🇬🇧 New Order (ニュー・オーダー)

レビュー作品数: 12
  

ニュー・オーダー紹介動画

動画にまとめていますので、ぜひご視聴ください!

 
 

スタジオ盤①

ファクトリー・レコード時代

Movement (ムーブメント)

1981年 1stアルバム

 イアン・カーティスの自殺によってジョイ・ディヴィジョンは活動停止を余儀なくされましたが、残されたメンバーは音楽活動を継続しました。バーニーことバーナード・サムナーがギター兼ボーカルとなり、フッキーことピーター・フック(B)、そしてスティーヴン・モリス(Dr)の3人で「ニュー・オーダー」を名乗ってバンドの再スタートを切ります。またサポートを務めていたスティーヴンの彼女ジリアン・ギルバート(Key/Gt)を後に正式メンバーに加えて4人体制となりました。ちなみにスティーヴンとジリアンは後に結婚することになります。
 ジョイ・ディヴィジョン時代に引き続きマーティン・ハネットがプロデューサーに就きました。本作ではまだバンドとしての方向性が定まっておらず、「Dreams Never End」と「Doubts Even Here」ではフッキーがボーカルを担当していたりします。ジョイ・ディヴィジョンの呪縛から逃れられておらず、全体的に暗鬱な作風です。
 ちなみにジャケットのFACT50とは所属レーベル ファクトリー・レコードの型番。

 アルバムは「Dreams Never End」で開幕。ダウナーな雰囲気ですが、リズミカルなビートはノリノリでダンサブル。そしてサウンドは徐々に明るい雰囲気へと変わるものの、亡きイアンを思わせる、フッキーの呟くような聞き取りづらい低音ボーカルはとても暗鬱です。「Truth」はとても不気味な雰囲気が漂います。無機質なシーケンサーと、ひんやりと冷たいシンセが絡み合って作る世界は、ホラー映画のような暗さと恐怖感が漂います。続く「Senses」も暗鬱で不気味。焦燥感を煽るドラムに、不協和音とメロディアスなフレーズの入り混じるカオスな空間。歌よりも演奏に軸足を置いた楽曲で、とてもスリリングで不思議な魅力があります。特に終盤は凄まじい緊迫感です。「Chosen Time」は軽快なリズムと暗鬱な雰囲気のギャップが激しいですね。バーニーの呟くような抑揚のない歌も暗さを助長します。ですが後半に向かうにつれてどんどん緊張が増していき、不気味に煽り立てるんです。
 レコード時代のB面、アルバム後半は「ICB」で幕開け。無骨なベースや淡々としつつ力強いリズムが、暗くて緊迫した雰囲気を作ります。茶化すようなふざけたSEが入っているのに、楽曲の重苦しい雰囲気はまるで払拭できていません。続く「The Him」も暗い…。ダイナミズムのあるドラムが一定のリズムを反復し、バーニーの歌は呪術的でひたすらに不気味です。そして中盤突如として凄まじく緊迫した演奏を繰り広げます。これがあまりにもスリリングですが、またすぐに大人しくなり、鬱々とした呪術的な雰囲気へと戻ります。フッキーがボーカルを取る「Doubts Even Here」は、これまたイアンを彷彿とさせる暗くてヘタクソな歌。悲壮感が漂う演奏も暗鬱ですね。途中からジリアンの朗読も加わります。ラスト曲は「Denial」。躍動感があり、それでいて重苦しさも伴っているので緊迫した雰囲気です。

 ダンスビートを導入したものの、色濃く残るジョイ・ディヴィジョンのカラーがとにかく不気味でスリリングな作品を生み出しました。荒削りだしこれといったキラーチューンもありませんが、重苦しい雰囲気の中に不思議と魅力を見いだせます。

Movement (Collector’s Edition)
New Order
 
Power, Corruption & Lies (権力の美学)

