🇬🇧 The Stone Roses (ザ・ストーン・ローゼズ)

レビュー作品数: 4
  

スタジオ盤

The Stone Roses (ザ・ストーン・ローゼズ/石と薔薇)

1989年 1stアルバム

 英国のインディーロックバンド、ストーン・ローゼズ。マッドチェスター・ムーブメントの中心的な存在で、後進のブリットポップバンド、オルタナティヴロックバンドへも多大な影響を与えているバンドです。バンド自体は1983年に結成されていますが、本作リリースは1989年で、熟成に熟成を重ねて制作されたようです。最初期はメンバーが流動的だったようですが、本作と次作制作時のラインナップは、イアン・ブラウン(Vo)、ジョン・スクワイア(Gt)、マニ(B)、レニ(Dr)の4人。
 本作はジョン・レッキーのプロデュース。透明感のあるサウンドに乗せて、キャッチーなメロディを気だるげで脱力感のあるボーカルが歌う。そして重ねられたコーラスワークが美しさを引き立てます。サイケデリックロックの影響も感じる独特の浮遊感が心地よいです。

 オープニング曲「I Wanna Be Adored」は、囁くように始まり、「崇拝されたい」といった歌詞を延々と復唱しながら徐々に盛り上がっていきます。サウンドも秀逸で、透明感のあるギターにヘヴィに唸るベース、リズムを刻みながら一本調子にならないように変化を入れるドラム。壮大な楽曲に仕上がっています。続く「She Bangs The Drums」は弾けるような爽やかさ。ベースが抜群のグルーヴ感を生み出し、軽快なドラムはノリノリです。そしてギターとコーラスワークによって清涼感が生み出されています。極上の癒し曲「Waterfall」もこれまた名曲。イントロのギターから透明感に溢れていて、澄んだコーラスワークも含めて、タイトルに示された滝を間近で眺めるかのよう。あまりに美しいこの楽曲はマイナスイオンを感じられるような。笑 でもグルーヴ感に満ちたリズム隊は意外とダンサブルだったりします。「Don’t Stop」は逆再生を用いたサウンドで、サイケデリック全開。ただ1960年代当時のサイケに比べると、とても瑞々しいのが特徴でしょうか。浮遊感に溢れていて、とても心地がよいです。
 レモンが印象的なジャケットアートですが、「Bye Bye Badman」と名付けられたこのアートワークは1968年のパリで起きた五月革命をイメージしたものだそう。五月革命のときに催涙ガスの効果を薄めるためにレモンを絞って飲んだという話を伝え聞き、その話にインスピレーションを受けてジョンが作成したそうです。三色旗とレモン(レモンは本物を撮影したらしい)にはそんな意味があったんですね。そしてジャケットアートと同名の楽曲「Bye Bye Badman」も、同じくこの五月革命を歌っています。メロディが秀逸で、グルーヴ感溢れるダンサブルなサウンドに乗せて、甘美なメロディに癒されます。
 「Elizabeth My Dear」は1分に満たないアコースティックな小曲。短い楽曲の中でエリザベス女王を批判しています。王室批判は英国ロックの十八番でしょうか。続いて明るいイントロで「(Song For My) Sugar Spun Sister」が始まります。哀愁漂うメロディは切ないですが、明るいサウンドと相殺して甘酸っぱい印象です。「Made Of Stone」も素晴らしい名曲。暗いスタートを切り、少し緊張感も漂いますが、哀愁と爽やかさを両立したサビメロにノックアウトされます。澄んだギターとは対照的にブイブイ唸るベースもカッコ良いなぁ。間奏のドライブ感も爽快です。「Shoot You Down」はメロディよりもグルーヴを重視したダンサブルな1曲。リズム隊、特にレニのドラムが秀逸です。続いて「This Is The One」でイントロから引き込まれます。瑞々しいサウンドがとても素敵。歌はひたすらに「This is the one」を連呼しますが、優しいメロディに魅了されます。コーラスワークも見事です。8分超のラスト曲「I Am The Resurrection」は、「俺は(キリストの)復活、俺は光だ」と歌います。キリスト教批判でしょうか。オープニング曲で「崇拝されたい」と歌い、ラスト曲で「俺が光だ」と、不遜な感じがロックですね。爽快なサウンドですが、長い長いアウトロはダーティでグルーヴ感に溢れる演奏に変貌し、聴く者を魅了します。スリリングな演奏で非常にカッコいい。いつまででも浸っていたいと思わせます。
 再発盤では「Fools Gold」がおまけで付いてきます。アルバムの流れからは浮いているのでラスト曲には相応しくないですが、これもまた名曲。10分近い演奏でひたすら同じようなフレーズを反復します。うねうねと歪んでいて、ファンキーで強烈なグルーヴ感に乗せられてトリップしていると、いつの間にか10分経ってしまっています。

