🇯🇵 SOUND HOLIC (サウンド・ホリック) / SWING HOLIC (スイング・ホリック)

レビュー作品数: 11
  

SOUND HOLIC同人作品:東方アレンジ

紅 -KURENAI-

2008年 13thアルバム

 SOUND HOLIC、通称サンホリ。同人音楽サークルで2006年に結成しました。数多くのメンバーが所属していることもあってか非常に多作なサークルで、またロック・ポップス・ユーロビート・メタルなど幅広いジャンルを手掛けます。サークル代表はGUCCI。
 本作は「漢字シリーズ」と呼ばれる作品群の第4弾で『東方紅魔郷』の原曲でテーマを統一しつつ、曲調もボーカリストも異なる楽曲をまとめたオムニバス的な作品です。コミックマーケット75にて、ジャズに特化した姉妹サークルSWING HOLICの作品『VOL.03』と同時頒布されました。

 オープニング曲「Awakening of the Scarlet World」は「赤より紅い夢」のアレンジ曲。雨音が響き渡る中、ゴシック色のある、力強くておどろおどろしいオーケストラが展開されます。
 続く「Grip & Break down !!」はNana Takahashiが歌う「U.N.オーエンは彼女なのか?」のユーロビートアレンジ。アッパーでダンサブルな演奏に乗せて、全編英語詞のメランコリックな歌を披露します。合間合間でメタリックなギターを聴かせます。
 akiの歌う「Dial Connected」は「月時計 ~ ルナ・ダイアル」のアレンジ。エレクトロニックなサウンドで、少し懐かしさのあるシンセサイザーの音色が心地良かったりします。声質と演奏が若干ミスマッチというか、ちょっとした違和感を覚えつつも、早口気味なサビメロはやみつきになる中毒性があり、個人的にお気に入りの1曲です。
 「No more crying」は一転して、ヘヴィなリフをかき鳴らす、疾走感溢れるヘヴィメタルアレンジです。CALENがパワフルな歌唱を聴かせます。原曲「明治十七年の上海アリス」に沿った魅力的なメロディを奏でる、終盤の間奏パートがとてもカッコ良い。
 続く「Eternal Wish」は「上海紅茶館 ~ Chinese Tea」のアレンジ。有馬美咲がアニメ声で歌う、甘くてポップなダンス曲です。
 ここから2曲はA~YAがボーカルを担当します。「Strange Scarlet」は「紅楼 ~ Eastern Dream…」を、比較的アッパーなジャズにアレンジしています。A~YAのボーカルはジャズによく合うお洒落な感じですね。姉妹サークルSWING HOLICがこの路線で統一されているので、興味のある方はご一緒にどうぞ。
 続いて「メイドと血の懐中時計」のアレンジ曲「あなたにお茶を <Tea for you>」。こちらはスカ風の、ドタバタでノリノリな楽曲に仕立てています。
 akiが歌う「celebrate the colors tonight」は「魔法少女達の百年祭」をダンス風味にアレンジしています。演奏も、エフェクトをかけて重ねたボーカルも、フワフワとしていて陶酔感があります。
 続く「おてんば恋娘」を元気なポップ曲にアレンジした「ときめき☆冷凍パック」。有馬美咲がロリっぽい声で歌いますが、チルノのイメージに合っていますね。
 そして唯一の男性ボーカル709sec.による「Get the star for you」。「ほおずきみたいに紅い魂」をオルタナ感漂うヘヴィメタルにアレンジした、陰りのあるスリリングな楽曲です。全編英語詞で展開します。
 そしてここから2曲はNana Takahashiが担当します。「Brand-new WORLD」は「ヴワル魔法図書館」と「ラクトガール ~ 少女密室」の混合アレンジで、歌には憂いを帯びつつも、ユーロビート的なきらびやかなダンス曲に仕上げています。
 そしてラストは「Prière -プリエール-」。「ツェペシュの幼き末裔」と「亡き王女の為のセプテット」を混ぜ合わせた重厚なバラードです。イントロこそゴシックな雰囲気がありますが、歌がぽつりぽつりと始まると、ピアノを軸とした静かでシンプルな演奏が歌を引き立てます。一転してサビでは感情たっぷりに歌い、ヘヴィな演奏が盛り上げます。緩急ついたドラマチックな展開は鳥肌ものです。個人的にはSOUND HOLICに限らず、数多ある東方アレンジ楽曲の中でもトップクラスの名曲だと思っています。