1983年 2ndアルバム

 美しいアートワークが目を引く本作、この絵画はアンリ・ファンタン=ラトゥールというフランスの画家のものだそうです。『権力の美学』という邦題もなかなかです。
 打ち込みによる単調なフレーズの反復。そのフレーズも極々シンプルですが、リズミカルでとても心地よいです。メンバーの演奏能力も、ボーカルも決して上手いとは言えず、むしろヘタクソだったりしますが、それを覆すアイディアがニュー・オーダーの強みというか魅力なんだと思います。ジョイ・ディヴィジョン時代もそうでしたが、下手さゆえにそれが彼らにしか出せない味となって、魅力となっているのかもしれません。本作ではまだボーカルの下手さが楽曲に溶け込めておらず、下手さが際立っていますが。笑
 本作の直前にリリースされたシングル「Blue Monday」が大ヒットを果たすことになりますが、本作の米国盤には「Blue Monday」とそのB面曲が入っています。英国盤にはありませんが、Collector’s Editionではこの名曲「Blue Monday」を聴くことができます(数多く出ているベスト盤でも聴けますけどね)。

 オープニング曲「Age Of Consent」が出色の出来で、これのために本作を聴きます。ピーター・フックのベースリフに合わせてスティーヴン・モリスのドラムのリズムが軽快で心地よいですが、どこかリズム感が危なっかしい感じです。ガチャガチャかき鳴らすギターロック的な側面も持ちつつ、華やかなキーボードとダンサブルなリズムでダンス色も持ち合わせた名曲です。しかし続く「We All Stand」ではバーニーことバーナード・サムナーの調子外れのボーカルが悪目立ちし、落差が激しいですね。前作では低音で呟くような歌い方だったので目立たなかったのに、高音メロディだと途端にヘタさが目立ちます。笑 楽曲はオリエンタルで怪しげな雰囲気を醸しています。「The Village」は爽やかでダンサブルなアップテンポ曲。ヘッタクソなバーニーの歌にガクッとしながらも、チープなのにノリがよくて楽しいのです。ダンス色の強いサウンドにギター等が持ち込むロック色、これがニュー・オーダーの魅力の一つかなと思います。7分半に渡る「5-8-6」はニューウェイヴ全開シンセポップ。冒頭2分は実験的な色合いが強く、音の鳴り方を試すような感じもしますが、そこからダンサブルなピコピコサウンドを展開。キャッチーな楽曲へと様変わりします。この辺まで聴き通すと、バーニーの下手なボーカルも味があるなぁなんて感じられるようになってくる不思議。
 アルバム後半のオープニング曲「Your Silent Face」は、ジリアン・ギルバートのシンセサイザーによる彩りが美しい。そしてアクセントとして入るピアニカがチープながらも哀愁を誘います。「Ultraviolence」は淡々としつつもリズムビートの気持ち良い楽曲。メロディがあまり無いので、反復されるリズムだけで牽引します。ノリの良いダンスビートが爽快な「Ecstasy」も、リズム以外は結構実験的な印象。単調な反復を繰り返しますが、独特な音処理を施したスティーヴンのドラムが良い感じ。最後に「Leave Me Alone」で、ギターが中心となって憂いを帯びたメロディアスなメロディを奏でます。ヘタクソな歌で台無しといえば台無しですが笑、でも哀愁と切なさを帯びた楽曲の魅力は覆らないなんですよね。

 チープでヘタクソだけど、ダンサブルで魅力的な楽曲の数々。後にダンスミュージックの牽引役となるニュー・オーダーの才能の片鱗が見える作品です。特に「Age Of Consent」は必聴の名曲です。

Power, Corruption & Lies (Collector’s Edition)
New Order
 
Low-Life (ロウ・ライフ)

1985年 3rdアルバム

 ニュー・オーダーの入門盤に最適な作品です。前作の路線を更に深化させ、シンセサイザーのシンプルなフレーズと打ち込み中心のダンサブルな楽曲が多く収録されております。後のマッドチェスターと呼ばれるダンスロックのムーブメントや、クラブミュージックに大きな影響を与えました。ちなみに、所属するファクトリー・レコードの社長とともに、ハシエンダと呼ばれるディスコをオープンし、後のマッドチェスターの主要バンドに活動場所を与えたのもニュー・オーダーでした。
 ピーター・サヴィル作のアルバムジャケットはスティーヴン・モリスの写真。内ジャケットには他のメンバー写真が写っていますが、あえて一番地味(?)なスティーヴンを選んだ理由は謎です。笑

