🇬🇧 Marillion (マリリオン)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Misplaced Childhood (過ち色の記憶)

1985年 3rdアルバム

 ネオプログレの代表格、マリリオンによる傑作3rdアルバム『過ち色の記憶』。邦題のセンスが結構好みです。
 マリリオンはフィッシュ(Vo)、スティーヴ・ロザリー(Gt)、ピート・トレワヴァス(B)、マーク・ケリー(Key)、ミック・ポインター(Dr)の5人で1981年にデビュー。ドラマーは頻繁に交代したそうで、本作収録の際にはイアン・モズレイ(Dr)が加わっていました。声質がピーター・ガブリエルに似たフィッシュのボーカル、エフェクターによって当たりの柔らかいスティーヴ・ハケットのようなロザリーの優しいギター、そしてカラフルなキーボード等、音楽性はジェネシスからの影響を強く感じます。しかし本作はクオリティが高く、その実力は単なるジェネシスフォロワーバンドでは収まりませんでした。
 クリス・キムゼイによってプロデュースされた本作。フィッシュがヘルマン・ヘッセの『デミアン』を読んで着想を得たのだとか。往年のプログレのように、組曲のように繋がった楽曲や、変拍子やリズムチェンジの多用による場面転換を見せてくれます。但しそれほど難解ではなく、全体的にメロディアスで聴きやすいです。全英1位を獲得し、バンドを成功に導いた作品です。

 メドレーのように紡がれる冒頭3曲の流れがとても美しいです。オープニングを飾る「Pseudo Silk Kimono」は幻想的なキーボードの音色に浸れます。続く「Kayleigh」が名曲。幻想的で優しいサウンドに乗る歌は哀愁があってメロディアス。サビでの盛り上がり方や、間奏のギターソロなどはドラマチックで、とても魅力的です。そして「Lavender」は美しいバラード。感傷的な歌を演出するサウンドも相まって、鳥肌の立つような感動を与えてくれます。そのまま続く「Bitter Suite」は5パートから成る組曲で、始まりはダークな雰囲気。組曲なのでパートの変わり目に唐突なリズムチェンジがあり、コロコロ変わる展開にはニヤリとしますね。続けて「Heart Of Lothian」は2パートから成る組曲。変則的なリズムを取りつつポップな雰囲気です。明るいんだけど、どこか哀愁が漂うのは英国流だからでしょうか。
 レコード時代のB面は「Waterhole (Expresso Bongo)」で開幕。シリアスな雰囲気で、ややハードなサウンドです。ダイナミックなドラムが楽曲にスリルを生み出しています。そのままリズムチェンジを加えて「Lords Of The Backstage」へ。2分足らずですが、ノリが良くて楽しめます。一転してシリアスな展開になる「Blind Curve」は、5パートから成る組曲で、本作最長の9分半。シリアスな雰囲気で、序盤の間奏はどことなくピンク・フロイドにも通じます。中盤は静けさがありますが、終盤はドラマチックに盛り上げます。クライマックスに向けて盛り上がっていき、次曲「Childhoods End?」で頂点を迎えます。フィッシュのボーカルは前曲同様エキセントリックで、呼応する演奏も激しいのですが、どこか晴れやかな雰囲気になりました。そして最終曲「White Feather」では、激しさの中にどこか牧歌的な雰囲気も混ざります。フェードアウトして、聴き終えた後に残るのは清々しい充実感。

 プログレの要素は持ちながらも、メロディアスに仕上がった本作は、彩り豊かな音の世界に聴き浸ることができる作品です。ジェネシスがメンバー脱退せずに1980年代を迎えていたらこんな音になったのかな…というIFをマリリオンが叶えてくれます。

Misplaced Childhood (2017 Remastered)
Marillion
 
 
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