🇺🇸 R.E.M. (アール・イー・エム)

スタジオ盤②

メジャー移籍

Green (グリーン)

1988年 6thアルバム

 メジャーレーベルに移ったR.E.M.。メンバーはマイケル・スタイプ(Vo)、ピーター・バック(Gt)、マイク・ミルズ(B)、ビル・ベリー(Dr)の不動の4人で、そしてプロデューサーはスコット・リットでしばらく継続します。
 政治的な楽曲も含む本作は、アメリカ大統領選と同日の1988年11月8日にリリースされました。

 「Air Side」と言う名の前半パート、オープニング曲は「Pop Song 89」。力強いリズム隊に加えてハードなギターを鳴らしながらも、軽快さを残してカラッとした雰囲気です。続く「Get Up」はアリーナを意識したような奥行きのある音の響きと、自身に満ちた力強さを感じます。でもコーラスは爽やかですね。「You Are The Everything」はピーターがマンドリンを、マイクがアコーディオンを弾いていて、トラッド的な懐かしく心地良い雰囲気が漂います。なおビルはドラムではなくベースを弾いており、メンバー皆が普段の楽器パートとは異なる楽器にチャレンジしています。「Stand」はハードでブルージーなギターが特徴的な、アメリカンなカラッと明るい楽曲です。お出掛けにピッタリですね。一転して「World Leader Pretend」はシリアスな雰囲気が立ち込めます。「僕が世界のリーダーだったなら」と歌詞では歌い、メランコリックなメロディを展開します。これが魅力的なんです。そして「The Wrong Child」ではマンドリンを弾いてフォーキーで落ち着いた空気に。牧歌的で優しい雰囲気に癒やされます。
 「Metal Side」と名付けられた後半パートは、力強くハードな楽曲が並びます。「Orange Crush」で幕開け。アグレッシブなイントロから惹きつけます。ドラムもベースも力強く、そしてギターは若干金属質な感覚。「Turn You Inside-Out」はビルのドラムが更に力強く、そしてギターも歪んでいます。一転して「Hairshirt」はマンドリンを鳴らすフォーキーな楽曲で、アルバムの緩衝材になっています。マイケルの伸びやかな歌も魅力的ですね。続いて「I Remember California」。ハードかつ、暗く緊張に満ちたスリリングな楽曲を展開します。メタリックなギターがひりついた空気を醸し出します。そして最後は隠しトラックで、ストリーミング等では「Untitled」とされていますが、名前が付いていないそう。明るくほのぼのとした雰囲気で、マイケルの歌は伸びやかです。なお、ピーターがドラムを叩いています。

 前作の路線を押し進めて力強い楽曲が並ぶ一方、時折マンドリンを用いたフォーキーな楽曲を挟んで、アルバムに緩急をつけます。

Green
R.E.M.
 
Out Of Time (アウト・オブ・タイム)

1991年 7thアルバム

 前作『グリーン』に伴うアリーナクラスのツアーに疲弊した彼らは、ツアー活動を封印し、歪んだギターをやめ、アコースティックでフォーキーな作風に変えていきます。最大のヒット曲「Losing My Religion」を収録しており、次作と並び最高傑作に挙げられることの多い作品です。全世界で1,800万枚以上を売り上げました。

 「Time Side」と名の付いた前半パートは「Radio Song」で幕開け。ピーター・バックの弾くアルペジオを活かした優しいギターに浸っていると、ファンキーなバンド演奏に変わってビックリ。ゆったり浸れるパートと躍動感溢れるパートを交互に繰り返す、緩急に富んだ楽曲です。そして屈指の名曲「Losing My Religion」。リードシングルとしてリリースされ、本アルバムのセールスにも大きく貢献しました。マンドリンの優しい音色、そしてマイケル・スタイプの陰りのある歌メロが感傷的な気分を誘います。大きな盛り上がりはないものの、メロディが良くて耳に残る魅力的な名曲です。「Low」はオルガンと、プリミティブなリズム隊が印象的。低いトーンで淡々と進行しますが、中盤から感情がこもって盛り上がりを見せます。そして「Near Wild Heaven」はマイク・ミルズがボーカルを取る、フォーキーな楽曲です。牧歌的な楽曲にアクセントとして入るピアノが、楽曲に透明感を加えます。優しくて美しい。「Endgame」はゆったりとしたフォークソング。フリューゲルホルンの音が雄大な自然を思い浮かべます。
 「Memory Side」と言う名の後半パートは、人気曲「Shiny Happy People」で幕開け。ゆったりとしたストリングスで幕を開け、ご機嫌なバンド演奏と歌を繰り広げます。コーラスワークを駆使してキャッチーな歌メロが耳に残りますね。「Belong」はリズミカルな演奏と伸びやかな歌唱で、軽快で爽やか。そして牧歌的なので癒やされます。続く「Half A World Away」はマンドリンやオルガンを用いた、フォーキーで優しい楽曲です。一転して「Texarkana」は力強いベースを始め、躍動感溢れるロック曲を展開。これもマイクがボーカルを取ります。「Country Feedback」はアコギとブルージーなギターを鳴らして、深みのあるカントリー調の楽曲を展開。マイケルの渋い歌声が沁み入りますね。そしてラスト曲「Me In Honey」。フォーキーですが躍動感のある楽曲を展開。哀愁を滲ませながらも爽やかさがあります。