 紅魔郷オンリーというテーマがあるにもかかわらず、オムニバス的な作品なので全く統一感がありません。笑 楽曲は粒揃いですが、個人的には通しで聴くことはほとんどなく、お気に入りの楽曲をリピートする聴き方をしています。中でも「Prière -プリエール-」は突出して素晴らしい名曲です。

紅 -KURENAI‐
SOUND HOLIC
 
Metallical Astronomy

2010年 20thアルバム

 通算20作目となる本作は「鋼鉄シリーズ」と呼ばれるシリーズの第1弾です。秘封楽曲を中心に、ヘヴィメタルにアレンジを施した東方楽曲を展開します。タイトル(下)のフォントがメタリカですね。笑
 本作は、博麗神社例大祭7にて、SWING HOLIC名義の『VOL.05』と同時頒布されました。

 タイトル曲「Metallical Astronomy」はオリジナル楽曲で、インダストリアルな感触のダークなインストゥルメンタルです。
 続く「Satellite XXX」は「衛星カフェテラス」のインストゥルメンタルアレンジ。ハモるエレキギターとアコギで穏やかに始まったかと思えば、爆音ドラムに牽引されてゴリッゴリに疾走します。何度か場面転換して雰囲気が変わりますが、重厚なリフとメロディアスなリードギターが楽曲の軸を担う、暗くてスリリングな1曲です。
 「Scarlet Desire」は「東の国の眠らない夜」のアレンジ。仰々しくてクサいイントロを経て、スラッシュメタルのようにザクザクと刻む疾走感溢れる楽曲を繰り広げます。速いドラムにどこかX JAPANっぽさもあるような。ボーカルを取るユリカの歌唱はカッコ良く、そして艶っぽさも感じられます。
 続いて「天空のグリニッジ」のインストアレンジ「G.M.T.」。メタリックではあるものの、スウィングするようなリズミカルな感覚や、楽曲をリードするピアノが気持ち良いです。
 「車椅子の未来宇宙」をアレンジした「Heart of Singularity」は、シンセを導入したことで、メタリックな楽曲にひんやりとした質感を加えます。そしてNana Takahashiの力強いボーカルは、ヘヴィな演奏にも埋もれず存在感を放ちます。演奏はミクスチャーっぽいですが、ラップしてるのはラストだけですね。
 「G-ZERO」は「G Free」のインストアレンジ。爆音で疾走する爽快な楽曲で、時折アクセントとしてピアノがリードする場面を設けることで緩急をつけます。
 続いて、「月面ツアーへようこそ」のアレンジ「A Trip to the Moon」。ユリカが力強く主旋律を歌い、709sec.がラップパートやコーラスで楽曲を引き立てるという、ミクスチャー曲です。
 「Infinity Trip」は「大空魔術 ~ Magical Astronomy」のアレンジで、焚きつけるような超高速のスラッシーな楽曲を展開するも、優雅なシンセが鋭利な楽曲を多少和らげています。Yo-sukeが英語詞で歌います。
 「Demystify The Universe」は「Demystify Feast」のインストアレンジ。暗く繊細なピアノと、グワングワン唸りを上げるギターが楽曲の主軸を担います。
 そして「ネクロファンタジア」をアレンジした「Break the world down」。原曲のメロディを活かす方向ではなく、奇をてらう感じにラウドロック/ミクスチャー風味にしています。ヒップホップ的なリズミカルな演奏に乗せて、Yoko Kubotaが英語詞で歌います。
 最後は「向こう側の月」のインストアレンジ「Missing Moon」。緊張感あるメタル曲が並ぶ中で、比較的落ち着いた空気が漂います。渋くて哀愁たっぷりの泣きのギターがしんみりしていますね。後半に向かうにつれてギターが悦に入る感じに。

