🇩🇪 Neu! (ノイ!)

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スタジオ盤

Neu! (ノイ!)

1972年 1stアルバム

 ノイ!はドイツ(当時西ドイツ)のデュッセルドルフ出身のバンドで、1971年に結成しました。バンド名は「new!」の意味で、バンドロゴも含めてポップアートを意図した名前だそうです。クラウス・ディンガー(Dr/Gt)とミヒャエル・ローター(Gt/B)の2人組で、元々クラフトワークの雇われメンバーとして出会い、そして脱退後にノイ!を結成することになります。
 本作はエンジニアのコニー・プランクとの共同プロデュース。ラスト曲を除き、全編ボーカルレスの実験的な音楽を展開します。当時3万枚ほどしか売れませんでしたが後年評価され、特にパンク/ニューウェイヴ勢に大いに影響を与えました。

 オープニング曲にしてノイ!の代表曲「Hallogallo」。10分にも及ぶ楽曲で、淡々としたリズムビートに乗せて、アンビエント風の浮遊感溢れるギターが心地良い空間を作り出します。ドラムマシーンの無かった時代、人力のリズムビートでひたすら反復します。大して大きな盛り上がりもありませんが、トリップ感を味わえる中毒性があります。「Sonderangebot」は音響系とでも言うべきか、スペイシーなサウンドがぽつぽつと現れては消えていきます。終盤は不快な金属音のノイズで終わりますが、理解しがたいです…。前曲からそのまま続く「Weissensee」。まったりとしたドラムに浮遊感のあるギターによる、落ち着いたメロウなサウンドはピンク・フロイドに通じる心地良さがあります。そのうちロジャー・ウォーターズの歌が入ってきそうな感じ。
 アルバム後半は、コポコポと水の音が聞こえる「Im Glück」で開幕。空間の広がりを感じさせる、静寂に響くスペイシーな音。途中からカモメの鳴き声も響いたり、海を漂っているかのような感覚に陥ります。そんな静寂を「Negativland」のドリル音が破壊します。10分近い大作で、後のポストパンクバンドへの強い影響を与えたことが窺える楽曲です。ノイズまみれなサウンドで幕を開けた後、淡々としたバンド演奏が始まります。リズム隊は無機質でひたすら淡々としており、またギターは強く歪んでいて、不快さと気持ち良さの中間あたりを行き来しています。中盤一瞬テンポアップする展開があり、中々スリリングですね。そして後半は緊張感を高め、最終盤に再びテンポアップ、緊張を高めに高めた後はぶつ切りエンド。本作中唯一スリルを感じられる楽曲です。「Lieber Honig」は唯一のボーカル曲。とはいえクラウスのウィスパーボイスが不快で、歌無しの方が良いんじゃないかと思わせます。後半は水のコポコポした音をはじめ生活音のようなSEが繰り広げられます。なんともシュールです。

 音響系の実験的な音楽が詰まっています。全体的に無機質ですが、「Hallogallo」と「Negativland」はなかなか中毒性があって良いです。

Neu!
Neu!
 
Neu! 2 (ノイ!2)

1973年 2ndアルバム

 クラウス・ディンガーとミヒャエル・ローター、そしてエンジニアにコニー・プランクという前作に引き続きの制作陣。そこにコニーの元助手ハンス・ランペもエンジニアとして参加しています。制作途中で予算不足に陥り、苦肉の策でアルバム後半は既発シングルのバリエーション違いを作って穴埋めしたそうですが、これがリミックスの元祖として後年評価を受けることになります。

 開幕から11分超の大曲「Für Immer」。ひたすら反復するというミニマルな演奏スタイルは前作に引き続きではありますが、その中でもクラウスのドラムは躍動感を増した印象です。無機質さが少し減って人間味が出てきたと言うべきでしょうか。ハンマービートと呼ばれる8つ打ちバスドラムも特徴的ですね。ミヒャエルのギターは相変わらずアンビエント風の浮遊感に溢れていて、心地良さを提供してくれます。後半に向かうにつれてどんどん緊張が高まっていきます。淡々としていますがカッコ良く、後のポストパンクに通じる作風は時代を大きく先取りしていたのだと実感します。続く「Spitzenqualität」は強烈にエコーの効いたノイジーなサウンドを展開。中盤に大きく失速、終盤はスローなドラムに残響音が響きます。これもポストパンクの先駆けですね。「Gedenkminute (Für A + K)」は風切り音にボーンボーンと鐘の音が響くだけの実験的な音響系。続く「Lila Engel」はプリミティブでパンキッシュなドラムと蝿の羽音のようなギターをバックに、クラウスの奇妙な歌が強烈なインパクトを生み出しています。ノイジーでひねくれているけどポップさも持ち合わせており、不思議な中毒性があります。
 そして前述のとおり曰く付きのリミックス群。テープの回転数を変えて高速化した「Neuschnee 78」は疾走感溢れる演奏に電子音がキャッチーなメロディを奏でます。煽るような高速ドラムが強烈です。「Super 16」はスローテンポで、ダブのようにリズムをかなり強調しています。メロディらしきものはなく、プチプチノイズにまみれた雑音が脳を蝕みます。変な中毒性があります。加工された楽曲ばかりが続いたので「Neuschnee」がクリアーでとても聴きやすい。笑 ダイナミックで躍動感のあるドラムがとにかく爽快で、またメロディもキャッチー。後半パートのハイライトでしょう。「Cassetto」は強烈に歪んだノイジーな演奏が繰り広げられます。実験的なうえに途中ぶつ切れするので理解しがたいですが、インパクトだけは強烈です。「Super 78」は超高速の演奏を展開。ヘリウムを吸ったかのような高音・超速の声で「何これ?!」というインパクトを残します。「Hallo Excentrico!」はぐにょんと歪んだ気持ち悪い音が幻覚的な感覚を生み出します。時折レコードの針が飛んだりスクラッチしているかのように、音色が様々に変化します。そしてラスト曲「Super」はパンキッシュな佳曲です。疾走感に溢れる爽快な演奏に、発狂して奇声を上げるボーカル。切れ味抜群でカッコ良いです。

 パンクやポストパンクに通じる革新的な作品で、キャッチーな楽曲と実験的な楽曲のバランス配分も良いです。リミックス曲は良し悪しがあるものの、トータル的には前作よりもこちらの方が好みです。

Neu! 2
Neu!
 
 

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 クラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターが最初期のメンバーとして所属。

 
 
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