 アルバムは、バーニーことバーナード・サムナーの調子外れの歌「Love Vigilantes」で始まります。ニュー・オーダー3作目ですがまだまだヘタクソから抜け出せていませんね。ただしその声には優しさが感じられ、またその下手さも愛嬌すら感じます。リズミカルでダンス要素を持ちつつも、カントリーやフォークに影響を受けた牧歌的で優しい雰囲気の漂う楽曲で、多くのカントリー系ミュージシャンにカバーされているようです。続く「The Perfect Kiss」は本作のハイライト。抜群にキャッチーでメロディアスな歌とダンサブルなサウンドが爽快な楽曲で、シングルカットもされました(シングルとは別アレンジ)。リズミカルで軽快な打ち込みサウンドに、ど派手なシンセサイザーが鳴り響きます。相変わらずヘタウマ感は強いものの、聴けば聴くほどこの名曲の魅力に取り込まれます。ここまでは明るくポップな印象ですが、「This Time Of Night」から少しずつシリアスさも加わります。小気味良い打ち込みサウンドは相変わらずですが、シンセの音色は少ししんみりとしていて、またメランコリックなヘタウマボーカルにも哀愁が漂います。そしてジョイ・ディヴィジョン時代を想起させるダークでヘヴィな「Sunrise」。ジョイ・ディヴィジョンのダークさを引きずりつつ、それよりは洗練された演奏を披露します。ジリアン・ギルバートの暗鬱なシンセから始まる、スリリングで刹那的なバンド演奏を展開。ヒリヒリとしたバーニーのギターや、ピーター・フックのゴリゴリしつつ憂いのあるメロディラインを奏でるベースリフ、これらが緊張を極限に高めます。とてもカッコ良い。
 そしてアルバム後半は、暗鬱なインストゥルメンタル「Elegia」で幕開け。前身となるジョイ・ディヴィジョンの亡きフロントマン、イアン・カーティスを思って書かれた楽曲です。とても暗くて重い1曲で、どん底のように深い深い悲しみに満ち溢れています。終盤のギターもヘヴィです。「Sunrise」と「Elegia」の2曲にジョイ・ディヴィジョンの影を感じますが、この「Elegia」を底に、アルバムは徐々に明るさを取り戻していきます。スティーヴンのパーカッションで開幕する「Sooner Than You Think」。ギターやシンセの音色はメロディアスで憂いを帯びていますが、前曲のどん底のような暗さに比べるとまだ明るい方ですね。「Sub-Culture」もノリノリでダンサブルなリズムとは裏腹に、メランコリックで哀愁漂うメロディが何とも言えない切ない気分にさせます。そしてラストの「Face Up」は、アルバム中盤の暗さを払拭したかのような、晴れやかで華やかな楽曲。キャッチーでダンサブルなサウンドは楽しいです。

 ジョイ・ディヴィジョンを引きずった暗さと、ニュー・オーダーの持つ明るさの両面が表れた作品です。アルバム全体のバランスがよく、そしてヘタクソは変わらずながらも上手い・下手を超越した楽曲の出来の良さ。これ大好きなんですよね。

Low-Life (Collector’s Edition)
New Order
 
Brotherhood (ブラザーフッド)

1986年 4thアルバム

 前半はギターが主導するバンドサウンド中心、後半はキーボードが主導するエレクトロポップが展開されます。前作に続きヒットを飛ばし、全英最高9位。メジャーレーベルでなくインディレーベルからのリリースですが、チャート上位に食い込んできました。

 レコード時代のA面はバンド演奏主体の楽曲が並びます。まずは「Paradise」でノリ良く開幕しますが、スティーヴン・モリスの刻むシンプルなリズムビートが印象的ですね。バーニーことバーナード・サムナーの下手な歌メロはご愛敬ですが、これでもだいぶマシになったなと思います。笑 そんな下手なファルセットを用いたコーラスを重ねて、幻覚的な感覚を生み出しています。続く「Weirdo」、これが素晴らしく、初聴きではこの楽曲が一番好感を持てました。爽やかなアップテンポ曲で、バーニーの小気味良いギターを主体に、スティーヴンの躍動感のあるドラムで気分が高揚します。キャッチーな歌メロも魅力的ですね。「As It Is When It Was」ではアコギの音色が美しく優しいバラード曲。哀愁のメロディラインはしんみりとしていてどうしようもなく切ないです。フッキーことピーター・フックの高音ベースがリードします。続く疾走曲「Broken Promise」はフッキーの高音ベースがご機嫌。ですが全体的には哀愁が漂います。後半はノイジーなギターをかき鳴らし荒々しいです。「Way Of Life」はヘヴィなドラムで開幕。歌が始まるとドラムは軽快になりキャッチーさを発揮しますが、繊細なアコギと主旋律を奏でるロックなベースがうまくハーモニーを奏でられていないというか、どこかアンマッチな違和感を残します。そこにノイジーなエレキギターが絡んで、軽快なのに纏まりのない印象です。