 ボーカリストこそ違えど、ヘヴィメタルというトーンで楽曲が統一されています。ちょっとクサいですが「Scarlet Desire」が好みです。

Metallical Astronomy
SOUND HOLIC
 
Scarlet Shooter

2011年 24thアルバム ※SOUND HOLIC feat. 709sec.名義

 『東方紅魔郷』オンリーのロックアレンジ作品です。男性ボーカルの709sec.をフィーチャーした名義となっていますが、半数弱の楽曲は別ボーカルを起用していたりします。
 博麗神社例大祭8で『PHANTASIEN』と同時頒布されました。

 「赤より紅い夢」をアレンジしたインスト曲「Scarlet Shooter」で幕開け。ミクスチャー的なリズムセクションに乗せて、シンセやメタリックなギターがメロディを奏でます。
 「覚醒のシスターヴァンプ」は「U.N.オーエンは彼女なのか?」のメタルアレンジで、鋭利なリフが疾走感を生み出します。709sec.は原曲に比較的忠実なメロディで歌うので、時折早口気味ですね。
 続く「Deflation World」は「メイドと血の懐中時計」のアレンジで、派手なイントロがカッコ良い。709sec.は終始英語詞で歌います。サビメロに永夜抄要素が混じっているような…。
 野宮あゆみにマイクを譲って、「魔法少女達の百年祭」のアレンジ曲「くるり閃光花火」。演奏はハードながらもスウィングするような気持ちの良いリズムで、そこに小悪魔的な歌唱で誘惑します。
 「月時計 ~ ルナ・ダイアル」のアレンジ「銀弾マリオネット」は、華やかなブラスセクションが際立つ楽曲です。オシャレな演奏に、709sec.のイケボがよく似合っていますね。
 「Diamond Memories」は「ルーネイトエルフ」と「おてんば恋娘」の混合アレンジで、足踏みするかのように力強いリズムを刻みます。演奏は賑やかですが、Nana Takahashiの歌は優しい雰囲気。
 「ほおずきみたいに紅い魂」と「妖魔夜行」の混合アレンジ「Get the star for you -Luna-」は、『紅 -KURENAI-』の再録曲で、メタリックでシリアス気味です。緊張感ある演奏に乗る、709sec.の英語詞の歌がカッコ良いですね。
 続く「LOVE, OFF THE LOCK」は「上海紅茶館 ~ Chinese Tea」と「明治十七年の上海アリス」の混合アレンジ。ハードな演奏の中では、スコンスコンと粗雑なドラムが気持ち良い。709sec.のメロディアスな歌は憂いがあります。
 「Wall of Knowledge」は、「ヴワル魔法図書館」と「ラクトガール ~ 少女密室」のメタルアレンジ。畳み掛けるようなイントロに圧倒されます。ビブラートを駆使したユリカの超パワフルな歌は、メタルな楽曲によく似合っています。
 そして「ツェペシュの幼き末裔」と「亡き王女の為のセプテット」の混合アレンジ「SEVENTH HEAVEN」。ハードで躍動感ある楽曲は、原曲よりもかなり速めな印象で、709sec.の英語詞は早口気味です。終盤のラップパートは、バックの演奏もあって圧倒されます。
 ラスト曲「夢跡」は「紅より儚い永遠」と「紅楼 ~ Eastern Dream…」のアレンジ。ハードですがキャッチーさも感じられる演奏に、西宮れんの歌もポップ寄りです。ひと昔前のアニメのED…といった印象を受けました。

 ボーカリストは様々ですが、全体的にハードなのと紅魔郷オンリーということで、比較的統一感があります。

Scarlet Shooter
SOUND HOLIC feat. 709sec.
 