 ポップセンスに満ちていて代表曲も多い名盤です。R.E.M.の入門盤としても最適な1枚です。

Out Of Time
R.E.M.
 
Automatic For The People (オートマチック・フォー・ザ・ピープル)

1992年 8thアルバム

 ポップな楽曲が並んだ前作から変わって、死をテーマにした内向的な楽曲が並びます。これが全世界で1,800万枚以上を売り上げる大ヒットとなり、R.E.M.の最高傑作の呼び声も高いです。ちなみに、ニルヴァーナのカート・コバーンが最期に聴いていたのが本作だと言われています。
 いくつかの楽曲ではストリングスが導入されていますが、元レッド・ツェッペリンジョン・ポール・ジョーンズがストリングスアレンジを手掛けました。

 「’Drive’ Side」という前半パートは「Drive」で幕開け。陰りのあるアコギを鳴らしながら、マイケル・スタイプの歌声が楽曲に渋みや深みを与えます。中盤の、エレキギターとオーケストラが加わる展開には鳥肌が立ちます。「Try Not To Breathe」は6/8拍子のリズムに揺られつつも、メランコリックな楽曲は感傷的な気分を誘います。「The Sidewinder Sleeps Tonite」はオルガンの音色が特徴的ですね。ビル・ベリーのキレのあるドラムと、マイケルの伸びやかな歌のおかげで明るい雰囲気です。耳に残るメロディも良いですね。そして代表曲「Everybody Hurts」。ピーター・バックのアルペジオが印象的な、穏やかな演奏。そこに乗るマイケルの伸びやかでメロディアスな歌が優しく沁み入ります。中盤からストリングスや歪んだギターが加わりドラマチックに盛り上げます。続く「New Orleans Instrumental No. 1」はタイトルどおりインストゥルメンタルで、オルガンが瞑想的な響きを奏で、オーケストラが彩ります。「Sweetness Follows」はオルガンの荘厳さとアコギの渋く土臭い感覚が同居しています。シリアルで緊張感が漂っています。
 そしてここから「’Ride’ Side」という後半パートへ突入。「Monty Got A Raw Deal」ではブズーキと呼ばれるアコースティックな弦楽器が用いられています。中盤からは力強いバンド演奏に変わりますが、マイケルの歌はダウナーな感じ。続く「Ignoreland」は大統領選を見据えた政治色の強い楽曲です。力強いドラムや歪んだギターをはじめ、本作の中ではアグレッシブな印象が強いです。「Star Me Kitten」はゆらゆらと漂うような、ゆったりとした楽曲です。落ち着いた渋い歌声が印象的。続く「Man On The Moon」は序盤のパーカッションにどこかトロピカル感があります。ハミングが心地良く、またメロディも美しくて魅力的ですね。「Nightswimming」は、ピアノを用いたシンプルな演奏ながら、美しいメロディに浸れます。時折ストリングスが楽曲を引き立てますが、バンド演奏は終始不在で、歌メロを引き立てた楽曲です。そして最後は「Find The River」。アコギや鍵盤ハーモニカを用いた、牧歌的でアンニュイな楽曲を展開します。サビのメロディがあまりに美しくて優しく、聴いていると込み上げてくるものがあります。

 前作よりは取っつきにくさがありますが、落ち着いていてメロディの美しさを堪能できる楽曲が多いです。

Automatic For The People
Deluxe 25th Anniversary Edition (2CD)
R.E.M.
Automatic For The People
R.E.M.
 

 
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