 そしてレコード時代のB面、アルバム後半パートに突入。ここからはエレクトロポップへと様相を変え、ジリアン・ギルバートのキーボードが主導します。ヒットシングル「Bizarre Love Triangle」で一気にクラブ路線に。派手に装飾されていてわざとらしさすら感じてしまうので、実は最初少し抵抗がありました。ですが何度か聴いていると、キャッチーなメロディは口ずさみたくなるし、リズミカルなサウンドはとても気持ち良いという印象に変わりました。数多くのアーティストにカバーされている名曲です。「All Day Long」は囁くような歌声にドリーミーな心地良いサウンドで展開。前半は静かな感じですが、後半はシンセが派手に華やかになっていきます。続く「Angel Dust」はピコピコと鳴る打ち込みサウンドがノリノリです。中盤では美しいピアノを聴けますが、その後メタリックなギターなどカオスな展開に。「Every Little Counts」ではバーニーが静かに歌いますが、途中で吹き出しています。ゆったりとした雰囲気で進みますが、ラストは不協和音で締めるという…。
 レコードには無いそうですが、CDのラストにはシングル曲「States Of The Nation」が付属し、これも良い曲です。オリエンタルなフレーズを奏でるキーボードと反復する歌詞で幻覚的な世界を作りながら、荒々しいギターがぶち壊し、それをベースと打ち込みドラムが纏めています。

 ピーター・サヴィルによるジャケットアートを見ると、売る気あるのか?と疑問になりますが、収録された楽曲は聴きやすくて名曲も多いです。ニュー・オーダーの入門向きな名盤です。

Brotherhood (Collector’s Edition)
New Order
 
Technique (テクニーク)

1989年 5thアルバム

 当時ディスコの最先端だったスペインのイビサ島で録音された本作。アシッドハウスという、当時最新のクラブ音楽のスタイルを取り入れています。私はクラブ音楽に疎いのでその観点からの評価は出来ませんが、とにかく派手という印象です。虹色のジャケットアートで察するべきでした。
 スティーヴン・モリスとジリアン・ギルバートの夫妻(結婚は1994年なのでこの時点ではカップルですね)が基礎を作り上げている間、バーナード・サムナー(バーニー)とピーター・フック(フッキー)はイビサ島で遊び呆けていたというエピソードがあります。

 1曲目の「Fine Time」で打ち込みサウンドで始まりますが、ビックリするくらいに派手に装飾されています。様々に華やかな音に溢れ、加工されたボーカルの反復。これがハウスか…。前作の「Bizarre Love Triangle」にもその兆候はありましたが、出てくる感想は「派手」。笑 飛び抜けていてちょっと抵抗感があったりします。続く「All The Way」は一転してネオアコサウンドを展開。シンセによる装飾が時折入るものの、比較的素朴な曲調で、前曲よりも聴きやすくて魅力的です。爽やかさの中にメランコリックな感覚を持ち合わせていて、切ない気分にさせます。「Love Less」も穏やかなネオアコ曲で、安心感を覚えます。繊細で小気味良いアコギと高音ベース、軽快なドラムが合わさって心地良さを生み出しています。バーニーの優しい歌メロも良いですね。彼のボーカルもだいぶ上手くなってきたと思います。4曲目の「Round & Round」では、落ち着きのある哀愁のメロディに対して、チープでわざとらしいピコピコシンセがミスマッチな感じ。ですが「Fine Time」のぶっ飛んだ派手さに比べればまだ控えめで、聴きやすいエレクトロポップサウンドです。再びネオアコに戻して「Guilty Partner」。軽快なアコギとドラムに、高音ベースが目立ちますね。メロディアスな歌も魅力的です。続く「Run」もバンドサウンドを前面に押し出しています。ネオアコ基調の爽やかな楽曲ですが、途中にノイジーなギターをアクセントとして挿し込んでメリハリをつけています。穏やかでポップなメロディが良い感じで、終盤のアコギは美しさを感じます。「Mr. Disco」から再びディスコサウンド。ノリノリの派手な演奏とは裏腹に、バーニーのメランコリックな歌メロが切ない印象を与えます。「Vanishing Point」はグルーヴのある派手なサウンド。ですが全体的には哀愁が漂います。ひんやりとした美しい間奏に魅せられますが、少し時代を感じるかも。そして「Dream Attack」では軽快なバンド演奏を展開しますが、程よくダンサブル。地味さは否めませんが、ディスコ路線とネオアコ路線を良い具合に融合している印象です。