Metallic Vampire

2011年 27thアルバム

 通算27作目となる本作は、鋼鉄シリーズ第2弾で『東方紅魔郷』オンリーのヘヴィメタルアレンジを展開します。M3-2011秋で頒布されました。

 「赤より紅い夢」のインストアレンジ「R.E.D.」で開幕。ひんやりとした鍵盤で幕を開け、重厚なバンド演奏がメリハリをつけます。
 「ほおずきみたいに紅い魂」と「妖魔夜行」の混合アレンジとなる「Mystic Mistiness」もインスト曲です。前曲から流れるように続く展開がアツいですね。疾走感溢れるドラムが牽引します。メタリックではあるものの、シンセサイザーを活用してヘヴィさを適度に抑えたり、決める場面では一気に緊張感を高める、緩急ある展開が魅力的です。
 続いて「ルーネイトエルフ」と「おてんば恋娘」の混合アレンジ「Snedronningen」。冒頭の始まり方がすごく原曲っぽい。バスドラムの嵐が吹き荒れるヘヴィな演奏をバックに、ユリカのヒステリック気味な力強いボーカルが存在感を放ちます。後半には一旦スローダウンし、再度テンポを揺り戻す展開で緩急もありますね。
 華憐の歌う「紅夜の黙示録」は「U.N.オーエンは彼女なのか?」のアレンジ。冒頭のオペラ風コーラスや、高速で重低音を刻む演奏に圧倒されるのですが、歌が始まるとアニソンのような少女らしくもハキハキした声で、キャッチーさを見せます。
 「Native Sage」は「ヴワル魔法図書館」と「ラクトガール ~ 少女密室」の混合アレンジ。冒頭だけトリッキーなリズムで惑わせますが、すぐさまメタリカのようにスラッシーな演奏になり、後半ではゆるっとした雰囲気になったりと、場面転換の多い楽曲です。CALENが中性的な声で力強く歌います。
 「Scarlet Calling」は「上海紅茶館 ~ Chinese Tea」のアレンジ曲で、重低音が効いたオルタナメタル風の趣です。Tak.Kが時折デス声を織り交ぜながら歌います。
 続く「Septuor de écarlate」は「ツェペシュの幼き末裔」と「亡き王女の為のセプテット」の混合アレンジ。ユリカの憂い混じりの色気ある歌声が魅力的ですね。ゴシック感溢れるダークでメランコリックなバラードで、静と動の対比も美しい。そして終盤は超加速します。
 「Lævateinn」は「魔法少女達の百年祭」のインストアレンジ。疾走感があり、破壊力満点の演奏がスリリングです。リードギターは悠々としていて、ときにツインギターでハモったり、ピロピロと高速で弾き倒します。躍動感あるドラムもカッコ良い。
 そして「sweet dear Vampress」は「メイドと血の懐中時計」と「月時計 ~ ルナ・ダイアル」の混合アレンジ。重低音の効いたヘヴィなリフやツーバスなど力強い演奏をバックにしながらも、Nana Takahashiの良く通る歌声は楽曲を「歌もの」に変えています。
 続いて「明治十七年の上海アリス」のアレンジ曲「A.D.1884」。クラシカルなイントロがテンション上がりますね。そして疾走感ある演奏は途中リズムチェンジも交えますが、難度高そうな楽曲も難なく歌い上げるユリカの歌はお見事です。間奏の速弾きギターを軸にした、畳み掛けるような展開もアツいですね。
 ラスト曲は「Les Misérables」。「紅より儚い永遠」と「紅楼 ~ Eastern Dream…」の混合アレンジで、ツインギターがしっとりとしたメロディを奏でて哀愁を醸し出します。終盤はテンポアップして高揚感を掻き立てつつも、透明感ある鍵盤で美しい印象で締めます。

 鋼鉄シリーズとしては前作よりもキャッチーさが大きく増して聴きやすく、また緩急ついた印象です。メタル好きかつ紅魔郷好きにオススメです。

Metallic Vampire
SOUND HOLIC