 「ダンスとロックの融合」、「インディ・ダンスロックの名盤」等と評されるのを見かけますが、このダンスという言葉に軽い拒否感を覚えて手に取るまでに時間がかかりました。踊れるロックを奏でたマッドチェスタームーブメントの牽引役だったことや、グルーヴィなリズム隊なんかはその要素もあるにはあるのですが、ダンス色を前面に出した楽曲はそこまで多くない気がします。楽曲によっては確かにダンサブルではあるのですが、ダンスという言葉に持つイメージと、聴いたときの印象がかけ離れていました。サイケデリックなギターロックといった印象です。
 澄みきって晴れ渡った朝のように優しくて瑞々しいサウンドは、起きがけに聴くと本当に心地よいです。大名盤。

The Stone Roses: 20th Anniversary Remastered Edition
The Stone Roses
 
Second Coming (セカンド・カミング)

1994年 2ndアルバム

 1stアルバムから5年、満を持しての2ndアルバムリリース。ローゼズ再臨!ちなみに「the」をつけて「the Second Coming」とするとキリストの再臨を意味する語になるようです。そういえば前作で「俺は(キリストの)復活、俺は光だ」と豪語していましたね。
 名盤だった1st『ザ・ストーン・ローゼズ』の次の作品でかつ5年という時間で期待値が上がりすぎたのか、音楽性の急激な変化への拒絶反応か、本作は世間から酷評されたようです。確かに前作と比べると泥臭くなったというかハードになったというか、ブルージーなギターが主導する楽曲が増えています。1960~1970年代くらいのUKハードロック、特にレッド・ツェッペリンの影響が色濃い印象を受けます。イアン・ブラウンのボーカルや、レニのドラムはさほど変わらずなのですが、ジョン・スクワイアのギターの変化が大きいです。プロデューサーにはサイモン・ドーソンとポール・シュローダー。

 のっけから11分強の大曲「Breaking Into Heaven」で開幕。序盤はジャングルのような効果音にまみれていて、プリミティブなパーカッションが野性味を感じさせます。4分半くらいからグルーヴ感溢れる楽曲を展開。レニのドラムと、マニのグルーヴィなベースが心地良いリズムを刻み、イアンの歌は気だるげ。そしてジョンのギターは透明感のある音色…ではなく、ブルージーでファンキーな音色に変わっています。これが本作の大きな変化だと思います。「Driving South」はとても泥臭いです。レッド・ツェッペリンからの強い影響を感じる1曲です。ブルージーなギターにグルーヴィなリズム隊の組合せは意外と心地良く、ダーティでダンサブルなサウンドの虜になります。コーラスワークにも黒っぽさが出ていて、前作とは様変わりしたと感じます。「Ten Storey Love Song」はダンサブルなイントロで始まりますが、歌が始まるととても優しく甘いメロディに癒されます。とにかくメロディラインが秀逸で、加えて前作にも通じる透明感もこの楽曲の良さを引き立てています。そのまま続く「Daybreak」は6分半に渡ります。セッションのような雰囲気で、主張の激しいベースがうねる。そしてファンキーなギターと即興演奏のようなドラムが、抜群のグルーヴ感を持つ楽曲を作ります。途中から加わるヘヴィなオルガンとギターのバトルは、ディープ・パープルのインプロヴィゼーションを想起させます。「Your Star Will Stone」はアコギ主体のトラッド風の1曲。サイケデリックでもあり、歪んだ音色が浮遊感を作ります。「Straight To The Man」は渋い。リズム隊が作るグルーヴはダンサブルで、でもギターはブルージーで渋いのです。「Begging You」はバリバリのダンスチューン。本作の中では浮いている気がしなくもないですが、グルーヴ感抜群でとてもカッコ良いです。どことなくインド音楽っぽさも感じる「Tightrope」を挟んで、「Good Times」はとてもブルージーな1曲。ギターがエリック・クラプトンばりに泥臭くて渋い。でもリズム隊のグルーヴ感が渋さに刺激を与えてくれます。続く「Tears」はレッド・ツェッペリンのカバーかと思うくらい、似たフレーズが散りばめられています。サビなんて「Stairway To Heaven」まんまですしね。笑 起伏のあるメロディだとイアンの歌の下手さが目立ちますが、それもまたご愛嬌。優しくポップな「How Do You Sleep」で癒された後のラスト曲は「Love Spreads」。これもまたブルージーでとても渋い楽曲です。
 大量の空白トラックを挟んで隠しトラックがありますが、混沌としてとても耳障りな不協和音なので、個人的には聴くに耐えない楽曲です…。

