🇺🇸 R.E.M. (アール・イー・エム)
レビュー作品数: 8
スタジオ盤
インディーズ時代
1983年 1stアルバム
米国におけるオルタナティヴロックの最重要バンド、R.E.M.。1980年に結成しました。バンド名は「Rapid Eye Movement (急速眼球運動=レム睡眠の“レム”)」から来ているのだそう。メンバーはマイケル・スタイプ(Vo)、ピーター・バック(Gt)、マイク・ミルズ(B)、ビル・ベリー(Dr)の4人で、1997年にマイクが脱退するまで4人の不動のメンバーで続けていました。
R.E.M.は、大学のローカルラジオ「カレッジラジオ」を通して若者に好んで聴かれたことから「カレッジロック」とも言われ、オルタナ黎明期からシーンを牽引しました。本作は当時の若者から高い支持を得て、インディーズでありながら全米チャート入りを果たす快挙を成し遂げました(全米36位)。ドン・ディクソンとミッチ・イースターの共同プロデュース。
オープニング曲は「Radio Free Europe」。彼らの代表曲です。強靭なベースを軸として、ニューウェイヴ的な力強いビートを刻みつつも、アルペジオを重視したフォーキーなギターが特徴的ですね。躍動感があり爽やかです。続く「Pilgrimage」では、ニューウェイヴ的なドラムやパーカッションがリズミカルに仕立て、ビブラフォンも加わって少しエキゾチックな風合いを出してきます。ですが、アコギや、マイケルの伸びやかな歌は牧歌的な雰囲気も醸します。「Laughing」はベースがリードし、踊りたくなるようなビートを刻みます。そこに透明感のあるアコギが、爽やかさを加えてくれます。そして「Talk About The Passion」では、冒頭からフォーキーなアコギが優しい風を吹かせます。ギターポップ的な、優しくて心地の良い哀愁が漂います。「Moral Kiosk」は躍動感たっぷりで気持ちの良いアップテンポ曲。ビルの叩くダイナミズムに溢れるドラムが、力強いビートを刻みますが、それでいてギターに透明感があるので爽やかなんです。「Perfect Circle」は湿っぽい楽曲で、透明感のある演奏に乗せてアンニュイに歌います。
ここからはレコードでいうB面。アルバム後半は「Catapult」で幕を開けます。躍動感溢れるリズム隊に、小気味良いギターが気持ち良い。マイケルの歌も爽やかです。続いて「Sitting Still」はアップテンポな楽曲です。躍動感があって、思わずリズムを取りたくなるような軽快さ。アルペジオを活かしたギターも心地良いです。「9–9」はトリッキーで少しひねたイントロでフックを掛けてきます。でも軽快なビートに反復するフレーズなど、やみつきになる中毒性があります。そして「Shaking Through」はテンポも速く勢いがありますが、アコギのおかげでリラックスしたような、牧歌的な爽やかさを感じられます。「We Walk」は6/8拍子のリズムが独特の存在感を放ちます。アコギを活かしたフォーキーで穏やかな演奏は、こじんまりと盛り上がっていてアットホームな雰囲気です。最後に「West Of The Fields」。力強いビートで、若干緊張が張り詰めた雰囲気です。程良くスリリングで爽快な1曲です。
英国のギターポップとは少し趣が異なるものの、ギターポップという表現が適切なのでしょうか?躍動感のあるリズム隊に軽快なアコギを鳴らすスタイルが、爽やかでとても魅力的です。
1984年 2ndアルバム
前作から楽曲のストックを増やした彼らは、2枚組アルバムの構想を持っていたようです。はじめニール・ヤングを手掛けたエリオット・メイザーにプロデュースを依頼しようとしたものの、最終的には前作に引き続き、ドン・ディクソンとミッチ・イースターがプロデュースを手掛けることになりました。前作の路線を踏襲した、ギターポップ的な作風に仕上がっています。
レコードA面は「(L) The Left Side」と名付けられています。「Harborcoat」で幕を開けます。ビル・ベリーの叩く力強くも軽快なビートのおかげで勢いがあり、それでいてメロディアスなギターポップを展開します。マイケル・スタイプの歌は憂いがありますね。続く「7 Chinese Bros.」もビートが力強くベースも骨太ですが、ピーター・バックの弾くギターは透明感があり、爽やかで懐かしい感覚があります。「So. Central Rain (I’m Sorry)」はマイク・ミルズの弾くベースが強い躍動感を生み出しています。でも歌メロは少し寂しげな印象を抱きます。続く「Pretty Persuasion」はギターを始め、軽やかで爽やかな演奏を繰り広げます。コーラスを駆使した歌も伸びやかですね。それでいて憂いも帯びているのが良い感じです。「Time After Time (Annelise)」は少し雰囲気が変わり、インド音楽のようなエキゾチックな風合いです。パーカッションや、シタール風なギターの独特な音色が影響していますね。