 最高傑作の呼び声も高いのですが、派手なディスコサウンドについてゆけず個人的には苦手でした。ですがディスコサウンドの合間に挟むネオアコ路線の楽曲が意外と良いんですよね。レビューにあたり聴き直して気づいた魅力です。

 本作を最後に、1992年に所属レーベルのファクトリー・レコードが倒産。次作はロンドン・レコードからのリリースとなります。またマッドチェスターの後輩育成の場として、ファクトリー・レコードと共同運営していたハシエンダというクラブも1997年に閉鎖となるのでした。

Technique (Collector’s Edition)
New Order
 

メンバー間の対立と解散

Republic (リパブリック)

1993年 6thアルバム

 『テクニーク』の後にメンバーはソロプロジェクトをそれぞれ始動。そんな折に所属していたファクトリー・レコードが破産し、ニュー・オーダーはロンドン・レコードに移籍することになりました。移籍後初のオリジナルアルバムとなる本作。長らくセルフプロデュース体制で続けていましたが、本作ではステファン・ヘイグを共同プロデューサーに起用しています。
 制作においてはバーニーことバーナード・サムナーと他の3人が対立、メンバー間の亀裂は深まりました。1993年のライブ後から1998年に再結集するまで、ニュー・オーダーとしての活動は無く、事実上の解散状態になります。

 アルバムは「Regret」で開幕。開放的なギターが爽やかな雰囲気を作り出します。そこにバーニーの憂いを帯びたメロディアスな歌が優しく響き、爽やかなサウンドに切なさを加えます。これが中々魅力的です。続く「World」はダンサブルな楽曲。ですがノリノリなリズムに乗るのは憂いを帯びた円熟味のある歌で、前作に比べて落ち着いた印象です。華やかさも少し控えめで、1990年代という時代の移り変わりもあるのでしょうか。「Ruined In A Day」はリズミカルな打ち込みも虚しく、哀愁が漂います。陰のあるメロディラインにメランコリックな歌が切ない。「Spooky」は一転してノリの良いエレポップを展開。グルーヴィでダンサブルなリズムは軽快で、楽しい気分にさせてくれます。バーニーの歌い方によってメロウな印象もありますが、メロディもポップです。気だるげな歌が心地良い「Everyone Everywhere」を挟んで、リズミカルな「Young Offender」。打ち込みのビートが小気味良くて軽快な印象を生み出しますが、歌は曇天のような憂いに満ちた雰囲気です。若干地味な「Liar」を挟んで、ダンサブルなビートが爽快な「Chemical」。重低音が響くアグレッシブなサウンドが高揚感を煽ります。カッコ良い楽曲です。そして「Times Change」は気だるげなサウンド。歌はヒップホップで、反復を繰り返す単調なリズムに単調な歌を乗せます。ノスタルジックな音色を奏でるシンセがアクセントを加えます。「Special」は、打ち込みのリズムビートでノリが良いですね。ですが歌はメロディアスで、軽快なリズムと対照的にじっくり聴かせる感じ。ラスト曲「Avalanche」はジリアン・ギルバートがボーカルを取ります…が、ほぼインストゥルメンタルですね。神秘的な音色で、ゆったり漂うような心地良さがあります。

 憂いのある楽曲は聴き心地はよいものの、全体的に地味な印象は否めません。あまりパッとしない作品です。

Republic
New Order