 旧きブルースロック/ハードロックに回帰した作品で、それでいて全体的にグルーヴ感が増した仕上がりとなっています。泥臭さにスタイリッシュさも合わせ持つ印象です。ハードロック好きにはオススメできる作品だと思います。ただ、大傑作の『ザ・ストーン・ローゼズ』と比較してしまうとどうしても見劣りしてしまいます。またアルバム全体もやや取っ散らかっている印象。

 なおバンドは本作のあと1996年に解散しましたが、2011年に再結成を果たしました。

Second Coming
The Stone Roses
 
 

編集盤

Turns Into Stone (ターンズ・イントゥ・ストーン)

1992å¹´

 1st『ザ・ストーン・ローゼズ』と2nd『セカンド・カミング』まで5年のブランクがありますが、その間にバンドとレーベルでひと悶着ありました。待遇の悪さから移籍を希望するストーン・ローゼズのメンバーと、契約を盾に拒否するレーベル側で裁判沙汰となりました。結果としてストーン・ローゼズはゲフィンに移籍し『セカンド・カミング』を制作することになりますが、元レーベルのシルヴァートーンとの契約履行のためか、移籍後にシングルとカップリングのベストとして本作をリリースするに至ったようです。

 名曲「Elephant Stone」で開幕。この楽曲はニュー・オーダーのピーター・フックによりプロデュースされました。ニュー・オーダーの影響もあったかダンサブルなロック曲で、マニのベースとレニのドラムの作る抜群のグルーヴ感と、ジョン・スクワイアの透明感のある爽快なギターがとても気持ち良いです。イアン・ブラウンの歌うメロディもポップで聴きやすい。続く「The Hardest Thing In The World」はギターが少し垢抜けない感じがあるものの、アップテンポでノリの良いリズムとメロディの良さは光ります。ゆったりと甘いメロディの「Going Down」はボーカルがメインの楽曲ですが、ベースが良い味を出しています。「Mersey Paradise」は軽快なギターとドラムが良いですね。ビート感が心地の良い1曲です。「Standing Here」は荒削りなギターが唸りを上げた後、気だるい雰囲気に変わりますが、グルーヴはしっかり聴かせます。メロディアスな「Where Angels Play」を挟んで、インストゥルメンタル「Simone」。ぐねぐね歪んだ幻想空間を彷徨うような、サイケデリックな浮遊感に満ちています。そしてファンに人気の高い「Fools Gold」。ファンキーで強烈なグルーヴが渦巻くこの楽曲はとてもダンサブル。ひたすら同じフレーズの反復なのに、10分という長さを感じさせない中毒性があります。続く「What The World Is Waiting For」は重ねたギターが爽やかです。1970年代前半頃の古臭いサウンドへアプローチしつつ、それでいてあまり古臭く感じさせないのは彼らのグルーヴゆえでしょうか。8分近い「One Love」はダンサブルな1曲。リズム隊の作るノリがとても気持ち良いです。ラスト曲「Something’s Burning」も8分近い楽曲です。リズムを強調した楽曲で、静かなサウンドと囁くような歌声にリズム隊の刻むビートが響きます。