レコードB面は「(R) The Right Side」と名付けられています。そんなアルバム後半は「Second Guessing」で開幕。軽やかなギターと骨太なリズム隊が、勢い溢れる演奏でグイグイ牽引します。 「Letter Never Sent」はリズミカルなビートが気持ち良いですが、マイケルの歌には憂いが漂います。そして「Camera」はゆったりとしたトーンで、リズム隊が静かにマイケルの歌を引き立てます。序盤は落ち着いていますが、途中からリズム隊が力強さを増して楽曲を盛り上げます。歌メロが良くて沁み入りますが、終盤、謎にファンキーになります。そして「(Don’t Go Back To) Rockville」はアコギが爽やか。歌も伸びやかでリラックスした感触です。最後は「Little America」。疾走感のあるドラムをはじめ、小気味良くて躍動感のある楽曲です。リズム隊はパワフルなものの、ギターやボーカルが癒やし要素です。ラストに30秒ほどリプライズというか隠しトラック的な演奏で終わります。
爽やかで、少し憂いのある楽曲が揃っています。ノスタルジックというか、優しくて切ない感じです。
1985年 3rdアルバム
前2作は成功を収めてファンを増やしましたが、本作では路線変更を試みます。プロデューサーを変えて、英国のフォークミュージシャンを手掛けたジョー・ボイドを起用。イギリスに渡ってレコーディングを実施し、サウンド面に変化を加えました。また南部ゴシックと呼ばれるアメリカ文学の要素を歌詞に盛り込みました。全体的に陰鬱さが増しています。
アルバムのA面には「Fables Of The Reconstruction」という名が付いています。「Feeling Gravitys Pull」で幕を開けますが、ピーター・バックのギターはざらついて不穏な空気を演出し、これまでとは雰囲気が異なります。中盤からはハーモニーの美しさで和らぐ瞬間もありますが、ダークでスリリングです。続く「Maps And Legends」はメランコリックな雰囲気です。マイケル・スタイプの憂いに満ちた歌が魅力的で、分厚いコーラスが楽曲を彩ります。「Driver 8」は躍動感に満ちた楽曲で、マイク・ミルズのベースが重低音を効かせて存在感を見せます。ヘヴィさもありながら、時折アコギの音色を加えることで軽快さも加えています。「Life And How To Live It」は神経質そうなギターで幕を開けますが、ビル・ベリーの力強いドラムが楽曲に躍動感を与えてグイグイ牽引します。ハミングも相まって、高原にいるかのような涼しげで爽やかな印象を与えます。そして「Old Man Kensey」はベースリフで始まる、ダーティで怪しげな楽曲です。ゆったりテンポですがダークでスリリングな仕上がりで、陰鬱なギターに力強いドラムも特徴的ですね。
アルバム後半、「Reconstruction Of The Fables」と名付けられたB面に突入。とても軽快な「Cant Get There From Here」で始まります。小気味良いギターに加えて、躍動感あるリズム隊のおかげでギターポップ的な気持ち良さがありますが、マイケルの歌声は渋いです。終盤はサックスが加わり、楽曲を盛り上げます。「Green Grow The Rushes」は切ない陰りのある楽曲です。繊細なギターの響きが心地良いですが、晴れない歌メロなどが感傷的な気分を誘います。続く「Kohoutek」はイントロからダークな雰囲気が漂います。暗いもののメロディの良さが救いで、感傷的な気分を誘います。そして「Auctioneer (Another Engine)」は陰鬱さに加えて、テンポの速いドラムが焦燥感を煽ります。途中には不協和音も交え、本作で最もひりついた楽曲です。「Good Advices」は一転して、穏やかで優しく、それでいて切なさも内包しています。最後の「Wendell Gee」は静かでフォーキーな演奏に穏やかな歌で、優しいカントリー曲に仕上がっています。
陰鬱さが増したものの、ギターポップ的な躍動感ある曲もあり、心地良くも感傷的な気分を誘う良作です。
1986年 4thアルバム
繊細なギターポップを奏でてきたR.E.M.は、本作から一部楽曲でハードロック的な荒いギターを取り入れるようになります。プロデューサーにはドン・ゲーマンを起用。全米21位を獲得し、過去3作以上の商業的な成功を獲得しました。
