗く荒廃した雰囲気に。でも暗さの中に美しさも垣間見えます。「Rhythm Of Cruelty」は勢いあるドラムや、晴れやかなギターによって爽快感があります。序盤と終盤はポップな感じですが、ディヴォートの歌はキャッチーには程遠い感じで、また中盤の間奏パートでは緊張の糸が張り詰めてピリピリしています。続く「Cut-Out Shapes」は暗鬱なムードにひねた感覚が加わった楽曲です。アダムソンの独特なベースがカッコ良い。中盤に大きくスローダウンしたのち、暗鬱さは保ちながらもダンサブルな感覚を増して変な感じ。そして「Talk To The Body」はニューウェイヴ特有のビート感の強いドラムを響かせながら、ダンサブルかつキャッチーな楽曲を展開します。でもバンド特有の陰りのある雰囲気がアクセントになって魅力を放ちます。「I Wanted Your Heart」はキャッチーさと哀愁をうまく混ぜ合わせた楽曲です。キリキリしたギターが緊張を高めつつ、ノリの良いリズム隊と透明感のあるピアノが取っつきやすいですね。でも後半はアヴァンギャルドというか、実験的な色合いを強めて混沌としていきます。
 アルバム後半はインストゥルメンタル「The Thin Air」で幕開け。チャーチオルガンが悲壮感を煽りつつも、幻想的な鍵盤やサックスが混ざってドリーミーでメロウな雰囲気を演出します。後半は気だるく憂鬱な感覚で、ピンク・フロイドっぽいかも。続いて「Back To Nature」はゆったりとして雄大な雰囲気ですが、途中からテンポアップすると力強さと躍動感に満ち溢れます。骨太ベースがバキバキ唸ってカッコ良い。終盤は緊張感溢れるスリリングな展開で楽しませてくれます。「Believe That I Understand」はシンセが唸りを上げる躍動感と切ない爽快感が特徴の楽曲です。メロディも結構キャッチーですね。そしてラスト曲「Permafrost」は暗鬱ムードたっぷり。単調なリズム隊に抑揚の少ない歌が不安な感情を掻き立てます。終盤ではマッギオークの変なギターが聴きどころでしょうか。

 リズムチェンジによって途中で雰囲気が一変する楽曲が多くて、プログレっぽさもありますね。楽曲のクオリティは高まりましたが、でも突出した1曲には欠ける印象があります。

Secondhand Daylight
Magazine
 
 

関連アーティスト

 ハワード・ディヴォート(Vo)の古巣。

 
 ジョン・マッギオーク(Gt/Sax)、デイヴ・フォーミュラ(Key)、バリー・アダムソン(B)が掛け持ち。
 
 マガジン脱退後のジョン・マッギオーク(Gt)が活躍。
 
 1980年に一時加入するロビン・サイモン(Gt)が所属していたバンド。
 
 
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