 「Elephant Stone」と「Fools Gold」が突出していますが、この2曲に限って言えば『ザ・ストーン・ローゼズ』のエディションによりどちらも聴けたりしますし、他のベスト盤等でも聴けます。洗練された大傑作『ザ・ストーン・ローゼズ』と比べると、所々に垢抜けていない感じもありますが、初々しい彼らを知ることができる作品だと思います。

Turns Into Stone
The Stone Roses
 

The Very Best Of The Stone Roses (ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ザ・ストーン・ローゼズ)

2002å¹´

 オリジナルアルバムは僅か2枚なのに、ベスト盤はいくつも出ているストーン・ローゼズ。その中で本作を選んだ理由は2つあって、1つ目はレーベルの垣根を超えてオリジナルアルバム2枚とシングルから満遍なく収録されていること、そして2つ目は1stアルバムにして大名盤『ザ・ストーン・ローゼズ』の選曲・曲順を軸としながら楽曲を差し替えたようなベスト盤であるため、楽曲の流れで違和感が少ないことです。ジョン・スクワイアによるジャケットアートも『ザ・ストーン・ローゼズ』風ですね。

 1曲目「I Wanna Be Adored」、2曲目「She Bangs The Drums」と、『ザ・ストーン・ローゼズ』と同じ始まりなのが素晴らしい。爽快なギターロックを聴かせた後に続くは2nd『セカンド・カミング』より「Ten Storey Love Song」。透明感のあるサウンドと甘いメロディのこの楽曲は、1stの流れに割り込んだベスト盤的な選曲ですが、爽快な前曲と繊細で瑞々しい次曲「Waterfall」の間を違和感なく繋げてくれます。「Waterfall」の次には「Made Of Stone」が来るので、1stアルバムの流れで聴いていると「中盤を一気に飛ばしたな…」とも思いますが、2ndアルバムやシングルからも収録するため、曲数の都合上仕方ないですね。さて、ここまで瑞々しく透明感のある楽曲が並びますが、次の「Love Spreads」で一気に泥臭くなります。ジョンのブルージーなギターが渋いですが、マニのベースとレニのドラムの生み出すグルーヴィなリズムのおかげで洗練された印象です。爽やかなサウンドと気だるい歌による「What The World Is Waiting For」を挟んで、名シングル「Sally Cinnamon」。彼らの路線を決定づけた2ndシングルで、瑞々しいサウンドにイアン・ブラウンのヘタウマだけど甘美なメロディが乗る。邦楽耳でもスッと入ってきそうなキャッチーさを感じます。一転して「Fools Gold」ではグルーヴ感を前面に出し、ダンサブルな印象を抱きます。続く「Begging You」は抜群なグルーヴ感を持つバリバリのダンスチューン。グルーヴを聴かせる楽曲のあとはぶっ飛んだ名曲「Elephant Stone」。ギターサウンドの透明感と、ベース・ドラムの作るグルーヴ感のバランスが絶妙で、更にイアンのポップな歌も聴きやすい。ストーン・ローゼズのトップクラスの名曲です。「Breaking Into Heaven」は、原曲だと4分程度続く混沌としたイントロが本作ではバッサリカットされ、聴きやすい部分が残されています。これは原曲より本作の方が良い。「One Love」ではダンサブルなロックサウンドを展開。ノリの良いリズム隊がとても爽快です。そしてラスト2曲は「This Is The One」と「I Am The Resurrection」で、これまた『ザ・ストーン・ローゼズ』と同じ終わり方をする。素晴らしい曲順です。

 ストーン・ローゼズの最適解は1stアルバムを聴くことだと思っていますが、あえてベスト盤に手を出すのであれば本作が良いと思います。序盤と終盤で『ザ・ストーン・ローゼズ』に似た流れを作りつつも、中盤はベスト盤として必要な楽曲を押さえていく。件の作品の亜種のような感じに纏まっていて、そこまで違和感なく聴ける良ベスト盤です。

The Very Best Of The Stone Roses
The Stone Roses
 
 
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