「Dinner Side」と名付けられたA面は「Begin The Begin」で幕開け。ピーター・バックの弾く、ハードでブルージーなギターから変化を感じさせます。リズム隊は時折軽快さも感じられますが、ドラムはパワフルです。マイケル・スタイプは渋みのある声で時折唸りますが、ハードロック的な楽曲でも合いますね。続く「These Days」は躍動感たっぷりの疾走曲。ビル・ベリーのとても力強いドラムが牽引し、マイク・ミルズのベースが動き回ります。爽やかさは残しつつもエネルギッシュです。「Fall On Me」は牧歌的で少し陰りのある、これまでの彼ららしい楽曲。フォーキーな演奏に乗る、伸びやかな歌とコーラスが魅力的です。「Cuyahoga」は陰鬱な雰囲気が漂い、メランコリックな歌を歌います。そして「Hyena」はダイナミズムに溢れる疾走曲。パワフルなリズム隊がグイグイと牽引しますが、メロディには牧歌的な雰囲気が残っています。アクセントとしての鍵盤が良い感じ。「Underneath The Bunker」はラテンというかエキゾチックな曲調で若干浮いています。ヴォコーダーを通した歌も変な感じですが、1分半ほどで終わってしまいます。
後半は「Supper Side」と名付けられています。「The Flowers Of Guatemala」はドリーミーな雰囲気で幕を開け、牧歌的な演奏へと変わります。後半は場面転換して、ピーターのリードギターが活躍する場面も。続いて「I Believe」はバンジョーを用いたカントリーっぽいイントロから、力強く爽快な演奏が繰り広げられます。「What If We Give It Away?」はブルージーなギターが前面に出ますが、アクセントとして入るアコギが柔らかさを加えます。サビメロは哀愁たっぷりです。そして「Just A Touch」は軽快さを残しつつも力強く爆走、マイケルの歌も非常にテンション高いです。ピアノやオルガンを時々混ぜて賑やかな印象に仕立てています。一転して「Swan Swan H」はフォーキーな楽曲で、少しシリアスな雰囲気。途中からアコーディオンが加わるとノスタルジックな感覚になります。最後は「Superman」。スタンダードな演奏で、明るい雰囲気の楽曲です。ハンドクラップも軽快ですね。
所々に配置された疾走曲がアルバムを牽引します。様々な試みがなされていますが、アルバム通しでは若干取っ散らかって散漫な印象もあります。
1987年 5thアルバム
プロデューサーとしてスコット・リットを迎えていますが、彼はこの後10年に渡り、本作以降の名盤とされる作品群を手掛けることになります。本作は前作のハードな路線を踏襲しており、またマイケル・スタイプの歌は聞き取りやすくなりました。そして過去最高位である全米10位を獲得。インディーズ時代最後の作品にして、ファン人気の高い作品の一つです。
アルバム前半は「Page Side」と名付けられています。「Finest Worksong」で幕を開けます。晴れやかで余裕のある雰囲気と奥行きのあるサウンドは、アリーナロック的な趣というかバンドの貫禄を感じさせます。マイケルの歌やビル・ベリーの力強いドラムがバンドの自信を感じさせます。続く「Welcome To The Occupation」はマイク・ミルズのベースが低音でメランコリックなフレーズを弾いています。陰りのある楽曲ですが、アコースティックな心地良さもあります。「Exhuming McCarthy」はリズミカルなドラムが高揚感を掻き立てます。また、ベースのグルーヴも強烈で、ダンサブルな感覚も持ち合わせています。「Disturbance At The Heron House」は明るく爽やかな楽曲で、マイケルの伸びやかな歌や、ピーター・バックの弾く繊細なギターに癒やされつつも、力強いリズム隊が牽引します。そして「Strange」はワイヤーのカバー曲。爽やかさに加えてハードロック的な荒さやパワフルさがあります。マイケルの歌も自信たっぷりといった感じ。「It’s The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」は躍動感あるドラムが牽引する、勢いのある楽曲で、歌もまくし立てるように勢いに満ちています。サビは分厚いコーラスワークによって爽やかな印象。
ここから「Leaf Side」と名前が付いたアルバム後半に突入。「The One I Love」は本作の先行シングルで、トップ10入りしました。イントロやサビメロ辺りでブルージーなギターが聴けますが、歌が始まると爽やかさと哀愁を兼ね備えた演奏に。「Fireplace」は6/8拍子のゆったりテンポで揺さぶりつつも、ややハードな演奏に加えて歌唱は内省的な雰囲気です。中盤ではサックスを導入しています。「Lightnin’ Hopkins」は力強くダンサブルなビートを刻み、跳ねるようなベースもあって躍動感があります。これまでのR.E.M.っぽくは無いものの、爽快な楽曲です。「King Of Birds」はダルシマーと呼ばれる弦楽器を用いて、若干エキゾチックで、そしてフォーキーで懐かしい雰囲気が漂います。郷愁が漂うものの、ドラムは少し勇壮な感じ。ラスト曲「Oddfellows Local 151」はヘヴィな楽曲で、爆音ベースを響かせ、ギターも時折不協和音気味。緊張が張り詰めています。
全体的に力強くて自身に満ちた印象です。
そして本作を最後にメジャーレーベルであるワーナーと契約、バンドは更に躍進することとなります。